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平成13年4月11日

問い合わせ先
福祉局総務部企画計理課
電話 03−5320−4019

東京都社会福祉審議会・
第7回新しい福祉のあり方検討分科会(拡大分科会)の審議結果

1 開催日時

2 場 所

3 出席者

4 議 事

  1. 報告事項
  2. 資料説明
  3. 意見具申案について
  4. 意見交換
  5. その他

5 議事録

(午後2時04分開会)

○福祉局総務部副参事

 それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきます。本日は、お忙しい中、ご出席をいただきまして、ありがとうございます。私、当審議会の事務局を担当させていただいてます、福祉局総務部計画調整課長松浦と申します。4月1日の異動で計画調整課長になりました。
 開会に先立ちまして、事務局より委員の皆様のご出席につきましてご報告させていただきます。
 本日は、拡大分科会ということでございまして、委員総数は39名でございます。このうち、あらかじめ所用のためにご欠席のご報告をいただいております委員の方々は、今井委員、大道委員、大本委員、小口委員、小野田委員、寺田委員、中嶋委員、新村委員、廣田委員、村田委員、秋元委員、白石委員、杉野委員、滝口委員、水谷委員の計15名でございます。まだ、ご出席の予定でお見えになっていない委員の先生もいらっしゃいますけれども、本日出席予定の方々は24名でございまして、今現在20名の委員の先生方がいらっしゃいますので、定足数に達していることを報告させていただきます。
 なお、本日、寺田委員の代理としまして、町田市の健康福祉部長さんにご出席いただいております。
 資料でございますけれども、お手元に会議資料「意見具申(案)(4月11日現在)」を配付してございますので、ご確認いただきたいと思います。
 また、本日は傍聴の方がいらっしゃいますので、お知らせいたします。
 なお、当審議会の議事録でございますけれども、東京都のホームページに掲載され、インターネットを通じて公開されますので、申し添えさせていただきます。
 それでは、分科会長、よろしくお願いいたします。

○高橋分科会長

 大変お待たせをいたしました。ただいまから、第7回になりますが、新しい福祉のあり方検討分科会を開催をいたします。
 きょうは、拡大分科会ということで、審議会委員のすべての先生にご案内を差し上げ、仲村委員長、三浦副委員長にもお越しをいただきました。大変お忙しいところを、年度初めということでございますが、ありがとうございました。
 審議事項に入ります前に、前回、委員の変更をご案内をいたしましたが、日野市の福祉保健部長の田中正美委員が、きょういらっしゃっておりますので、ひとつ、ごあいさつをお願いいたします。

○田中臨時委員

 田中でございます。よろしく、どうぞお願い申し上げます。

○高橋分科会長

 それから、ご案内かと思いますが、4月1日付で、東京都が福祉にかかわる部局、その他もあるようでございますが、組織改正をいたしました。そして、さらに先ほども計画課長さんからもご紹介いただきましたけれども、人事異動がございまして、幹事と書記が変更になっております。このリストにつきましては、お手元のところにA4判の裏表で幹事、書記のリストがございますので、これをごらんをいただきますように、よろしくお願いをいたします。
 それでは、きょうの最も重要な議題でございますが、「意見具申(案)」が、ようやく案としてまとまりました。事務局から事前に資料をご送付申し上げて、お目通し等もいただいているかと思いますが、この「意見具申(案)」の検討を行わさせていただきます。
 まず、この「意見具申(案)」作成までの経過について、若干、ご報告をさせていただきます。
 11月の拡大分科会の際に、これのもとにあります案文をご提示を申し上げまして、論点、今後の検討事項について、皆様からご意見をいただきました。これを反映させながら、2回、企画起草委員会を検討いたしまして、素案を作成いたしました。その後、2月に、また分科会を開催をいたしまして、その素案を検討いただき、さまざまなご意見をちょうだいいたしまして、これらのご意見を反映させて、案文を作成させていただきました。そして、これがお手元の「利用者が必要とするサービスを選択できるようバックアップするしくみの構築に向けて」と題されました「東京都社会福祉審議会意見具申(案)」でございます。
 きょう、この案文をご提案をさせていただきまして、ご審議をお願いをする次第でございます。
 概要でございますけれども、企画起草委員長を務められ、この案文の作成に大変ご尽力をくださいました小林良二先生から、簡単にご説明をいただいた後、章ごとに分けてご意見をいただくという形で進めさせていただければと思います。
 それでは、小林先生、よろしくお願いいたします。

○小林企画起草委員長

 小林でございます。では、私のほうから概要の説明を簡単にさせていただきます。
 お手元の「意見具申(案)」をごらんいただきますと、「はじめに」、1ページですが、それから、第1章「「バックアップのしくみ」をめぐる状況」、ここのところで、今回の「意見具申」の課題の設定、あるいは課題の限定をしております。
 第2章、11ページからですが、それに基づきまして、課題の分析をしております。タイトルは、「「情報」が果たす重要な役割」というふうになっております。
 第3章は、その分析に基づきまして、利用者が必要とするサービスを選択できるようにバックアップするしくみを構築するにはどうしたらいいかということで、課題への対応というふうになっておりまして、全体としまして、課題の設定、課題の分析、それから課題の対応という3つのパートに分けて構成してあると言ってよろしいかと思います。
 第1章につきまして、簡単にご説明いたします。
 ご案内のとおり、措置制度から契約制度へサービスの仕組みが変わりました。それに伴いまして、サービスを利用する方々も対象者から利用者、これはもともと使われていた言葉ですけれども、本格的な利用者というふうに変化している。
 それから、多様な事業者が、このサービスの領域に参入されることになって、よい意味での競い合いが行われるようになってきている。そういう条件ができたということが指摘されております。
 しかし、そういうことが順調にいきますためには、サービスの利用が、事業者と利用者との契約になりますので、そういう契約がうまくいくようにバックアップするしくみが必要であろうということで、どういうことが課題になるかということが述べられております。
 大きく分けますと3点が全体の課題ですが、1つは、サービスの質・量の計画、これは質・量の充実、これはサービス計画、基盤整備計画と言ってもいいかと思いますが、それが必要でありますし、それから2番目が、利用者が効果的、効率的にサービスを利用できるようにコーディネートするしくみが必要である。コーディネーションという課題が必要でありますし、3番目は、それをバックアップするしくみというふうに、3つに分けることができますが、今回のこの「意見具申」では、このうちの情報を中心とするバックアップのしくみを検討する必要があるだろうというふうに課題を限定しております。
 そこで、第2章でありますが、これは11ページからになりますけれども、特に情報が大変重要な役割を果たすであろうということでありまして、そもそも情報とは、それではどういうような種類あるいは特性を持っているかということを分析いたしまして、現状では、ニーズと利用者が利用できる情報との間にギャップがあるだろうということで、4点、そのギャップを指摘しております。
 このギャップを、どのように今後埋めていくかということが課題になるというような書き方になっております。
 第3章では、その課題の分析に基づきまして、どのようなバックアップするしくみが必要かということが述べられております。
 基本的には、今、さまざまなところで取り組まれておりますサービス評価、苦情対応ということ、これをしっかり整備する必要があるだろうということが述べられておりますし、さらにそれに加えまして、事業者の方々が主に提供してくださる情報をあわせまして、主に3つの種類の情報を整備する必要があるだろう。さらに、それをネットワーク化して総合的に情報が提供されることが必要であるというような分析になっております。
 このような対応策と、今まで申し上げましたような情報の特性を総合化するということで、バックアップするしくみとして、第1に、情報の質を確保する、そういうバックアップのしくみが必要であろう。それからもう1点は、そういう情報が利用しやすいように加工するという機能が必要であろう。この2つの機能をバックアップというしくみに求めてはどうかというのが結論部分になっております。
 以上のようなしくみは、現状では自然発生的に生ずることは期待できないので、行政が何らかの形でその整備についてリードする必要があるだろう。また、行政と事業者、地域、行政との連携が必要であるというようなことが書かれております。
 以上が大体の概要であります。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。
 以上、全体の骨格とポイントにつきまして、小林企画起草委員長のほうからご説明をいただきましたが、より細かいご理解を、あらかじめお読みいただいているかと思いますが、審議会の最終案を作成するという関係から、事務局のほうから1章ごとに、先ほどの経過で申し上げましたように、さまざまなご意見をどういう形で反映させていただいたかも含めまして、説明をいただくことも含めまして、原文を読み上げていただくということにさせていただきます。
 とりあえず、「はじめに」、1章という、そして、2章、3章という順で、それぞれ章ごとに読み上げますので、個別のご質疑と総括的なものを適宜組み合わせながら審議を進めさせていただければと思います。
 それでは、事務局、よろしくお願いをいたします。

○福祉局総務部計画調整課長

 それでは、読み上げる前に、前回2月に開催されました分科会でのご意見の一部を簡単に紹介させていただいた上で、読み上げさせていただきます。
 前回の案で、それにつきまして、例えば、1つの意見としまして、現実にサービスそのものを、まさにその質が極めて落差が大きいと。行政によるサービス水準の向上に向けるような支援についての視点を書き込んでいただきたい。
 またほかには、契約制度のもとで、どういうサービスが事業者に要求されるか、サービスのあり方について定義づけてほしい。
 それと、また別の意見ですけれども、民間企業の参入によって営業的な競争とサービスの質ということも視野に入れた形で検討しなければならない。
 最後に、サービスを知るということをつけ加えてほしいと。目で見て、臨場感のある形で、いわゆるサービスがどういうものかわかる情報、知るための情報を一番最初につくれば、そこが基準になって、その後のことがスムーズにいく。体験学習ができるとか、知るという部分を落としてしまいますと、今回の提言は、情報を知っている人向けに書かれているというふうになってしまう。
 このような、一部でございますけれども、意見等が出まして、それらを踏まえまして起草委員会のほうでまとめたものでございます。
 それでは、1ページをお開きいただきたいと思います。
 なお、追加した部分の主なものにつきましても、随時、紹介させていただきたいと思います。
 それでは、1ページでございます。

はじめに−

○ 東京都社会福祉審議会は、平成11年10月4日に開催された第46回総会において、最近の福祉を取り巻く状況の急激な変化を踏まえ、今期は新しい時代にふさわしい東京の福祉をくみたてていくということを目的として課題を整理し、意見を具申することとした。
 審議に当たっては、専門的及び効率的に論議を進めるため、「新しい福祉のあり方検討分科会」を専門分科会として設けることとなった。
 同分科会は、「新しい福祉」という大きな範疇について、様々な課題について論議し、これを踏まえ、検討すべき課題の整理及びその内容の具体的な検討のため企画起草委員会を設置し、この委員会でまとめた素案を分科会でさらに審議した。これらの審議の経過は巻末資料に記したとおりである。
 この資料の一番最後を見ていただきますと、平成10年5月6日から始まりまして、本日4月11日、最終予定されております4月26日までの経過が記載されてございます。
 申しわけございません、また1ページにお戻りいただきたいと思います。

○ 平成12年4月の介護保険法の施行に続き、障害福祉の分野でも、平成15年度には福祉サービスの利用のしくみが「措置制度」から「契約制度」へと転換する。また、契約制度の下で、多様な事業者がサービス提供に参入するなど、福祉サービスを取りまく状況は大きく変化している。

○ このような状況の中で、従前のように「限られた人々」のみでなく、福祉サービスを必要とするすべての人々が、住んでいる地域で、質の高いサービスを選択できるように環境整備を図ることが、極めて重要かつ緊急の課題となっている。そのためには「サービスの量・質の充実」、「利用者が効果的・効率的に利用できるようサービスをコーディネートするしくみの充実」、「利用者が必要とするサービスを選択できるようバックアップするしくみ」が必要である。
 このうち、「サービスの量・質の充実」、「サービスをコーディネートするしくみの充実」については、都が各々計画等を策定し、区市町村や事業者とともに計画的整備を図っている。また、当審議会では「地域福祉の総合的・計画的推進」ということで既に基本的な考え方を示しており、今後は、さらに実務面等で、さらにそれぞれのしくみを一層深める段階に入っている。
 しかしながら、東京都においては、利用者によるサービス選択の基本となる情報の提供、苦情対応、サービス評価等のしくみは未だ整備途中であり、またそれぞれのしくみを作っていく上で土台となる基本的な考え方や、しくみ相互の関係について、体系的に十分に整理されていない。

○ このため、今回の意見具申では、「サービスの質・量」、「サービスをコーディネートするしくみ」という課題の重要性を十分認識しつつも、平成15年度に向けて早急に検討し、施策に反映することが必要な課題として「利用者のサービス選択をバックアップするしくみ」について緊急に提言を行うこととした。
 ここで、課題を整理させていただいたという記述になってございます。
 この提言においては、バックアップのしくみについて現状と課題を整理し、総合的な情報提供のしくみの必要性と、その基本的な方向を示した。この提言はまた、これまで本審議会が答申してきた「地域福祉の推進」について、改めて「情報」という論議を深めるのに役立つと考える。
 ここの2行はご意見によって追加した部分でございます。

○ 平成12年12月、東京都は「東京都福祉改革推進プラン」を策定した。これは東京都が目指す、新しい「開かれた福祉」の理念と展望を示すとともに、この「福祉改革」を推進するための戦略と具体的な取り組みの方向を明らかにしたものである。
 この中で示されている「開かれた福祉」の理念は、平成8年度の本審議会中間答申「東京都における今後の地域福祉の総合的・計画的推進について」での提言をさらに発展させたものである。
 また、今期提言するところの「利用者のサービス選択をバックアップするしくみ」は、多様化・高度化した利用者のニーズに応えられる「開かれた福祉」の実現のために不可欠であると考える。

○ 本審議会は、東京都が今後「東京都福祉改革推進プラン」に取り組んでいくに際しては、本意見具申を踏まえ、具体的なしくみを早期に構築されることを強く希望する。
 続きまして、第1章でございます。4ページをお開きいただきたいと思います。


第1章 「バックアップのしくみ」をめぐる状況−

1 新しい福祉への動き
(利用者像の転換−「対象者」から「利用者」へ)

○ 少子・高齢化の進展や核家族化の進行、家族の機能の変化、女性の社会進出の拡大などにより、福祉に対する都民のニーズは多様化・高度化し、かつ、普遍化してきている。

○ これまでの福祉においては、「措置制度」、すなわち、生活に困窮する人など「限られた人々」を対象として、行政措置によってサービスを提供するしくみが、戦後基本的な構造を変えずに維持されてきた。この措置制度のもとでは、行政及び行政から委託された社会福祉法人等が、国の定めた施設の最低基準や職員の配置基準などに基づき、国の定めた措置費に基づいて、サービスを提供してきた。措置費の使途は限定されており、創意工夫による経営を行う余地は少なかった。
 対象者が「限られた人々」であった時代においてはこのようなしくみで対応が可能であったし、全国的に一定水準の福祉を安定的に確保し、向上させていく上では大きな意義をもつものであった。
 しかし、措置制度は、必ずしもニーズに即応して供給が働くシステムになっていないため、高齢者の介護や保育など、福祉に対するニーズが質・量とともに増大・変化した今日、しくみに限界が生じていた。

− ここで、福祉に関する考え方の変化を記述してございます。

○ このような状況を踏まえ、それまでの措置の「対象者」からサービスの「利用者」へと捉え方を転換するとともに、それに対応した新たなしくみが必要となっていた。以上のことは、これまでにも本審議会の答申で既に指摘してきたところである。

○ なお、この場合の「利用者」は、サービスを利用する本人を指すことは当然であるが、家族等本人のサービス選択と密接に関わる者がいて、本人への介護や援助をどのようにしたらよいかを検討している場合などは、その人々も広い意味で「利用者」と考えるべきであろう。

− ということでございまして、ここで「利用者」という言葉の定義を述べさせていただいています。

○ 平成12年4月介護保険制度がスタートしたことを契機として、高齢者福祉の分野においては、利用者がサービス提供事業者と直接サービスを契約するしくみ(契約制度)が導入された。
 また、平成12年6月には、社会福祉法(改正前は社会福祉事業法)及び関連法が改正され、平成15年4月から障害福祉の分野にも契約制度が導入されることとなり、福祉サービスは本格的に「契約」による利用に移行することとなった。
 これらの契約制度におけるサービスの利用者は、自分のおかれている状況を踏まえて、より主体的に必要なサービスを選択し、利用していくことが基本となる。

− この下の3行につきましても、追加させていただいた部分でございます。

(多様な事業者の参入による競い合い)
○ 措置制度においては、行政及び行政から委託された社会福祉法人等がサービス提供を担っていた。契約制度においては、住んでいる地域で、利用者によるサービスの選択の幅を広げるとともに、効果的・効率的で質の高いサービスの提供を行うため、NPO法人や民間企業を含めた多様なサービス事業者の参入が期待されている。
 これにより、行政と社会福祉法人が中心で競争のなかったこれまでの福祉の世界から、多様な事業者が互いにサービスを競い合う状況に転換させることができる。すなわち、事業者による公正な競い合いが活発に行われることによって、福祉サービス全体としてのレベルアップが図られるのである。

○ 介護保険制度における在宅サービスの分野では、多様な民間事業者の参入が実現している。特に東京など大都市においては、この傾向が顕著に見られる。

− ここで、恐れ入りますけれども、30ページをお開きいただきたいと思います。
− ここに表1がございまして、「居宅介護支援事業者の指定状況について」ということでございまして、上が全国で、都が下になってございまして、営利法人につきましては、全国で23.0%、東京都においては45.0%。
− 欄を5つほどいきますと、NPO法人というのがございます。全国で0.9%、東京都では1.8%ということになってございます。
− 恐れ入ります。また、5ページにお戻りいただきたいと思います。今説明した内容でございますが、

  表1(巻末)は全国と東京における居宅介護支援事業者の指定状況を比較したものである。(平成12年7月1日現在)これをみると、全国では営利法人が23%なのに対して、東京都は45%とほぼ倍の割合を占めている。また、NPO法人が全国の0.9%に対して1.8%になっている。

○ 一方で、多様な事業者が参入すると、過度な価格競争によるサービスの質の低下など、かえって利用者の不利益になる事態も起こりうる。この様なことが起きないよう、事業者による公正な競争を促すとともに、利用者被害の予防や救済のためのしくみも、今後一層不可欠となるであろう。

− このところも、ご意見によって充実したところでございます。

(判断能力が不十分な場合の対応)
○ 契約制度が本格化すると、利用者は自らの責任において、多くの事業者の中から自己のニーズに応えられる事業者を選択し、サービスを利用することが基本となる。そのためにはサービス選択のために必要となる質の高い十分な量の情報へのアクセスが不可欠である。

○ また、痴呆性高齢者や知的障害者など、サービスや契約内容等を判断する能力が不十分な人々が、サービスを受ける際に不利益を被らないようにするための方策が必要である。
 この課題に対しては、平成12年4月から施行された新たな成年後見制度(民法)、福祉サービス利用援助事業(社会福祉法)など、判断能力が不十分な利用者を支援するしくみがスタートした。
 しかし、これらに関しては、しくみ相互の関係や、また利用者に身近な区市町村を含めた役割分担が十分整理され機能しているとは、必ずしもいえない段階にある。

○ 東京都は、平成12年7月、「東京都契約支援に関する検討会」を発足させ、しくみ相互の関係の整理や区市町村との関係、事業の円滑な運用などについての検討を行っている。詳細には同検討会の今後の検討結果が待たれるところであるが、判断能力が不十分な利用者が適切に福祉サービスを利用し、地域で自立して生活を送れるように、都としても条件整備を進めていく必要がある。

○ 以上のほか、日常生活については特に不自由なく暮らせるが、サービスを選択・利用する際に何らかの困難が伴う人々も数多く存在する。平成12年4月からの介護保険制度の施行に伴う契約制度の導入など、制度の大きな転換が相次ぐ中で、利用者は制度のしくみやサービスの内容等を十分に理解していない状況も見られるため、これらの人々に対しても十分配慮する必要がある。

− これにつきましても、ちょっと詳しく述べさせていただいてございます。

○ このように、福祉サービスを取り巻く環境が大きく変化する中で、従前の「措置制度」の下でのように「限られた人々」のみを福祉の対象とするのではなく、サービスを必要とするすべての人々が、住んでいる地域で、質の高いサービスを自ら選択し利用できるようバックアップするしくみを、平成15年度の契約制度の本格化に向けて早急に整備していくことが求められている。

2 利用者のサービス選択をバックアップするしくみ
(「バックアップのしくみ」の必要性)

○ 利用者が自分のニーズにあった福祉サービスを選択・利用できるようにするためには、サービスに関する十分な情報を入手することが前提となる。そのためには、事業者ごとのサービスの特徴や、運営状況等、「自分のニーズに合うか否かの判断に必要な情報」を利用者が入手できるしくみや、サービスを利用した後に生じる苦情やトラブルに的確に対応していくしくみなど、利用者の選択をバックアップするしくみが必要となる。
 また、多様な事業者が参入し、競い合いによる福祉サービス全体のレベルアップを図るためには、事業者間の公正な競争も確保されなければならない。そのためにも、サービスの分野や事業者の経営規模等にかかわらず、多様な事業者に関する情報提供が行われるしくみを整備する必要がある。

− ここの3行につきましても、ご意見により追加した部分でございます。

○ このしくみは、契約制度に移行するサービスだけでなく、措置制度が存続する分野においても早期に整備することによって、利用者のニーズをサービスに的確に反映し、サービスの質の向上をもたらすことができるようにしなければならない。

(サービス評価のしくみ)
○ サービス評価は、事業者が提供するサービスの内容や質、運営状況等を評価するしくみである。評価の手法として、自己評価と第三者評価があるが、信頼できる評価結果を得るためには、専門的知識を持つ中立的な第三者による評価が望ましい。

○ 契約制度の下で、利用者が、自分のニーズに最もふさわしい事業者やサービスを選択するためには、サービスの特徴や質を、事業者間で比較できることが重要である。その際、第三者による評価情報は、利用者にとって非常に役立つものとなろう。

○ 一方、事業者は、評価を受けることにより、自らのサービスの質や、事業上・経営上の課題を客観的に把握し、事業の改善につなげることができる。これによって、事業者が提供するサービスの質の向上が図られる可能性がある。また、良好な評価結果を得られれば、そのことが利用者へのPRのポイントともなるであろう。

○ このように、サービス評価のしくみにおいては、サービスを評価するだけでなく、評価結果を情報として広く利用者及び事業者に提供するしくみが重要である。

(苦情対応のしくみ)
○ 措置制度下においては、「与えられる福祉」による給付的な意識等が利用者にあることなどから、決定された福祉サービスに対する苦情が公にされにくい場合があった。
 また、たとえ利用者により苦情が出されたとしても、サービス提供側(自治体又は社会福祉法人等)にとって、措置費の支給への影響などよほどのことがない限り、苦情は直接サービスの改善に結びつきにくかった。
 しかし、契約制度においては、利用者の苦情に対する適切な対応は、当該利用者にとって、以後の契約(サービス内容等)及び事業者に対する信頼・安心につながる。また、そうした対応の状況が他の利用者に広く情報として提供されれば、他の利用者にとっても、選択の際の重要な判断材料となる。

○ また、事業者にとっては、利用者からの苦情を分析することで、利用者のニーズや重視するポイントを把握でき、その結果をサービスの見直しや改善につなげることができる。最終的には、提供するサービスに利用者の声を反映させることにより、満足度の高いサービスを提供することが可能となり、他の事業者との差異化を図ることが可能になる。

(キーワードとなる「情報」)
○ 先に述べたように、利用者が自らサービスを選択・利用できるためには、必要な情報に的確にアクセスできることが基本である。また、苦情やサービス評価の結果は、利用者にとって重要な情報となる。この意味で、利用者の「選択」をバックアップするしくみのキーワードは「情報」であると言える。
 個々のサービスの評価結果は、それが「情報」として公表されることにより、利用者がサービスを選択する上での判断材料となる。また、苦情対応についても、苦情の内容や対応状況のおおよその内容が傾向としてまとめられ、「情報」として公表されることで、利用者の判断の参考となる。

○ このように、「利用者のサービスの選択をバックアップするしくみ」は、情報提供、サービス評価、苦情対応等の各々が適切に機能するとともに、それぞれのしくみが「情報」をキーワードにネットワーク化され、総合的に提供されることにより、利用者をバックアップすることを目指すものである。

○ このしくみの対象となるサービスは、自治体によるものも、営利・非営利を含めた民間事業者によるものも含んだ、福祉サービス全般である。
 また、このしくみを利用するものとしては、サービスを利用する本人のほか、利用者のサービス選択と密接に関わる家族、様々なサービス提供事業者、利用者や家族のニーズと事業者との間でサービスをコーディネートする機能を担う人などが想定される。

○ このしくみを整備することにより、利用者自らによるサービス選択を容易にすることはもちろんであるが、さらに、地域において利用者のニーズに応じて効果的・効率的にサービスをコーディネートすることがより適切に行われることにより、本審議会がこれまで答申してきた「地域福祉の推進」に資することとなるであろう。


 以上が第1章でございます。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。
 それでは、「はじめに」と第1章につきまして、委員の皆様のご意見、ご質問等があれば、よろしくお願いをいたします。なお、挙手をいただきまして、私、指名させていただきますが、その際に、発言されるときに、皆様の手元に白いボタンがございます。これを押していただきますとマイクが作動をいたしますので、ひとつよろしくお願いいたします。
 では、何かございますでしょうか。どうぞ、ご自由に。総括的な議論は、後ほどまとめさせていただきますが、「はじめに」と第1章にかかわるものとして何かご発言ございますでしょうか。

○大橋委員

 既に分科会の席上でもるる述べてきましたから、そして、その経過、企画起草委員会ができて、こういうふうにまとまってきたので、現時点ではこれで、あまり異論はないのかなという思いがしますが、せっかくの機会ですから、少し発言をさせていただきます。
 1つは、せっかく新しい福祉という分科会をつくったのですが、そのことについてはほとんど触れずに、情報のところに絞り込んでしまっているということについては、分科会で相当意見を述べましたけれども、ほとんど触れられていない。これは、初めのところで大変気になるところでございます。
 しかも、29ページの、最後のほうになってしまいますけれども、「本審議会は、利用者のニーズに応えられる「新しい福祉」の早期実現に向けて、」と書いてあるんですけれども、最初が「新しい福祉」で、最後も「新しい福祉」で、中身は「情報」のことしか言っていない。一番最後の「「新しい福祉」の実現に向けて」、これは一体何のことを言わんとしているのかということが、せっかく社会福祉審議会をやっているのに見えてこない。これについて、どう考えたらいいのだろうかということが1つでございます。
 それから、2つ目の問題としては、6ページに絡むのですが、6ページのところで、下から2つ目の○のところで、痴呆性や知的障害者のことで云々とこう言われているのですが、東京都は、ある意味では全国に先駆けてすてっぷをやってきたわけですね。東京都の社会福祉協議会に委託をしてすてっぷを運営してきたわけですが、すてっぷについては全然触れていないわけですね。触れていないのは、触れていないなりの政治的ないろいろな問題があるのだとすれば、それはそれで構わないのですが、そうだとすると、大変気になるのは、例えば、3ページのところで「本意見具申を踏まえ、具体的なしくみを早期に構築されることを強く希望する。」、具体的なことは行政に全部任せてしまうのかと、ある程度行政で施策の方向ぐらいは指し示すのが審議会の役割ではないのかということについて、どう考えたらいいのか。審議会は、もちろん、考え方を示すということもありますけれども、その考え方に基づいて、施策がどういう方向に進んでいくかということを、やっぱり誘導するという意味では、すてっぷなどについて全く触れないで、具体的なものについては任せるというので、果たしていいのだろうかというのが2つ目の問題です。
 それから、3つ目の問題は、情報の提供というしくみ、システムに非常に注目していますが、社会福祉の分野を考えてみると、アウトリーチというのは大変重要になってくるのではないか。問題を発見し、その問題を発見する中で、いろいろなサービスに気づいてもらい、必要なサービスを提供していくという、そこの問題に気づき発見するという、そのしくみを情報と絡ませないでいいのだろうか。ある意味では、インターネットなどを使って情報を検索できる人というのは、ほっぽっといたってみんなやるわけでして、社会福祉の現場の人たちは、そういうノウハウもわからないままに苦しんでいる。そういう意味では、民生委員さんなどが、やっぱりどういう問題発見と問題情報の上で役割を果たすのかなどということについての位置づけがないし、それから、状況によっては、7ページも10ページも絡むのですが、例えば、7ページの上から2つ目の○のことで言うならば、住んでいる地域でサービスを利用できるようにバックアップするとか、あるいは10ページで言っているような、下から2つ目の○の「利用者のサービス選択と密接に関わる家族」とか、これらの部分の間の問題として、総合相談窓口みたいなことの機能が全然触れられていないのですね。口コミとか何かは入ってくるけれども。問題は、アウトリーチし、発見し、必要な情報を提供していくというシステムが大事なのであって、そのことがないまま、何か情報一般で論議されている嫌いがありはしないかと思っています。
 そういう意味で、このまとめられた限りにおいては、べつに異論はなくて、そうですねと、こうなりますが、社会福祉の現場だとか、新しい福祉ということを考えてみたら、これでは、正直なところずれてはいないかということがあります。ただ、今の時点では、とても軌道修正できなければ、それはそれで結構ですが、少なくとも審議会で、私は発言をさせていただいたということだけは議事録にとどめていただきたい、そういうことです。

○高橋分科会長

 一部、2章以降にかかわるご議論がございますので、これはそこにかかわるものは後ほどということにいたしまして、これはむしろ、委員長、副委員長のほうのご判断かと思いますが、新しい福祉の分科会で、新しい福祉のあり方を先に議論する、内容を述べよと、そういうご注文でございますけれども、ここはむしろ、あえてそういうスタンスをとらなかったというふうに。というのは、委員会が新しい福祉を率先的に言うような形で、新しい福祉の概念が、私は、成熟しているのかというふうに、むしろ、逆に大橋先生にお答えをいただきたいと思うんです。むしろ、審議会のスタンスでいえば、これは、おそらく継続的にこれからさまざまな形で議論されていかなければならない内容であって、委員会が率先して、ここである見取り図を示すのは、私の立場としては、やや時期尚早だと思っております。
 それから、論点の選択の中で、情報ということに絞ったのは、これは、事務局とかなりいろいろな議論をさせていただきまして、施策上も、さまざまな形で個別の展開がございますので、それを総合的に整理するという、そういう時期が、どうしてもやっていただきたいという、かなり強い要望もございましたし、我々としては、15年の社会福祉法の利用の制度化の中でも障害福祉を中心に起こりますし、介護保険で今起こっておりますから、そこら辺のことで審議会として1つの指針を出すという、そういう視点では大変重要かと思って、このような形でまとめさせていただきました。
 大橋委員の問題意識については、受けとめていると認識をしておりますが、ここでそれを明示的に議論する段階にあるのかどうかということで、あえて1つの判断をさせていただいたということでございます。そういう意味で、新しい福祉のあり方の分科会を、この審議会の運営でどういうふうに位置づけていくか、将来にわたって、これについては後ほど、仲村委員長、三浦副委員長のほうからコメントをちょうだいできればと思いますが、小林さんのほうから今の大橋委員の発言について、何かコメントございますでしょうか。

○小林企画起草委員長

 第1点ですけれども、「新しい」というのは2つ意味がありまして、全体としての新しさという意味と、それから、情報という課題が新しいという、2つあると思うんですね。
 今、大橋委員が言われたのは、多分、最初のほうのことをおっしゃっていたのかと思いますけれども、これについては全体として、どういうふうな新しさを考えなくちゃいけないかという議論の、確かに課題だろうと認識しております。
 ただ、最初に申しましたように、ここは課題を限定するというのが緊急の事態になっているので、そちらに絞ってきたということかと思います。
 2番目の問題点は、これは具体的な施策面まで、ここに含めていいかどうかという問題ですが、これはちょっと判断を保留させていただきます。
 3番目は、これは前の分科会でも申し上げたのですが、情報に絞るということで、逆に見えてくる部分もあると。先ほどの、総合的な情報提供体制の問題については、今回、相談窓口も含めまして触れてはおりませんが、これはまた別の課題ではないかと思います。とにかく、それをつくることによって、それでは、そういう情報の概念を構築することが、総合相談窓口に対して、どういうインパクトを与えるのか、コーディネーションに対して、どういうインパクトを与えるのかという、そういうやりとりが必要になってくるだろうと、私は考えております。
 情報だけで問題とするわけではもちろんないので、無視しているわけではないのですが、ここを概念的に組み立てることによって、逆にそちらの面も、ある面で見えてくるのではないかというような考え方を、私は持っております。

○大橋委員

 どういう整理の仕方をするかというのは、当然、企画起草をされた方々、ご苦労されているのですけれども、それはそれで任せるしかないのですけれども、今、小林委員が言われたことだとしても、そういう部分の重要性があるとかということは少し触れながら、しかし、今回は情報の提供とか利用のしくみのところへ重点を置いたとか、ただ、これによってすべてが解決するものではないとかいうふうな書きぶりなんかは少ししておかないと、これがひとり歩きしたら、非常に一般的になってしまって、いわゆる情報一般的な課題ですよ。福祉に引きつけてみたらどうなんだということは、さっきみたいなところがあるわけだから、そこをもう少し丁寧にかかわらせて書くということは、私はあり得るのではないかということですね。
 それから、これを読んで率直な、総括論議になってしまうので、また後ほどしますが、正直なところ、審議会として、何を提言するのだろうか。情報の重要性、情報のシステムということを喚起するために、これをまとめたのか、それを具体的にどういうしくみとして、東京都の区市町村の分権化の中で、東京都がどういう牽引者としてやっていくのかということの具体的イメージがあまりわかないんですよね、正直なところ。考え方はよくわかるけれども。だから、それで審議会がいいというなら、それでいいけれども、果たしてそんな時期なのだろうか。そういうことで、先ほど述べたと。

○高橋分科会長

 すみません、2章以降の議論にまた。

○大橋委員

 いや、総括なことですから、それは後でまた。

○高橋分科会長

 検討をいただかなければいけない、そういうこともございますので、今の議論は総括的な議論に、少し譲らせていただければと思いますので。
 いかがでしょうか、「はじめに」、第1章含めて。
 それでは、第2章を引き続き、お願いをいたします。

○福祉局総務部計画調整課長

 それでは、11ページをお開きいただきたいと思います。


第2章 「情報」が果たす重要な役割

1 福祉サービスにおける「情報」とその役割

○ 第1章でみたように、「バックアップのしくみ」を構築する際のキーワードとなるのは「情報」であることから、ここでは、福祉サービスにおける「情報」について整理することとする。

(情報の種類)
○ 福祉サービスにおける情報は、
(1)「サービス関連情報」
(2)「苦情関連情報」
(3)「サービス評価関連情報」
 に大きく分けられる。

○ (1)「サービス関連情報」は、利用者が事業者やサービスを選択する際に判断の参考となるものである。例えば、

  1. サービス提供事業者(法人等)の組織運営や経営に関する情報、
  2. サービス運営に関する情報、
  3. サービス提供者に関する情報、
  4. サービス関連の建物や設備に関する情報(通所・入所施設サービスの場合)

 などである。
 これらの中には、法律等の規定により、公表しなければならないものがある。

− 表2に「サービス関連情報の例」としてございます。

 1. が「組織運営、経営に関する情報」、情報の例としまして、理事会、評議員会等(定款等記載事項)、財務諸表、サービスコスト等。
 同じように、12ページになりますが、2. 「サービス運営に関する情報」、契約書・重要事項説明、事業者独自の付帯サービス、サービス提供の基本的コンセプト等、その他。
 3. では「サービス提供者に関する情報」、職員体制(配置、資格の有無等)、4. で「建物や設備に関する情報」、建物構造、面積、居室の状況等。

○ 1. のうち、経営情報に関しては、これまでの措置制度のもとではあまり必要とはされなかった。しかし、「利用者による選択」という視点のもとでは、経営の失敗により利用者が被害を被る可能性がないかといった判断が必要なことから、経営に関する情報も重要となる。社会福祉法の規定で公表することとされた財務諸表などはこれに含まれる。

○ 2. サービス運営に関する情報としては、利用料金などのように契約書や重要事項に記載されるべき基本的事項のほかに、サービスの質の向上という観点からは、事業者独自の創意工夫も、今後重要な運営情報の一部となることが考えられる。
 利用者の立場に立ったサービス提供のための基本方針や、付帯的なサービス情報などがこれに含まれる。

○ (2)「苦情関連情報」、(3)「サービス評価関連情報」については、先にそれぞれのしくみについて述べたように、苦情やそれへの対応状況のおおよその内容が傾向としてまとめられ情報として公表されたもの、あるいは、サービス評価機関が自らの評価項目、手法により、第三者として事業者について評価した結果を情報とするものである。福祉サービスにそれほど詳しくない多くの利用者にとって、これらが選択の際の大きなポイントとなることが予想される。

○ なお、このほかにも、福祉制度そのものに関する情報や、行政や民間事業者の設置する相談窓口の情報、各種統計や実態調査等利用者のニーズに関する情報、住民参加・ボランティア活動等に関する情報も、広く福祉サービスに関する情報として存在する。

(利用者における情報の役割)
○ 以上のような情報が、どのような効果をもたらすかをまず、「利用者の選択」という観点から整理する。

− 恐れ入りますが、32ページをお開きいただきたいと思います。
− 32ページの下のほうで、図1「サービス利用者にとっての情報」というイメージでございます。
− それでは、恐れ入ります、また13ページに戻っていただきたいと思います。

○ 利用者にとって「情報の価値」は、いうまでもなく「自分のニーズに対応できるサービスの選択」に役立つかどうかによる。
 利用者は、様々な情報から必要な情報を選択する。それは、事業者の提供するサービスが、そのニーズにマッチするかどうか、サービスの価格が適当かどうか、どの事業者を選ぶことが安心につながるかなどについての判断の参考となるものである。

○ 利用者が情報を入手する経路としては、例えば「口コミ・噂」などによる情報、行政の情報誌(区市町村や東京都の広報誌等)、事業者のパンフレット、新聞・雑誌やインターネットにより提供される情報、各種相談機関、介護支援専門員などサービスをコーディネートする機能を担う人のアドバイスなどが考えられる。さらに、施設見学やサービスの体験利用などにより入手する情報もある。これらを通して得た情報により、利用者は自らのニーズに最適のサービスを選択し利用することになる。
 反面、情報に不備があれば、利用者は限られた範囲の情報、あるいは、実態と異なる情報に基づいてサービスを選ばなければならないということになる。

(事業者における情報の役割)
○ 情報は事業者にとっても有効な資源である。

− また、恐れ入りますけれども、32ページをお開きいただきたいと思います。
− 上のほうに図2「サービス提供事業者にとっての情報」ということのイメージ図がございます。
− それでは、恐れ入りますけれども、また13ページ、お戻りいただきまして、一番最後の行でございます。

 福祉サービスが「利用者の選択」に委ねられるようになると、事業者は自らを選択してもらう必要があるため、「いかに自らがよりよいサービスを提供しているか」について、他の事業者と差異化する情報を発信(PR)するであろう。
 この場合事業者は、利用者との接触を通して、提供するサービスの利用についての情報(顧客の意向等)を集めることができる。サービス内容については、CS(顧客満足度)や苦情等の情報を収集し、これらを分析・活用することで、自主的なサービス改善が図られ、経営判断、組織改革、体質強化につなげることができる。

○ このように「情報」は、適切に発信され、また効果的に活用されることにより、事業者の経営にとっても不可欠なものとなる。

2 「情報」の特性

○ 以上のように、「情報」は、利用者、事業者双方にとって重要な役割を果たすものであるが、今後「情報」をキーワードにバックアップのしくみを検討していく上で、「情報」そのものに内在する性質と福祉サービスの分野における「情報」の特質を考慮しておくことが有効である。

○ 一般に「情報」は、生き物のように変化する性質を有している。例えば、一つの情報が多くの人や媒体を経て伝えられるうちに、最初とは異なった情報に変化することがある。
 また、情報は互いに干渉しあうことによっても変化する。例えば、ある情報に、別の情報が付加して伝えられると、一瞬にして別の情報に変化することがある。また、ある情報が、別の伝達経路から伝えられただけで、あたかもそれは信憑性ある情報として信じられたりする場合がある。
 さらに、情報の発信者、受信者の社会的な位置づけによっても、情報は変化して伝えられる。すなわち、どんなに情報を提供したとしても、例えば、受け手が発信者自体を信頼していなければ、その情報はバイアスがかかったものとして信用されない。つまり、情報の内容によるのではなく、発信者の社会的ポジションによって信憑性が判断され、伝えられることがある。

○ このような「情報」の一般的な特性を踏まえた上で、福祉サービス分野の情報について考えてみる。
 まず、サービスを提供する事業者として、例えば、介護保険制度内における指定サービス事業者である民間事業者がいるほか、制度外の多様なサービスを提供している民間事業者や、ボランティア団体等も存在し、それぞれが関連する情報を提供している。
 これらの事業者によるきめ細かな情報は、利用者のサービス選択にとって不可欠である。しかし、多様な事業者が参入し、競い合いの状態の中では、発信される情報が常に妥当な内容になるとは限らない。利用者を引きつけるため、誇大広告、不当表示を行う場合も考えられる。こうした不適切な情報から利用者を保護する必要があることは、いうまでもない。

− この部分も、委員のご意見によって追加した部分でございます。

○ 他方で、利用者の状況は様々であり、自ら情報を収集してサービスを選択できる利用者もいれば、日常生活は支障ないが、制度やサービス内容等に関する理解が十分ではなく、契約制度の下でサービスを選択するには何らかの困難が伴う人々も多数存在する。

○ これらの利用者が、どのようにして情報を入手するかを考えてみると、自ら事業者やサービスに関する情報を収集する利用者の場合でも、事業者が発信する情報だけを利用するとは限らない。
 利用者がサービスを検討する際まず考慮するのは、それぞれの利用者が住んでいる地域で、サービスを既に利用した人の体験・評判など、いわゆる「口コミ」も含めた利用者自身が発信する情報であろう。
 サービスを利用した者が発信する情報は、身近な地域の情報として重要なものではある。しかし、こうした情報には、個人的なバイアスが混在する危険性があるため、より客観的な情報に照らして利用することが望ましい。

− この部分も、委員のご意見によって追加した部分でございます。

○ より重要な問題は、インターネットから発信される情報である。現代では、個人でもホームページを容易にもてるようになったが、これによって質の高いものから劣悪なものも含め、様々な情報が大量に発信されるようになった。インターネット情報は、利用者にとって、必要なときに必要な情報が得られるため、今後ますます、量的あるいは質的にかなり大きなウエイトを占めていくであろう。
 しかし、利用者が発信する情報と同様、そこには不適切で悪意のある情報が発信され、それらが瞬時に、しかも広汎に伝達されてしまう危険性がある。

○ 利用者のうち、福祉サービスを契約制度の下で選択・利用する上で何らかの困難を伴う人々にとっては、行政の相談サービスや、介護支援専門員などサービスをコーディネートする機能を担う人、各種相談やサービス評価、苦情対応を行っている民間団体やNPOなどが重要な役割を果たすことはいうまでもない。

− この部分も、相談機能が重要というご意見とか、NPOが情報をコーディネートする機能を持つ場合もある、持つ機能もあるべきだというご意見に基づいて追加した部分でございます。

○ なお、以上のような情報のほか、公共団体又は公的関与が強い主体として、1. 区市町村、2. 東京都、3. 消費者センター、4. 介護保険制度上、苦情対応等の機能を担う東京都国民健康保険団体連合会(以下、国保連合会という)などが情報を提供している。

3 利用者のニーズと「情報」とのギャップ

 利用者がサービスを選択する際に必要となる情報としては、

  1. 福祉サービスの制度内容に関する情報、
  2. サービスやサービス提供事業者についての情報 がある。

 しかし、現状では、利用者が必要とする情報と事業者が提供する情報には大きなギャップが生じている。

− 表3、巻末でございます。すみません、31ページをお開きいただきたいと思います。
− ここは、情報の種類によって存在するギャップの形態と、その理由について整理したものでございます。
− 「区分」「ギャップ(例)」「ギャップが生じる理由」としまして、一番上だけ紹介させていただきますと、「情報の有無」で、「ギャップ」は、情報そのものがない。これは、サービス評価関連情報、第三者サービス評価。「ギャップが生じる理由」としましては、しくみの未整備。このように「開示の有無」−「提供の有無」「利用の困難さ」という形でまとめてございます。
− すみません、17ページにお戻りいただきたいと思います。

○ 第一のギャップは、「知りたい情報そのものがない」ことである。この例としては、以下のような「サービス評価関連情報」が挙げられる。
 東京都では、これまで特別養護老人ホームや、障害者(児)入所施設等について、自己評価や施設オンブズマンによるサービス評価を実施しており、一定の成果を得ている。
 しかし、市場への多様な事業者の参入を考えると、利用者による比較を可能とするためには、第三者による評価を効果的に行い、その結果を「サービス評価関連情報」として利用できるようになることが重要である。しかしながら、評価のしくみがまだ十分整備されていないために、情報そのものがほとんど得られないのが現状である。

○ 第二のギャップは、「情報は存在するが、開示されない」ことである。この例としては、以下のような「苦情関連情報」が挙げられる。
 「苦情関連情報」は、苦情の種類や内容、対応の傾向が「情報」として公表されることで、利用者の判断の参考となる。しかし、サービス利用者が苦情を持っていても、それを公にしにくかったり、事業者が苦情を受けたとしても、プライバシーの保護や企業秘密等により、その詳細については開示しない場合がある。

○ 第三のギャップは、「開示はされているが、積極的には提供されない」ことである。例として、以下のような一部の「サービス関連情報」が挙げられる。
 「サービス関連情報」の中には、施設の空き情報や併設サービス等、利用者が個別具体的に問い合わせるなどすれば、情報の提供が受けられるものの、積極的には情報提供がなされていない場合も一部見受けられる。
 現在東京都が実施している「東京都介護サービス情報システム」は、利用者が「いつでも、どこでも、簡便かつ迅速に」情報を入手できるよう、都、区市町村、サービス提供事業者等との連携を図ったシステムで、インターネットを用いて情報を提供している。このなかには、サービス提供事業者が任意に提供する情報として、上に述べたような項目をシステム上に設け、事業者が自ら入力し、情報提供できるよう配慮している。それにもかかわらず、実際には全く提供していない事業者も未だ見受けられる。

○ 第四のギャップは、「情報提供はなされているが、利用者が利用しにくい」ことである。
 例えば、利用者がサービス提供事業者に関する情報を求めた場合、一般的に法人名、事業者名、所在地、代表者名、営業時間、サービス内容職員数等の基本的な情報が掲載された「一覧表」は得られても、利用者がサービスや事業者を選択するための判断基準が示されていない。
 このほか、利用者が事業者の情報を個々に収集しなければならないとか、情報が網羅的、専門的なため、制度やサービスの内容を十分に理解していない利用者がみても参考とならない場合がある。

○ 新しい福祉である「利用者が自ら必要とするサービスを選択する仕組み」を機能させ、サービスのより一層の質の向上、効率化を図り、ひいては利用者の利益に資するためには、このようなギャップを克服していかなければならない。


− 以上が、第2章でございます。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。
 第2章に関する質問等をお受けして、後ほど総括的な議論の時間をとりたいと思いますので、ここでご質問がなければ、すぐ、引き続き3章、「終わりに」をお読みいただくと考えておりますが、いかがでございましょうか。どうぞ。

○大橋委員

 1つは、15ページのところで、誇大広告のことを述べてくれたんですが、この「こうした不適切な情報から利用者を保護する必要があることは、いうまでもない」のレベルでいいんだろうか。つまり、社会福祉法が誇大広告の禁止を述べているとすれば、東京都の社会福祉審議会のレベルでは、もう少し、例えばどういうチェックの仕方があるのか、罰則があるのか、その辺まで書くのか。ただ社会福祉法に誇大広告の禁止がありましたというんだったら、それを一言書けばいいので、何かもう少し具体化はできない、それも含めても、具体的な施策はお任せするというふうになっちゃうのか。そこのところが、一つわからないということと、それから、情報の改ざんのところについても16ページで触れていますが、それについて、何かどういう手だてをするのかということについては、ただ、その危険性があるというのを指摘すればいいということで済むのか、それは2番目です。
 それから、3番目は、その16ページの今のところの下ですが、サービスをコーディネートする機能を担う人の倫理問題等は考えなくていいのか。現に、介護支援専門員の方々のケアマネジメントが、かなり情報提供の上で問題になってきているわけで、そういう倫理問題などに触れなくていいのかということですね。
 それから、13ページの一番上で、「行政や民間事業者の設置する相談窓口の情報」、ここでは相談窓口の情報を言っているんですね。それで、やっぱりその情報をどういうふうに加工し、わかりやすく提供するかなんていうことでは、総合相談窓口のことがあって、それがある意味では福祉事務所にかわる新しい福祉の一つのイメージかもしれないということを考えると、どうも、やっぱり何か情報一般になっていて、そこに飛び込めば、いろいろ情報を加工して提供してくれている、あるいは、加工しないまでも、生の情報でもくれる、そういう相談窓口の機能のほうがよっぽど大事なんじゃないかと思うんだけれども、言葉として、相談窓口の情報と触れていながら、事実上、全体でそれが抜けちゃうというのは、どうもやっぱり変なんじゃないか、情報のとらえ方が。
 福祉の情報というのは、そんな一般的な情報とはちょっと違うんじゃないかと思うものですから、そこのところをどう考えられるのかということだけ述べておきます。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。
 どうしましょうかね。

○大橋委員

 いいです、総括のところで。

○高橋分科会長

 総括のところで、後ほど、ご指摘をいただいたことについては、きっと事務局とご相談して、取り扱いについては検討させていただきたいと思いますが、そのほかに何かご質問ございましょうか。
 それでは、引き続き、第3章、それから、「おわりに」を読み上げてください。

○松浦計画調整課長

 それでは、19ページに入らせていただきます。


第3章 利用者が必要とするサービスを選択できるようバックアップするしくみの構築に向けて(提言)。

1 土台となるしくみの整備

○ 21世紀を迎えて、福祉サービスの利用のシステムは大きく転換しつつある。
介護保険の施行を契機に開始された「必要とするサービスを選択する」というシステムを円滑に機能させるためには、利用者によるサービス選択をバックアップするしくみが必要となる。
 このしくみの構築をする上でキーワードとなるのは「情報」であり、第2章で指摘したような情報のギャップを克服していくことが、「バックアップのしくみ」の構築の基礎となる。
 そのためには、まず前提として、先に見た第一、第二のギャップに対して、サービス評価、苦情対応等土台となるしくみがそれぞれ適切に機能するように整備する必要がある。

 (第一のギャップへの対応−サービス評価のしくみの整備)
○ まず、「情報そのものがない」ことに関する大きな課題である「サービス評価関連情報」については、適切な情報提供が行われる評価のしくみを整備する必要がある。

○ 第三者による評価を効果的に行うためには、評価のための十分なノウハウを備えた評価機関が多数存在し、さまざまなサービス事業者の評価を的確に実施できるしくみを整備していくことが必要である。

○ 将来的には、民間のシンクタンク、利用者団体、事業者団体、NPO等多様な団体が評価機関として活躍することが期待される。それらの評価機関が、利用者・事業者の双方から信頼を得ていくことがしくみの構築の要となる。
 20ページに入らせていただきます。

○ 現在、例えば、レストランを第三者が評価したガイド等は、雑誌、インターネットを含め、様々な主体により提供されている。ここでは、情報そのものの価値を上げるため、民間ベースで情報の提供者が常に内容を更新することによって、また、多様な提供者同士、そのサービスの内容、アクセスしやすさ等の企画を互いに競い合うことによって、情報自体がレベルアップする。利用者が費用を払ってでもその情報を利用する例もある。

○ 福祉サービスの分野においても、このような民間ベースの情報提供の状況が生まれてくることが望ましい。しかし、これまで主に行政による「措置」によってサービス提供がなされていた福祉分野においては、行政による一定の関与がないと、十分な評価情報の提供を行うことのできる評価システムを立ち上げることは難しいと思われる。

○ また、将来的に、多様な評価機関が現れ、それぞれの機関による多様な評価結果を情報として得られたとしても、利用者やサービスをコーディネートする機能を担う人はそれらを比較することができないということも起こり得る。

○ 現在東京都は、サービス評価システムについて、評価手法や評価項目のあり方等を検討しており、具体的な検討はその結果に譲るが、福祉サービスはレストランや一般の商品と異なり、かなり個別性が求められるということを念頭に置きつつ、ある程度基本となりえる「標準仕様」のようなものを示すことで、利用者が容易に比較できるであろう。

 (第二のギャップへの対応−苦情対応のしくみの整備)
○ 第二に、「情報は存在するが、開示されない」ことの課題として挙げられた「苦情関連情報」については、必要な情報が利用者に適切に開示される苦情対応のしくみを整備する必要がある。
苦情やトラブルに対して速やかに対応するためには、利用者に身近な地域で、その地域の実情にあったしくみを構築するとともに、苦情関連情報が適切に公表されることが重要である。

○ 苦情対応のしくみについては、介護保険法の実施に伴い、高齢者介護の分野における対応が先行している。
 都では、事業者による苦情対応を基本とし、第一義的には、保険者であり住民に一番身近な区市町村が苦情・相談の窓口を設け対応することとしている。さらに、対応が困難な苦情については、専門的な相談機関としての国保連合会や事業者の指定・指導検査等の役割をもつ東京都が連携して相談・苦情対応のネットワークを推進している。

○ 国保連合会では、苦情処理機関に寄せられた苦情等の情報を収集・分析した「東京都における介護サービスの苦情相談白書」を発表し、情報の共有化を図ることによって、利用者、サービス提供事業者や行政が介護保険制度を実施する上の問題点を把握することに役立てている。
 この白書から、制度発足後半年間(平成12年4月〜9月)における東京の状況をみると、約5400件の苦情のうち、9割が利用者にとって一番身近な区市町村に寄せられている。(「東京都における介護サービスの苦情相談白書」平成12年12月東京都国民健康保険団体連合会)

○ 一方、改正された社会福祉法においては、事業者に対して苦情対応を義務づけるとともに、対応が困難な事例等については都道府県社会福祉協議会に「運営適正化委員会」を設け、対応することとしている。

○ 先に述べたように、「利用者に身近な地域で、しかもその地域の実情にあったしくみを構築する」という観点からすると、東京のような大都市においては、その特性を考慮して、介護保険法のみではなく、広く社会福祉法における苦情対応についても住民に身近な地域である区市町村が中心となって、寄せられる苦情に即時に対応することが重要である。

− 22ページに入ります。

 また、先行している介護保険制度において区市町村が相談・苦情対応の窓口を設けていることに鑑み、将来的には利用者の利便性の点からも、障害福祉分野等のサービスの相談・苦情対応窓口についても、介護保険分野と同一の整備をすべきである。
 なお、具体的なしくみを構築する際は、身近な地域で苦情が速やかに対応できることが重要であることから、区市町村の役割が大きい。

○ 東京都は、区市町村が利用者が事業者の福祉サービス利用に対する相談・苦情に的確に対応できるよう、区市町村へ苦情の傾向分析や対応のノウハウの提供等、必要な支援を行う必要がある。

○ また、「苦情関連情報」については、身近な地域で出された情報について、利用者が参考にするだけでなく、事業者としてこれを参考にしてサービス向上を図る手段として利用することができるようなルートがあることが望ましい。

○ 個別具体的な情報の開示については、利用者のプライバシー保護や企業秘密等に十分配慮しつつも、苦情内容や対応の傾向等について、その公表の手法やルール等を今後具体的に検討していく必要がある。

2 情報提供、苦情対応、サービス評価のしくみがネットワーク化された、総合的なしくみの構築

○ 利用者によるサービス選択のバックアップのためには、以上のような、サービス評価、苦情対応等土台となるしくみがそれぞれに適切に機能するだけでなく、これらがネットワーク化され、総合的に情報提供される必要がある。さきにみた第三、第四のギャップへの対応によって、このことが可能となる。

 (第三のギャップへの対応−事業者による自主的な情報提供の促進)
○ 第三に、「開示はされているが、積極的には提供されない」ことの課題として、「サービス関連情報」の提供を挙げたが、これに対しては事業者による自主的な情報提供を促進する必要がある。

 「サービス関連情報」は、先に見たように、利用者が事業者やサービスを選択する際に、判断の中心となるものである。これには、

  1. 法律その他で規定されていたり、指定事業者として行政が開示を義務づける情報(指定項目)、
  2. 行政が事業者情報の提供について基準(ガイドライン)を作成し、提供を誘導すべきもの、及び
  3. 事業者が他社との差異化を図って自主的に提供することが望ましい情報、がある。

○ 1. のなかには、例えば財務諸表等、通常の利用者にとっては見ただけでは判断しにくいものもあるが、事業の透明性の確保という観点からは開示が重要である。また、直接の利用者ではないが、評価機関等がこれらの情報を分析することにより、情報の活用が容易になるものもある。
 具体的な開示情報の項目については、今後さらに検討が必要であるが、少なくともその情報がなければサービスや事業者の選択に支障をきたすような項目に配慮すべきである。

○ 2. に関する情報は、開示が法定されてはいないが、利用者が自分にあったサービスを探すのに重要であり、3. の事業者が進んで提供する情報については、自らのサービスの特性や工夫等、きめ細かな情報が自主的に提供されていることが望ましい。

○ 行政は、このような情報提供のルールも含めた事業者向けガイドラインの作成や、情報開示状況の公表などにより、事業者による自主的な情報提供が行われる環境を整備していく必要がある。
 その際には、事業者における情報提供のための負担が大きくならない、あるいは負担に見合うメリットが生ずるよう、事業者との連携を容易にするなどの工夫を行い、このしくみが効果的に機能するようにしていかなければならない。

○ 福祉サービスを提供しているNPOや地域で活躍するボランティアに関しては、制度が発足して間もないことや、法人としての運営基盤が弱いことなどから、発信すべき情報が適切に整備されていないなどの心配がある。今後、このような団体の活動はますます重要になることが予想されるため、こうした団体に関する情報をいかにこのしくみに取り込むかも、課題の一つとなる。

 (第四のギャップへの対応−利用しやすい情報の提供)
○ 第四に、「情報提供はなされているが、利用者が利用しにくい」ことの課題として「一覧表」等を挙げたが、これらの情報については、利用者が利用しやすいように加工して情報を提供する必要がある。
 このためには、「サービス関連情報」、「苦情関連情報」、「サービス評価関連情報」が利用者の利用しやすい形で加工されているほか、制度の概要や、東京都や区市町村の関連施策PR、その他民間事業者による関連サービス、利用者のニーズ情報、ボランティア情報等福祉サービスに関する情報が総合的に提供されていることが望ましい。

− 図3でございます。33ページをお開きいただきたいと思います。総合的な情報提供のしくみ(イメージ)でございます。
− 真ん中に、利用者のサービス選択をバックアップするしくみ(情報の総合化)がございまして、そこに上のほう、左でございますが、苦情関連情報、サービス関連情報、指定事業者情報、指導検査結果情報、その他。右側に、サービス評価関連情報。それと、左横に、区市町村一般施策サービスの概要等、右横に、ボランティア等地域の社会資源という情報を、情報の総合化ということで情報提供をしていくということで、その大きな四角の中には、契約利用者もあれば、サービスをコーディネートする機能を担う人、サービス提供事業者、自己情報の開示というようなイメージ図になってございます。
− それでは、恐れ入りますけど、また24ページに戻っていただきたいと思います。○の3つ目でございます。

○ 図3(巻末)は、利用者のサービス選択を総合的な情報提供によりバックアップするしくみのイメージを示したものである。
 情報提供、苦情対応、サービス評価のしくみは各々しくみとして機能していることは前提となっている。その上で、それぞれのしくみが、個別に情報を発信し、利用者に伝えられる際に、それぞれが有機的に組み合わされ、効果が生じるように加工する必要がある。

○ また、加工された情報をいかに利用しやすく提供するかも重要な課題である。インターネットを活用することが、広く多くの利用者が必要なときに入手でき、効果的であることはいうまでもない。
 しかし、インターネットを利用できない多くの利用者について配慮することを忘れてはならない。
 そのためには、サービスをコーディネートする機能を担う人の活用はもとより、将来的には、今後も進歩するであろうIT(情報技術)を活用して、たとえば高齢者でも利用できる操作の容易な情報端末をコンビニエンス・ストアに配置し、買物やATM利用のついでに利用できたり、ケーブルテレビで「福祉サービス情報チャンネル」のようなものから情報が入手できるよう、考慮すべきであろう。
 なお、ITの活用などにより情報が容易に入手できるようになると、それまでサービスを利用していない人の場合でも、情報を入手したことによって、ニーズが顕在化する事も考えられる。その意味では、情報提供により、利用者の裾野が広がるということも起こってくるであろう。

− これの部分も、委員のご指摘によって追加した部分でございます。

○ 当面は、高齢者等にもわかりやすいパンフレット等を作成し、行政やサービスをコーディネートする機能を担う人などから積極的に利用者に配布することによって、情報を入手しにくい人々に対しても、住んでいる地域の情報を総合的に提供するなどの対応が必要である。

3 しくみが有すべき機能

○ 以上のようなしくみに内包されるべき機能について、提言しておく。

 (情報の質の確保)
○ 先に見たように、「常に変化する」という情報の特性を踏まえると、サービスに関して事業者等から発信された情報が利用者に届くまでの間に何らかの影響を受けて変化したり、利用者側の事情で異なって認識されてしまったりする可能性がある。また、事業者等による誇大広告、不当表示など悪意ある情報の可能性もある。
 契約制度においては、このように質が悪化したものや、悪意ある情報等が混じる可能性があり、利用者はこれらの中から適切な情報を自らの責任で選別することが基本になる。

− 26ページに入ります。

○ しかし、福祉サービスは一般の商品と異なり、サービスの利用者がそのサービス自体を理解していなかったり、サービスに関する判断能力が不十分な場合もあるなど、利用者の情報選別能力が小さい傾向がみられる。
 また、質の悪い情報を参考にして不適切なサービスを利用した場合、介護サービスなど利用者の生活に密着に関わるため、その影響は非常に大きい。

○ こうした点からも、利用者が安心してサービスを選択・利用できるように、できる限り質の高い情報が確保され、利用者の必要に応じた適切な情報を十分に提供される機能を有したしくみを確立する必要がある。

− この3行も、ご指摘により加えた部分でございます。

 (利用しやすい情報への加工)
○ 一方、「情報の正確さ」だけを求めると、例えば事業名、住所等の「一覧表」、あるいは、利用者が理解できない網羅的・専門的な情報になりがちである。しかし、これでは、利用者の選択をバックアップすることはできないことから、利用者が利用しやすいように加工する必要がある。
 正確さの点からみると、行政が有する情報が社会的に信頼性が高いといえる。しかし、中立性・公平性への配慮のために、行政は、その有する情報に個別的な評価を加えるなどの加工ができにくいことから、行政が提供するものは、情報としての魅力が低くなることは避けられない。
 また、サービス関連情報は事業者からできるだけきめ細かいサービスが提供されなければ、このしくみは成り立たない。そのため、事業者からも信頼され、広く利用者に提供されるよう、情報を加工することも必要である。

○ これまで行政による「措置」によってサービスが提供されてきた福祉サービスの分野において、サービスに関連する情報の重要性については、まだ十分認識されているとは言い難い。
 このような状況の中で、上記のような機能を有した「利用者のサービス選択をバックアップするしくみ」が自然発生的に生ずることは期待できず、しくみの整備については行政がリードしていくことが求められる。

 (行政、事業者、地域等の連携)
○ 都は、事業者の指導監督権限を有しており、サービス評価や苦情関連情報を指導検査に活用したり、利用者に危害が及ぶおそれのある場合には緊急情報を流すことも考えられる。また、たとえば先に示した事業者向けの運営のガイドラインの作成などにより、事業者に対し情報が適切に開示されるよう働きかけていくことも忘れてはならない。

○ また、これらの新しいしくみを担う人材の確保も重要である。そのためには、区市町村や民間との役割分担を踏まえて、従来の手法にこだわらず、効果的・効率的に人材を確保していくしくみを検討することが必要となる。

○ サービスに一番身近な地域である区市町村は、サービス事業者や住民に直接接する機会も多い上、介護保険制度だけでなく他のサービス分野でも苦情対応のしくみの確立が求められており、その役割はますます重要になる。

○ 東京都は、今後区市町村とも連携しながら、早期に総合的な情報提供のしくみの構築について具体的検討を行い、平成15年度の障害福祉分野での開始による本格的な契約制度への移行までに、利用者が地域で自らサービスを選択し、利用できるように環境を整備していかなければならない。

− 続きまして、28ページ、「おわりに」でございます。

○ 利用者がサービスを選択するといっても、福祉サービスは個別具体的なニーズに対応するためにこそ必要とされるものであり、レストランや一般の商品のように、たくさんある中から、どれかを選ぶというわけにはいかない面がある。
 「バックアップのしくみ」に求められる「情報」は、そのような状況のもとで、利用者が安心して自らに最適なサービスを選択・利用できるためのものであることを忘れてはならない。

○ さらに、利用者が契約によりサービスを選択するという新しい制度へと円滑に移行するためには、以下の点も不可欠な課題である。

  1. サービスの量・質の充実
    利用者が福祉サービスを選択できるようになるためには、その量の拡大及び質の改善・向上が必要である。
  2. サービスをコーディネートするしくみの充実
     利用者の自立を支援するという観点から、地域での生活に支障を抱いている人の個別ニーズに即して、効果的・効率的にサービスを提供するためには、福祉サービスのほか、関連する保健、医療等のサービスと連携し、総合的にサービスを提供するしくみが必要である。
     特に、利用者が、判断能力が不十分であったり、サービスを十分に理解していない場合には、「バックアップのしくみ」によって提供される身近な地域における総合的な情報と、サービスをコーディネートするしくみが密接に結びつくことにより、利用者は、最適なサービスをより一層容易に選択できるようになることが需要である。

− これにつきましても、委員のご指摘により、少しつけ加えた部分がございます。

○ これからの福祉サービスは、自らの責任で自分に合ったサービスを選択し、利用することになるため、さまざまな情報からサービスを選択できる能力が必要になる。学校や地域、事業者と行政が連携し、子どものうちから体験学習などを通し、福祉サービスを生活情報として知り、かつ学ぶ機会を確保することなどにより、利用者に対する啓発を図っていく必要がある。
 これも、情報に関する体験学習等についてご意見がありましたので、追加した部分でございます。

○ 本審議会は、利用者のニーズに応えられる「新しい福祉」の早期実現に向けて、東京都が今後ともこれらの課題について積極的に取り組んでいくことを強く願うものである。


 以上でございます。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。
 一応、全部読んでいただきましたので、今読み上げたところに関する質問と同時に、先ほど申し上げましたように、総括的なご意見等も含めまして、ご発言をお願いいたします。

○曽根委員

 私たち、以前から、措置から契約へという新しい福祉の流れについては、これは基本的にちょっとスタンスを異にしていますので、きょうはその議論を蒸し返すつもりはもちろんないんですけれども、やっぱり措置制度を広範に残しながら、その中に契約的なもの、つまり自由な選択ができる部分を拡充していけばいいじゃないかというのが、私の基本的な考え方なんですが、今回は、その措置から契約の新しい流れという前提に立って、その上で、当然、必然的に、今まで情報がそんなに多くなかった分野ですから、情報が必要になるという自然な論理といいますか、その流れで、キーワードとして情報ということを選んで、こういうふうないろいろ分析をされているんだと思うんです。
 読ませていただいて、一番ひっかかる点から申し上げますと、私の乏しい経験を通じても、一番ひっかかるのは、つまり、一番高度な情報といいますか、福祉情報の中でも一番立ち入った情報を必要としている人に限って、一番情報を得にくい立場にいるという現実を踏まえて、その問題をどう解決していくのかという点で、やっぱりちょっとその視点がないと、一般論で福祉情報というふうに一括して語れない問題なんじゃないかと改めて思ったわけなんです。
 例えば、痴呆のお年寄りがいた場合、ここは利用者というのは家族も含めてというふうに書いてありますけれども、それにしても、痴呆のお年寄りの介護サービスを考えると、痴呆でない方に比べて、介護事業者というのは限られると思うんですね。そういう方の扱いができる事業者、これは前から問題になっているんですが、やっぱり非常に限られてくる。
 つまり、そういうことのレベルを問わなきゃならない。はっきり言えば、今、介護保険で言えば、ケアマネジャーの質が問われるぐらい専門的な視点が必要だと。しかし、本人には判断能力がないし、家族もそこまで専門的な知識や情報も持っていない。こういうところは、やっぱりどうしても専門的な方が介在しなければ、必要な情報は、やっぱりはっきり言って得られないんじゃないか。
 それから、重度の障害を持っている方、これも一番深刻な状態の方について見ると、なおのこと、本人は情報を得にくいわけですし、家族がかわって情報を得られるのか、そういうこと。そういう方に対するサービスを提供する事業者は限られているし、その人個別の障害の状態に対応しなきゃならないので、これもやっぱり専門家が間に入らなければ、事実上、難しい。
 そのほかにも、経済的に、もしくは社会的に情報から遮断されている、極端に言えば、ホームレスだとか、みずから、そういう福祉のお世話になりたくないと言っているような生活者の方について、じゃ、どういうふうに情報を提供し、必要な福祉を、サービスを提供するようにしていくのか。先ほど、大橋委員もおっしゃったんですけど、そういう方に対する福祉というのは、その方が選択する意思がないとすると、これは最初から考え方を変えなきゃならないというふうに、この問題は、やっぱり私は、一方で、新しい福祉が新たに対象にしている、つまり、ご本人にも判断能力もあるし、選択するツールも持っているし、むしろ、それに対するサービスもいろいろ企業も参入してきて、結構、メニューもある、選べるという方にとっては、これはここに書いてあるような、いわば商品情報を提供するのとかなり共通したいろいろな要素をどんどん盛り込んでいけば、かなりそういう分野は発展すると思うんです。そういう点では、もっとさらにクーリングオフみたいな制度が必要ではないかというふうに論議は発展していくと思うんです。
 しかし、福祉の分野で、どうしてもそういうものにならない分野というか、そういうグループが残るので、そういう方々については、やはり公的には、新しく対象となってくる、自分で判断でき、選択できる方とは違った法的なかかわりがやっぱりどうしても必要ではないかと。一括してくくってこういうふうにまとめることは、かなり難しい、無理があるんじゃないかなという印象をどうしてもぬぐえないんですよね。ですから、もしこういう形で提言をまとめて最終的に出していくとするならば、思い切って2つに、ある意味では大きく分けて論議をするか、もしくは経済的にも社会的にも、また本人の状態からも自由に選択ができる方々についての今後広がっていく分野について、限定して議論をするか、そういうふうにするしかないんじゃないかなと、私の印象としてはそういうふうな印象を持ちました。

○高橋分科会長

 どうぞ、馬場委員から。

○馬場委員

 情報というのは、必要な場がたくさんあると思うので、いろいろな場面が想定できると思うんですが、まず1点お伺いしたいのは、常に用意されていて、いつでも、それから、長期的に見られる情報、つまり用意ができる情報と、それから必要なときにサービスを受ける場合、緊急な場合に必要な情報、それが、つまり、こちら側に合わせてどれだけ情報が得られるかという、そういう通常的な情報の提供の形と、緊急の場合と全然違うと思うんですが、そういうことを含めてもうちょっと整理をされなければ、必要な人のための情報になっていかないなと感じたのが1点あります。
 2つ目は、今の情報の中に、ITとか、パンフレットとかというふうな見える、受ける情報というのはここに書いてあったんですが、現場、つまり、未認可保育園等で子供の虐待とかという話があったときに、そこに預けたいと言っても、入れてくれないというふうなことがありますね。つまり、パンフレット等ではなくて、直接自分が見て、立ち入って選べる情報、現場的な情報、そういうものを全部開示ができるのかどうか。つまり、うちの中、部屋の中へは入れませんというようなことが阻止できるかどうか、つまり、全部情報開示が含まれるかどうかということが2つ目にあります。
 それから、3つ目は、今のことも含めて、保育であれば、行政がやっていた保育とか、民間がやっている保育とかありますし、介護もそうですね。それから、障害の部門もそうですが、そういう事業者という中にすべてが入るのかどうか。どんな事業者でも、今回のこの情報の対象になっているかどうかというのを1つ確認させていただきたいと思います。
 4つ目には、今は事業者のほうが全部、これを読んでいると情報を提供するほうで、利用者は受けるほうというふうに読めるんですが、情報というのは、常に行ったり来たりということがありまして、つまり、今も介護保険等を1年間やる中で、サービスを受けるほうの住民のほうの情報も、ある意味では事業者のほうに行っている部分がある。選んでいく中で、この事業者もだめ、この事業者もだめというふうに選択していった場合、今度、事業者から、あそこはもうだれも行かれませんというようなお話なんかも聞く場合があるんですが、そんなふうに事業者が、逆に、利用者のほうの情報をどんなふうに得て、それをどんなふうに使って、また新しい情報として開示していくのかという、その辺がよく情報として見えてこないんですが、一方的な情報、ここで見る情報というのは、事業者から利用者へという流れしか見えないんですが、その辺の行ったり来たりというようなことはどの程度想定されているのかということを、大きく4つ伺いたい。

○大橋委員

 33ページのこの図ですけれども、バックアップの仕組みとしての具体的なイメージなんですが、情報の中のある部分に限定して収斂して書かれているから、やむを得ないと思うんですね。だけれども、先ほど来言っているように、例えば図書館の例でいきますと、図書館の重要な部分というのは、レファレンス機能ですよ。相談にのって援助してあげるレファレンス機能が図書館にとって一番大事なところですね。そうだとすると、今、その意味であったけれども、情報を自分で選択して使える人はいいんですよ。問題は、この下のほうのサービス・コーディネート機能を担う人と、情報との間をつなげてくれる人が重要なんです、レファレンスをやってくれる人が。つまり、個別性と言われているんですから、個別性に見合った情報をちゃんとレファレンスしてくれる人の、その機能をもっと大事にしないと、情報のバックアップ機能にならないんですよね。そこで先ほど来言っている情報が一般化していると。
 具体的には何だというと、新しい福祉と絡むんですが、前期の社会福祉審議会で、高齢者分野は在宅介護支援センターが進んだと。障害者のほうは地域障害者自立生活支援センターが進む。児童分野では子ども家庭支援センターをやりますと。21世紀の初頭には、地域福祉サービスステーションをつくりますと言っているわけですよ。ある地域福祉サービスステーションの中がレファレンス機能をやらなくちゃいけないわけですよ。そこに情報かどういうふうに伝わって、どういうふうに使われるかということを考えないとならないのに、その辺のところは全部欠落して、情報だけに収斂しているものだから、どうもこれでいいんだろうかというのが気になってしょうがないんですよ。
 最後のほうで、例えば28ページで、サービスをコーディネートするしくみの充実と終わりに出てきちゃっているけれども、ほんとうはこれがあって、この中に情報を使える部分、もちろんサービスをコーディネートするのは、ケアマネージャーに頼まないで、自分でケアプランを立てる人だっているわけですから、自分でケアプランを立てる人は、どうぞ自由にやれるような情報の提供のしくみはつくりますよと、こういうふうに書いてくれれば、素直にずっと入ると思うんですけれども、そうなってないのに、非常に気になるということが1点です。それは、先ほどの相談窓口との同じ問題です。
 2つ目には、聴覚障害と視覚障害の問題が全く出てこない、総括的に考えて。情報の過疎の問題というのは、聴覚と視覚問題が一番大きいわけです、福祉の分野では。そういう意味でも大変気になる。
 それから、27ページのところに書いてありますし、前のほうでも言おうと思ったことですけれども、例えば27ページのところで、区市町村、民間との役割分担を踏まえてというんですが、東京都がやる情報に関する機能と、区市町村がやる部分と、民間事業者がやる部分と、サービス事業者が持っている情報とがどういうふうに双方向になっていくのか、特に東京都が社会福祉審議会として地方分権化の中でどういう役割を果たすのかということを書かなければ、やっぱり情報一般になっちゃう危険性がどうもありはしないかという気がしています。取り扱い方は、先ほど曽根委員が言われたようなことの取り扱い方もあり得るかもしれないけれども、少なくとも、もうここまで来ちゃったのでありますが、聴覚と視覚だけは入れてほしいし、それから、地域福祉サービスステーションと言ってきた、そこには総合相談からケアマネジメントという機能があるよと、こう言ってきたところの、そこは何とかつなげてほしいなということと、それから、民生委員さんがやっぱりアウトリーチして発見しているんですよ。それにこたえられるようなしくみをどうつくるかということは、せめてどこかに1行でも2行でもいいから入れていただきたいというのが私の切なる願いでございます。
 そして、すてっぷの問題もどこかにやっぱり触れてほしいと思います。あるところは、例えば社会福祉法で適正化委員会のことが書いてあるんですが、誇大広告のところは、社会福祉法の条文がないんですよね。それから、一方では消費者契約法ができちゃっているわけですから、消費者契約法の部分だって、入れなきゃならない部分だってあるわけなので、その辺の文言上の整合性は若干残るけれども、それは後の問題ですから、ぜひお願いいたします。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。どうぞ。

○前田委員

 ちょっと私の考えを述べさせていただきたいと思うんですけれども、私は、今、厚生労働省でやっております児童福祉施設など第三者評価基準検討委員会というところのメンバーに、利用者代表で入っておりまして、保育園をどういうふうに、どういう基準を使って評価するかということを検討する委員会なんですね。それで、実はモデル事業も一部始まっていて、基準自体がそれでいいかどうか、すごく問題があるんですけれども、モデル事業が始まっていて、実際に私がちょっとお願いしたこともあって、利用者のアンケートなんかもとっていただいたんですよね。
  そうすると、利用者は、第三者評価を待っていた、こういう情報提供を待っていたという意見がすごく多かったことと、児童福祉施設なので、それは保育園だけじゃなくて、乳児院や養護施設も全部入っているんですけれども、施設側も初めてだったらしいんですよ、アンケートをとるのは。そうすると、福祉に求められているものが、自分たちの勉強になったということで、少しずつ理解が進んできているんですね。ただし、保育園の先生方の間にも反対の方も多くて、保育のような専門のものを評価できるわけがないとか、客観化できないとか、情報提供というと、拒むというか、嫌がるご意見が強いんですね。
 その中で、私は、いろいろ問題点を今ご指摘がありましたけれども、福祉における情報というのはやっぱりすごく必要だという位置づけをここでやりましたことは、一歩前進だと思いますし、今、いろいろな先生方からご指摘があったことも、福祉で情報か必要だという切り口で見ると、やっぱりこういうところが足りない、ああいうところが足りないと、いっぱい問題が出てくるんですね。
 第三者評価にしても、一体どこのだれがするのかということすら決まってないですし、どの基準でするかということも全然国レベルでは決まってなくて、試行錯誤の段階なんですね。ですから、この審議会の提言の位置づけもありますけれども、いろいろ細かい問題点はあっても、やっぱり福祉に情報は必要だという一里塚を示した点ですごく意義があると思うんです。ですから、あるということを皆さんにもお伝えしたいということと、そして、今、大橋先生からあった具体的なものなんかは、国レベルの第三者評価基準なんかではそんなのは話題にならないんですね、地域のことはわからないがゆえに。ですから、逆に地域でこれを実際にやるときには、どういう具体的な問題があるかという、まさに情報提供といいますか、こういうのをやってくださいというメニューを示せたという意味では、やっぱりこれは、私はすごい意味があるし、起草委員の方はご苦労なさったなと思いますので、ちょっと申し上げたいと思いました。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。いかがでございましょうか。小林さんにちょっとコメントしていただいて、それで私が申し上げて、それでちょっと委員長、副委員長にご意見を伺うという、そういう順次で。

○小林委員

 今、前田委員に話していただいたことは、大変うれしくてですね。私は、企画起草委員をさせていただきまして、やってなかったら違うことを言ったと思うんですけれども、この作業の一番の眼目は、今、前田委員が言ってくださったことなんです。つまり、情報ということについて、基本的には情報開示ということが前提になっておりましてその情報をどう収集するか、どう体系化するか、それをどう加工するかというところを、きちんとやはり枠組みをつくらないといけないだろうと。事業者情報、これだって、とてもとても開示まではいってないですね。それから、先ほどご指摘くださっと保育園、それから事業所の施設等々、そんなに情報について出してないですね。その枠組みについてどう考えて、ここまでは出してくださいという、幾つかそういう言葉を使っているんですけれども、基本仕様とか、これについては出してくださいという基準をつくりましょうと。それを出した上で皆さんやってくださいという、やっぱりその枠組みが必要だということを、まずはやろうということが今回の最大の眼目でありまして、そこのところがまずうまくいっているかどうかという観点から評価していただけると、私がうれしいだけではなくて、事務局も大変うれしいんじゃないかと思います。これが第1点です。
 あとは、今、委員の先生方がおっしゃったのは、できた情報をどういうふうに提供するか、あるいはアクセスできるようにしていくかという問題系列に属することだと私は理解しておりまして、これについては、いろいろな問題がありますが、ちょっとその前に、情報そのものが間違った情報、誇大広告等々、これをチェックする仕組みはないのかというのが本質的な問題です。ここまでは残念ながら、時間の点で議論できなくて、私自身はもう少し立ち入ってもいいんじゃないかという個人的な意見を持っております。例えばある情報が出てきたときに、それを確認できる仕組みが何か地域にあるといいだろうなと。例えばそれを総合相談窓口というかどうかわかりませんけれども、その情報をどこかでチェックできるような仕組みが地域にあって、そこに行けば、何となくある範囲の判断はできるような、例えば口コミ等で言われているんだけれども、これはほんとうだろうかというとき、ある程度チェックできるような枠組みがあるといいのではないか。それはそう思いますが、今回はそこまで触れなかったということで、私自身はもうちょっと積極的に入れ込んでもいいのではないかと思うんですが、いずれにしても、情報の収集、加工と質の確保というところまで、今回は大分立ち入って議論したと思います。
 そこから先、情報をどういうふうに利用者に伝達していくかという系列の議論があるわけですけれども、これはいろいろなご指摘がありまして、もちろんこれは考えておりましたし、そこまでやらなくちゃいけないことはよくわかっているんですけれども、先ほど申し上げましたように、これは自治体との関係、事業者との関係、それから、例えばサービス事業者の連合体の問題、協議会の問題、それから、例えば介護支援事業者専門員の協議会の問題、つまり、種別にネットワークをつくっていく問題と、それから、個々のコーディネーター等々を含めて、支援専門員にどういうふうにこの情報を流していくかという、そこのところを個別にやらなくちゃいけないわけですね。そうしますと、ここまで立ち入ってしまいますと、ちょっと今回の情報という枠をかなり超えてしまうんじゃないかという判断をいたしまして、今回はこういう整理でやっておこうと。
 それから、この問題は、今後の福祉が契約を中心とするということから出てくる問題でありまして、将来ともこういう問題が出てくるだろうと。今までは行政に行けば全部把握できたわけですけれども、そうではなくて、行政はあくまでも情報を提供するという役割に立ってしまったわけですね。そうしますと、いろいろな情報を総合して、どこかで判断していかなければならないという役割が、多分利用者に出てくるだろう。そうしますと、それをバックアップするという仕組みを考えざるを得ないわけで、本来、福祉の対象者、最初のほうに書いてありますけれども、そういう人たちにどういう情報を提供するかという問題はありますけれども、しかし、もうちょっと先のことまで考えて、多分、情報の問題としてはこういうことが出てくるのではないかということを中心に整理させていただいたというのが私の考えです。
 ちょっともう時間がありませんので、一応それだけにとどめておきまして、個々に何を入れるかについては、またご相談させていただけばいいのではないかと思います。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。私からも若干コメントさせていただきますと、やっぱり社会福祉法で出てきた議論が1つ、フレームワークの議論がありました。
 それからもう一つは、その後に、これはそれがどういうふうに結実するかはわかりませんが、社会的に援護を必要とする人々に関する議論がございました。多分そういう関係があるなと思っておりまして、いろいろなご意見がございましたが、やはりジェネラルなスキームをつくっておいたからこそ、逆にそういう議論が見えてくるという、そういう逆説が私はあると思いまして、多分、小林先生の意図もそういうところにあったかと私は思っております。
 あと、審議会の機能等については、むしろ委員長、副委員長のほうのご見解にゆだねたいと思います。この新しい福祉のあり方専門分科会というのがこの機に設置されましたけれども、その仕事として、とりあえずこれを今作業をしておりますが、そこら辺をどういうふうに位置づけていったらいいのか等々についてのお考え等も含めままして、副委員長、委員長にちょっとご発言をいただけたら大変ありがたいと思います。

○仲村委員長

 三浦副委員長に先におっしゃっていただいたほうがいいのかもしれませんが、私が先に言って、これだけはやっぱり共通の認識として持っていたいというところから申し上げたいと思います。
 26日に、何しろ最終の全体の審議会としての意見具申をまとめて出さなきゃならない。これが日程的にもほんとうにわずかな期間しかなくて、今日の議論を踏まえて、大幅な修正をするなんていうことは事実上不可能ですから、できるだけご発言の趣旨の中で取り入れることができるものは取り入れながら、ここで情報をキーワードにして、これだけ大変的確な、かつ奥行きの深いまとめをしていただいた分科会の作業を最大限に生かすということで、私としては考えたいと思います。
 ただ、私は大変勉強させていただいたんですけれども、さて私が勉強になったことを、利用者の方がほんとうに勉強になって利用できるようにするにはどうしたらいいのか、その間のつなぎをどうするかという問題について、今日いろいろご発言をいただいたことの関係では整理が必要ではないかと思いながら、大枠のところでは、あれだけ石原知事が大きく、ご自分の姿までを大衆の前にさらして、新しい福祉を始めますと、こう言われたのですから、新しい福祉とは何なんだろうか、新しい福祉の対の概念は古い福祉ですから、あるいは新しくない福祉ですから、新しい福祉に対して、新しくない福祉というのは何なのか。
 そうすると、その新しくない福祉から新しい福祉へ向かっての作業というのは、突然、今回の作業として始められたものじゃなくて、長いことかけて、社会福祉としてとられてきていて、多分、少なくとも90年代の初めまでは、この基本の概念である、考えてみますと、今回の社会福祉法の第一の目的の中に盛り込まれました福祉サービス利用者の保護と地域福祉の推進、あるいは福祉サービス利用者の保護という、特に利用者概念を使っての整理というところでは、この東京都社会福祉審議会の議論の詰めは不十分だったところがあるかもしれませんが、少なくその基本の考え方を折り込みながら、地域福祉の推進ということで今日くくられる、この概念なり、この考え方なりは、一貫して追求してきたことであり、それが、先ほど大橋委員も言われたような、東京都社会福祉審議会の積み重ねてきた、散発的にではなくて、ある程度積み重ね作業として進められてきた答申、あるいは意見具申の中に織り込まれて今日に至っていて、少なくともある時点までは、東京都の社会福祉審議会のほうが一歩先んずる形でいろいろな提言をしてきたものを、私の見るところでは、国のほうでも、やはり国全体の課題としてこれを取り上げて推進していくべきだということで、取り上げてまとめるようになり、制度化を図るようになってきたというのが、90年代以降のことじゃないかと私は見ているんです。
 そういう流れの中で見てみますと、新しい福祉とは何ぞやということで私も長年にわたって追求してきたこと、それの今日段階での、どういうふうに言ったらいいんでしょうか、新しさの追求を一歩進めるということで見るという視点が必要なんだろうと思うんです。
 そういうことで見ていくと、新しい福祉とは何ぞやということは、これまで一貫してこの審議会で、私が今言いましたような線で積み重ねてきたものを、念のため振り返って、ただし、今度の答申の中に細かい振り返り作業を織り込むわけにはいきませんから、要点だけでも整理をして、そしてこういう点を追求してきたけれども、それは十分達成できなかったことの中のこういう部分について、追求課題としてはっきり、国のほうでもこれだけ、今、高橋分科会長が言われましたように、社会福祉法と、おそらくその同じ流れの中であると思いますけれども、国のほうの、通称阿部委員会の、この中でも委員になられた方がいらっしゃるわけですけれども、社会的な援護を必要とする人々への援護という概念を使って、これはおそらくは国際的には社会的にひ弱い状態の人々というような意味の言葉で使われている言葉が、そういうふうに翻訳されたものだと私は理解していますけれども、そういう人たち、そういう方々を社会的包含といいましょうか、ソーシャル・インクルージョンという言葉がそこで使われていますから、組み込んでいくという方法での施策を、それを社会福祉法で打ち出したものにさらにつけ加えて、今日、国のほうで施策化するというふうに動いてきている。
 そういう流れの中で、東京都としては、80年代以降、ある時期までははっきりと一歩先駆けて、そして、ある点からは国の後追いをする形で動いてきているように思いますけれども、そういう流れの中で、今日こういうところまできている社会福祉の今後に向けてのあり方を追求するという、そこのところで課題が出てきているという、そのあたりのことを、したがって、どういうふうに言ったらよろしいんでしょうか、新しい福祉とは何ぞやということについて、まだ十分追求しきれないで残っている課題は何であって、そしてそれを具体化することによってほんとうの新しさが出てくるということで、そのあたりのところを押さえて、その全体のとらえ方の中での情報というところ、非常に重要ないろいろな指摘が織り込まれていますから、全部ではなくて、しかし、重要な一部であるけれども、これは不可欠の大事な、今まで追求が十分でなかった課題を整理をして取り上げるんだと。
 したがって、それはもう一度、全体像の中でどういうふうに整理するかということについての基本の考え方を、どういう形でかやっぱり示しておいて、全体像を見失わないようにして、それとつながっての情報の問題という整理の仕方をはっきりするように、これを全文大きく書き改めるということはできませんから、序のところ、端書きのところ、あるいはまとめのところで、その意味をはっきりさせるように、ある程度書かれてはいるんですけれども、もう少しはっきりと打ち出すようにして、本審議会としての、十数年かけての追求作業の流れの中で、文脈を十分踏まえて整理するということで、残りの時間を最大限に使ってまとめの作業をする以外にないのかなと思いながら、伺っておりました。
 そういう線で見ていく場合には、やはり大事なことは、情報について、これだけの整った整理の仕方をされたのは初めてだけれども、それが利用者にとって、どういうふうに現実のものとして利用者の、みずからの福祉サービスを利用する場合の自分の示唆にするか、その間のつなぎというのは、ここでのこの打ち出し方だけで、利用者にとってはそれが可能になるのかどうか。明らかにこれは可能にはならないので、その間のつなぎ役、あるいはつなぎの仕組みが明らかに必要になります。
 それについて一応触れられていますけれども、もう一歩進めて全体像との関連ではっきりさせるという部分を織り込んでいくことによって、ここでこれだけ詰めていただいたことが逆に生きてくるんじゃないだろうか。やや一般ですけれども、そういうことを強く感じながら伺っておりました。個々にはたくさん、いろいろ今のご発言の関係とか、感じたことはありますけれども、これまた一々細かく申し上げていますと時間が切りがありませんから、これは最初のまとめの過程で、また私として、私の立場で三浦副委員長とともに検討させていただいて、最大限織り込むようにしたいと思います。

○三浦委員

 ちょっと時間がきておりますので、簡単に、簡単になりそうもないんですけれども、二、三感じていることをお話をさせていただきたいと思います。特に26日の総会は、私はヨーロッパに行くものですから、いないものですから、ちょっと細かいことを申し上げたいと思います。
 これは、文面をどうするかこうするかという議論ではなくして、先ほど大橋委員さんから出されて、それから曽根委員から出されたことと関連することは、常に感じておりました。というのは、利用者という言葉は、今えらいはやっている言葉なんですね。どこでも利用者と言います。利用者とは一体何だということについては、措置対象者じゃなくして、利用者だということが言われてきているわけです。
 ただ、先ほど小林委員のほうからお話があったように、実はこの問題は、福祉のほうでは昔から使ってきているんです。対象者ということに対しまして、利用者と。その場合の利用者というのは、つまり、問題自身を、問題を解決するのは本人ですから、その上で対象者という言葉は不適当じゃないかということで、これは70年代、あるいは80年代ぐらいから使ってきた言葉なんです。今回、あえて利用者という言葉を使ったのは、その上に立ちまして、ここにまさしく出ているように、従来の措置型の福祉から、要するに契約、選択型の福祉へと。その中に自己決定の議論が非常に重要になってきたという意味で、利用者という意味合いが出てきたというふうに私は理解しております。
 ただ、そうは理解はしますけれども、利用者の中には非常に多様なものが入ってきているというふうなことでございまして、実はこの間、原案をつくったときに事務局長と話したんですが、英語で利用者は何ていうんだと。ユーザーというんですね。それからまたクライアントという場合もあります。それから、ここにも出てきましたが、カスタマーズということもあるわけです。利用者という言葉を使う場合、みんなごっちゃに使っちゃっているんですね。ですから、そこら辺のところをちょっと意識した形で使わないと、全部、カスタマーズみたいな議論で、全部、市場メカニズムの一環で利用者というのを考えてしまうという、そういう違いもあるけれども、福祉の分野において、完全に市場メカニズムだけでは切れない部分が相当あるわけで、先ほどもちょっと出た議論があると思うんです。その上でいきますと、これはカスタマーズ議論だけでは進まないわけです。そこら辺のところをちょっと意識しながら、この利用者という言葉を使わないと、全部ぼけてしまうんじゃないか。国をはじめとしまして、利用者とか何とかで全部終わってしまうような気がするけれども、利用者の中身が違うんだということを、意識的に考えていく必要がありはしないか。
 そういう意味では、先ほど出ましたような、利用者でありながら、みずから決定できない、判断できない、そういう要素もたくさん含んできているわけです。そういったあたりを少し丁寧に読みながら整理をしておいたほうがよろしいかなと。
 実はこの問題は5ページのところに出てくるんですが、契約の問題についてもしかりなんですね。契約といいますと、市場メカニズムの自由契約というものが、福祉サービスの上でも適用される部分と、例えば保育所の場合の契約とか、介護保険の契約だとか、それから、今度出てくる障害者の契約、みんな違うんですね。そこら辺のところを含みながら、ここのところを少し注意深く整理をしていただくということが必要ではないだろうか。その辺は、先ほど大橋委員、それから曽根委員が言ったこととある意味では共通する部分かと思っておりますので、その辺のところを、大変難しい議論でありますが、ちょっとそこら辺のところをお気づきいただければいかがであろうかなという点が1つございました。
 それからもう一つ、これも今のに関連いたしまして、利用者のほかに、「家族等」というふうに書いてある。これについては、私、ちょっと申し上げたことがあるんですね。実は私、「家族等」のほうが大変重要なんですね。というのは、利用者自身が判断できないという場合に、あとは家族でというのがありますけれども、実はこれは前田委員がおっしゃったように、大分前に、児童福祉審議会、国のほうで大分やり合った議論なんですね。例えば利用者という場合に、子供なのか、それとも親なのかという議論があったわけですけれども、従来は親の議論が出てくるわけですね。しかし、親というのは、児童虐待を見ていますかなり多いんですよ。その上でいきますと、児童の最大の利益を守るのは親なのかどうかというと、いろいろ問題があるわけです。その点でいきますと、ここで「等」と書いておりますが、実は家族だけではなくして、本来的に言えば、やっぱりそれぞれ利用者、子供であるとか、障害者を含めまして、その利益を最大限に守る得る人という、そういう第三者だという、いわゆる代弁者ということでしょうか、アドボケーターと言っているんですけれども、実はそういったものが逆に抜けていっちゃうんですね。
 ですから、利用者でいけない場合には、親がとか、保護者がということになってしまうんですけれども、そうではなくして、そこには社会的にそれを支えるような形の、いわゆる代弁者といいましょうか、アドボケーターというのをどうつくるか、これがこれから新しい福祉を考える場合の課題になりはしないかという意味で、その「等」という意味が大変重要な意味を持つ、そんな気がしております。ですから、「等」というのはそういう意味を含んでいるというふうに私は解釈しておきたかったわけです。
 それから、第3点の問題の中で、今回、この問題については私は大変よくできていると思っておりますので、全体では非常によろしいんですけれども、ただ、情報の必要性と同時に、社会福祉の情報の必要性。情報にはいろいろな内容があるわけですが、これが今なぜかというのは、まさしく今の、措置時代から契約の方向に進んでくる中における、もう一遍情報を改めて見直していこうと、それが今回出てきたわけです。
 もう一つ考慮されているのは、今のIT革命というものが出てきたわけですね。これは、たしか25ページでちょっと触れておりますけれども、実は新しいIT革命によりまして、情報の持つ意味が全然違ってきたのと、それから情報の持つ全体の意味がいろいろ変わってきている。先ほど馬場委員がおっしゃったように、やっぱり総合性の中で情報としては出てくるわけです。そういったことで、新しい情報、つまりITが出てきたことによりまして、この情報の問題というのは、もう一つ違った意味合いを持ってきているというふうなことが実はあるんだろう。もっと言うと、情報はただ単にものを伝えるだけではなくて、情報を利用することによって、新しい福祉の分野が広がりましたね。先ほどの評価問題などもそうだと思うんです。そういう新しいものが生み出されてきている。そういった点でいきますと、大分勉強されたと。ちょっと後ろのほうで、新しい情報に対応するんじゃなくて、全体の中において、今のIT革命といいましょうか、そういう動きの中において、もう一度見直しをしたいというふうなスタンスがどこかにあってもいいのかなと、ちょっと思ったりしております。
 それから、第4番目の問題としまして、これも先ほど出たご意見でして、今のご意見に関連しますけれども、実はこの場合、事業者という場合の事業者の範囲を何と見るのか。ここではたしか第2章の初めのところには、社会福祉サービスじゃなくて、福祉サービスという言葉を使っているんですね。その福祉サービスという言葉を使っている中には、従来の社会福祉サービスの提供者だけではなくして、そうじゃない、いわゆる民間のさまざまな事業者というのがどんどん入り込んできているという、そういう意味合いでいきますと、この事業者と意味は非常に広いんだろうと思うんです。それは先ほど保育の問題が出ましたけれども、東京都が今度、認証保育という問題が出てきております。もともと私は、未認可、無認可保育所というのはおかしいなと思っているんですよ。大体利用者の立場からいきますと、認可を切られてしまったものが無認可になっているわけです。福祉では、そこをちゃんと取り上げなきゃいけないと思っているんです。ですから、そういうものを提供するものが初めて事業者となるんだと思います。
 ただ、問題があるのは、その事業者たちの提供している福祉サービスが、決して質の悪いものにならないためにどうするかということが大変重要な意味を持っているわけです。その意味では、情報がそこで大きな役割を果たすと私は思います。ですから、その意味で事業者というのは広く理解しているということと、それのサービスの質を高くさせるという意味で、この情報の持つ意味は大変重要であると。その場合に、実は、これを事業者に任せておったのでは、僕はやらないと思うんですよ。先ほど出ましたように、今の認可保育所であってすら、情報を出さないわけですから、まして無認可、未認可と言われているものはなかなか出そうとしないでしょう。その辺の枠組みをつくるのは、むしろ行政の役割ではないだろうか。そこで、情報の枠組みをちゃんとつくって、それに乗っかってこない、例えば未認可の保育所とか、あるいは認可保育所であってもそうだと思いますけれども、そういったもののコンセプトを、これは起こしてしまえばいいですね。これがあると、行政の立場で調整できるということの意味ですが、そういう枠組みをつくっていく、情報ということで。そういう役割が大変重要になるんじゃないだろうか。
 ですから、これは業者任せにするんというんじゃなくて、やっぱり私は、行政の持つ役割、中身の問題は別ですが、そういう枠組みをつくるという意味での行政の役割というのは非常に大きいんじゃないか。そこら辺のところを、この中で少し見えるようにしてもらったほうがよろしいのでないかというふうに読ませていただきました。 そのほかには、細かい文言的な問題等がございますが、これは後でまた申し上げますけれども、例えば4ページのところ、あまり細かいことはあれですが、例えば下から3つ目のところに、「変化した」とありますが、「変化しつつある」というふうな言い方のほうがいいと思ったり、あるいはその後の、6ページの2段目に、「一方で、多様な事業者が参入すると、過度な価格競争により」と言いますけれども、これは少なくとも福祉の分野では、価格競争というのはあまり働かないんですね。だから、むしろこれは利潤なんですよね。だから、その辺のところの問題と、ちょっと書き直すべき点がありますが、これは後ほど気がついた点については、文書で提出させていただきたいと思います。
 思いついたものはそういうことでございますが、ただ、全体的に言うと、先ほど副委員長のお話があったように、こういう形で情報の問題を真正面から取り上げて、今後の福祉のあり方の重要なテコになるようにという点で、これだけのものをおまとめいただきました分科会、それから起草委員会の方に大変感謝を申し上げたいと思います。以上です。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。予定の時間が15分ほど食い込んでしまいましたが、私の進行の不手際で大変失礼をいたしました。
 きょうは時間の都合がございますので、今日いただきました意見につきましては、事務局と少し調整をさせていただきたいと思いますが、なお、事務局あてにファクス等で具体的にご意見があればちょうだいをしたいと思います。先ほども委員長がおっしゃったとおり、審議会の総会は26日の木曜日でございますので、その前の作業ということで言えば、10日ぐらいは修正の作業等に時間をちょうだいしたいと思いまして、来週16日月曜日までにご意見をちょうだいできればと思います。これらを調整させていただく作業を、最終案という形で、委員長、副委員長のご議論もございましたし、どの程度のことができるかということは甚だ心もとないところもないわけではございませんけれども、事務局と相談をしながら、提案させていただく最終案の作成ということの作業をご一任をいただければと思っております。その案をつくった上で、審議会の総会にご提案させていただくという、そういう手はずをひとつさせていただければと思いますが、いかがでございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

○高橋分科会長

 それでは、ひとつご指摘等をお待ちしておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、事務局のほうから何かございますでしょうか。

○松浦計画調整課長

 今、分科会長からお知らせいただいたとおりでございますけれども、ご意見等ございましたらば、4月16日月曜日までにファクスで事務局あてにお願いいたしたいと思います。なお、審議会総会につきましては、26日午後6時からという形で予定しております。お忙しいところを恐縮でございますけれども、本委員の皆様には総会へのご出席、よろしくお願いいたします。以上でございます。

○高橋分科会長

 それでは、きょうの分科会はこれで審議を終了させていただきます。大変貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。

(午後4時17分閉会)