伝え方と療育

耳の聞こえにくい・聞こえないお子さんとコミュニケーションをとるとき、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。特にことばが出る前の乳幼児期のコミュニケーションのポイントを紹介します。

笑顔の赤ちゃんを挟んで楽しそうな両親

乳幼児期のコミュニケーション

耳の聞こえにくい・聞こえないお子さんとの暮らしは、初めは戸惑うこともあるかもしれませんが、ここではコミュニケーションのポイントを紹介しますので、少しずつ日常生活に取り入れてみてください。

ミルクを与えるお母さんと赤ちゃん

はじめに 

乳幼児期は"ことば"によるコミュニケーション以前の段階です。子どもにとっては、生活の中の全てが新鮮な出来事の連続です。聞く・見るだけではなく触れたり、嗅いだり、味わったり五感の全てを通して、環境を理解していく段階なのです。例えば、お母さんの微笑みを見て、温もりやにおいを感じながら、安心して授乳できることは、将来の人との信頼関係の基盤となっていきます。

コミュニケーションの工夫

聞こえにくい・聞こえない子どもを育てるとき、耳ばかりに気を取られず、「目」を育ててあげましょう。目からの情報をうまく活用することでコミュニケーションがとりやすくなり、お子さんの成長発達を促すことができます。
例えば次のような方法が挙げられます。

顔の表情や動きで表現する

お子さんに「良い」や「悪い」を伝えるときは、顔の表情や動きを使いましょう。
頷いて優しい顔で「いいよ」「そうだよ」、首をふって少し怖い顔で「ちがうよ」「だめだよ」と伝えると、意味がより伝わりやすくなります。

お子さんが考えられるように工夫する

例えば、ミルクをあげるときは、はじめに空の哺乳瓶を見せてから、ミルクを作るところも見せてあげましょう。すると、哺乳瓶を見せるだけで「ミルクがもらえる」ということを理解できるようになります。このような工夫が、お子さんの想像力や思考力の発達を助けます。

次の行動に移る時は合図をする

抱っこをするときやオムツを変えるときは、お子さんの体をトントンと優しく叩いて気づかせ、視線を合わせて「抱っこをするよ」「オムツを変えるよ」と合図しましょう。「これに着替えるよ」「あっちに行くよ」などを伝える際は、着替える服を見せたり、行く方向を指差したりすることも有効です。「気づかせる→視線を合わせる→合図をする」の流れで、やり取りを広げていくことで、子どもは次に起こることを予想できるようになります。

お子さんの視界に気を配る

簡易ベッドや椅子の向きを変えて、家族が何をしているか見えるようにするなど、お子さんの視界を気にかけてあげましょう。ときどきは、お子さんの目の高さで家の中を見回し、お子さんに見えている世界を確認してみましょう。

早期療育・教育

乳幼児期は、家族など周囲の身近な人々からの愛情と適切なかかわりの中で、情緒を安定させ人への信頼を築く時期です。耳が聞こえにくい・聞こえないことは、ことばの発達や気持ちの安定、社会性の育ちにも影響を与えます。そのため、きこえの困難の早期発見と適切な療育・教育が大切です。

積み木で遊ぶお母さんと子供

療育とは

療育とは、きこえをはじめ発達に様々な困難のある子どものニーズに応じて、その発達を支援していくことです。主に就学前の乳幼児やその保護者を対象としています。
お子さんが聞こえにくい・聞こえないと診断されると、ご家族は、「どのように子育てをしていけばいいのか?」「コミュニケーションはどうとればいいのか?」「この子の将来はどうなるんだろうか?」などと不安になるかもしれません。そのようなとき、療育機関の専門職員が、ご家族とお子さんを適切に支援してくれます。安心して子育てをしていけるように、確定診断が出たら、なるべく早く療育を開始しましょう。
聴覚障害の場合、生後6か月頃までに療育を開始することが望ましいとされています。しかし、お子さんにあった療育機関やコミュニケーションの方法を見つけるまでには、時間がかかることが少なくありません。焦らずに考えていきましょう。