「慢性呼吸器機能障害の理解と支援のための」講習会実施報告
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慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、主に喫煙を原因として発症する生活習慣病であり、高齢化社会に伴い今後増加するといわれています。障害者の相談・支援を行う地域機関の福祉・保健・医療に携わる職員を対象に、慢性呼吸器機能障害を正しく理解し、支援等の充実につなげるための講習会を実施しました。
この講習会は、呼吸器障害の相談支援を行う職員が現場ですぐに活用できる基礎知識と支援方法を学んでもらうことをねらいとしています。今回は、在宅訪問診療時の事例や参加者の事前質問を随所に盛り込んだ講演内容となりました。当日は、地域包括支援センター・訪問看護ステーションの職員を中心とし、230名の参加がありました。詳細は以下のとおりです。
1 日時
平成20年11月18日(火) 13時20分から16時45分
2 場所
東京都社会福祉保健医療研修センター 1階 講堂
3 内容
(1)13:30~15:00 講演
「慢性呼吸器機能障害の基礎知識・呼吸器専門医の在宅診療訪問診療の現場から」
~在宅訪問における支援のポイント~
板橋区役所前診療所呼吸器科医師 鈴木 陽一氏
ア 基礎知識の理解を深めるため慢性呼吸機能障害となる3大原因疾病の概論・特徴について
(ア)慢性閉塞性肺疾患(COPD)
(イ)肺結核後遺症
(ウ)間質性肺炎/肺線維症
イ 三大原因疾病の各論・支援について
(ア)日常生活を通した在宅における呼吸不全の管理症状増悪の観察のポイント
(イ)酸素療法
(ウ)エンパワーメント
(エ)呼吸リハビリテーション
呼吸器専門医の訪問診療は、生活の状況を実際に自分の目で見て、現実に即した日常生活のアドバイスができ、在宅酸素療法の確認や吸入療法・服薬の指導がきめ細かくできます。日々の在宅訪問の経験の中から、感染予防、息切れを軽くする日常生活動作の工夫、在宅酸素と火の関係、楽にトイレに行くための計画など実情に沿った支援のポイントを事例を通しお話ししていただきました。
(2)15:30~16:10 サンソ友の会自主グループから活動報告
ア 「呼吸器機能障害の発病を契機として」
~患者の会設立から現在まで~
江戸川区呼吸器患者療友会 長谷川 稔氏
(ア)私の病気
(イ)在宅酸素療法のしくみ
(ウ)患者会設立の動機
(エ)療友会の活動内容
(オ)患者の声(気持)
(カ)予防医療について
自分の体験を通し、当事者として診断を受けたときのショック、2年間家に閉じこもり生活に入り様々な葛藤を乗り越えて、3年目で気持ちを切り替え前向きに生きる方向に変化していく過程を語られました。医師や家族にも言えない悩みをどこに相談すればいいか分からない。人には言えない悩みを患者同士で支えあい、情報を共有し、相談や経験など話し合える場所が必要であった。患者会を設立し1年が経過した。会の活動を通し、COPDは予防医療が大切であり、早期発見から健康診断・節目検診等の中でスパイロメトリー検査を取り入れることが重要であると痛感した。今後もQOLの向上、地域との連携、呼吸器疾患の普及・啓発活動を進めていきたいというお話がありました。
イ 「呼吸器機能障害者団体からの報告」
~患者会活動を通して見えてきたこと~
足立サンソ友の会 駒木 光雄氏
(ア) 足立サンソ友の会のこと
(イ)HOT通信発行
(ウ)活動を通して何がわかってきたか。
(エ)COPDの予防体制
(オ)COPD啓発の必要性
(カ)日常生活の質をあげるために
会の活動の合言葉は、「家から外にでよう」と掲げ、積極的な活動を展開していった。呼吸リハビリテーションの実践、医療・福祉・健康・禁煙などの普及啓発のための講座や教室を開催した。普及啓発のため隔月にHOT(在宅酸素療法)通信の発行、インターネット上にホームページを開設し情報の発信をしている。これらの活動を通し見えてきたこととして、多くの呼吸器障害潜伏患者が存在している。推定では530万人で、その多くがCOPDといわれている。行政はCOPDの早期発見・予防体制に早急に取り組んで欲しい。又、呼吸器機能検査・スパイロメトリーの積極的な実施と禁煙活動の啓発を訴えていました。
(3)呼吸リハビリテーションの実技「呼吸体操」
東京都心身障害者福祉センター 地域支援課 塚原 なおみ
当センターの理学療法士より呼吸リハビリテーションの解説、腹式呼吸・ストレッチなどの模範演技を行い、参加者全員で実際に体験しました。
4 結 果
(1)参加者数:230名
参考になった | 178名 |
参考にならなかった | 2名 |
どちらともいえない | 7名 |
記入なし | 2名 |
参考になった | 177名 |
参考にならなかった | 1名 |
どちらともいえない | 6名 |
記入なし | 5名 |
参考になった | 161名 |
参考にならなかった | 1名 |
どちらともいえない | 6名 |
記入なし | 21名 |
(2)参加者の感想(アンケートより抜粋)
・ 医師の講演は、わかりやすく地域包括支援センターとして、何が重要でどんなアプローチが重要か理解できた。
・ 在宅においても親身になって取り組んでいる医師・診療所があることを知りとても心強かった。
・ 在宅でも、もっとできることがありこれからもっと前向きに取り組みたい。
・ 活動報告では、当事者ならではの発言が心にしみた。予防・ニーズが具体的で参考になった。
・ 自主グループ参加の研修は初めてでとても参考になった。
・ 患者さんの心のさけびを聞くことができその声にこたえていこうと努力されている医師の姿に感心した。
・ 今度は「自分自身ができること」を考えて行動をおこしたい。
・ 呼吸リハビリ実技はわかりやすく、利用者に教えるのに役立てられる。