リファーって?

お子さんの誕生、おめでとうございます。
ここでは、新生児聴覚検査でリファーと言われたご家族向けに、
検査と聴覚に関する基礎的な知識を説明していきます。

疑問を感じて首を傾げるお母さんと子供

新生児聴覚検査の流れ

新生児聴覚検査とは、赤ちゃんの耳の「聞こえにくさ」を早く発見するために、生まれて間もなく行う「耳の聞こえ」の検査です。
出産した医療機関などで、退院までの間に検査を受けることが多くなっています。入院中に検査ができなかった場合は、できるだけ早いうちにお近くの耳鼻科で検査を受けましょう。

新生児聴覚検査を受ける赤ちゃん

リファーとは

新生児聴覚検査の結果は、「パス(pass)」か「リファー(refer)」のいずれかで示されます。 パスは「今回の検査で聞こえにくさはない」という意味で、リファーは「専門医によるより詳しい検査が必要(要再検査)」という意味です。

新生児聴覚検査の流れ(フローチャート)

新生児聴覚検査の流れ(フローチャート)

耳の聞こえにくい・聞こえないお子さんの療育は、遅くとも生後6か月頃までに開始することが望ましいとされています。早期に専門の施設などで適切な治療や支援を受けることで、将来の言葉の発達やコミュニケーション手段の獲得を助けることができます。(欧米では、生後1か月までに新生児聴覚検査、3か月までに精密検査を実施し、6か月までに療育・教育を開始する「1-3-6」ルールが提唱されています。)とはいえ、もし6か月を過ぎてしまった場合も、過度に不安になる必要はありませんので、なるべく早く精密検査を受けましょう。

保健所・保健センター一覧

お子さんの成長や発達全般について不安な方、知りたいことがある方は、お住まいの地域の保健所・保健センターでご相談を受け付けています。より詳しい検査が必要な場合の精密健康診査受診票を受け取る場所でもあります。

精密聴力検査機関一覧

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のホームページにおいて、全国の精密聴力検査機関の一覧が公開されています。

他の施設で生まれた児の新生児聴覚検査を実施している医療機関一覧

出産した医療機関などで、退院までの間に検査を受けることができなかった場合は、できるだけ早いうちにお近くの耳鼻科で検査を受けましょう。

デシベル(dB)って?

難聴の程度はデシベルという単位を使って判定されます。日常会話程度の音は40~60デシベル、自動車のクラクション音は100デシベル程度と考えてください。聴力検査では、0デシベルを正常聴力の人が聞こえる一番小さい音として、何デシベルから聞こえるかを調べます。

どんな検査をするの?

新生児聴覚検査では、主に自動ABR(自動聴性脳幹反応)またはOAE(耳音響放射)の2種類の機器による検査方法が一般的です。どちらの検査も痛みなどはなく、検査による赤ちゃんへの負担は全くありません。また、検査にかかる時間は数分〜数十分ほどです。

自動ABR(自動聴性脳幹反応)

赤ちゃんが寝ている間に35dB程のささやき声くらいの小さな音をイヤホンから聞かせ、音に対する反応を脳波で検出して検査機器が自動判定する方法です。比較的精度が高く、軽度の難聴や内耳より中枢にある異常を発見することが可能です。

OAE(耳音響放射)

音を聞かせる事により内耳から発生する微弱な反響音を測定する検査方法です。自動ABRに比べ安価であり、検査時間も短い検査です。しかし、耳垢や中耳に残った羊水などの雑音に影響を受けるためリファー(要再検査)となる頻度が比較的高くなります。また、内耳より中枢にある異常は検出できないため、稀に難聴を見落とすこともあります。東京都では新生児聴覚検査には自動ABRを使用するように推奨しています。

耳の構造・聞こえる仕組み

音の振動が耳から脳に伝わる仕組みについて解説します。

耳の構造を表現したイラスト

耳の構造と聞こえる仕組み

音(空気の振動)は、まず耳介で集められ外耳道を通って鼓膜に伝わります。鼓膜の裏側には耳小骨があり、鼓膜の振動は耳小骨でてこの原理により大きく増幅され、内耳へ伝えられます。内耳の蝸牛に音が振動として伝わると電気信号に変えられ、聴神経を通して脳幹→大脳の聴覚野に伝わり、音として認識されます。蝸牛に伝わるまでの障害により音が聞こえにくい場合を伝音難聴といい、蝸牛で音を電気信号にして聴覚野に伝えられない場合を感音難聴と言います。

耳の構造

外耳・中耳・内耳の役割

外耳の構造

外耳の役割

外耳は耳介と外耳道から構成されます。ラッパのような構造で外からの音を集めて、共鳴させて音のボリュームを増幅させます。

外耳の構造

中耳の構造

中耳の役割

中耳は、鼓膜から奥の骨に囲まれた鼓室と呼ばれる部分です。外耳道から伝わってきた音(空気の振動)を鼓膜でとらえて、耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)に伝える機能があります。てこの原理で音の振動を増幅させさらに奥の蝸牛に伝えます。

中耳の役割

内耳の構造

内耳の役割

内耳は、中耳のさらに奥にある骨のなかに埋もれた部分で、聴覚に関わる蝸牛と体の回転を感じる働きをする三半規管、体の傾きを感じる働きをする前庭から構成されます。蝸牛の内部はリンパ液で満たされており、アブミ骨から伝わった空気の振動(音)でリンパ液が揺れると、その揺れを蝸牛の内側の有毛細胞がとらえて電気信号に変えます。電気信号となった音は、聴神経を介して脳へ伝わります。

内耳の構造