避難所で「炊き出しの知らせが聞こえず、食事がもらえなかった」
「マイクで温泉行きの呼びかけがあったが聞こえなかった。1週間も風呂に入れなかった」
という聴覚障害のある方がいました。
その他、日常のコミュニケーションのために使用していた機器(携帯電話メール、筆談機、補聴器等)が使用できなくなったことに困窮された経験が報告されています。
また、日頃からの災害に備えた自らの心構え(防災訓練参加、近隣者との意思疎通等)が有効であったとの声が聞かれました。
イラストの説明: 駅のホームで…
ホームに耳の不自由な方がいて、アナウンスを聞こうとしているが、よく聞き取れず困っているようす。
駅の放送で「先ほど発生した地震のため、現在全線で普通となっています。お急ぎの方は駅前よりバスをご利用ください」のアナウンスが流れています。
耳の不自由な人に向かって「電車が動かないそうですよ」と叫んでいる人がいますが、叫んでいる人の方に顔をむけていないために、気づいていません。
2 耳の不自由な方へ
(1)災害への備え
●住まいのある自治体で「災害時要援護者名簿登録制度」の確認をしておきましょう。
●緊急地震速報の受信がわかるように常に携帯電話などを身に付けておきましょう。
●耳の不自由な方向けに東京消防庁が開設している「緊急メール通報」に登録しておきましょう。
●地域の支援ネットワークに積極的に参加しましょう。
●地域防災訓練等に参加しましょう。
●補聴器や携帯電話等は、寝る前に枕元に置くなどして、とっさの時にすぐに持ち出せるようにしておきましょう。
●補聴器用電池の予備を準備しておきましょう。
●職場や学校等の災害訓練に参加し、発生時の対応を事前に話し合っておきましょう。
(2)発災直後の対応
●家屋などに閉じ込められて身動きできないときは、物を叩く、笛を鳴らすなどして周囲に知らせましょう。
●携帯電話(PHSを含む。)・スマートフォンから的確な情報を得られるようにしましょう。
●緊急地震速報の受信がわかるように常に携帯電話などを身に付けておきましょう。
★職場や外出先にいるときは
●職場では職場の方の指示に従いましょう。
●外出先ではまず安全を確保のうえ、周囲の人や携帯電話(インターネット)などから情報を得て行動を決めましょう。
●身体障害者手帳は、被災後の福祉サービスを受けるにあたって重要です。常に携帯するよう心がけましょう。
(3)避難所への移動で
●携帯電話(PHSを含む)・スマートフォンから的確な情報を得られるようにしましょう。
●役立つツール(※)などを活用して、周囲の人とどのようなコミュニケーションを使い避難行動で支援を求めるか決めておきましょう。
●「災害用伝言ダイヤル」、「災害用ブロードバンド伝言板」などを活用して、自身や家族の安否を確認しておきましょう。
★ 職場や外出先にいるときは
●無理な帰宅は行なわず、待機するかどうか周囲の情報に注意して行動しましょう。
●災害により交通が途絶えたときは、コンビニや民間企業で水道水やトイレを利用することもできます。
(4)避難所に入ってから
●お助けカードなどを使って自分から「聞こえない」ことやどのように情報を知らせてほしいかなどを避難所の責任者や周囲の方に伝えましょう。
●避難所で一番コミュニケーションしやすい人にサポートを依頼しておきましょう。
●避難所の生活の中で、自分や家族にできる役割を見出して、積極的に協力していきましょう。
*避難所や公衆電話にて災害時優先的に通信できる電話が設置されます。周囲の人の協力を得て利用することも可能です。
3 支援者の方に知ってほしいこと
(1)災害への備え
防災担当者は、防災訓練などで耳の不自由な方に不便なことがないか調べ、特に以下の点を確認してください。
●被害状況をどうやって知らせるか。
●近隣の人とのやりとりの方法、地域の自主防災組織や自治会からの指示の伝達
●「避難所」のスタッフのやりとりの方法
●「避難所」への連絡掲示板やFAXの設置
●「避難所」への手話通訳者、要約筆記者の設置
など
(2)発災直後の対応と避難所への移動で注意すべきこと
耳の不自由な方は音声の情報が入らないため、的確な判断や避難行動へ結びつきません。
筆談などで震災状況等に関する情報を伝えてください。
音声情報には必ず視覚情報(手話や文字による)をつけてください。
(3)避難所に入ってから
避難所の責任者は、耳の不自由な方に不便なことがないか調べ、特に以下の点を確認してください。
●避難所の人とのやりとりの方法、コミュニケーション手段の確認をしてください。
●耳の不自由な方のニーズ調整を行う定期的な相談時間を設けるなどの配慮してください。
●地域の一員として、避難所生活の中でも、耳の不自由な方が積極的に役割を見出せるように配慮してください。
4 聴覚障害のある方はこんなことに困ることがあります
イラスト1の説明: アナウンスが分かりにくいです
電車の中で二人の人が座っています。
「次は新宿」とアナウンスが流れています。
一人は補聴器をつけた耳の不自由な人で、電車内でアナウンスがよく聞き取れなくて困っている様子です。
イラスト2の説明:人との会話が成立しにくいです
補聴器をつけた耳の不自由な人に向かって「今晩、マサオが久しぶりに来るわよ」と話しかけている人がいます。
耳の不自由な人はよく聞き取れずに困っている様子。
イラスト3の説明:声をかけられても内容がつかみにくいのです
補聴器をつけた耳の不自由な人が真っ直ぐ前を向いて歩いています。
その横から「こんにちは」とあいさつをしている人がいます。
そのあいさつに耳の不自由な人は全く気づいていません。
もう一人の別の人が「どうしたのかしら?」と戸惑っている様子。
特に正面以外からだと声をかけられていることすらも分かりません。
5 災害時に役立つコミュニケーションツール
耳の不自由な方は見た目には分からないために、誤解されたり、不利益を蒙ったり、社会生活上で不安を抱えることが少なくありません。
次のバンダナや腕章を身につけた人には、相手が「聞こえない」ということを理解し、コミュニケーションの方法に配慮することが必要です。
「災害時バンダナ」
「耳が聞こえません」と「手話ができます」の2つの言葉が書かれています。
受傷時に、三角巾や止血帯としても活用できます。ピンクと紫を使用してどこにいても目立つ色使いをしています。
(問合せ先:東京都聴覚障害者連盟)
災害時バンタナの画像の説明:
三角形になるように半分に折ると、
一方には「耳が聞こえません」
もう一方には「手話ができます」
と書かれています。
「耳マーク腕章」
耳マークとは、聞こえない人々の存在と立場を社会一般に認知してもらい、コミュニケーションの配慮などの理解を求めていくシンボルとして全日本難聴者・中途失聴者団体連合会が普及を進めているマークです。
(腕章は、本人用と支援者用の二種類があります。)
(問合せ先:社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会)
耳マーク腕章の画像の説明:
黄色地に緑色の耳マーク
本人用「耳が不自由です。筆談してください」の文字。
支援者用「聞こえのサポーター」の文字。
電話お願い手帳
この手帳は耳や言葉が不自由な方が、外出先で電話連絡等を行う必要が生じた際に、用件や連絡先等を書いて近くの方にご協力をお願いするためのコミュニケーションツールです。
緊急事態なので助けてほしいという内容のページ(「緊急避難場所に案内してください」「警察に連絡したい」「救急車を呼びたい」など)や、要用件を電話で連絡したいという内容のページ(
「171番(災害用伝言ダイヤル)へ電話をかけてください」など)があり、それぞれにメモを書くことができます。
(問合せ先:NTT東日本、価格:無料、配布先:NTT東日本各支店、区市町村各自治体等)
電話お願い手帳の画像あり
50音指差し表(災害時コミュニケーション用)の記載あり
※災害時要援護者支援に関することについては、お住まいの自治体にお問合せください。
郵便番号 162-0823
新宿区神楽河岸1番1号 セントラルプラザ
電話 03-3235-2952
作成:東京都心身障害者福祉センター
平成25年3月
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