平成15年7月28日
問い合わせ先 福祉保健局総務部企画計理課 電話 03−5320−4019 |
東京都社会福祉審議会・第3回「これからの福祉」検討分科会の審議結果
1 開催日時 平成15年7月28日(月)午後2時00分から午後4時00分まで
1 挨拶2 場所 東京都庁 第1本庁舎 33階 特別会議室N63 出席者
4 議事 2 資料説明 3 委員報告 4 意見交換 5 その他 5 議事録 |
(午後2時00分 開会)
○梶原計画調整課長 本日は、お忙しい中ご出席をいただきまして、ありがとうございます。私は、本年6月16日付で福祉局の計画調整課長になりました梶原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本分科会の書記をやらせていただいております。 ○並木企画担当参事 企画担当参事の並木でございます。委員の皆様方には、日ごろ大変お忙しい中、本委員会にご出席を賜りまして、まことにありがとうございます。 ○梶原計画調整課長 それでは、これから先の議事の進行につきましては、高橋分科会長にお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。 ○高橋分科会長 議事に入ります前に、平岡委員が初めて、1回目、2回目ご欠席だったかと思いますが、一言ごあいさつをお願いします。 ○平岡委員 平岡でございます。前回、前々回とも公務と重なりまして、申しわけございませんでした。欠席させていただきました。今日から加わらせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○高橋分科会長 それでは、早速始めさせていただきます。それでは、事務局から資料説明をまず、資料1になりましょうか、よろしくお願いをいたします。 ○梶原計画調整課長 それでは、私からご説明申し上げます。 ○高橋分科会長 ありがとうございました。これはお目通しの上、また将来の議論に生かしていきたいと思います。 ○執行委員 では、説明をさせていただきます。 |
問題点としては、そこに掲げられている利用料負担の問題などがあり、さらに詳しくは、全国社会福祉協議会で『地域福祉権利擁護事業の機能拡充に関する研究』が出されており、そこにいろいろな問題点が述べられています。 社会福祉法の改正によって、障害者分野においても契約制度が導入されたわけです。さらに、基本的な考え方が定められています。利用者本位の立場に立った社会福祉制度の構築であるとか、福祉サービスの質の向上であるとか、社会福祉事業の充実、活性化、さらに地域福祉の推進といったものであります。 そして、サービス提供における事業者の義務として、10ページに掲げられていますように、利用者に対する情報提供の努力義務であるとか、申込者に対する説明の努力義務とか、利用契約成立時の書面の交付義務であるとか、質の向上の努力義務、誇大広告の禁止、苦情の解決の努力義務といったものがあります。それらの義務はあくまでも行政上の義務で、しかも努力義務とするものが少なくないということが言えるだろうと思います。 そうしますと、苦情解決は何を基準にするか。もちろん合意が基礎ということになると思うのですが、合意をするかしないかという場合でも法律というのは役に立つわけですが、何を基準にするか。もちろん努力義務がありますので、努力義務だとしても、そういうものが役に立つという指摘もできるかもしれません。 また、適用対象は社会福祉事業であり、特別養護老人ホームだとか、居宅介護サービスなどに限られているという問題があります。 介護保険につきましては、情報提供については掲示事務だとか努力義務などが課せられています。虚偽、誇大広告の禁止も定められています。『高齢者法』という本によりますと、個別の事業者に対する規制であるので、利用者が複数の事業に関する情報を十分に入手し、選択に資するための実効性としては不十分だと指摘されています。 重要事項説明義務、書面交付というものもあります。重要事項説明書の交付だとか、説明、利用者の同意を得る義務などが課されています。書面を交付しなければいけないということが課せられて、もちろんこれは行政上の義務ということになります。 契約締結の拒否についても、事業者は正当な理由なくサービスの提供を拒んではならないという規定が設けられています。 ケアプランの作成においては、説明と同意が事業者の義務になっています。 サービス内容については、運営基準に関する各省令の基準がたくさん規定されています。 適切なサービスの確保については、公的な監督、規制手段があるわけです。ただ、これも『高齢者法』では、介護報酬の審査支払いを通じて不適切なサービスが発見されることはあまり期待できないのではないかと指摘されています。 運営適正化委員会というものが設置されていますけれども、日弁連の著書によりますと、その能力があるか、また中立性、公平性の確保ができるかという問題点が指摘されております。そのようなことから福祉オンブズマンが注目されているというわけです。 契約の終了につきましては、規定がありません。 そこで、時間もないのですけれども、福祉サービスの消費者保護のあり方ということで、消費者保護の基本的な考え方を考えてみたいと思います。 まず、消費者法の発展の視点から考えてみます。どういうふうに消費者法は発展してきているのかといいますと、「消費者保護法」(落合誠一著)には、一般にそういうふうに言われていますけれども、今までは行政規制によって消費者を保護していたのであるけれども、民事ルールへ移行している。ただ消費者契約法の見直しが必要だ──十分でないので、それを見直してよりよいものにしていく必要がある。それから、具体的な取引類型に応じた特別法である関係法律の整備、充実が必要である。実効性の確保が必要である。例えば、裁判へのアクセス、団体訴訟の導入が今は議論されていますが、さらにクラスアクション制度の導入も考えるべきだとされています。それから、ADRの多様化だとか充実が必要だというわけです。消費者保護基本法においても、消費者の権利を認める方向で改正が考えられています。 それからもう一つ、紛争解決についてですが、このような指摘があります。これも一般的なのではないかと思います。裁判外紛争解決は極めて重要であるが、実効的な民事裁判を欠いてはその健全さを失わざるを得ない。実効的な民事裁判とその周辺の法的措置、弁護士の法的サービスの普及などが整っていく限り、裁判外紛争解決方法は消費者契約をめぐるトラブルの処理にとって極めて望ましいということで、『消費者取引と紛争解決』という本で、中央大学の民事訴訟法の小島武司先生が述べられています。この問題の第一人者と言えます。 そもそも福祉サービス事業者と消費者の紛争は私的紛争なので、消費者の権利を擁護するためには、消費者の権利が明確に定められている必要があるということが言えるだろうと思います。そのような明確な権利が十分定められていず、苦情解決の仕組みのみが整備されただけでは、消費者の権利の擁護としては十分ではない。民法の立場、従来の消費者法の立場からすれば、そういうことが言えるのではないかと思います。 そこで、基本的な問題ということになるのですが、基本的には事業者と消費者が対等とされ、消費者に権利があるとされ、いわば最近の消費者法の流れのように、民事ルールで解決する方向が福祉サービスでも示されていると言えるのではないかと思います。ただ、実質的な消費者保護は、これまでどおりの行政規制によって問題を解決しようとしていると、理解できるのではないかと思います。たとえ行政上の事業者の義務が私法上の義務となるとしても、そういう解釈が認められるかどうか不確定であります。また、努力義務まで私法上の義務とすることは難しいだろうと思います。 それから、福祉サービスの種類によって行政上のルールが異なって、消費者からすれば理解困難である場合が少なくないだろうと思います。福祉サービスに関して、消費者がどのような私法上の権利を有するかを知ることは、現状では極めて困難であると思います。消費者が高齢者、障害者であることを考えればなおさらであります。また、前述のように、消費者契約法だけで福祉サービス利用の保護を図ることは困難ということになります。 そういうことからしますと、既に指摘した福祉サービスの特徴、特に福祉サービスが利用者にとって必要不可欠なもので、利用者が通常の消費者と比較としても情報量、交渉力の格差が大きい消費者である点を考慮して、基本的には通常の消費者契約と比較しても、事業者と消費者とが対等となるための消費者の権利を擁護するようなルールとしていく必要があると、考えられるだろうと思います。 そこで、もうあまり時間もありませんが、福祉サービスは医療と関係しておりますので、医療サービス契約の最近の動きを紹介したいと思います。樋口範雄という東大の先生なのですが、「患者の自己決定権」という論文の中で、患者と医者との関係は信託モデルが考えられる、アメリカではそういうふうに考えられていると指摘されています。 どういうものか。日本でも信託法があるわけですけれども、ただ、我が国では信託は契約によって成立すると考えられています。当事者では対等で、一方が他方に依存して、信頼して頼る関係にある。選択の自由、内容についても一定の選択の自由はある。受託者は受益者の利益を図らなければいけない。つまり、医者は患者の利益を図らなければならず、しかも医者は患者の利益のみを図る義務がある。受託者は、自己の利益や当該患者以外の第三者の利益を図ってはならない。信託を受けた当事者は、一定の権限を相手方の利益のためだけに行使することを引き受ける。そのモニタリングコストが高く、義務の履行を監視することが困難である。そこで、通常の契約モデルでは生じない義務すなわち一般の通常の義務よりは強い忠実義務を課せられ、情報に関する義務も特有な義務が課せられるのだというわけです。 ヨーロッパでは、やはり民活化ということで、従来、国とか公的・準公共機関が供給した公的サービスが民営化された場合の利用者の保護が非常に大きな問題になっております。そのようなサービスは、現代社会において消費者の一定水準の生活に必要とされるサービスであって、それは社会的な権利と認められています。まだ議論の途中なのですけれども、この問題について、資料に書いてあるウィルヘルムソンというフィンランドの学者、消費者法の第一人者とも言えるわけですが、ヨーロッパ消費者法においては一般的な原則となってきている適正な期待が、この問題でも重要なガイドラインである。アクセス権とか、差別を禁止する平等原則がそこになければいけない。本人に過失のない事件によって、公益サービスがすぐに利用できなくなるべきではない。このような原則が打ち立てられるべきだと主張されています。 それから、消費者との銀行取引における法律問題ということで、インターネットにあるのですけれども、全銀協の金融法委員会研究報告書で、東大の能美先生は次のようなことを言われています。現在の社会においては、ある種の銀行取引は消費者にとって必須の取引になっているので、法律上は締約強制はないが、合理的な理由なく銀行取引を拒むことは不法行為となると考えるべきだ。契約内容の点での差別的扱いについても同様である。さらに、EUの消費者法グループがリーテル・バンキングに関する提言で、契約内容の公正さを一層追及することを宣言している、生活必需的な契約においても、特に公正さが要求されていると考えることができると、言われております。 このようなことから、消費者保護の各論的方向性、それぞれが非常に重大な問題で、簡単な問題ではないのですけれども、次のように考えていくことができるのではないかということを述べて、おしまいにさせていただきたいと思います。 福祉サービスというのは必要不可欠であるわけで、それがないと非常に健康、生命にもかかわることもあり得るわけですので、福祉サービスのアクセス権とか、平等原則というものがルールとして確立されるべきだろうと考えられます。 それから、事業者の注意義務も、もちろんいろいろ検討しなければいけないのですが、通常の場合と違って高度な注意義務が課せられることになるだろう。 そこで、単なる情報提供義務ではなくて、消費者に間違いがあれば間違っているよということを助言する義務があるだろう。事業者は、ある意味で利用者を支援する義務もあると考えられるのではないかというわけです。それから、相手を配慮しなければいけない、配慮するという強い義務があることから、書面交付義務も課せられる。 そういうことから、これもかなり検討しなければいけないのですけれども、クーリングオフを認めたらいいのではないかとも考えております。 契約内容の公正さについても、通常の消費者契約法よりも厳しい公正さが要求されるべきである。それから、どういう公正さが要求されるかは、より明確にしていくべきだろうと思われます。 それから、合理的選択についてですけれども、事業者の利用者に対する情報提供義務のみでは解決しない問題であります。というのは、情報を提供したとしても、実際そうであるかはわからないわけですから、そこで比較可能な情報の必要性がありますし、第三者評価の義務づけなど、評価を公表するということも考えられるだろうと思います。ドイツの最近の法律ではそういう義務を課しています。そして、今朝の新聞(平成15年7月28日・日本経済新聞朝刊)でも、厚生労働省はそういう義務を我が国でも介護サービスにおいて課そうとしているということのようです。 これまで、福祉サービス利用保護のあり方を、主として民法、消費者法の視点から検討したにすぎないわけで、それでも十分ではなくて今後も検討しなければいけません。それから、市場の観点からということになりますと、もう少しマクロ的に考えていかなければいけないわけですけれども、事業者と消費者との関係に焦点を当てて考えてきましたので、ここでの議論に十分役に立つものかどうかは非常に心配でありましたが、一応考えてきましたところは以上であります。 ○高橋分科会長 執行委員、ありがとうございました。 ○中村委員 それでは、ぎりぎりの資料が今、配付されておりまして、大変ぎりぎりの作業で申しわけございません。 |
続いて申し上げておかなければいけないことですが、こうしたものを担う一翼としてのNPO、NGOということは当然考えたいわけですが、いろいろな課題がございます。ちょっと戻っていただきますが、表紙から3枚めくっていただいたところに、綴じてあるところで見にくくなっているかもしれませんが、資料3−1というものと、その次の資料3−2というのがございます。それから、後でお配りいたしましたリーフレットのようなものがございます。 これは、1つにはNPO、NGOが今、直面している課題はたくさんあるんですが、最大のものの一つとして、資金に代表されるリソースという問題です。これを何とか解決するための今後の社会的な働きかけや、システムをつくるための展望というかプラン、構想としてどういうものを考えようかということで、パブリックリソースセンターという、これも特定非営利活動法人です。 パブリックリソースというのは造語でして、コミュニティーリソースという英語をちょっと和製英語化したものです。わかりやすく言えば、人々が共通して使えるような資源ということで、資源の中身はお金だけではなく、人材であったり、情報であったり、さまざまなノウハウであったり、ちょうどこの資料3−1という図の上の段の真ん中ぐらいに出ているいろいろなタイプの資源です。 NPO、NGOは、こうした資源をみずからの価値とか、ビジョンとか、ミッションとマネジメントスキルというものをつけ合わせながら、活用していくことが望まれるわけですが、残念ながらここが必ずしも潤沢にあるわけではありません。したがって、パブリックリソースというものの右側にありますパブリックリソース供給システム、あるいは供給主体、これもちょっと不十分で、もう少しいろいろつけ加えなければいけないんですが、こういうものからパブリックリソースが具体的に使える形になるための仕組みを、社会的に追及していくという課題が大きくございます。 したがって、これは個々のNPOが抱える課題であると同時に、例えば行政との関係、あるいは企業との関係で解決を求めていく課題であろうと思いますし、それは実際に具体的に、いわゆる行政との共同、あるいは企業との共同という形で、さまざまな事例が出ているものです。 そのための方策の一つとして、1枚めくっていただきますと、市民社会ファンドというものが構想図として、これもパブリックリソースセンターでつくった図です。実は、このパブリックリソースセンターも私が一緒に立ち上げたものでして、現在、理事としてかかわっているので、こうやってちょっと引っ張ってきておりますが、これは固有名詞の市民社会ファンドというのがあるわけではなくて、こうしたものを今後立ち上げていく必要があるということで、今、試験的なものは立ち上がってきております。要は、ある種の専門性を持った、資金をはじめとしたリソースの循環のために活動できる非営利、非政府の組織を想定しているということです。 これくらいのものをつくるだけの専門性を持ったスタッフは、ようやくこの分野にもあらわれ始めておりまして、全国津々浦々にこういうものができるほどにはまだいっていませんが、少なくとも東京都というレベルで考えたときには、相当な人材がもう集中しておりますので、パブリックリソースセンターももちろんその一つではありますけれども、これは現実的な可能性がかなり出てきているということです。 それと、お手元にお配りしたピンク色のリーフレットは、もう既に活動をかなり展開しております、特定非営利活動法人の市民社会創造ファンドというものです。これは固有名詞です。私も立ち上げに参加しているんですが、日本NPOセンターというNPO分野のナショナルセンターと深い関係を持ちながら、立ち上がってきたものです。現在、幾つかの大企業、あるいは多国籍企業の中の日本法人との連携で助成金の事業を行ったり、それから労働金庫との提携で、地域の助成だけではなく、その先、融資にもかかわるような活動を行ったり、それからインターンシップの事業を行ったりしております。こういうものがもう具体的には立ち上がってきているということです。 それから、ちょっとばたばたとあちらこちらへ行って恐縮ですが、また綴じた資料集に戻っていただきまして、今の図をまた1枚めくっていただきますと、資料4−1、4−2というのがございます。これは出展は、表紙のレジュメの下に書いておきましたが、コミュニティービジネス研究会という、財団法人東京市町村自治調査会でこの間、私が座長になって進めておりましたものをまとめた報告書からとったものです。 コミュニティービジネスという言い方は、非常に今、盛んになっておりまして、コミュニティービジネスと地域通貨というのは2大ブームなわけですけれども、これも実は概念そのものがあまり明確ではないまま流布しているところがありまして、いろいろと問題はあるんですが、これは先ほど申しましたインフォーマルなセクターも含んだ、つまり市場ということだけではなくて、あるいは政府行政との関係ということだけではなくて、インフォーマルなセクターとの関係も含み込んだ上で、NPOに代表されるような非営利、非政府の組織。 さらには、それが経済的な事業をかなり展開するものとしての社会的起業、人の場合は社会的起業家という言い方になりますが、そういうものが実は海外からの、ある種輸入で、これもまた相当言われ始めているわけですが、日本では社会的起業というのは一般の起業ブームとあまり区別がついておりませんで、フォープロフィットのセクターと、ノンプロフィットのセクターのちょうど中間にあるものぐらいの位置づけでしか考えられていないんです。 あと、やっている人が社会的であると言えば、何でも社会的起業だとなってしまっているんですが、それはやはり間違いでして、先ほどちょっとお示ししました社会的排除、これは当然失業ということも含めてですが、そういった状況を目の前にして、どのように、いわゆるサードセクター的な組織がそれに対して、事業を通じて解決を図っていけるかという中で出てきたので、単にノンプロフィットのセクターやサードセクターを事業化するという話ではありません。 そういうことはあるんですが、一応、コミュニティービジネスという言葉が日本ではわりと耳目に入りやすいということで、その言葉を使っております。 これを非営利、それから真ん中に社会的経済(Social economy)とありますが、これは実はいろいろな言われ方をしているものなので、この言葉で必ずしも適当ではないんですが、それから右側にとりあえず営利としてあります。 福祉サービスの場合にも、おそらくこの図に示したようなあり方の中で、NPO、NGO的な事業組織が、コミュニティービジネスとして立ち上がってきている例というのはかなりあるわけで、こういうものを福祉サービス市場全体の中でどのように位置づけ、そこに対するファイナンスをどうするのか。それから、実際のサービス供給主体としての役割をどの辺に置いていくのか。そしてもう一つは、NPO、NGOのもう一つ重要な役割であるアドボカシー的なものをどう取り込んでいくのか。そういうことを整理して考えるときに役立つようにということでつくった図です。 1枚めくっていただきますと、東京市町村自治調査会というのは東京の市部、主に多摩地域の自治体が集まっているものですから多摩を念頭に置いておりますが、これは福祉サービスに限って想定した図ではございませんので、若干ずれるところもありますが、例えばひとり暮らし、あるいは高齢者のみの世帯に対するさまざまな物流的なところの支援もこういうやり方で、コミュニティービジネス的な形での支援というものが、地域性やその地域の高齢者の世帯のあり方によっては、十分想定し得るところに来ているのではないかということでつくったものです。 これはあくまでモデルのイメージ例ですので、株式会社コミュニティービジネス商店街サービスという架空のものと、NPO法人元気ドリームサービスというものがどのようにつながれるかということで考えたものです。 先ほどちょっと大事なことを言い落としておりましたが、さっき既に見ていただきました、表紙を2枚めくっていただいた資料2の図の右下に、3つの社会的役割というのを挙げてございます。(3)についてはちょっと大きな話なので今回は省きますが、(1)(2)という両者がNPO、NGOが福祉サービス市場に関わるときの基本的な役割として重要である。つまり、現場で財やサービスを提供する主体となると同時に、NPO、NGOというのはサービス供給主体であると同時に、サービスの受け手による団体という側面も持っておりますので、現場で活動するからこそわかるさまざまな課題や問題を具体的な提案の形にしていく。この両者の関わりがおそらく出てくるだろうということが、さっきからご説明していることの背景にあります。 ちょっと時間をオーバーしましたので、最後に、資料集の一番最後につけておりますことです。これは日本の例ではないので、必ずしもそのまま適用できるというものではないんですが、実はイタリアの社会的協同組合というやり方が非常に今、私たちのこの分野では注目をされておりまして、イタリアのある州における、公設民営型の居住型の高齢者ホームの運営委託にあたっての、コンテスト方式による入札の選定基準です。これは非常に特徴的なので、今後のNPO、NGOなどが関わるときに重要な視点ではないかと思うんですが、幾つか特徴がございます。 1つは、価格とサービスの特質の勘案の割合が違います。この表のEというのを見ていただきますと、価格というのが、A分のBとかXというのが下に書いてありますが、評価すべき価格分のオファーの中の最低価格×30というものが点数として出てきて、これを全体の選定基準の中の最高30点という割合にしていく。つまり、価格とその他のパラメーターのバランスが30対70になっているんです。通常、もう少し価格のバランスの割合が高いと思うんですが、ここではそのぐらいに抑えている。 それから、サービスの質を把握するための多角的な検討というのがA.B.C.D.の項目の中に入っております。サービス内容とか遂行能力はもちろんのこと、その前後ですね。例えば、教育、それから評価のシステムが確立されていることが問われています。 3番目に、地域的要素を大変重視しております。比重自体は必ずしも高いとは言えませんが、例えばそこの項目でいいますと、C.及びD.の(7)に見られるように、地域的なかかわりをどの程度重視しているかが制定の基準に盛り込まれております。つまり、これは先ほどから縷々ご説明しました、地域密着性とでもいいますか、あるいは地域資源を活用できるネットワーク形成がなされているかどうかを見るということです。 イタリアの社会的協同組合というのは、協同組合というと日本の生協を想像するかもしれませんが、実はそういうタイプの組織ではなくて、形式は協同組合ですが、いわばNPOといってもいいと思います。 このイタリアの社会的協同組合は、例えばこういうものに対応できるように小規模、それから特定専門分野、それから地域性、この3つをモットーにしたものがかなり増えてきているんです。それを、ある一定の規模になると、スピンオフ戦略といいまして分権化を図っていきます。地域密着型であることを、巨大規模化することでそれが落ちていくことを防ぐようにしています。しかし、規模のメリットに関しては、それぞれの社会的協同組合が地域コンソーシアムというのをつくりまして、さらに全国コンソーシアムというのをその上に3層構造のように持って進めることで、規模のところのデメリットが出ないようにするというやり方をとっております。 今後のNPOの戦略的な方向性としては、こういうものが参考になるだろうということで、ちょっとご紹介がてら入れてございます。 以上、大変あちこちに飛んで恐縮だったんですが、評価は時間がなかったので割愛しました。後でもしご質問あれば、若干述べさせていただきますけれども、福祉サービス市場を大都市東京で考える場合に、NPO、NGOがそこに参入をしてくるときに持ち込まれる視点を、どういうものが出てき得るのかということでご紹介をさせていただきました。ちょっとオーバーして申しわけありませんでした。 ○高橋分科会長 ありがとうございました。NPOの動きというか、そういうものに関するパースペクティブを持ちながら、具体的な地域福祉計画に即して幾つか、非常に重要な論点を提起していただいたような気がいたします。 ○新村委員 済みません。難しいことなので、ちょっと的を外れているかもしれないけれども、教えていただきたいんですが。 ○高橋分科会長 ありがとうございました。時間の関係で、もう少しご意見があったら、まとめてお二方にお答えいただくという形で。いかがでしょう、藤井委員。 ○藤井委員 執行委員が御説明の中でおっしゃっておられる、福祉の対象とする消費者、利用者である、殊に高齢者に対して、これらの人達を総体的に守っていく仕組み、すなわち、制度なり、法律をもっとしっかり支えていくという社会全体の意識づくりが、強く必要とされていると思われます。現在、約4割の若年世代の人達が年金や各種保険料を支払っていないということも報告されておりますが、福祉を支える人達はやがて自分も支えられるのだと安心してサポートし、支えられる人達は感謝して介護を受けるという基盤づくり、そして意識づくりを社会全体としてもっと強力に推し進めていかなければいけないのではないか。 ○高橋分科会長 ありがとうございました。 ○武田委員 非常に難しい話なので、私も雑駁な感想レベルになってしまうわけですけれども、執行委員からレポートをいただきましたとおり、たしかに消費者保護の問題は非常に大事な話だと思っています。 ○高橋分科会長 もうそろそろ、執行委員ちょっと……。はい、どうぞ。 ○新村委員 ごめんなさい。さっき言い忘れたことなんですけれども、執行委員のほうのことで、最初に被害の実態から入るとおっしゃって、国民生活センターの事例集を例におとりになったと思うんですが、私はあそこから入るのがちょっと間違いのような気がしているんです。 ○高橋分科会長 国民生活行政担当の行政官としてのご経験からの発言もあったかと。それでは、どうぞお二方からコメントを。 ○執行委員 後の分析でも、後を見ていただければおわかりだと思うんですけれども、実際の相談であるとか、苦情だけを見るのではなくて、その背景を見るわけです。一般化して考えていくわけです。ですから、細かいところだけをとって、この問題がある、この問題があるということだけではなくて、それを一般化して、消費者福祉サービスの特徴とどう結びつくのか。それから、出てないものでも、そういう一般化からどういうことが問題になるのかということを、一応、私なりに考えたというわけです。 ○高橋分科会長 ありがとうございました。 ○中村委員 なかなか難しいご質問でもありますので、うまくお答えできるかどうかわりませんが、まず、私が出しましたNPO、NGOの3つの社会的役割のうちの、(3)はちょっときょうは省きましたので、(1)と(2)を同時に担うことになったときに、とりわけ(1)の役割についてどうなのであろうかということがあったかと思います。 ○高橋分科会長 ありがとうございます。もう予定した時間でございまして、本来はもう1時間ぐらい欲しいところでございますが、今日、こういうことで打ち切らせていただかざるを得ないのが大変残念でございますが、お二方のプレゼンテーションが、前回もそうでございましたが、これからの我々の論議のベースになる大変重要な論点をそれぞれのお立場でお出しいただきましたので、また折に触れて、きょうの議論はぜひディスカッションさせていただきたい。それはまた事務局ともご相談して、プレゼンテーションの結果を幾つか論点整理しながら、ご審議いただく段階でもう一度議論をさせていただく機会をぜひつくりたいと考えておりますので、よろしくお願いをいたします。 ○梶原計画調整課長 9月3日です。 ○高橋分科会長 9月3日ということで第4回を開催したいと思いますが、審議のテーマについては、社会保障の制度の発展と再編という視点の中で福祉サービス市場の関係ということで、とりわけイギリス等の、ヨーロッパの動きに大変お詳しいということもございますし、日本の介護保険の動向についてのリサーチ等もいろいろな形でやられておりますので、平岡委員にぜひお願いをしたいと思います。 ○梶原計画調整課長 ある程度のボリュームで結果が出てくるまでは、もうしばらくかかりそうでございます。 ○高橋分科会長 そうですか。やはり東京都で幾つか先駆的に手がけているものの進行状況等を含めて、第三者評価を一度ぜひここで議論をして、ご報告いただきたいなとも思っておりますが、そんなことも含めて、場合によってはゲストスピーカーということも考えておりますが、テーマ等については事務局とご相談の上ということで、とりあえず平岡委員には、9月、よろしくお願いをしたいと思います。 ○梶原計画調整課長 先ほど分科会長からございました、9月3日、水曜日の午後2時から4時までということで、次回、お願いをしたいと思っております。 ○高橋分科会長 秋に入りますと、またそれぞれの委員の方がお忙しくなる時期に差しかかりますので、10月以降の日程調整も事務局で早目にお願いをして、時間を確保することをひとつよろしくお願いをいたします。 |
(午後4時03分 閉会)