福祉保健局トップページへ
  企画計理課トップページへ

平成15年7月28日

問い合わせ先
福祉保健局総務部企画計理課
電話 03−5320−4019

東京都社会福祉審議会・第3回「これからの福祉」検討分科会の審議結果

1 開催日時

  平成15年7月28日(月)午後2時00分から午後4時00分まで

2 場所

  東京都庁 第1本庁舎 33階 特別会議室N6

3 出席者

    分科会長 高橋 紘士   立教大学コミュニティ福祉学部教授
    副分科会長 野村  歡   日本大学理工学部教授
    委員
    新村 保子
    三宅  亨
    大澤 義行
    藤井 俊郎
     
    住友生命総合研究所常務取締役
    東京都社会福祉協議会副会長
    東京都民生児童委員連合会会長
    会社顧問(元日本発条(株)副社長)
    臨時委員 執行 秀幸
    武田 雅弘

    中村 陽一
    平岡 公一
      明治学院大学法学部教授
    ベネッセコーポレーション
    シニアカンパニー本部調査室次長
    立教大学大学院21世紀社会デザイン科研究教授
    お茶の水女子大学大学院教授

4 議事

  1 挨拶
  2 資料説明
  3 委員報告
  4 意見交換
  5 その他

5 議事録

(午後2時00分 開会)

○梶原計画調整課長

 本日は、お忙しい中ご出席をいただきまして、ありがとうございます。私は、本年6月16日付で福祉局の計画調整課長になりました梶原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本分科会の書記をやらせていただいております。
 開会に先立ちまして、事務局より、委員の皆様の出欠につきまして報告をさせていただきます。本分科会の委員総数は12名でございます。そのうち、本日、所用のために欠席の報告をいただいております委員の方は、白石委員、手塚委員と、三浦オブザーバーでございます。したがいまして、本日出席予定の委員の方は10名となりますので、定足数に達することを報告させていただきます。
 続きまして、皆様方のお手元に配付してございます資料のご確認をさせていただきたいと思います。資料は1から3までございます。
 資料1は、前回の第2回「これからの福祉」検討分科会での主な意見を踏まえた論点ということでまとめさせていただいております。
 資料2は、執行委員からご提出いただきました「福祉サービスの消費者(利用者)保護のあり方」でございます。
 資料3−1につきましては、お手元に後ほどお配りをさせていただきたいと思います。
 資料3−2は、同じく中村委員からご提出いただきました「まちがだんだんみえてきた 市民がつくる地域福祉計画」という冊子でございます。
 また、本日は傍聴の方がいらっしゃいますので、あわせてお知らせいたします。
 なお、当審議会の議事録は、東京都のホームページに掲載されまして、インターネットを通じて公開されますので、申し添えさせていただきます。
 なお、6月16日付で福祉局幹部職員の異動がございました。本分科会の新しい幹事、書記の名簿をお配りしております。後ほどご覧ください。
 それでは、ここで、新しく企画担当の参事になりました並木により、代表してごあいさつさせていただきます。

○並木企画担当参事

 企画担当参事の並木でございます。委員の皆様方には、日ごろ大変お忙しい中、本委員会にご出席を賜りまして、まことにありがとうございます。
 平成12年の介護保険制度の導入、あるいは本年4月の障害者福祉分野におきます支援費制度への移行など、福祉の分野におきましてはさまざまな改革がされておりまして、行政による措置から、利用者自身の選択に基づく契約へと、サービスを利用する仕組みが大きく転換してきております。こうした状況を踏まえながら、東京都におきましても、多様な事業者によります競い合いと、利用者の選択により福祉サービスの量と質を充実させ、利用者本位の福祉を実現すべく福祉改革を推進しているところでございます。
 そのような中で、本分科会におきましては、福祉サービス市場という視点を通しまして、大都市東京におきますこれからの福祉のあり方につきまして、幅広くご審議をいただいております。福祉サービス市場という視点は非常に今日的な視点でございまして、21世紀の社会福祉を考える上での重要なポイントになると考えております。
 この社会福祉審議会の議論を踏まえまして、今後の東京都の社会福祉の進むべき方向につきまして探っていきたいと考えておりますので、皆様方におかれましては、今後とも本分科会に特段のお力添えをいただきたくお願い申し上げまして、簡単ではございますが、あいさつにかえさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

○梶原計画調整課長

 それでは、これから先の議事の進行につきましては、高橋分科会長にお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

○高橋分科会長

 議事に入ります前に、平岡委員が初めて、1回目、2回目ご欠席だったかと思いますが、一言ごあいさつをお願いします。

○平岡委員

 平岡でございます。前回、前々回とも公務と重なりまして、申しわけございませんでした。欠席させていただきました。今日から加わらせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○高橋分科会長

 それでは、早速始めさせていただきます。それでは、事務局から資料説明をまず、資料1になりましょうか、よろしくお願いをいたします。

○梶原計画調整課長

 それでは、私からご説明申し上げます。
 まず、資料1でございます。前回の分科会での意見を踏まえまして、論点を事務局で整理したものでございます。前回、白石委員、武田委員からご報告をいただきました。
 白石委員からは、公的介護保険制度と市場という形でご報告をいただいたところです。大きく6点について、論点という形でまとめさせていただいております。
 1点目は、シルバーサービス市場です。これは1980年代ころからさまざま言われておりますけれども、現行の介護保険内で支給されるもの以外にも多岐にわたるサービスということで、旅行であるとか、生きがいづくり等に至るまで、多様なジャンルを考えられるだろうということであります。
 2点目は、介護市場への参入の事例ということで、さまざまなところから参入の事例が見られる。
 その中でということで3点目でございます。民間事業者の事業展開例として、複数事業展開型、あるいは提携型、全国展開型等々、それぞれの事業展開によりさまざまな特色がある。その中で、市場の健全育成のためには多様な支援策が必要であろうということが3点目でございます。
 4点目としては、介護事業者の概要ということで、シルバーサービス振興会の調査報告をもとにした分析をご報告いただいております。
 第5点目が利用者からみた課題ということで、これも東京都社会福祉協議会の調査から見た、サービスに対する満足度、困ったこと等のご報告をいただきました。
 6点目、事業者の健全育成ということで、苦情の問題、あるいは介護報酬とその質の問題、それから制度そのものの検討、このようなご報告をいただいたと思います。6点、大きく分けてまとめをさせていただきました。
 武田委員からは、福祉サービス市場における民間企業の役割とその参入促進についてということで、大きく分けて4点のまとめをさせていただいております。
 1点目は、福祉サービスの対象領域拡大とそれに伴う規制・補助のあり方の変化ということです。従来の要援護者、あるいは限られた方々に対象が限定されていたわけでございますけれども、それが大きく普遍的、一般的なサービスということで変化をしてきている。その中でのニーズの多様化、あるいは提供主体の拡大を踏まえた競争と選択に基づく質の向上、あるいは選択の多様性の確保への転換ということが論点になったかと思います。こうした事業者の参入促進と消費者の選択による淘汰、これを踏まえながら市場ということ、この市場が円滑に機能するように配慮していくことが市場形成の考え方、あり方だろうということが1点目でございます。
 それから、民間事業者参入にあたっての問題ということで、これは特に特定施設入所者生活介護の場合ということで、特別養護老人ホームと比較をしながら、そこにおけるコストの問題、あるいは利用者負担の問題を比較していただきながら、論点整理をしていただいたというふうにまとめさせていただいております。
 3番目、施設事業の主なスキームということで、これは入居一時金の問題、それから初期投資の問題、具体的な例を出していただきましてご議論をいただきました。
 それから、杉並区における新型ケアハウスPFIの事業スキームにおける区としてのメリット、事業者としてのメリット、利用者としてのメリットについて、実際に杉並区で取り組まれているPFIの事業スキームからのご報告をいただいたという、この4点にまとめさせていただきました。
 その上で、5ページでございますけれども、各委員からさまざまな意見をいただいたところでございます。ここでは大きく分けて4点に分けてございます。
 「福祉」の転換と今後のあり方ということで、福祉が、いわゆる従来の行政の措置制度のもとでの保護というものから、自立支援、自己決定、自己選択という中で、サービスを効果的、効率的に組織するための仕組み、これが一つ大きなテーマであろうということから、それぞれの福祉の対象者の面、あるいは福祉のあり方の場合の精神障害者の面。福祉のあり方、施設のあり方、その中での施設需要の考え方。従来の質と量という問題、特にサービスの質、量の向上策、施策ということ。具体的に高齢者施策の対象者での問題、グループホームのあり方の問題等々をいただいたところであります。
 次のページでございますけれども、6ページ目にはサービス事業者とビジネスモデルということで、それぞれご議論をいただきました。特に介護サービス事業、在宅サービスの場合につきましては、民間企業も参入が可能ということでございますので、NPO、民間企業、あるいは従来の社会福祉法人、こういう中でさまざまな課題のご議論をいただいたところでございます。
 3点目、良好な住まいということで、住まいと介護の問題というのは介護保険の議論の中でもしばしば問題になっているところでございます。特に前回、特養における、いわゆるホテルコストの問題等々もいただいたところでございまして、福祉施策と住宅施策の分離と整合化が課題になっているのではないかということでございます。
 7ページ、その他ということで、東京における問題、地価の高さの問題をクリアするという点、それから介護保険におけるドイツの場合を引きまして、日本の社会福祉法人そのものの今後のあり方、こういう点でご議論をいただいたというふうにまとめさせていただきました。
 以上でございます。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。これはお目通しの上、また将来の議論に生かしていきたいと思います。
  きょうは、お二方の委員の方に冒頭お願いをしてございます。「福祉サービス市場における利用者保護」というテーマで、執行委員にお願いをしてございます。ひとつよろしくお願いをいたします。

○執行委員

 では、説明をさせていただきます。
 私自身、福祉については、今まで十分勉強してきたことがあるわけではありませんので、場合によっては非常に的を得ない話をするかもしれませんけれども、ただ、最近の福祉の動きについて、これまで民法とか消費者法を勉強した者から見ると、どういうふうに見えるかということを、今日、お話をさせていただきたいと思います。
 まず、措置から契約へということで、それは準市場化なのであるというようなことがこの席でも述べられたことがあるんですが、それはどういうことなのかということがわかりにくかったのですが、次のように私としては考えているということです。
 措置においては、効率性だとか選択性、即応性に劣るので、その意味では政府の失敗がある。それに対して、福祉サービスを市場化するといっても、生産性は低くて市場では十分供給されないおそれがある。そういう意味では市場の失敗もそこにある。それを同時に解決する必要があって、措置から契約へ、準市場化というのは、まさにそういう意味を持つのであるという解説がありまして、私としてもそのような理解で考えていきたいと思います。
 そうしますと、十分な市場が形成されにくいということでありますし、従来、措置によって利用してきた利用者が消費者になるわけですので、その意味で消費者の保護が必要であると一般的に理解されているのではないかと思います。
 ただ、ちょっと前までは、事業者は営利事業者ではないのであるから、消費者保護は問題にならないのではないかというような議論がありましたが、消費者契約法におきましては事業者は必ずしも営利事業を営む者でなくてもいいのである。非営利法人でも、それから国であるとか地方自治体などでも事業者であると考えられていますので、この問題は消費者保護の問題だということでは、異論がないということになるのではないかと思います。
 ただ、この問題を見ていきますと、消費者保護というよりは権利擁護という言葉が非常に多く使われておりまして、権利擁護というのはどういう意味を持つのか。また、消費者保護と権利擁護との関係はどうなのかといったことが問題になるわけです。ただ、いずれにせよ権利擁護という言葉はさまざまな意味で議論され、必ずしも明確なものではないということもありまして、ここでは、もちろん後にもう少し緻密に検討していかなければいけないとは思いますけれども、広く利用者の保護を消費者保護ということで論じていきたいと思います。
 ここでは、本稿の目的として、福祉サービスの消費者保護の現状とあり方を、基本的考え方を中心に論じていきたいと思います。そして、できれば大きな視野からマクロ的に見ていけばよろしいと思うんですけれども、民法とか消費者法というのはどうしても事業者と消費者との関係といった視点から見ていきますので、どちらかと言えばミクロ的な、非常に細かい議論になってしまうことになるだろうと思います。いずれにせよ、民法、消費者法から最近の福祉サービスのあり方を見るとどうなるかということを検討していきたいと思います。
 消費者法の研究におきましては、まず「被害」から出発しなければいけないと言われております。そこで、福祉サービスをめぐってどのような「被害」が発生しているのかということを紹介しまして、それを若干分析することにしたいと思います。ほかにもっとたくさんあるとは思うんですけれども、最近、「介護サービスと介護商品にかかわる消費者相談」という本が国民生活センターから出ておりますので、それを主として、素材にして紹介したいと思います。
 その本によりますと、2000年度は介護にかかわる相談は606件だそうです。介護サービスの相談の実態は、504件ありまして、この本の分析者によりますと、介護サービスの質の相談が非常に多いという指摘をしております。
 そこで、より具体的に見たほうが妥当だと思いますので、1ページの下の(ウ)のところからいきますが、介護支援サービスの相談の実態を見ておきたいと思います。そこではどんな「被害」があるかといいますと、契約の拒否があるというわけです。たくさん挙げると時間がなくなってしまいますので、幾つかの例を挙げるにとどめます。
 計画の作成だけを依頼し、介護の提供は別事業者と契約する消費者は、計画作成を後回しにして作成を断られることがある。それから、居宅サービス計画に利用者のニーズ、利用者側の要望が必ずしも十分反映されてないという問題があるというわけです。24時間の介護を依頼したところ300万円かかると言われたとか、週1回、訪問介護を頼んだら勝手に週2回にされたとか、不要なレンタルベッドや車いすを無理に契約させられたといったような問題があります。
 背景には、これまでも指摘されていることだろうと思いますけれども、介護支援専門員の居宅介護支援事業者が介護サービス提供事業者でもある場合には、提供事業の種類とか量だとか、提供者などの事業者の業務内容や希望を反映した計画をつくらざるを得ないという要請があります。他方、居宅介護支援事業者が介護サービス提供事業者でもある場合、事業者にとって都合のよいサービス提供が優先される可能性があるということがあります。介護支援専門員の質の問題も考えられると思います。
 それから、居宅サービスに関してですが、有料老人ホームについては事業者への不信等から解約したいが、解約金に納得ができないという事例がかなり多いということです。
 訪問介護につきましては、事業者をどのように選択していいかよくわからないとか、契約を拒否されたとか、介護援助は2時間未満は受け付けないとか、介護の質も問題になっておりまして、健康食品を購入させられたとか、たんすの引き出しを無断で開けたり、おかずを多くつくり持ち帰ってしまったとか、ひどい言葉を浴びせられたというような例が挙げられております。介護の内容については、してほしいことをしないとか、変更についても、変更を希望しても拒否されてしまう。契約内容は、免責規定などがあるということが問題になっています。
 施設サービスについても、やはり契約拒否の問題があります。それから、介護の質が悪く食事をとれず衰弱してしまったとか、リハビリが予定表にあるのに実行されたことがないといったものがあります。それから、財産管理まで口を出してきて、文句を言ったら追い出されてしまったという例もあります。
 これらの相談事例をこれから分析していくわけですけれども、まず福祉サービス契約の特徴を考えてみたいと思います。これは一般に言われていますけれども、すべてではありませんが、第1の福祉サービス内容の特徴としましては、継続的サービスである点があります。第2に、利用者にとって必要不可欠なサービスである。第3に必要とされる福祉サービスは時間とともに変わる可能性があるものである。それから、第4に高齢者、障害者などが消費者であって、通常の消費者と比べると、非常に情報量や交渉力の格差が事業者との間では大きいという特色があります。
 これらの特色から、先ほど述べた相談事例を分析していきますと、こういうことになるのではないかと思います。
 契約の拒否ですけれども、事業者は効率性からすれば選別して、より利益が上がる利用者と契約したいということになるだろうと思います。ところが、利用者としては、福祉サービスは不可欠であって、契約しないと非常に困るという自体が発生するわけです。
 それから、合理的選択の困難性ということも挙げることができます。といいますのは、サービスの内容とか質というのは契約等で特定をすることは困難だと指摘されております。内容については、事業者の説明義務、表示義務である程度は解決するとは思いますが、現にそのとおりの内容、質のサービスが提供されている保証はないわけです。その他に質の確保が必要となるわけで、従来は許可制度であるとか、資格制度であるとか、マーク制度であるとか、第三者評価制度といったものが必要になるだろうと指摘されています。
 福祉サービスの特色から生ずる困難性としては、サービス内容が一人一人異なるということで、なかなか内容、質を見極めるのが難しいということがあります。それから、居宅介護支援契約、居宅サービス契約が併存するなど非常に複雑であります。他方、利用者は、介護等が必要な高齢者、障害者で、なかなか内容を理解するのは難しいということがあります。
 さらに、契約の解約についても問題になるだろうと思います。利用者側からの解約としては、なかなか合理的選択が困難で、実際、サービスの提供を受けると、予想とは違った、期待とはかなり違ったなどということは十分に起こり得るわけで、解約したいということになります。事業者側としては解約を阻止したいということで、解約料などを高く設定することが考えられるということになります。
 それから、事業者側からの解約ということもあり、面倒な方に出ていってもらいたいなどということが考えられるわけで、契約でさまざま規定することが考えられるということになるわけです。ただ、解約を容易に認めていきますと、契約拒否と同様な結果になるのではないかと思います。それから、利用者側の契約違反等による解約でも、利用者にとっては不可欠なものであるわけですし、結局、利用できないということになると、健康、生存等に重大な影響を及ぼすおそれがある場合もある。そういう問題が発生してくるわけです。
 福祉サービス内容の変更なのですが、福祉サービスの内容は利用者のニーズに合ったものである必要があって、利用者のニーズが変化すればその内容も変わる必要がある。そういう契約内容が変更可能な仕組みが必要になってくるというわけです。
 それから、消費者契約で約款による取引だということから、不当条項が入る可能性がある。利用者は、情報量、交渉力の格差がより大きい消費者であるということで、不当条項がやはり大きな問題になり得るというわけです。
 それから、福祉サービス利用者の権利の実現の困難性ということも指摘できます。サービスの内容とか質は特定が困難であるということになりますので、しかも物の取引と異なって物的証拠はないわけです。さらに、福祉サービスは第三者のいないところで提供される場合が多いので、そこでなかなか証人も得られないということになります。しかも、福祉サービスの利用者はヘルパーや施設に依存しているので、権利主張をするのが難しいということが言えます。
 さらに、福祉サービス利用者の、上で述べたこととほとんど同じなのですけれども、財産権が侵害されるというようなことが考えられ、また、場合によってはプライバシーの侵害等々の人権侵害が考えられると思います。
 次に、福祉サービスの消費者保護をめぐる法的環境の現状はどうなのか、また、それらにどんな問題点があるのかということを、簡単に触れていくことにしたいと思います。
 まず、民法とか民事救済制度についてですが、ごくごく基本的なことを述べれば、契約自由の原則で、当事者の合意のみでよい、書面等は不要である、誰と契約を締結しても自由だ、どのような内容の契約を締結することも自由だというわけです。
 そういうように契約自由に基づいて契約をしたからには、契約は守らなければいけないということで、そうするとどうなるかといいますと、原則的には合意があれば有効に成立するということになります。その前提としては、対等であって、しかも両当事者は必要な情報を十分知っているという前提であります。
 ただ、例外があって、強迫だとか詐欺の場合、錯誤の場合などは、取り消したり無効を主張することができる。能力が不十分な場合においても取り消しができる場合もあるというわけです。例外でありますので、厳格に解釈されているということになります。
 当事者は契約を守らなければいけないという原則から導かれる第二の原則は、原則としてすべての契約条項に拘束されるというわけです。ただ、例外的に公序良俗だとか、信義則であるとか、契約の制限解釈などによって、極めて不当な条項に限っては無効とするということになります。
 それから、私法上の権利が侵害された場合に、裁判所に訴えた場合、自ら権利を実現しなければいけないというのが原則であります。民事訴訟法制度では、結局、自己責任の原則が支配して、当事者が対等であるという前提をとっております。ただ、時間やコストがかかり、経験や法的知識が必要だということで、なかなか裁判をすることは難しいということになります。
 そこで、紛争の自主的解決というものがあって、和解だとか調停または仲裁などが、その意味でも注目を集めているというわけであります。
 そのような対等であるという立場から、今、述べたようなルールになっているわけです。ただ、消費者契約では当事者は対等でなく、しかも福祉サービス契約も消費者契約でありますので、消費者契約法の適用があるということになるわけです。では、消費者契約法はどんな内容で、どの程度福祉サービスにおいて役に立つのか、問題があるのかということをお話ししたいと思います。
 消費者契約法は、契約締結過程の公正さが強化されている。詐欺、強迫が若干緩やかな場合でも取り消しが認められているというわけです。ただ、情報提供義務については努力義務しか認められませんでした。ただ、宅建業法等では重要事項説明義務が課されています。ただ、私法上の効果の規定はありません。
 詐欺、強迫よりも緩やかに取り消しが認められるものとして、誤認だとか困惑による取り消し権があります。消費者契約法以外には、クーリングオフもあります。
 そこで、福祉サービス契約における消費者契約法の意義ということになるわけですけれども、違ったことを述べた、不実告知による取り消し権は役に立つといえます。重要事項を定めた文書を交付しなければいけないと厚生省政令で定められていますので、重要事項が定められていて、実際は違ったということであれば、不実告知による取り消しが認められる可能性があります。
 不当条項についても一定限度の意義があるのではないかと思われます。
 ただ、次のような問題が考えられます。福祉サービスの利用者は通常の消費者と異なります。先ほど何度も申し上げていますから略しますが、同じ程度の保護でいいのかという点があります。それから、情報提供は義務でしかないということで、福祉サービスというのは情報提供が極めて重要なことから、この点でも問題があります。
 障害者、高齢者が当事者であるということからの問題としては、諸外国では身体的、精神的能力の低下につけ込む、信頼を裏切るような場合の保護について、消費者を保護するようなルールを定めているところがありますが、消費者契約法ではそのような規定はないので問題だということが考えられます。
 クーリングオフの規定も個別的、限定的であって、消費者契約法に定めがないということで、もし認めたほうがいいということであれば、そういう規定がないということは問題だということになります。
 契約書面の交付が義務づけられていないという点も問題であります。
 不当条項規定は限定的であるという点も問題だと言えます。
 契約の拒否だとか差別が問題になりますから、そういうものに規制がないという点でも問題です。
 さらに、権利実現のための方策が十分でありません。消費者に権利が与えられていても、権利が実現されなければまるで意味がないわけで、そうしますと裁判をしようと思ってもなかなか難しい。我が国でも少額訴訟制度はありますけれども、さらにもっと利用しやすいものにする必要があるのではないかということが考えられますし、最近、問題になっています団体訴訟とか、法律扶助制度なども拡充すべきだということが言えるだろうと思います。ADRの拡充だとか活性化の必要性も指摘できます。
 福祉サービスの合理的選択のための方策に関しても極めて不十分です。事業者には、情報提供義務がないだけではなくて、情報提供義務が課せられただけでも、必ずしも合理的選択がうまくいくとは限りません。そういう問題があるだろうと思います。
 いずれにせよ一言で言えば、消費者契約法によってある程度は福祉サービスの利用者は保護されるかもしれませんが、福祉サービスの利用者に起こるであろうさまざまな問題を解決するにはきわめて不十分だということが言えるであろうと思います。
 もう一つ福祉サービスについては、障害者だとか高齢者が当事者ということになりますので、十分な判断能力がないということが考えられるわけで、それらの人々のサポート体制をどうするかという問題があります。そこで、十分ご存じだと思いますので簡単に話をさせていただきたいと思いますが、成年後見制度というものがつくられたわけです。
 では、利用状況はどうなっているかといいますと、7ページの下ですが、2002年に出た日本弁護士連合会編『契約型福祉社会と権利擁護のあり方を考える』を参考にして書かせていただきました。
 2000年では9,007件ということだったのですが、2001年では1万1,088件になりました。厚生省の予測としては、2000年の介護保険要介護認定の予想人数は280万人でした。ドイツの被世話人は、我が国の成年後見人にあたるわけですけれども、50万人です。それと比べると少ない、改正後で、このぐらいの人々が利用しているということであれば、かなり利用率が高いのではないかと評価は分かれるだろうと思います。
 申立の動機ですが、介護保険契約のためというのは2%、身上監護についても15.9%と極めて低いということが言われています。
 問題としては、市町村長が申立をすることができるわけですが、それは115件で、市町村長の申立権限は4親等内の親族がいない場合に限定されているという制約があるので、なかなか難しいのではないと思われます。それから、費用上の問題、後見人がなかなか見つからないとか、後見事務自体の問題であるとか、事業者があまり積極的ではないという問題があると指摘されています。
 では、地域福祉権利擁護制度について運用はどうか。9ページですが、そこでは相談実績は17万7,981件で、契約締結件数は924件。それから1年後には5,644件、かなり急激に利用されるようになっていると言えるだろうと思います。
 契約内容としては、資料に書いてある通りです。ただ、都道府県についてはばらつきがあって、東京都は利用されているほうだと言えるのではないかと思います。


 問題点としては、そこに掲げられている利用料負担の問題などがあり、さらに詳しくは、全国社会福祉協議会で『地域福祉権利擁護事業の機能拡充に関する研究』が出されており、そこにいろいろな問題点が述べられています。
 社会福祉法の改正によって、障害者分野においても契約制度が導入されたわけです。さらに、基本的な考え方が定められています。利用者本位の立場に立った社会福祉制度の構築であるとか、福祉サービスの質の向上であるとか、社会福祉事業の充実、活性化、さらに地域福祉の推進といったものであります。
 そして、サービス提供における事業者の義務として、10ページに掲げられていますように、利用者に対する情報提供の努力義務であるとか、申込者に対する説明の努力義務とか、利用契約成立時の書面の交付義務であるとか、質の向上の努力義務、誇大広告の禁止、苦情の解決の努力義務といったものがあります。それらの義務はあくまでも行政上の義務で、しかも努力義務とするものが少なくないということが言えるだろうと思います。
 そうしますと、苦情解決は何を基準にするか。もちろん合意が基礎ということになると思うのですが、合意をするかしないかという場合でも法律というのは役に立つわけですが、何を基準にするか。もちろん努力義務がありますので、努力義務だとしても、そういうものが役に立つという指摘もできるかもしれません。
 また、適用対象は社会福祉事業であり、特別養護老人ホームだとか、居宅介護サービスなどに限られているという問題があります。
 介護保険につきましては、情報提供については掲示事務だとか努力義務などが課せられています。虚偽、誇大広告の禁止も定められています。『高齢者法』という本によりますと、個別の事業者に対する規制であるので、利用者が複数の事業に関する情報を十分に入手し、選択に資するための実効性としては不十分だと指摘されています。
 重要事項説明義務、書面交付というものもあります。重要事項説明書の交付だとか、説明、利用者の同意を得る義務などが課されています。書面を交付しなければいけないということが課せられて、もちろんこれは行政上の義務ということになります。
 契約締結の拒否についても、事業者は正当な理由なくサービスの提供を拒んではならないという規定が設けられています。
 ケアプランの作成においては、説明と同意が事業者の義務になっています。
 サービス内容については、運営基準に関する各省令の基準がたくさん規定されています。
 適切なサービスの確保については、公的な監督、規制手段があるわけです。ただ、これも『高齢者法』では、介護報酬の審査支払いを通じて不適切なサービスが発見されることはあまり期待できないのではないかと指摘されています。
 運営適正化委員会というものが設置されていますけれども、日弁連の著書によりますと、その能力があるか、また中立性、公平性の確保ができるかという問題点が指摘されております。そのようなことから福祉オンブズマンが注目されているというわけです。
 契約の終了につきましては、規定がありません。
 そこで、時間もないのですけれども、福祉サービスの消費者保護のあり方ということで、消費者保護の基本的な考え方を考えてみたいと思います。
 まず、消費者法の発展の視点から考えてみます。どういうふうに消費者法は発展してきているのかといいますと、「消費者保護法」(落合誠一著)には、一般にそういうふうに言われていますけれども、今までは行政規制によって消費者を保護していたのであるけれども、民事ルールへ移行している。ただ消費者契約法の見直しが必要だ──十分でないので、それを見直してよりよいものにしていく必要がある。それから、具体的な取引類型に応じた特別法である関係法律の整備、充実が必要である。実効性の確保が必要である。例えば、裁判へのアクセス、団体訴訟の導入が今は議論されていますが、さらにクラスアクション制度の導入も考えるべきだとされています。それから、ADRの多様化だとか充実が必要だというわけです。消費者保護基本法においても、消費者の権利を認める方向で改正が考えられています。
 それからもう一つ、紛争解決についてですが、このような指摘があります。これも一般的なのではないかと思います。裁判外紛争解決は極めて重要であるが、実効的な民事裁判を欠いてはその健全さを失わざるを得ない。実効的な民事裁判とその周辺の法的措置、弁護士の法的サービスの普及などが整っていく限り、裁判外紛争解決方法は消費者契約をめぐるトラブルの処理にとって極めて望ましいということで、『消費者取引と紛争解決』という本で、中央大学の民事訴訟法の小島武司先生が述べられています。この問題の第一人者と言えます。
 そもそも福祉サービス事業者と消費者の紛争は私的紛争なので、消費者の権利を擁護するためには、消費者の権利が明確に定められている必要があるということが言えるだろうと思います。そのような明確な権利が十分定められていず、苦情解決の仕組みのみが整備されただけでは、消費者の権利の擁護としては十分ではない。民法の立場、従来の消費者法の立場からすれば、そういうことが言えるのではないかと思います。
 そこで、基本的な問題ということになるのですが、基本的には事業者と消費者が対等とされ、消費者に権利があるとされ、いわば最近の消費者法の流れのように、民事ルールで解決する方向が福祉サービスでも示されていると言えるのではないかと思います。ただ、実質的な消費者保護は、これまでどおりの行政規制によって問題を解決しようとしていると、理解できるのではないかと思います。たとえ行政上の事業者の義務が私法上の義務となるとしても、そういう解釈が認められるかどうか不確定であります。また、努力義務まで私法上の義務とすることは難しいだろうと思います。
 それから、福祉サービスの種類によって行政上のルールが異なって、消費者からすれば理解困難である場合が少なくないだろうと思います。福祉サービスに関して、消費者がどのような私法上の権利を有するかを知ることは、現状では極めて困難であると思います。消費者が高齢者、障害者であることを考えればなおさらであります。また、前述のように、消費者契約法だけで福祉サービス利用の保護を図ることは困難ということになります。
 そういうことからしますと、既に指摘した福祉サービスの特徴、特に福祉サービスが利用者にとって必要不可欠なもので、利用者が通常の消費者と比較としても情報量、交渉力の格差が大きい消費者である点を考慮して、基本的には通常の消費者契約と比較しても、事業者と消費者とが対等となるための消費者の権利を擁護するようなルールとしていく必要があると、考えられるだろうと思います。
 そこで、もうあまり時間もありませんが、福祉サービスは医療と関係しておりますので、医療サービス契約の最近の動きを紹介したいと思います。樋口範雄という東大の先生なのですが、「患者の自己決定権」という論文の中で、患者と医者との関係は信託モデルが考えられる、アメリカではそういうふうに考えられていると指摘されています。
 どういうものか。日本でも信託法があるわけですけれども、ただ、我が国では信託は契約によって成立すると考えられています。当事者では対等で、一方が他方に依存して、信頼して頼る関係にある。選択の自由、内容についても一定の選択の自由はある。受託者は受益者の利益を図らなければいけない。つまり、医者は患者の利益を図らなければならず、しかも医者は患者の利益のみを図る義務がある。受託者は、自己の利益や当該患者以外の第三者の利益を図ってはならない。信託を受けた当事者は、一定の権限を相手方の利益のためだけに行使することを引き受ける。そのモニタリングコストが高く、義務の履行を監視することが困難である。そこで、通常の契約モデルでは生じない義務すなわち一般の通常の義務よりは強い忠実義務を課せられ、情報に関する義務も特有な義務が課せられるのだというわけです。
 ヨーロッパでは、やはり民活化ということで、従来、国とか公的・準公共機関が供給した公的サービスが民営化された場合の利用者の保護が非常に大きな問題になっております。そのようなサービスは、現代社会において消費者の一定水準の生活に必要とされるサービスであって、それは社会的な権利と認められています。まだ議論の途中なのですけれども、この問題について、資料に書いてあるウィルヘルムソンというフィンランドの学者、消費者法の第一人者とも言えるわけですが、ヨーロッパ消費者法においては一般的な原則となってきている適正な期待が、この問題でも重要なガイドラインである。アクセス権とか、差別を禁止する平等原則がそこになければいけない。本人に過失のない事件によって、公益サービスがすぐに利用できなくなるべきではない。このような原則が打ち立てられるべきだと主張されています。
 それから、消費者との銀行取引における法律問題ということで、インターネットにあるのですけれども、全銀協の金融法委員会研究報告書で、東大の能美先生は次のようなことを言われています。現在の社会においては、ある種の銀行取引は消費者にとって必須の取引になっているので、法律上は締約強制はないが、合理的な理由なく銀行取引を拒むことは不法行為となると考えるべきだ。契約内容の点での差別的扱いについても同様である。さらに、EUの消費者法グループがリーテル・バンキングに関する提言で、契約内容の公正さを一層追及することを宣言している、生活必需的な契約においても、特に公正さが要求されていると考えることができると、言われております。
 このようなことから、消費者保護の各論的方向性、それぞれが非常に重大な問題で、簡単な問題ではないのですけれども、次のように考えていくことができるのではないかということを述べて、おしまいにさせていただきたいと思います。
 福祉サービスというのは必要不可欠であるわけで、それがないと非常に健康、生命にもかかわることもあり得るわけですので、福祉サービスのアクセス権とか、平等原則というものがルールとして確立されるべきだろうと考えられます。
 それから、事業者の注意義務も、もちろんいろいろ検討しなければいけないのですが、通常の場合と違って高度な注意義務が課せられることになるだろう。
 そこで、単なる情報提供義務ではなくて、消費者に間違いがあれば間違っているよということを助言する義務があるだろう。事業者は、ある意味で利用者を支援する義務もあると考えられるのではないかというわけです。それから、相手を配慮しなければいけない、配慮するという強い義務があることから、書面交付義務も課せられる。
 そういうことから、これもかなり検討しなければいけないのですけれども、クーリングオフを認めたらいいのではないかとも考えております。
 契約内容の公正さについても、通常の消費者契約法よりも厳しい公正さが要求されるべきである。それから、どういう公正さが要求されるかは、より明確にしていくべきだろうと思われます。
 それから、合理的選択についてですけれども、事業者の利用者に対する情報提供義務のみでは解決しない問題であります。というのは、情報を提供したとしても、実際そうであるかはわからないわけですから、そこで比較可能な情報の必要性がありますし、第三者評価の義務づけなど、評価を公表するということも考えられるだろうと思います。ドイツの最近の法律ではそういう義務を課しています。そして、今朝の新聞(平成15年7月28日・日本経済新聞朝刊)でも、厚生労働省はそういう義務を我が国でも介護サービスにおいて課そうとしているということのようです。
 これまで、福祉サービス利用保護のあり方を、主として民法、消費者法の視点から検討したにすぎないわけで、それでも十分ではなくて今後も検討しなければいけません。それから、市場の観点からということになりますと、もう少しマクロ的に考えていかなければいけないわけですけれども、事業者と消費者との関係に焦点を当てて考えてきましたので、ここでの議論に十分役に立つものかどうかは非常に心配でありましたが、一応考えてきましたところは以上であります。

○高橋分科会長

 執行委員、ありがとうございました。
 大変インスパイアされる報告をいただいたので、ほんとうはディスカッションをすぐしたいところなんですが、多分この内容をディスカッションすると4時まであっという間にかかりそうだなとも思いつつ、次にも内容豊富なレポートが控えております。そういうわけで、中村委員のレポートをいただいて、2つのご報告、まとめてディスカッションの時間がとれればいいなと思っております。いずれにせよ、今回限りではなくて、次へと引き続くレポートをいただいたような気がいたしますので、ひとつそんなことで次に進ませていただくということで、中村委員、よろしくお願いいたします。「これからの地域福祉における市民ニーズとNPOの役割」というテーマで、お話をいただく予定でございます。よろしくお願いをいたします。

○中村委員

 それでは、ぎりぎりの資料が今、配付されておりまして、大変ぎりぎりの作業で申しわけございません。
 今、配られました綴じられたもの、それから事前に冊子として皆さんのお手元にありますもの、それから今、パンフレットのようなものを配っていただいておりますが、以上3種類の資料を使いながらお話をさせていただこうと思います。一応30分ぐらいでと事務局の方から伺っておりますので、なるべくそれに合うようにお話をしたいと思います。
 私も、いわゆる社会福祉の専門家というわけではございませんので、NPOとか市民活動といった分野から関わるようになりまして、福祉の世界というのは大変奥が深いなということを改めて感じております。地域のありようとか、人の生き方、死に方、暮らし方、そういったことに関わってくることですので、そういう視点から今回の分科会の全体的なテーマに接近できないかと思いまして、こういうタイトルをつけさせていただきました。
 ちょっと細かく文章化してくることができませんでしたので、ポイントとキーワードのようなものは1枚目に示してございますけれども、以下、その資料を見ていただきながら、かなり口頭で補う形にさせていただこうと思います。
 まず、検討ポイントのところを先に問題意識としてお話ししてしまったほうがいいと思うんですが、この分科会では、大都市東京における福祉サービス市場というのが大きなテーマになっているかと思います。そういうふうにとらえた場合に、大都市東京という言葉にあまり引っ張られ過ぎますと、要するに規模だけで見ていくことはなかなかできないテーマだと思うんです。前回もいろいろなご報告がありましたし、多様性ということがその中で非常に重要な点になりますし、規模の経済というよりは、こういう分野は範囲の経済とか、あるいはNPO、NGO的な視点も入れますと、連結の経済と言えるような発想を持っていく必要があるだろうと思っております。それからもう一つ、地域ということを後で(3)のお話と絡めて申し上げたいと思います。
 それから、(2)で書きましたのが一つの問題意識なんですが、これも一番最初に分科会の問題意識ということで、三浦オブザーバーからですか、ペーパーが出ていたと思います。そこで書かれていたことは私もそのとおりだと思うんですが、少し深めて考えますと、行政による措置制度から、市場における競い合いへという流れが基本的にそこでは想定されているわけですけれども、これはまず一つ、非常に簡単に移行できるものではない。これは前回、武田委員からのご報告の中に幾つかご指摘もあったかと思います。
 それから、競い合いということだけで、本当に住民、市民が選択できる福祉サービスの量、それから質、その両方が確保されるのかどうか。その結果として、利用者本位の福祉が実現されるのかどうか。この点についての検討は非常に重要なことだろうと思います。
 例えば、この点と関わって申しますと、いわば住民、市民の側、あるいは高齢者であれ、障害者であれ、事業所を選んだり、それからサービスを選択するということができる方向に行っているので、質の悪いサービスは淘汰され、サービスが向上するということはよく言われるわけですけれども、これは当然、多くの事業所とかサービスが存在して、顧客を求めて競争している状態。あるいは、そこでそれなりのプロフィットというものも見込めて、量的にも拡大が見込めるために新規参入が活発であるという状況があって、初めてそういう言い方は成り立つものだろうと思います。ところが、現状においては、いろいろな壁がまだあって、そうなっていないという現状の中でどう考えていくかという視点が一つは必要だろうと思います。
 それから、例えばサービスの質ということに関しても、東京都に限らずですが、どうもいろいろ出ている文章を拝見しますと、いわゆる専門的知識とか技量というものをそこに盛り込んだ発想になっているわけで、そのこと自体は私は間違ってはいないと思います。ただ、例えばヨーロッパなどの、いわゆる福祉先進社会と言われてきたようなところにおいては、一方では脱専門家という流れもかなり一般化してきている。もちろん、医療のように高度の専門知識を必要とする分野というのはあるわけですが、例えば介助という分野に関しては、一番いい介助者はどういう介助者かというと、高齢者なり障害者がこうしてほしいという指示どおりに、思いどおりに動いてくれる人が一番いい介助者だと言われているわけです。
 それから、生活の質、いわゆるQOLということに関しても、衣食住の水準をある基準にのっとって見るというのではなくて、むしろどれぐらい当事者が望む生活が達成されているのか、どれぐらい当事者の意見が実際の生活に反映されているのか。これを尺度とする方向に変わりつつあると言われています。そういう視点で見ますと、QOLが最も低いのが入所施設での生活だという言い方もあるわけで、こういうことを念頭に置いた上でどう考えていくべきかということです。
 それから、後で、一番最後のところで評価ということも若干触れさせていただきますが、例えば保育園のようなものであれば、少子化の影響を受けまして、内容的な、質的なものは一端置くと、数だけで見ますと、保育園数は利用希望者の数を上回っているという状況もあるわけです。そういう場合には利用者には選択が可能ですから、淘汰されていくような方向も、実際にこれまで行政が巨額の資金をかけて運営してきた保育園の中で、閉鎖の方向にあるものも出てくるということはあり得るわけです。
 ところが、高齢者福祉ということで考えますと、明らかに供給量が少なくて、待機者が非常に多数存在する。そこでは、おのずと評価のあり方は違ってくるだろう。供給が需要を上回っている場合のサービスの評価は、情報開示とか提供という形で利用者にサービスの選択権を与えることができます。しかし、供給が需要を下回っている場合は、積極的な評価というよりも、むしろ最低限の基準を満たしているかどうかがどうしても優先される可能性が高いのではないかと思います。したがって、評価もそういうことを考えた、福祉サービス市場におけるサービスの評価が必要になってくるだろうと考えます。
 それから、準市場という言葉は何回も出てきておりますが、この準市場的な環境にあっては、サービスを提供する側、それから利用者側の双方から、何が規制として存在しているのかを明らかにした上で、規制緩和を考えていくことも必要であろうと思われます。
  そういうことを考えていきますと、実は(3)のポイントとかかわるんですが、NPO、NGO、あるいはボランタリーな市民活動、実はNPOの定義というのは簡単なようで難しいところがありまして、きょう、それをやっていますと時間がありませんので、ボランティア活動やボランティア団体まで含めたさまざまなものを、とりあえずNPOという言葉できょうの報告では一括して話させていただきますが、実は多様なものを含むということを前提にしてお話しいたします。
 今、(1)(2)で申し上げたこととの関係で、NPO、NGOの役割というのを考えていきますと、1つには、いわゆるコミュニティー、地域社会と呼びかえてもいいですが、あるいはインフォーマルなセクターというものとの関係でNPO、NGOが非常に重要な役割を果たすことが、これからの福祉サービス市場においてはおそらく大事になるだろうということが1点。
 それから、単なるサービスの供給者としてのみ登場するのではなくて、市場のあり方自体、あるいは市場外のあり方も含めて、そこに対して発言をしていく。いわゆるアドボカシーと言われる分野ですが、こうした役割をも持った供給者であるということが、おそらく固有の特徴であろうと思われますので、そういったことをちょっと含み込みながら、資料に基づいてお話をできればと思っております。
 このことを少し先取りして言いますと、福祉というものに関するファイナンスと供給の分離ということは、既に盛んに言われてきたわけですが、それだけでは語れない、例えばベンダー型とパートナーシップ型と従来言われてきたものだけでは語れないような、まさにこの分科会でも議論されております多様なプロパイダー間の競争という要素が、現在、福祉の準市場をめぐっては当然あらわれているだろう。
 ただ、そこにおいては、ファイナンスと供給というものに加えて、先ほど言ったアドボカシー的な側面の延長で、どのように福祉サービスのあり方や福祉市場のあり方というものの、ある種レギュレーションと言われていますが、調整を行っていくのか。その場合において、NPOがある一定の役割を果たしていく福祉混合社会的なものを想定していく必要があるだろうというのが、私の基本的な立場でございます。しかし、その辺は深入りすると時間をとってしまいますので、このくらいにします。
 以下、キーワードはいろいろ並べ立ててあるんですが、順不同でございますので、その関連で、具体例を交えた素材提供のような形で話をさせていただこうと思っております。
 当然、NPOに関しては、期待は大きいんですが、非常に人気が高くて、オールスターに選ばれてしまう新人選手のようなところがありまして、残念ながら実力という点では、一部を除けばまだまだというところがあることは、どうしても前提にせざるを得ません。そういう点では、役割ということだけではなくて、課題にも若干触れたいと思います。
 まず、1枚めくっていただいて、資料1としてございますのが、先ほど申し上げたこととかかわりますので簡単に済ませたいと思いますが、これはペストフというスウェーデンの研究者の図を、ちょっと日本型に私のほうでアレンジしたものでございます。おそらくNPOの位置するところというのが、真ん中の逆三角形であります(4)です。ちょっとスペースがないのでそこに文字は入れてございませんが、そこに多分あるだろう。
 つまり、先ほど申しましたが、福祉ということに限って言いますと、福祉サービスの供給者としてのみあらわれるというよりは、つまり政府行政や民間企業との関係において競争者や、あるいはパートナーとしてあらわれるだけではなくて、もう一つインフォーマルなセクターでありますコミュニティー、あるいは地域社会との関係で存在をし、活動がなされていっている。このことがある種の特異な位置を規定しているところだろうと思います。
 この図についてはいろいろ含意もあるんですが、ちょっと省きまして、続きまして資料2をめくっていただきたいと思います。1枚めくっていただくと出てまいります。これは、実は本田技研の部長さんたちといろいろなディスカッションをする中で、私のほうで作成しました図なんですけれども、見取り図を大まかに示すためにご覧いただこうと思います。
  これもまた福祉という分野にとりあえず限って申しますと、NPO、NGOの役割というのは、おそらく現代社会にあっては右上と左下にあるだろう。これは従来、社会的排除というのは今、非常に注目をされてきている概念であり、ヨーロッパでは相当使われている概念でもありますけれども、日本でも厚生労働省の社会援護局の社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会報告書という、ちょっと長いものですが、赤い表紙の冊子の66ページをご覧いただけますでしょうか。これが今、言いました長いタイトルの報告書の中から、一つの図を引っ張ってきているものです。
 ここでも社会的排除という言葉を、おそらくはこういう公式の文書の中で初めてと言っていいと思うんですけれども、使用しておりますが、残念ながらまだ具体策の提示には至っていないですけれども、これからの福祉サービス市場を考えたときに、1つには、従来、既に克服途上にあると考えられていたような貧困に加えて、かなり幅広い意味での社会的排除という問題が日本の中でも、とりわけ東京のような場所ではかなり浮上してくるだろう。1つには、そちらへの手当てという意味ではNPO、NGOの役割があると思います。
 しかし、もう一方で、日本の、まさに大都市である東京都では、右下のような状況が当然あらわれているわけです。しかし、これも福祉国家から福祉社会への移行という中では、単に物を個人がそれぞれ所有していくとか、高い消費のレベルがあれば、それで事足りるといった意識のレベルには、今、おそらくもうない。だんだんに移行が始まっている。
 右上のところに「共費社会」と耳なれぬ言葉を造語で入れてございますが、例えば私有に基づいた消費ということではなく、いろいろなものをシェアしていく感覚。あるいは、自分にとって最適であったり、フィットするようなサービスや消費のあり方を、共同的に追求していくようなあり方。こういうものに対する、少なくとも意識の目はあらわれてきている。
 おそらくNPO、NGOというのは、そういうものをさらに促進しながら、新しい豊かさとちょっと抽象的な書き方をしてありますが、今までの、自分の周囲だけでは快適な環境を達成したけれども、一歩外に出て公共空間に出ると、あるいは社会的な課題である、例えば福祉という課題に直面すると、極めて不愉快な社会環境が広がっていってしまっている、社会に対する何らかの働きかけを行うものであろうと思われます。
 また1枚めくっていただくと、これは後でNPO、NGOの課題ということで申しますので、ちょっとここは飛ばさせていただきます。
 先ほど、コミュニティーとかインフォーマルセクターへのまなざしが大事だということを申しました。ここで赤い表紙の冊子を、開いていただきまして、まず2ページ目、3ページ目にはじめにというところがございます。
 実は、さいたまNPOセンターという特定非営利活動法人で、県レベルでの、いわゆる中間支援の組織、あるいはサポートセンターと呼ばれているものですが、これは民間で立ち上げたセンターで、私も立ち上げ時からかかわってきて、今、常任理事を務めている団体です。その関係でこの冊子を、きょう、ご提示をしております。
 この冊子について、まずご説明をしないといけないですね。これは、市民がつくる地域福祉計画ということを標榜しまして、例の地域福祉計画の策定に向けて、住民とか市民の立場からその計画策定に、できれば主体的に参画をしていくということを目指して行われた活動の報告書です。
 これには前史がございまして、実はさいたまNPOセンターは、かつて緊急雇用の特別交付金事業で、県から受託した形の事業で、介護保険サポーターズクラブというのをつくって活動しておりまして、これは要するに県内に1,000人の頼れる地域福祉のサポーターをつくろうという事業でした。その延長線上で、介護保険の市民調査というのを次にやったわけです。これは400人の市民調査員が、高齢者1,000人の利用状況を聞き取る中から課題を抽出しようというものだったわけです。
 この地域福祉計画に関する活動というのは、介護保険サポーターズクラブ事業、及びその延長線上で出てきた介護保険市民調査、その先にある、いわば第三段階といいますか、次のステップの活動でございます。
 一応、一番最初のところ、介護保険から地域福祉計画へという見出しがついておりますところに、今ご説明したような活動を踏まえて、4点ぐらいのことを考えたということが書いてあります。
 (1)は、介護保険という制度の枠を超えて、一人一人の暮らしの視点から課題を発見し、解決する必要がある。当然、これをどういうふうに住民、市民の視点からやれるかということです。
 2番目に、市民自身が課題解決のための手だてを持って、小さな地域単位で支え合いながら生活できる。こういう関係づくりがないと、おそらく地域福祉は成り立たないということです。
 3点目に、行政任せということではなくて、市民の側から主体的にまちづくりに関わって、ある場合にはサービスとか仕事や仕組みをつくり出すということが重要になっている。
 4点目に、そういうものの中で行政の役割を見直していくことが必要だろうということです。
 そういうことを踏まえて、市民の立場からの地域福祉計画ということを考えたときに、地域福祉計画にかかわって、厚生労働省の社会保障審議会の側から策定指針が発表されているわけですが、地域福祉計画の特徴的な点として、そこに3点挙げてございますが、プロセス重視とか、暮らしの課題を視野に入れるということに加えて、(3)に小地域単位で課題を解決すると。分野で分けるのではなくて、小地域単位で課題を解決するということが挙げてございます。
 こういう方向性で、どういうふうにやっていけばいいかということで、13ページから後に、まず他地域の実践事例というものを、これは皆、市民調査です。私たちというか、これは私の発案なんですが、数年前から調査というのを、一部の専門家やシンクタンクが請け負ってやるという従来の調査のあり方では、この分野はとりわけだめであろうということで、実際にサービスの受け手でもあり、それから供給者というか、担い手にもなり得るような立場の住民、市民自身が、市民的調査研究術というのを展開して、その講習なんかもやっているわけですが、それを踏まえた形で市民調査員が行うということを前提にした活動です。
 その市民調査員が参考にするために、実践事例というのをまずここでいろいろと見ていっております。一つ一つはご説明している時間はございませんので、また見ていただければと思いますが、その上で、39ページから、ワークショップなどをやりながら検討を進めていったということになっております。
 この検討は実はその後も、この報告書を出した後も続いておりまして、今、埼玉県及び県内市町村での地域福祉計画への投げかけというのを、こういうNPOの中間支援組織がコーディネートしながら進めているという状況になっているわけです。
 この報告書についてはその程度にいたしまして、また綴じた資料に戻りたいと思いますが、一番最初に見ていただいたほうがいいのは、資料5というのがございます。縦というか横というか、縦横逆というか、横にして見ていただく調査概要というのが、表で並んでいるものをちょっとご覧いただけますでしょうか。
 実はこれは、表紙のレジュメの資料の紹介、出典のところに書いてございますが、財団法人生協総合研究所が、地域における保健、医療、福祉サービスに関して、インフォーマルセクターを組み込んだプランニングのための調査研究をしたものからとったものです。
 以下、ちょっとその関係のものが続くんですが、この調査概要はそれぞれまたご覧いただければと思うんですけれども、基本的には、介護保険のサービスというものは当然重要なわけですが、それを超える部分で、例えば心のケアと呼ばれたり、あるいは地域の一員としての存在感を自分自身で確認できるような暮らし方。あるいは、生きている実感を持てるような、そういう部分を達成していくためには、フォーマルなサービスと、NPO、NGOやボランティア団体などによって担われるものも含んだ、インフォーマルなサービスというものが組み合わされていく必要があるだろうということで、その組み合わせがいろいろなタイプで行われているものに関して、調査がなされたものです。ここでは7つぐらいの事例が挙がっております。それぞれパターンが違うものです。
 これを通して見えてきますものは、地域性がそれぞれ異なります。人口動態や、その地域でどんな活動が盛んであるか、それから事業者としてどういう事業者が活動を展開しているか。そういったそれぞれの条件で地域性が違ってまいります。それによってパターンがいろいろ変わってくるということです。
 それから、その地域の中でも世帯構成によって、例えばひとり暮らしの場合と、介護者が仕事に出かけている、昼間独居とでもいうんでしょうか、そういうものではニーズが異なる。
 それから、やはり突発的な事情が家庭というのは出てきますから、そういうときに融通がつけられる、ご近所のサポートなどの開拓が必要であるというところから出てきているようなタイプのものもございます。
 それから、当然、高齢化率とか、市町村が提供しているサービス体制が異なりますから、そういう中でのニーズが異なっているということがございます。
 ただ、共通して課題になっておりますことは、例えばケアマネジャーですが、いわゆるケアマネジメントということは、介護保険サービスに限らず、今、申し上げた地域のいろいろな違い、サービスのありようの違い、それから地域によっては商店街のあり方であったり、地域独自のインフォーマルなサービスがこういうふうにあるということを含み込んだ背景を踏まえて、その人の生活全体を見て、ニーズに即した計画を作成して支援するという形が必要になってきていることが、いろいろなパターンでの調査を通じて見えてきております。
 そういうものをケアプランに盛り込みながら、サービスを合理的に統合していくことが必要であろうということが見えてきております。これについては、それぞれの事例は今回はコピーを省いてございますけれども、生協総研からの報告書をごらんいただくと事例の詳しいものが見られることになっております。
 その上で、次、めくっていただくと資料6−1というのが出てきますが、これも同じ報告書についている付録をコピーしております。これは三重県の伊賀地域、上野市でしょうか、そこで考えられておりますプラットホームシステムというものです。その基本的な紹介をした資料からコピーをしてございます。ですから、インフォーマルセクターを含み込んだ福祉サービス市場を考えていく場合に、例えばこういう発想が一つ出ているだろうということです。
 1枚めくっていただきますと、また横になりますが、プラットホームシステムの事例がいろいろなタイプで出ております。例えば、無償と有償のセットでマネジメントをするパターン。それから、目的別の移送サービスをしていくパターン。それから、また1枚めくっていただきますと、突発的なニーズに対応する場合のプラットホームコーディネート。そういうケースに加えて、さらに少しそれを発展させていった形として、地域生活サポートセンター設立へとある、D村と書いてあるもののパターン。さらに、また1枚めくっていただきますと、人材バンクとしてプラットホームを活用していくようなパターン。それから、人材育成で質の高いサービスを創造するパターン等々がございます。
 さらに、それを少しわかりやすくイラスト化したものもありましたので、ついでにつけておきました。めくっていただくと、資料6−5と右方に手書きで書いていただいていますが、プラットホーム物語ということで、これはストーリー展開にある種なっておりますので、具体的な地域の生活を前提にして考えた場合に、どのようにして現在の制度では足りない、あるいは制度を超えたところで出てくる市民ニーズに対して、対応するものとして、このプラットホーム的な発想が生かされているかということを見ていただけるのではないかと思います。


 続いて申し上げておかなければいけないことですが、こうしたものを担う一翼としてのNPO、NGOということは当然考えたいわけですが、いろいろな課題がございます。ちょっと戻っていただきますが、表紙から3枚めくっていただいたところに、綴じてあるところで見にくくなっているかもしれませんが、資料3−1というものと、その次の資料3−2というのがございます。それから、後でお配りいたしましたリーフレットのようなものがございます。
 これは、1つにはNPO、NGOが今、直面している課題はたくさんあるんですが、最大のものの一つとして、資金に代表されるリソースという問題です。これを何とか解決するための今後の社会的な働きかけや、システムをつくるための展望というかプラン、構想としてどういうものを考えようかということで、パブリックリソースセンターという、これも特定非営利活動法人です。
 パブリックリソースというのは造語でして、コミュニティーリソースという英語をちょっと和製英語化したものです。わかりやすく言えば、人々が共通して使えるような資源ということで、資源の中身はお金だけではなく、人材であったり、情報であったり、さまざまなノウハウであったり、ちょうどこの資料3−1という図の上の段の真ん中ぐらいに出ているいろいろなタイプの資源です。
 NPO、NGOは、こうした資源をみずからの価値とか、ビジョンとか、ミッションとマネジメントスキルというものをつけ合わせながら、活用していくことが望まれるわけですが、残念ながらここが必ずしも潤沢にあるわけではありません。したがって、パブリックリソースというものの右側にありますパブリックリソース供給システム、あるいは供給主体、これもちょっと不十分で、もう少しいろいろつけ加えなければいけないんですが、こういうものからパブリックリソースが具体的に使える形になるための仕組みを、社会的に追及していくという課題が大きくございます。
 したがって、これは個々のNPOが抱える課題であると同時に、例えば行政との関係、あるいは企業との関係で解決を求めていく課題であろうと思いますし、それは実際に具体的に、いわゆる行政との共同、あるいは企業との共同という形で、さまざまな事例が出ているものです。
 そのための方策の一つとして、1枚めくっていただきますと、市民社会ファンドというものが構想図として、これもパブリックリソースセンターでつくった図です。実は、このパブリックリソースセンターも私が一緒に立ち上げたものでして、現在、理事としてかかわっているので、こうやってちょっと引っ張ってきておりますが、これは固有名詞の市民社会ファンドというのがあるわけではなくて、こうしたものを今後立ち上げていく必要があるということで、今、試験的なものは立ち上がってきております。要は、ある種の専門性を持った、資金をはじめとしたリソースの循環のために活動できる非営利、非政府の組織を想定しているということです。
 これくらいのものをつくるだけの専門性を持ったスタッフは、ようやくこの分野にもあらわれ始めておりまして、全国津々浦々にこういうものができるほどにはまだいっていませんが、少なくとも東京都というレベルで考えたときには、相当な人材がもう集中しておりますので、パブリックリソースセンターももちろんその一つではありますけれども、これは現実的な可能性がかなり出てきているということです。
 それと、お手元にお配りしたピンク色のリーフレットは、もう既に活動をかなり展開しております、特定非営利活動法人の市民社会創造ファンドというものです。これは固有名詞です。私も立ち上げに参加しているんですが、日本NPOセンターというNPO分野のナショナルセンターと深い関係を持ちながら、立ち上がってきたものです。現在、幾つかの大企業、あるいは多国籍企業の中の日本法人との連携で助成金の事業を行ったり、それから労働金庫との提携で、地域の助成だけではなく、その先、融資にもかかわるような活動を行ったり、それからインターンシップの事業を行ったりしております。こういうものがもう具体的には立ち上がってきているということです。
 それから、ちょっとばたばたとあちらこちらへ行って恐縮ですが、また綴じた資料集に戻っていただきまして、今の図をまた1枚めくっていただきますと、資料4−1、4−2というのがございます。これは出展は、表紙のレジュメの下に書いておきましたが、コミュニティービジネス研究会という、財団法人東京市町村自治調査会でこの間、私が座長になって進めておりましたものをまとめた報告書からとったものです。
 コミュニティービジネスという言い方は、非常に今、盛んになっておりまして、コミュニティービジネスと地域通貨というのは2大ブームなわけですけれども、これも実は概念そのものがあまり明確ではないまま流布しているところがありまして、いろいろと問題はあるんですが、これは先ほど申しましたインフォーマルなセクターも含んだ、つまり市場ということだけではなくて、あるいは政府行政との関係ということだけではなくて、インフォーマルなセクターとの関係も含み込んだ上で、NPOに代表されるような非営利、非政府の組織。
 さらには、それが経済的な事業をかなり展開するものとしての社会的起業、人の場合は社会的起業家という言い方になりますが、そういうものが実は海外からの、ある種輸入で、これもまた相当言われ始めているわけですが、日本では社会的起業というのは一般の起業ブームとあまり区別がついておりませんで、フォープロフィットのセクターと、ノンプロフィットのセクターのちょうど中間にあるものぐらいの位置づけでしか考えられていないんです。
 あと、やっている人が社会的であると言えば、何でも社会的起業だとなってしまっているんですが、それはやはり間違いでして、先ほどちょっとお示ししました社会的排除、これは当然失業ということも含めてですが、そういった状況を目の前にして、どのように、いわゆるサードセクター的な組織がそれに対して、事業を通じて解決を図っていけるかという中で出てきたので、単にノンプロフィットのセクターやサードセクターを事業化するという話ではありません。
 そういうことはあるんですが、一応、コミュニティービジネスという言葉が日本ではわりと耳目に入りやすいということで、その言葉を使っております。
 これを非営利、それから真ん中に社会的経済(Social economy)とありますが、これは実はいろいろな言われ方をしているものなので、この言葉で必ずしも適当ではないんですが、それから右側にとりあえず営利としてあります。
 福祉サービスの場合にも、おそらくこの図に示したようなあり方の中で、NPO、NGO的な事業組織が、コミュニティービジネスとして立ち上がってきている例というのはかなりあるわけで、こういうものを福祉サービス市場全体の中でどのように位置づけ、そこに対するファイナンスをどうするのか。それから、実際のサービス供給主体としての役割をどの辺に置いていくのか。そしてもう一つは、NPO、NGOのもう一つ重要な役割であるアドボカシー的なものをどう取り込んでいくのか。そういうことを整理して考えるときに役立つようにということでつくった図です。
 1枚めくっていただきますと、東京市町村自治調査会というのは東京の市部、主に多摩地域の自治体が集まっているものですから多摩を念頭に置いておりますが、これは福祉サービスに限って想定した図ではございませんので、若干ずれるところもありますが、例えばひとり暮らし、あるいは高齢者のみの世帯に対するさまざまな物流的なところの支援もこういうやり方で、コミュニティービジネス的な形での支援というものが、地域性やその地域の高齢者の世帯のあり方によっては、十分想定し得るところに来ているのではないかということでつくったものです。
 これはあくまでモデルのイメージ例ですので、株式会社コミュニティービジネス商店街サービスという架空のものと、NPO法人元気ドリームサービスというものがどのようにつながれるかということで考えたものです。
 先ほどちょっと大事なことを言い落としておりましたが、さっき既に見ていただきました、表紙を2枚めくっていただいた資料2の図の右下に、3つの社会的役割というのを挙げてございます。(3)についてはちょっと大きな話なので今回は省きますが、(1)(2)という両者がNPO、NGOが福祉サービス市場に関わるときの基本的な役割として重要である。つまり、現場で財やサービスを提供する主体となると同時に、NPO、NGOというのはサービス供給主体であると同時に、サービスの受け手による団体という側面も持っておりますので、現場で活動するからこそわかるさまざまな課題や問題を具体的な提案の形にしていく。この両者の関わりがおそらく出てくるだろうということが、さっきからご説明していることの背景にあります。
 ちょっと時間をオーバーしましたので、最後に、資料集の一番最後につけておりますことです。これは日本の例ではないので、必ずしもそのまま適用できるというものではないんですが、実はイタリアの社会的協同組合というやり方が非常に今、私たちのこの分野では注目をされておりまして、イタリアのある州における、公設民営型の居住型の高齢者ホームの運営委託にあたっての、コンテスト方式による入札の選定基準です。これは非常に特徴的なので、今後のNPO、NGOなどが関わるときに重要な視点ではないかと思うんですが、幾つか特徴がございます。
 1つは、価格とサービスの特質の勘案の割合が違います。この表のEというのを見ていただきますと、価格というのが、A分のBとかXというのが下に書いてありますが、評価すべき価格分のオファーの中の最低価格×30というものが点数として出てきて、これを全体の選定基準の中の最高30点という割合にしていく。つまり、価格とその他のパラメーターのバランスが30対70になっているんです。通常、もう少し価格のバランスの割合が高いと思うんですが、ここではそのぐらいに抑えている。
 それから、サービスの質を把握するための多角的な検討というのがA.B.C.D.の項目の中に入っております。サービス内容とか遂行能力はもちろんのこと、その前後ですね。例えば、教育、それから評価のシステムが確立されていることが問われています。
 3番目に、地域的要素を大変重視しております。比重自体は必ずしも高いとは言えませんが、例えばそこの項目でいいますと、C.及びD.の(7)に見られるように、地域的なかかわりをどの程度重視しているかが制定の基準に盛り込まれております。つまり、これは先ほどから縷々ご説明しました、地域密着性とでもいいますか、あるいは地域資源を活用できるネットワーク形成がなされているかどうかを見るということです。
 イタリアの社会的協同組合というのは、協同組合というと日本の生協を想像するかもしれませんが、実はそういうタイプの組織ではなくて、形式は協同組合ですが、いわばNPOといってもいいと思います。
 このイタリアの社会的協同組合は、例えばこういうものに対応できるように小規模、それから特定専門分野、それから地域性、この3つをモットーにしたものがかなり増えてきているんです。それを、ある一定の規模になると、スピンオフ戦略といいまして分権化を図っていきます。地域密着型であることを、巨大規模化することでそれが落ちていくことを防ぐようにしています。しかし、規模のメリットに関しては、それぞれの社会的協同組合が地域コンソーシアムというのをつくりまして、さらに全国コンソーシアムというのをその上に3層構造のように持って進めることで、規模のところのデメリットが出ないようにするというやり方をとっております。
 今後のNPOの戦略的な方向性としては、こういうものが参考になるだろうということで、ちょっとご紹介がてら入れてございます。
 以上、大変あちこちに飛んで恐縮だったんですが、評価は時間がなかったので割愛しました。後でもしご質問あれば、若干述べさせていただきますけれども、福祉サービス市場を大都市東京で考える場合に、NPO、NGOがそこに参入をしてくるときに持ち込まれる視点を、どういうものが出てき得るのかということでご紹介をさせていただきました。ちょっとオーバーして申しわけありませんでした。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。NPOの動きというか、そういうものに関するパースペクティブを持ちながら、具体的な地域福祉計画に即して幾つか、非常に重要な論点を提起していただいたような気がいたします。
 執行委員の報告は、消費者という議論と、社会福祉サービスのかかわりという議論ですから、言ってみれば社会福祉というのは、従来は、社会福祉事業法の時代というのは公法、行政法の範疇の公法の時代だったわけです。これが社会福祉法の改正の中で、いわば市民法もどきの発想、僕はまだもどきだと思っている。社会福祉事業という概念が残っている以上は、そこに契約制度もどきのものを持ち込んだ。そういう意味では、まだ社会福祉基礎構造改革というのは、実は随分不十分なところがある改正で、これからもう一度やり直さなければいけないことがたくさん入っていて、それについて、執行委員の消費者保護の視点、民法というか市民法の視点からどういうふうになっているかを逆照射していただいたおかげで、そこら辺の論点が随分はっきりしてきたのかなという印象を持ちました。
 それから、私、法律の専門家でも何でもないので、かねがね私法と公法の中間に何か大事なものがあるのではないかという感じがあって、実は法律の構成はまだきちんできていない。リアリティーという意味で言えば、きょう中村委員がお話しいただいたNPOのフィールドというのはまさにそういうところの論点でありましたし、地域福祉計画というのは従来は行政がやる仕事だったのを、もう一度、地域の市民のほうに引き寄せる。あるいは、そういう意味では公と私の間の新しい公共性といいましょうか、そこら辺でどういうことが今、起こっているのかということを、実例を引きながらお話をいただきました。
 残りの時間、本来はもう1時間か、もう2時間ぐらいやりたいような、内容がどっさり詰まったお2人のご報告をいただきましたが、むしろ次回以降の検討課題ということで、その次へつなげる意味で委員の皆様からご発言を少しちょうだいしながら、課題出しというか、ということで、どうぞご自由に、いろいろなお立場がおありかと思いますが、ご質問、ご意見を、ちょっと残った時間に少し出し合って、時間までやりたいと思います。いかがでございましょう。どうぞ、いろいろな視点からご自由にご指摘をいただけたらと思います。大変膨大な報告でございますので、なかなか切り出しにくい。どうぞ、事務局も含めて、いろいろな意味でご質問、ご意見をいただけたらと思います。
 先ほど中村委員からお話しいただいた地域福祉計画のことで言えば、東京都は随分早い時点から地域福祉計画のことをずっと考え続けてきて、まさに、要するに行政で地域福祉計画をつくると同時に、市民でつくってもらおうということで、地域福祉振興基金でスキームをつくりまして、その当時は社会福祉協議会が地域福祉計画をつくるということでしたが、いや、そうではないところも認めようということで、あれは杉並の老後をよくする会でしたっけ。それと、ヒューマンケア協会という、いわば今で言えば非営利団体が2カ所受けて、地域福祉活動計画をつくってもらった。
 でも、あれはちょっと早過ぎたですね。今、やると、また随分違う地域福祉計画ができた。残念ながら、ファンドがそれこそなくなってしまったものですから、そういうことは今、できないという感じがありますが、そんなことをちょっと思い出しながら、東京都の取り組みはそういう意味で早過ぎたのかもしれないという感じがしながら、伺っておりました。どうぞ何か。

○新村委員

 済みません。難しいことなので、ちょっと的を外れているかもしれないけれども、教えていただきたいんですが。
 まず、中村委員のほうなんですけれども、NPOの機能ということで先ほど3つ書かれていたんですけれども、どうもお話を承っていると、公的サービスの供給者としてのNPOと、アドボカシー的な活躍をするNPOというのはかなり性格の違うものではないかという感じを受けるんですけれども、それについてどういうふうにお考えでしょうかということなんです。
 おそらく執行委員のお話にもつながるのはアドボカシー的機能でございまして、消費者がどう保護するかというか、消費者をいかに対等な立場に引き上げるかというときの最大のエージェントが、おそらくNPOになるのではないかという期待を持っているわけでございますが、そのNPOが実際に、今度、公共サービスの提供ということで提供者の側にもなり得るわけですね、現実には。そうすると、やはりそこは何か線を引かなくてはいけないのではないかという感じが、お話を承っていて思った部分が1つです。
 それからもう一つは、今、第三者評価みたいな話が出ていて、それもNPOに期待するところが大であるということでございますけれども、NPO自体の適格性みたいなものが、一応、企業はマーケットで淘汰されるという中で、NPOについてどういうふうにそれを、歯どめといいますか、淘汰のプロセスをつくっていくのかというところが非常に気になっておりますので、その辺をお教えいただけたらと思います。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。時間の関係で、もう少しご意見があったら、まとめてお二方にお答えいただくという形で。いかがでしょう、藤井委員。

○藤井委員

 執行委員が御説明の中でおっしゃっておられる、福祉の対象とする消費者、利用者である、殊に高齢者に対して、これらの人達を総体的に守っていく仕組み、すなわち、制度なり、法律をもっとしっかり支えていくという社会全体の意識づくりが、強く必要とされていると思われます。現在、約4割の若年世代の人達が年金や各種保険料を支払っていないということも報告されておりますが、福祉を支える人達はやがて自分も支えられるのだと安心してサポートし、支えられる人達は感謝して介護を受けるという基盤づくり、そして意識づくりを社会全体としてもっと強力に推し進めていかなければいけないのではないか。
 すなわち、社会として世代間の乖離、反目が決してあってはならない。本日の報告の中の66ページにもありますように、若年層の人達が大きな不安を持っていると。フリーターだとか、低所得、出産、育児などの問題で大きな不安や不満をかかえ、将来どうなっていくのかというなかでの福祉へのコスト分担に対して、世代間の反目があってはならない。この面での対応、展開が消費者、利用者の大きな保護につながることになると考えます。具体的には広過ぎて今、述べられませんが、我々の審議の中で全般的に取り上げて、こういった面も含めた提案なり、審議をしていただければありがたいと。日頃の思いも含めて、感じたところをお伝えいたしました。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。
 どうぞ、武田委員。

○武田委員

 非常に難しい話なので、私も雑駁な感想レベルになってしまうわけですけれども、執行委員からレポートをいただきましたとおり、たしかに消費者保護の問題は非常に大事な話だと思っています。
 前回のときに私からもレポートさせていただきました話で、もともと福祉の分野というのは公法の世界にあって、ある意味で主体認可の世界。つまり、行政が一応お墨つきを与えたところ、ここからサービスを提供されれば、まあ、そんなひどいことはないだろうという世界で回ってきたのが、徐々に事業許可から自由と。
 こういうふうになってくると、逆に消費者が賢い消費者でなくてはならないというのか、賢い消費者であることが前提の制度にだんだん変わってきている。逆に、これを是とするのであれば、もちろん選択のための情報として第三者評価が出てくる。これは非常にいいことだろうとは思うんですけれども、このとき、現在、東京都でも第三者評価ということは先行してやられていますけれども、我々事業者として、どうにもなかなかとらえ方が難しいのが、これがある意味でもう一つの監査基準になりはしないか。
 つまり、消費者側からとらえてみれば、選択のための、例えば我々がよくレストランへ行くときレストランガイドを見ますけれども、レストランガイドが変なことを書いていたからといって、レストランガイドを訴える人はだれもいない。そこは、自己責任がベースにありながら、レストランガイドを使うということが前提になる。
 ただ、現在の状況、もちろん東京都がそういう意図でやられているわけではないんだろうと思いますけれども、第三者評価をめぐる議論の中で、要は第三者評価がもう一つの絶対基準というのか、監査基準みたいな形になってきて、これは逆に消費者側から見れば、その第三者評価で何か変なことが書いてあった場合、第三者評価をやったやつ出てこいと、こういう話になったのでは何にもならない。
 あくまで自己責任がベースにあって、それを助ける補助的な材料として第三者評価があるべきというか、そうでないと、おそらく主体認可を外していっている意味がないのではないかと感じるところがありまして、このあたりをどう考えるか、もう少し議論を深めたいと考えております。

○高橋分科会長

 もうそろそろ、執行委員ちょっと……。はい、どうぞ。

○新村委員

 ごめんなさい。さっき言い忘れたことなんですけれども、執行委員のほうのことで、最初に被害の実態から入るとおっしゃって、国民生活センターの事例集を例におとりになったと思うんですが、私はあそこから入るのがちょっと間違いのような気がしているんです。
 あれは本当の消費者被害になる以前の話のような、私が見た範囲でございますのであれでございますけれども、そういう意味でもうちょっと、本当に考えるべき消費者被害が何なのかというところを、もし、お教えいただいたらと思ったんですが。ヘルパーさんが気に食わないとか、どうもそういうのがセンターには大分集まってきているようでございまして、それはそれこそ契約自由で、契約を変えたり、解約して別の業者にしたりというので対応できる部分ではないかと思うのですが、ほんとうに何が被害として最も重要なものと考えられるかというところをお教えいただけたら。済みません。

○高橋分科会長

 国民生活行政担当の行政官としてのご経験からの発言もあったかと。それでは、どうぞお二方からコメントを。

○執行委員

 後の分析でも、後を見ていただければおわかりだと思うんですけれども、実際の相談であるとか、苦情だけを見るのではなくて、その背景を見るわけです。一般化して考えていくわけです。ですから、細かいところだけをとって、この問題がある、この問題があるということだけではなくて、それを一般化して、消費者福祉サービスの特徴とどう結びつくのか。それから、出てないものでも、そういう一般化からどういうことが問題になるのかということを、一応、私なりに考えたというわけです。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。
 それでは、中村委員、コメントに関するレスポンスを。

○中村委員

 なかなか難しいご質問でもありますので、うまくお答えできるかどうかわりませんが、まず、私が出しましたNPO、NGOの3つの社会的役割のうちの、(3)はちょっときょうは省きましたので、(1)と(2)を同時に担うことになったときに、とりわけ(1)の役割についてどうなのであろうかということがあったかと思います。
 当然、具体的に考えた場合に、あらゆるNPOが(1)と(2)の役割を同じぐらいのバランスで同時に果たすということは、ちょっと現実的ではないと思います。地域の中での、最近はコンソーシアムといったり、プラットホームといったり、あるいはサポート組織といったり、いろいろな言い方をしますが、そういうことをある程度まとめていけるようなタイプのNPOが、主に(2)の役割をうまく集約をしていくことが必要だろう。
 もともとアドボカシーという言葉をたどっていきますと、これは福祉分野でもう随分長きにわたる言葉、アドボケイトという長きにわたる言葉ですが、日本でもちょっと解釈が狭くなっているのは、ここでは簡単にするために政策提案と入れてしまってありますが、何も専門家や専門的な組織による提案ということに限らず、例えばキャンペーンとか、ロビーイングとか、それからグラスルーツのさまざまな取り組み、そういうものを全部ひっくるめてアドボカシーというのが基本的な意味合いであります。そういうものを進めていく人たちをアドボケイツと呼んで、彼らに高い翻訳――翻訳というのは比喩ですが――能力とか、パフォーマンスを期待するということがあるわけです。それで、アドボケイツとしては、おそらくさっき申し上げた中間支援的な組織などが、これからそういう役割を果たしていくだろうと思われます。
 ただ、私がこの(1)と(2)を両方大事だと申し上げたのは、(2)だけではやはり従来の、下手をすると抵抗、告発、反対のみの運動になりかねないところがあるのと、現場を非常に踏まえたアドボカシーが必要なわけです。それから、(1)だけでやっておりますと、体のいい安上がりの下請ということに、これは海外の経験でも、日本でもそういう傾向が見てとれますので、現場でやるからこそ、出てくる課題を(2)のアドボカシーにつなげる。こういう意味合いで考えております。
 あと、怪しげなNPOがいろいろ出てくることに対することで、これは最近、盛んに言われていることなんですけれども、先ほど挙げられた団体の問題は私もよく知っています。
 もともとこの特定非営利活動促進法、法人ということにとりあえず限りますと、特定非営利活動促進法自体が非常にあいまいな性格と緩やかな性格を兼ね備えているものですから、建前としては、この認証団体というのは行政がお墨つきを与えた団体ではないんです。準則主義に限りなく近いという発想ではあると思うんですが、この辺が非常に微妙でして、実際、東京都などでもそうされているようですが、法人の申請の相談の場で、かなり細々とした指摘を行っていたりいたします。そうすると、何か問題が発生したときに、クレームが行政に来るということがあり得ないことではないし、行政の担当者側でもそれを恐れているという事態があるわけです。
 したがいまして、この問題に関しても、例えばサービス提供者としての側面では、それこそ準市場であれ、市場の中で活動が反社会的であるとか、パフォーマンスが悪いというときには、やはりある種の淘汰がされる面がNPOに関してもあると思うんですが、問題は、それでもなおかつ出てきそうな問題に関して、どういう評価のシステムをつくるか。
 これはまさに先ほどの第三者評価のこととも絡んで、まだ議論がかなりなされているところだろうと思います。必ずしも、まだベストな処方箋というのは出ていないんですが、1つには、当然アカウンタビリティーや情報公開をNPOのセクターの中できちんと、いわば自らによる品質管理をセクターとしてやっていくことによって、そういう被害を最小限に食いとめていく。その場合、あるときには行政との連携が出てくるだろうと思います。そうした評価のシステムを、これはやはり海外も含めたいろいろな事例に学びながらつくっていくということが、今、課題として挙がっているけれども、まだベストなシステムはできていないという段階だろうと思います。

○高橋分科会長

 ありがとうございます。もう予定した時間でございまして、本来はもう1時間ぐらい欲しいところでございますが、今日、こういうことで打ち切らせていただかざるを得ないのが大変残念でございますが、お二方のプレゼンテーションが、前回もそうでございましたが、これからの我々の論議のベースになる大変重要な論点をそれぞれのお立場でお出しいただきましたので、また折に触れて、きょうの議論はぜひディスカッションさせていただきたい。それはまた事務局ともご相談して、プレゼンテーションの結果を幾つか論点整理しながら、ご審議いただく段階でもう一度議論をさせていただく機会をぜひつくりたいと考えておりますので、よろしくお願いをいたします。
 それでは、第4回、日程は、ほぼ委員の皆様、何とか調整つきましたか。9月の何日でしたっけ。

○梶原計画調整課長

 9月3日です。

○高橋分科会長

 9月3日ということで第4回を開催したいと思いますが、審議のテーマについては、社会保障の制度の発展と再編という視点の中で福祉サービス市場の関係ということで、とりわけイギリス等の、ヨーロッパの動きに大変お詳しいということもございますし、日本の介護保険の動向についてのリサーチ等もいろいろな形でやられておりますので、平岡委員にぜひお願いをしたいと思います。
 それから、必要に応じてゲストスピーカーを迎えることを考えておりますが、どうしましょうか。1つは、高齢者介護研究会の報告をやってもいいかなと一瞬思ったんだけれども、きょうの議論とかなり重なる話が大分報告書の中には書き込まれているので、たまたま私がかかわったこともあってやってもいいか、そこら辺はちょっと事務局とご相談を。また、ゲストスピーカーということになると、1つは、きょう第三者評価の話が出ていましたので、ある時期にやはり、東京都のやっているのがそろそろワンサイクル終わる、まだ、もうちょっと時間がかかりますか。

○梶原計画調整課長

 ある程度のボリュームで結果が出てくるまでは、もうしばらくかかりそうでございます。

○高橋分科会長

 そうですか。やはり東京都で幾つか先駆的に手がけているものの進行状況等を含めて、第三者評価を一度ぜひここで議論をして、ご報告いただきたいなとも思っておりますが、そんなことも含めて、場合によってはゲストスピーカーということも考えておりますが、テーマ等については事務局とご相談の上ということで、とりあえず平岡委員には、9月、よろしくお願いをしたいと思います。
 そんなことで、きょうはこれで閉じさせていただきますが、それでは事務局から連絡事項等。

○梶原計画調整課長

 先ほど分科会長からございました、9月3日、水曜日の午後2時から4時までということで、次回、お願いをしたいと思っております。

○高橋分科会長

 秋に入りますと、またそれぞれの委員の方がお忙しくなる時期に差しかかりますので、10月以降の日程調整も事務局で早目にお願いをして、時間を確保することをひとつよろしくお願いをいたします。
 大変長い時間、若干時間をオーバーいたしましたが、きょうはどうもありがとうございました。これにて終了させていただきます。

(午後4時03分 閉会)

このページのトップに戻る