○高橋分科会長
ありがとうございます。全くおっしゃるとおりです。
それから、介護保険のこの問題というのは、今度、訪問介護が3類から2類型に変わって、これはかなり零細のところを直撃している感じがあります。要するに家事援助、混合型がなくなりましたので、あれで収益を落としているところが大分あり、それはまさにビジネスモデルの問題で、それから、介護支援専門員の腕というか、御用聞き型と、それから個別支援型に徹底した人では随分違う。これはある会社のビジネスモデルで言うと、本人のニーズを徹底的に把握して、身体介護を中心にケアモデルを組み立てるような事業者と、家族ニーズというか、これは需要とニーズの議論がありましたけれども、求めに応じて家事援助を投入して、なかなか収益が上がらないというモデルとどうもあるみたいで、これは自由市場の非常に重要な特徴だと思いますが、制度の報酬体系とビジネスモデルはかなり動いている。それから福祉用具で言えば、今度はケアマネに4種類という議論が出てくると、多分、福祉用具はピンとはね上がるだろうというふうに言われているのですが、制度とのインタラクションというのがものすごく大きいという、そこら辺の議論も是非しておかないといけないのかなと思いました。
時間のこともございますので、まさに武田委員のレポートは、むしろケーススタディーに近い、そういう内容も含まれているかと思いますが、またご議論をいただく機会があろうかと思いますので、それでは、武田委員のほうからよろしくお願いします。どうも白石委員、ありがとうございました。
○武田委員
それでは、続きまして、私、武田のほうからご報告させていただきます。資料番号は4番になります。よろしくお願いいたします。
事業者という立場で本会に参加させていただいております以上、ご報告にあたりまして、まず、おまえのところは何をやっているのだ、というあたりには簡単に触れておかないといけないかなということで、1.に弊社グループにおける福祉サービス事業の概況をまとめさせていただきました。
「弊社グループ」と申しましたのは、他の多くの企業と同様、弊社も最近分社化の方向にありまして、実際のサービス提供部門については子会社化を進めており、すべてをベネッセコーポレーション本体でやっているわけではないためです。特に高齢者介護のほうですが、ここにも書いておりますとおり、ベネッセケア、伸こう会という2つの運営会社が実際のサービス提供にあたっているところです。もちろん、両方ともベネッセコーポレーションの100%出資子会社ですし、全体戦略は本体で統括しているわけですから、これを全部束ねて「ベネッセ」ときょうは総称させていただければと思います。
私どもがやっております福祉サービスは、大きくは高齢者介護サービスと保育サービスとに分かれます。そのうち、まず高齢者介護サービスのほうですが、事業の主軸になっておりますのは施設系のサービスです。介護保険適用型の有料老人ホームという表現が一番わかりやすいと思いますが、特定施設という介護保険制度上のカテゴリーがございまして、これを全国で46施設、2,371室、これは全部個室ですけれども、こうした規模で展開させていただいております。なお、都下では13施設、598室となっておりますが、2003年3月末現在、都下の特定施設が全部で96施設ですので、大体15%ぐらいのシェアを占めている状況です。それ以外に、グループホームでありますとか、「類似施設」と言われる、いわゆる高齢者向けの集合住宅にホームヘルプサービスが併設されたスタイルで展開しているところ、これが全国で15施設ございます。特定施設の指定が取れるところについては全部特定施設を取るという方針でやってはいるのですが、ハード要件が合わないとか、いろいろそういった指定条件もありまして、どうしても特定施設が取れないところについては、こうした方法で展開しているところです。
続きまして、居宅系のサービスですが、全国でホームヘルプ13拠点、居宅介護支援14拠点ということで展開しております。都下では世田谷区のほうと、それから多摩市のほうと、2カ所の拠点を持ってやっております。こうした居宅系のサービスは民間事業者の進出が最も進んでいる分野ですが、私どもはこの分野では比較的小さな規模、先ほどの高橋分科会長のお話で言えば、むしろ零細に近いような規模ということになるかと思います。
続きまして、保育サービスのほうですけれども、これはベネッセコーポレーション本体でやっております。まず、完全に民間立として認可を受けている認可園が兵庫県のほうに1園ございます。それから公設民営、これは前回もちょっとお話し申し上げましたけれども、公立の認可園の運営を受託しているもので、これが都下では三鷹市と文京区の2園、その他の府県で3園という形になっております。それから、東京都独自の認証制度、これに基づいてやっておりますところが1園と、この都の認証制度を契機に、無認可園に対して自治体が何らかの支援や公的な認証をしていく制度が全国的に広がってきておりまして、そういった公的関与があるところが他に4園。最後に、公的関与が全くなく、純然たる民間としてやっておりますのが3園、こうした状況になっております。
きょうは私どもの会社の宣伝をする場ではございませんので、この程度にとどめたいと思いますけれども、先ほど白石委員のお話しにもございましたとおり、福祉サービスはスケールメリットが極めてききにくいビジネスのひとつです。非常に労働集約的な事業構造になっておりますので、大規模に展開していけばいくほど、末端まで質の確保を図っていくというのが非常に難しくなってくる。そういう中で、例えば高齢者介護サービスについて私どもがとっております戦略は、施設系に重点を置いて、この分野での地域ドミナントを目指すことです。要は全国くまなく展開をすることには、あまりメリットを感じていない。それよりは、白石委員の先ほどの表でいけば、全国展開型と地域特化型の中間というのか、地域に特化しつつ、その地域を面的に広げていく地域ドミナント戦略を事業戦略の中心に置いてやっております。さきほど、私どもの特定施設は都下に13施設と申しましたけれども、東京、神奈川を合わせれば、30施設程度ございます。このエリア全体の中で大体15%程度のシェアということになりますが、地域ドミナント化を目指して日々奮闘しております。高齢者介護サービスに関しましては、今年度ようやく黒字化しまして、やっと経営的には安定したかなというような状況になっております。
続きまして、2番目の「福祉サービスの対象領域拡大とそれに伴う規制・補助のあり方の変化」についてです。前回の論点を、きょうの資料1という形でお出しいただいているところですけれども、手塚委員から、「かつて福祉は一元化されていたが、だんだんその領域が広がってきていて、その辺を考えないといけないよ」というお話を賜ったと記憶しております。このあたりのところを私なりにまとめてみたものでございますので、5ページの別紙1と見合わせながらお願いできればと思います。
福祉サービスは、現在、非常に広い領域を持っているわけですが、私なりに、民間企業が取り組むべきサービス、民間企業を中心とした市場が成立する領域はどんなところなんだろうかということを体系立てて考えてみたものです。5ページの図ですが、横軸が福祉の対象者の規模とか普遍性というようにとらえていただければと思います。縦軸のほうには、対象者の数ではなく、経済的ないしは生活のあり方の多様性を置いてみております。
現在の社会福祉制度の根っこができましたのは、戦後すぐの時期ということになります。この時期における福祉の対象者というのは一体どんな人たちだったのかと考えてみますと、傷病や高齢などのために稼ぐ手段もなく、住むところもない。その時代、今よりは地域コミュニティーや家族、親族による相互扶助が機能していたわけですけれども、そうした支援も受けられない、そういった極めて限定された人たちが対象者の大部分であった。そういう時期に構築されたのが、現在の社会福祉制度の一番根本の部分ではないかと思います。つまり、対象者の規模とか普遍性は非常に小さく、それから対象者の経済的、生活的な多様性も低い、すなわち別紙1の「かつての福祉施策の対象者」の部分に非常に偏っていたのではないかと思うわけです。
対象者の規模や普遍性が小さいというのはどういうことか。当然、どんどん民間企業が進出してきて、競争によって質の淘汰を図るということはあり得ないわけですから、公が直轄でやるか、ないしは、この人だったら任せられるという人を選任して事業をお願いする、すなわち主体の認可によって質を担保していく、これがおそらく最善の道だったろうというように思います。
それから、例えば今、介護保険なんていうのは、非常に多様なニーズを持った人々が多様なサービスを選択できるようにするために、個人単位にもろもろの給付の補助をしていく形を取っているわけですけれども、対象者の経済的、生活的な多様性が低い状態であれば、事業を運営する人に、例えば、対象となる人たちが生活する場所は補助金で建ててあげましょう、1年分これだけのお金を預けるからこの人たちを1年間面倒見てあげてよと、こういう仕組みが一番効率的だったのではないかと思います。これがすなわち施設整備費補助であり、措置費なわけです。これと、先ほどの主体の認可、あなただったら任せられる、この人だったら大丈夫だというものを組み合わせたのが、実は社会福祉法人制度そのものだととらえられるのではないかと思います。
現在、福祉サービスの担い手論を行っていく上で、我々民間企業は、社会福祉法人を中心とした公的なセクターとの対比において語られるわけですけれども、そもそも社会福祉法人とは何かということを言えば、そういった社会状況の中で最適化された規制のあり方と補助のあり方、これを一つの制度として統合したものというふうに定義づけられるのではないかと考えております。
一方、社会状況はどんどん変わってきております。前回、手塚委員もおっしゃったとおり、福祉の対象領域、対象となる方というのは非常に範囲が広がっておりますし、コンベンショナルな福祉基盤はどんどん脆弱化している。今は、お金を持っていようがなかろうが、住むところがあろうがなかろうが、高齢者介護サービスは社会的に供給していかなければならない時代になっておりますし、そもそも対象者の数自体が激増しています。たとえば、昔私たちが小さいころは、「あの子保育園に行っているの。かわいそうに。」という感覚がどうしてもありましたけれども、今我が家も保育園ですが、そういった感覚は全くなくなっています。もちろん、福祉の全領域についてこうなってきているというわけではありませんが、一般化し、数も増えて、またその対象者のあり方も多様になってきている領域もたくさん出てきているのが現状であろうと思います。
まず、対象者の数的拡大、これは横軸における右方向への拡大につながります。数が増えると、主体の認可からだんだん業許可、届出、自由というふうに、徐々にその規制を緩めていっても、ある程度、競争と淘汰によって質の確保が可能になっていくわけです。
それから、対象者の多様性が増してくること、これは縦軸の上方向への拡大につながります。事業者に対してポンとお金を渡して、これで1年間面倒見てやってくれ、と、こういう手法では、利用者が多様なサービスを選択することはできない。その選択の多様性を確保するために、介護保険という個人あたりの給付、厳密にはそのうちの公費負担分ということになりますけれども、そういう個人あたりの補助のあり方へとだんだん変化してきているというのが現在の状況ではないかと思います。障害の支援費も同じ構造ですし、保育に関してよく話題に上がるバウチャーも同じ流れの中にあります。さらに、将来的には施設整備費補助という事業者に対する給付から、家賃補助のような個人あたりの給付へと変わっていくことも考えられます。
以上、述べてきたように、事業者の参入促進、それから消費者の選択による淘汰、こういう仕組みをバランスよく構築して、市場が円滑に機能するように配慮していく。もちろん、福祉の全領域というわけではありませんけれども、これが現在拡大してきている領域における市場形成のあり方ではないかというように考える次第です。
こういう見方をすれば、高齢者介護サービス、特に居宅系については比較的競争になじみやすいですし、また、施設系に関しましても、徐々にサービス提供量が増加して市場が形成されてくれば、入居率が悪い施設についてはもうからなくて淘汰されていく。もちろん、つぶれるときに、現にそこに入られている方はどうするかという、社会としてのセーフティーネットの問題にはきちんと配慮する必要はありますが、そういった構造で質を担保していくことも可能になります。同じことが保育サービスなどについても言えます。つまり、私ども民間企業が現在やっております領域は、比較的多様な選択と市場淘汰という新しい仕組みになじみやすく、あとはいかに市場を機能させていくかを考えていくべき領域ではないかと考えております。
続いて、2ページのほうになりますけれども、ここから先は、「高齢者向け介護付き住宅」と言われる高齢者向けの住宅と福祉サービスを組み合わせた具体的なサービスにケースを移してご説明したいと思います。
もちろん、私がこの領域の専門だということもありますけれども、特に大都市、東京都において福祉サービスの市場を形成していく上で、その特有の問題が一番先鋭にあらわれるのが、我々はよく「場持ちビジネス」というように言いますけれども、サービスを提供する「場」を持たなければならない福祉の分野ではないだろうか、ということで特に取り上げさせていただいた次第です。
まず、高齢者向け介護付き住宅とは、私どもがやっております特定施設もそうなのですけれども、住むという機能と介護サービスとをセットで提供するサービスです。こうしたサービスは、最近急速に伸びてきており、介護保険制度が始まって以来、介護保険給付の伸び率で見ても、福祉用具貸与、それからグループホーム、それに次いで特定施設というように、給付費の伸びが一番多い領域の一つです。しかしながら、やはり端的に言って、特別養護老人ホームという公のセクターでやってきた入居型のサービスに比べると、まだ比較にならないぐらい市場として小さい領域であることは否めません。
この原因というのは幾つもあるわけですけれども、まず1つは介護保険の給付費の問題です。6ページを見ていただけますでしょうか。この介護保険の給付費、ほんとうは東京でしたら10.00ではなくて、地域係数を掛けて計算すべきなのですが、とりあえず地域係数は全部標準地域の10.00で並べて計算しております。介護福祉施設、すなわち特別養護老人ホームは、例えば要介護度3で言えば30万9,000円になります。これに対しまして、特定施設入居者生活介護は、要介護度3で20万4,900円。ここで10万の差がついているということになります。
これが一体どういう現象をもたらすか。本来、介護保険というのは、損害保険の一種ですから、同一保険事故に対しては同一保険給付となるのが原則のはずですけれども、明らかに給付水準にこれだけの差がついている。こういう現象がどういうことをもたらしているかというのが、次の7ページの図になります。
これは非常に大胆な仮定を置いて計算しておりますので、事業者によって、ないしは地域によって大分違うところもございますけれども、その点はご容赦いただければと思います。例えば特養に住んでいる方が、生活にかかるもろもろの費用をどんな形で負担しているのかというのが一番左側になります。生活に要する費用を、介護に要する費用、食事関係、それから居住に要する費用というふうに分解しておりますけれども、例えば一番下の居住に要する費用、このうち家賃に相当しますところは、相当部分が施設整備費補助金ということで、最初にお金が入っている。それから残りの部分、当然、設置者のほうが残りを負担しているわけですけれども、これの償還費用相当分も介護報酬の中に含まれています。その上の生活費、施設の保守管理費や水道光熱費、寝具、洗濯等々、こうしたものも保険給付がされている。また、食事に要する費用、さすがに食材費ぐらいは自己負担ということになっておりますけれども、賄いに要する費用、調理員さんの人件費とか水道光熱費、消耗品費等、こうしたものは基本食事サービス費という形で、これも保険給付されています。それから介護に要する費用、これはもちろん保険給付されておりまして、一部負担金についてのみご負担いただくと、こうした構造になります。非常に大括りに言えば、保険のほうから26、7万給付されていて、自己負担は5万円ぐらいというような負担の構造、これが特養の典型的なケースだと思います。つまり、住んで、食べて、全部込みの1カ月5万で生活できる。これは東京であってもほぼ同じです。だれが考えても、これはおかしいとしか言いようがない、ということが見て取っていただけるのではないかと思います。
かたや、ある意味でこれが真っ当な形なのですけれども、特定施設のほうは、家賃分は当然自己負担。それから水道光熱費、洗濯等々、いわゆる共益費なところも自己負担。それから食材に加えて、ごはんをつくってもらう費用、これもレストランで食べるのと同じで、当然自己負担、というような状況です。特定施設に出されている保険給付というのは、まさに介護というサービスに特化して出されている。保険から18万、一部負担金2万、合計20万というあたり、このあたりが大体平均的なところということで、この数字は先ほどのグラフとほぼ一致します。基本的な負担の構造はこういう形になるわけです。そうなると、自己負担は、特養5万円に対して、特定施設のほうは、安くとも25万から30万になってしまうことは避け難い状況なわけです。例えば家賃ですが、大体周辺のちょっと広目のワンルームマンションと同程度を想定していただくと大きく外れないと思うのですが、東京区部や周辺市部なら7、8万から12、3万ぐらいかかるのは当然ということになります。食費も5万やそこらはかかりますし、その他共益費等を考えると、介護というかかり増し費用が保険給付されているとしても、この25万とか30万が決しておかしな価格ではないということは見て取っていただけるのではないかと思います。
2ページのほうに戻っていただけますでしょうか。こういう言い方をすると、非常にキャッチーになってしまうのですが、言ってみれば、特養という制度は、一種の公的ダンピングであると。この「月々5万」の世界に我々民間企業が勝てるはずがないというのが実際のところです。もちろん従来の介護保険施設が担ってきました、いわゆる救貧施策的な部分、これはもちろん無視できません。そういう意味ではセーフティーネットとしての機能をどうするかというのは、もちろん考えなければなりませんが、これは本来、介護保険とは別枠の福祉的な助成策として講じるべきところだろうというふうに考えます。このあたり、ずいぶん施策的にも進みつつありますけれども、こうした市場の不均衡の是正、イコールフットというものをもっと進めていけば、こういった領域についても市場として成立する余地は十分にあるというように考えているところです。
これを特に大都市東京ということに引き戻して考えてまいりますと、我々事業者としましても、その周辺のワンルームマンションあたりと同じぐらいのお家賃をいただかないと、これはとてもじゃないけど事業として成立しないわけで、先ほど申しましたとおり、どうしても家賃相当分の利用者負担が極めて高くなってしまうことになります。つまり「場」の確保、これに非常に高いコストがかかって、それが利用者負担にはね返ってしまう一方で、特養という5万円で生活できる場所がある。つまり、東京ではどうしてもある程度以上の所得階層でないと特定施設には入居できないが故に、特養がそこまで安いのならこっちでいいじゃないかというような方向に流れがちなのではないと思うのです。それが特養の待機者を増やしている一つの要因であろうと思っています。
これは、例えば保育の世界でも同じで、日本でベビーシッターが全くはやらない、全くと言うと語弊がありますけれども、はやらない理由の一つは、保育園が安過ぎるせいだとは考えられないでしょうか。同じような構造が、民間が入ってきたすべての領域において存在するのが現在の状況だと認識しています。
では、大都市東京において、場の確保に関してどんな施策があり得るのかということを次のページで述べたいと思います。
これは、我々がやっております事業の典型的な構造です。実際には個々の事例によって大きく異なるわけですが、あえて大胆に数字を書いてみたものですので、一つの目安として見ていただければと思います。例えば我々が施設事業をやるときの典型的なハード例である、都心辺縁部、杉並とか世田谷、ないしはもうちょっと外側、こういったところで、地域にとけ込むことを重視した3階建て、定員50名規模のものを考えますと、大体底地2,000平米、延べ床2,000平米ということで、土地代金、これもまちまちですけれども、10億弱ぐらい、建築費のほうが4、5億ぐらいかかると。
これに対しまして、先ほど申しましたとおり、利用者負担30万、それに介護保険給付が20万ほどありますので、1人当たり売り上げというのは50万ぐらいになる。そうすると年間売り上げが3億ぐらいになるわけですね。土地建物をもし自己所有した場合、償却費の概念を含めるとややこしくなりますので、単純に償却費を含まずに考えて、年間利益として5、6,000万程度、このあたりが限界だろうと思います。もちろんこれは安定してからの話で、開設時期には、オープンと同時に満床ということはあり得ませんので、当然赤字が出ることになります。ですから、これをもって初期費用を回収しようと思うと、建築費だけでも10数年かかるということが見てとれるかと思います。
昔は、土地に含み益というのが考えられましたから、土地を買っても、最後事業をやめるというか、別のところに新しいものをつくるときには値上がりが生じているだろう、そこで大分カバーできるだろう、という期待感がありましたけれども、今はそんな状況でもないということからすれば、我々としてとれるスキームは、以下の2つに限定されます。土地建物を自己所有して、最初にかかった費用の多くを入居一時金、すなわち入居するときに500万、1,000万、ないしは高いところだと1億とか2億というのもありますけれども、こういった費用で回収するというスキームをとるか、ないしは土地所有者に建物を建ててもらって、それを長期にわたってレンタルして運営するスキームをとるか、のどちらかです。後者はオフバランス型のスキームですけれども、我々はこのスキームを中心に展開しています。最近、ワンルームマンションなんかでもよくありますけれども、土地を持っている人に1棟建ててもらって、入居者が入っていようが入ってなかろうが、それを丸ごと30年間安定して借ります、というような契約内容で投資をしてもらう、こうしたスキームを中心に現在運用しているところです。こういうやり方をとりますと、投資した人の取り分というのが入りますから、当然利益率は下がりますけれども、入居一時金を取らないとか、取るとしても極めて低い額に抑えることができる。私どもはこうした料金設定を中心にやっているところです。
逆に地主さん側は、なぜこういうスキームに乗ってくるのか。大体土地を持っている人はお金持ちであることが多い、というのが一般論としてあるわけなのですけれども、そうしたフローの資産を建物としてストック化することによって節税しようというインセンティブはそれなりに強いように感じます。こうしたスキームをどんどん増やしていけば、入るときに2,000万とか3,000万とかということではなくて、もう少し安い、入りやすい価格での提供というのが可能になってきます。ですから、こういう形での土地の有効活用に関して、固定資産税減免等の優遇措置を与えれば、もっと遊休地活用が進むのではないか。東京都のほうでも既にこれに類する施策を取られているところですけれども、対象がもっと規模の小さいグループホームレベルに対してのみということになっておりまして、この対象範囲をもう少し拡大していくことはできないものでしょうか。
さすがに100室、200室というところに適用するのはどうかという議論はあろうかと思いますけれども、グループホームよりはもう少し大きな、50とか60とかという規模までは、「地域の中の住まい」として十分適用するのではないかというふうに考えております。私ども、大体定員50名規模を標準にやっておりますけれども、いろいろと調査をかけましたところ、入居される方の半数ぐらいはもともとその区なり市なりに住んでおられる方、残りの4分の1がその区や市の中に息子さんか娘さんがおられて、田舎から呼び寄せるというパターン、残りの4分の1が周りの市や区からということで、50名規模であれば、十分「地域の中の住まい」ということができるだろうと思います。
さらにもう一つ、これはちょっと手前みそになってしまいますけれども、私どものほうでは全国で初めて、杉並区のほうと組みまして、新型ケアハウスという、こうした試みの一歩進んだものをやらせていただいております。これはサービスを提供するための場、つまり施設のハードそのものを一種の社会インフラと位置づけまして、杉並区自身が、さきほどのスキームにおける地主さん、ないしは地主さんの代理として機能するような形で制度設計されているものです。つまり、地主さん、家主さんが杉並区そのものであり、それを我々はお借りして運営するというような形になります。
事業スキームのほうは8ページに書かせていただいております。このスキームはPFI方式をとっておりますので、さきほど「杉並区と組んでやっている」と申しましたが、これは単に我々がプロポーザルに勝ったという意味です。その上で、杉並区の土地の上に私たちが建物を建設します。これはよく言われることですけれども、杉並区の管財課とも打ち合わせて、従来の公共施設にひけをとらないものをつくっているのですが、やはり公的なセクターが建築するのと我々民間が建築するのでは、建築単価が全く異なりますが完成後、これを杉並区のほうに売却します。売却して杉並区が買い取られるときに、国と東京都のほうから補助金が入るということで、実質的には杉並区は3,500万でこれを買い取れることになります。補助率が極めて高いことに気付かれるかもしれませんが、これは補助金の出方の仕組みが平成14年度から変わったことによるものです。従来は、実際の建築費用が補助基準額を下回った場合には、実際の建築費用の4分の3補助だったわけですけれども、現在の補助金の出方は、補助基準額の4分の3の出し切りです。補助基準額、つまり全国平均の建築費用から見てそれよりも安く建築すればするほど、補助率はどんどん上がっていく。逆に全国水準よりも高い建築費をかけると、補助率はどんどん下がるということになります。こうした方法により、補助基準額を下回って建築費用を抑えるインセンティブをつけたわけですけれども、このメリットを最大限使って杉並区は3,500万でこれを買い取れることになったわけです。杉並区としては、この3,500万と借地料さえ回収できればいいわけですから、我々に対して非常に安く貸していただくことができる。
もちろん、我々がこの不動産部分でもうけるということはまかりなりません。次の9ページのところを見ていただいて、一番上の「管理費」というところをご覧いただきますと、1万2,500円となっているかと思います。この管理費というのがいわゆる家賃に相当するところですけれども、我々はご利用者に1万2,500円の家賃でこの住まいを提供することができるというか、これで提供しなければならず、それがそのまま我々から杉並区への支払い家賃になっていくわけです。ここでは我々には一銭のもうけも出ない仕組みになっているわけですけれども、こうした方法を採ることによって、先ほど都心部だと家賃相当額は大体10万円というふうに申しましたけれども、既にここで8万から9万下げることができることになります。それから生活費、事務費と言われるのが、先ほどの食費なり共益費なりというところに当たります。こうした費用については厚生労働省の通知のほうでカチッと定まっておりまして、我々が自由に上げたり下げたりすることはできないわけですけれども、こうした料金を全部足して見てみますと、「合計」というところで、要支援の場合13万6,400円というところから、要介護度5で20万円ちょっとということで、やはり先ほどのものよりも10万以上下がっているということが見て取っていただけるのではないかと思います。何といっても、この下がり幅のうちの一番大きな部分を占めるのが、いわゆる住まい、家賃相当分であるというところがまさにこのスキームのみそということになります。
4ページに戻っていただけますでしょうか。細かいところは後ほど読んでいただくとしまして、要点だけご説明したいと思います。全室個室、ユニットケアという非常に新しいやり方を採用していながら、先ほどのような料金で提供することができるわけですが、これは杉並区のほうで何らかの持ち出しをしていただいているわけではありません。まず、公有地を提供していただいてはいますが、これはただではありませんで、大体周辺借地料相場の3分の1ぐらいに設定されています。さきほど申し上げましたとおり、3,500万円のキャッシュアウトはありますが、これは我々からの家賃で回収できますので、直接の持ち出しは、ほぼないと言っていいと思います。極論をすれば、補助金の受け皿としての機能と事業全体に対する与信、それからモニタリングの機能、ここだけを杉並区が負う仕組みになっているわけです。
我々のほうとしましては、利益率は通常の事業に比べて非常に低くなります。ただ、リスクが非常に少ない。まず、おそらくオープン当初から満床ということも十分に可能でしょうから、稼働率に関するリスクを負わない。さらには、広告宣伝費も要らない。しかも大家さんが自治体ですから、これは非常に安定していますし、おかしな係争も考えられない。というようなことから、双方にとって非常にメリットがあるやり方だというふうに考えており、今、杉並区とともに順調に事業を推進しつつあるところです。もちろん、これから我々が運営するためには東京都のほうの認可をいただかなければならないということで、またご厄介になると思うのですが、こうしたやり方もさきほどの「場」の問題を解消するための一つの方法ではないかと考えています。
以上、雑駁でしたけれども、大都市東京において福祉サービス提供の「場」を確保することの大変さがいかなるゆがみをもたらしているのかということと、この部分を改善する施策を導入することで市場というものができてくるのではないかということを中心にお話しさせていただきました。ありがとうございました。
○高橋分科会長
ありがとうございました。ベネッセの事例に即しまして、しかも理論的な整理のご提供をいただきました。大変刺激的なレポートをいただきましたが、何かご質問、あるいはご意見等も含めまして、少し委員の皆様から、あるいは事務局も含めまして、どうぞご質問等があればと思います。先ほどの白石委員のほうにもしご質問があれば、それも含めて……。
○松浦計画調整課長
今、東京都の施策の関係が出ましたので、私どもは「暮らしの福祉インフラ緊急整備事業」というふうに言っているわけですけれども、それにつきまして、まず説明させていただければありがたいと思います。
○高橋分科会長
わかりました。それではちょっと説明していただいて、あわせてご質疑というふうにできればと思います。それでは、副参事のほうからよろしくお願いいたします。
○砥出副参事
福祉改革担当副参事の砥出でございます。私のほうから、今、武田委員のほうからお話がございました場の確保に対します振興策として、昨年度から始めました、暮らしの福祉インフラ緊急整備事業についてご説明させていただきたいと思います。
現在、都が進めております福祉改革の基本コンセプトとして、高齢者や障害者が住みなれた地域の中で安心して暮らし続けられるように、これまでの施設偏重からの画一的な福祉を改革して、グループホームなど、地域のケア付き住まいを重視した施策の転換という点を基本コンセプトとして掲げております。
このために、地域のケア付き住まいの整備促進という観点から、これまで都独自の整備費の補助制度の創設でございますとか、それから事業者に対します固定資産税等の減免措置を講じるなど取り組みを行ってまいりましたが、この暮らしの福祉インフラ緊急整備事業につきましても、この一環の事業でございます。
まず、本事業の創設の背景でございますが、東京の地価水準はバブル期から比べますと下落したとはいえ、ご案内のとおり、まだまだ区部では依然として高く、このことが東京においてなかなかグループホームの整備が進まない大きな要因の一つとなってございます。
一方、市街地を見ると、小規模の民有地などが未利用のまま散在している現状でございまして、このような民間の未利用地を地域のケア付き住まい、グループホーム等に活用することによりまして、地域のケア付き住まいの整備促進を図るということとあわせて、都市の活性化、再生をも同時に図っていこうということでこの事業を創設したところでございます。
次に、本事業の内容について説明させていただきます。
通常であれば、福祉事業者の方が土地所有者から土地を購入、もしくは賃貸して施設を整備し、事業を運営するということになります。本事業は、その間に区市町村の外郭団体や地区の社会福祉協議会である公社等というものを仲介させまして、公社等が土地所有者から土地等を購入し、そして福祉事業者へ低廉な価格で貸し付けるというものでございます。その購入のための財源として、公社等に基金を設置していただくわけなのですけれども、この基金設置のために東京都が区市町村に対して2分の1の補助をする。この例で言いますと、1億円であれば5,000万を区市町村に補助する。そしてその区市町村は、さらに2分の1でございます4分の1の2,500万を上乗せして、7,500万の基金を公社等に設置していただくと。土地を購入する段階で、この基金を取り崩していただくわけなのですが、不足する2,500万については、銀行等の借り入れで対応していただくということになります。このように土地の購入に対して公的資金が4分の3入りますために、実際の福祉事業者さんに対しての土地の貸付金額は、通常の3分の1から2分の1程度の低廉な価格になるというものでございます。
本事業の補助期間でございますが、14年度から16年の3カ年の事業でございます。この期間内に基金を設置していただければ、実際の土地の購入は18年度までに行っていただくということになっております。対象施設は、痴呆性高齢者グループホームのほか、障害者のグループホームでございます知的障害者の生活寮等、4施設でございます。
次に、対象地区でございますが、このスキームを使っていただくためには、特別推進地区というのを区市町村の申請に基づいて東京都が指定するということになってございます。そしてこの特別推進地区におきまして、区市町村が痴呆性高齢者グループホーム等の具体的な事業計画を立てまして、その後、基金を設置し、適地を探していただいて、そして実際に購入していただくというような流れになってございます。
現在、特別推進地区は、3区市を、具体的には品川区と葛飾区と調布市の3区市の10地区を指定してございます。今後とも、区市町村からの申請があれば、順次、特別推進地区の指定をしていく予定でございます。特別推進地区1地区当たりの補助限度額は2億円、15年度の予算額は10億円となってございます。
本事業の概要は以上でございます。よろしくお願いします。
○高橋分科会長
ありがとうございます。
○手塚委員
いろいろ都のほうでもこういうプランを企画されて、非常にありがたいことだと思うのです。ただ、今の武田委員のお話も含めて、東京都の場合には、土地が高いというのが最大のネック。それからもう一つは、その結果が補助金依存をせざるを得ない、そういう第2の問題があるわけですが、やはり日本の場合、介護保険法の導入のときは、施設も足りない、マンパワーも足りない、事業主体も足りない、すべてやるということで、猛烈に国は慌ててやったわけですけれども、その結果が今日、きょうのご報告を伺って、そういうところからの問題が出てきていると思うのです。
今の武田委員のお話に即して考えると、東京の土地問題というのはどこまでどうなっていくかということなのですが、東京自身は、おそらく2025年から2030年までものすごく高齢化していくだろうと。若い人を呼び込むと言っても、わりとお年寄りが残って住んでいくだろうという中で、遊休地がだんだん増えてくることはわかっていますから、それを高いお金を出して取得するというのも一つの手ですけれども、もう一つは、せいぜい30年ぐらい、あるいは50年、ドイツでは99年の地上権や定期借地権を設定して、土地を借りて利用後返せば良い。それで孫子の代まで土地を維持したいという家族もあるわけですから、だから99年じゃなくてもいいのですが、50年ぐらいの地上権や定期借地権を設定したら良い。定期借地権だと若干問題がありますから、あまり今迄多くなかったが地上権を設定する。地上権は買うより安いですから、30年なら30年で、入居者が自前でその人数割で償却していくと。じゃ、今の日本の銀行はそういうことを認めてくれるかといったら、認めてくれないわけで、そこが石原都知事の言っている都の銀行がやるべきことでありまして、そのぐらいの新しいシステムをどんどんやって、30年間の地上権や定期借地権の地代や返済金を貸しつける、そういうことにしていくのだろうと思います。
高齢化は2025年から30年でピークに達して、それから後は若い人の割合がだんだん増えていきますから、その部分については地上権を更新しなくたっていいわけですし、場合によっては、次の目的に使えばいいわけであって、東京都が資産を増やそうなんてことを考えなくていいのだろうと。その辺のところをお考えになってぜひやっていただきたい。
介護保険法で、私、地方もたくさんのところを調べましたけれども、福祉の村とか、福祉の町とか言われているところは、全部補助金で、地方のほうに限ってぜいたくな施設をつくっているのですね。土地はただみたいなものですから、そこに温泉を掘ったりしてつくっています。
ドイツの場合、介護保険法を導入したときには、福祉の団体が全部公設民営に近い形で、いわゆる介護施設を運営していたのを、逆に社会福祉法人をみんな民営化したのです。それで民間も参入してきているし、そういう形で同じ条件で競争する形をとったわけです。日本の場合、そこが全然まだ至らないわけで、ベネッセコーポレーションも苦戦しているということを今おっしゃられたわけですが、日本の場合には、社会福祉法人が公的につくられたことにより、公務員意識でやってきたためにおくれがきたわけですから、民営化すべき、いわゆる有限会社にすればいいんです。そうすれば、さっきご紹介したような地方のものすごい豪華な施設なんて、あっという間につぶれちゃいますよね。要するに、コマーシャルベースに乗らないわけですから。そんなものをたくさんたくさん日本の国が抱えるかどうかというのは大問題でして、ぜひ 東京都ではそういうものをたくさん抱えないように、後世のためにしていただきたいと思います。
以上です。余計な意見で申しわけないのですが。
○高橋分科会長
ありがとうございました。ディスカッションのための幾つか刺激的なご発言もいただきました。
グループホームのことが出ましたので、東京都のほうにお願いして、東社協がやった調査がたまたま出ていたので、82ページに、今のグループホームがどんな経営主体ですかというのがございます。後でお読みください。痴呆性高齢者グループホームについては、有限会社や株式会社が参入してきています。障害系グループホームはまだまだ社会福祉法人のシェアが高い。ここら辺がターゲットになって、この福祉の緊急のまちづくりが新規参入について新しい仕掛けができる、そういうことかと思いますので、ちょっと補足をさせていただきました。
どうぞ、ご質問、ご意見も含めまして、ぜひ……。
○野村副分科会長
今のことで1つだけ質問をお願いしたいのですが、9ページのところで、杉並区新型ケアハウス料金表の事務費が、自立が1万円から7万7,100円、要支援以降が4万1,800円、どうしてこう差があるのかということと、どうして自立のほうが高いのか、それだけちょっと教えてください。
○武田委員
ケアハウスの事務費に関しましては、所得に応じて利用者の負担を減免するという制度があります。事業者が徴収を減免した分については国と都のほうから補助金で補填される仕組みになっていますので、我々事業者が得る収入は、4万1,800円で固定されているわけですけれども、ご利用者の負担ということからいえば、非常に所得の低い方の場合は1万円まで下がり得るということになります。
それから、自立の方に関してですが、これは杉並区のほうとの取り決めで、原則として自立の方が入ることは想定していません。とはいえ、要支援で入られて自立になるということももちろん考えられるわけですから、一応定めているという性格のものです。こういう方に関しては介護保険給付がなくなるわけですが、先の厚生労働省の通知による費用設定において、介護保険給付のない自立の方については別の費用設定がされているので、こうした差が生じているわけです。
○野村副分科会長
それから、私の意見ですが、特養、特定施設の差のことをおっしゃられましたが、私は都内にも民間の賃貸住宅に住んでいる高齢者が非常に劣悪な状況で生活をしている。私は去年、板橋区で約150件の民間賃貸住宅に住んでいる高齢者を訪問して調査をいたしました。そうすると6万円の平均家賃ですが、これを払うのに非常に苦労しているわけです。そういうようなことで、きょうのお話はこれで結構なのですが、都内に劣悪な状況で生活している高齢者がたくさんおられることもぜひ皆さんにご理解をいただきたいということが第1点。
それから第2点目は、きょうのお話は、ハードに偏っていて、私には非常におもしろかったのですが、実は介護保険の中の住宅改修の中の施行事業者は指定事業者ではないわけです。きょうのお話は指定事業者の中でのお話ですが、指定事業者外の実は民間サービスの参入に非常に問題があるのです。このこともぜひどこかで取り上げていただきたいというお願いをいたします。
○高橋分科会長
ありがとうございました。実はその問題は、白石委員が出された一番初めのスキームともちょっと絡んでくる……。2ページの話で、介護保険給付該当、これは介護保険に則してもう一度整理すると、今の住宅改修の話が出てくるということかと思いますので、「これからの福祉」という場合の「福祉」の意味みたいなものを考える上でも、きょうの市場サービスの議論は一つのスキームを出していただきましたし、武田委員のほうからは、事業者のいろいろな議論の中で公的なサポート、とりわけ場の確保ということを中心に幾つか新しいPFIのスキームの議論もしていただきまして、大変これからの議論になるかと思います。
○手塚委員
この資料を拝見しながら考えたのですが、実は今、ちょうど介護保険が老人病院的に長い時間老人が入院しているのを介護に押し出したのと同じなのですが、日本は世界の中で入院日数が長いというのはご案内のとおりですが、その中で入院日数の長いのが精神科ですね。それで厚生労働省では、精神科のベッドを病院から削減すると言っていますが、そうしますと、多分、精神障害者グループホームというところに、ある程度受け入れていかなくてはならないと思うのですが、そのあたりのところは、多分対応はされていると思いますが。
○高橋分科会長
健康局と福祉局の整理の話、所管の問題もちょっとあってなかなか……。国はこの間、本部の報告が出ましたけれども、事務局のほうから、今のご質問に何かレスポンスしていただけますか。
○松浦計画調整課長
精神障害の関係ですと、ちょっと私どもはわからないものですから、整理して、後日でも報告します。
○高橋分科会長
福祉のあり方ということを考える場合に、新しいのではないんだけれども、とりあえず今の制度的な仕掛け、新しい課題というような形で言えば、精神障害者に対する地域ケアの話、それがグループホームという手法でという議論がこれから非常に大きなテーマで、そしてこれは3障害という言い方をするとすれば、知的と身体に加えて、精神という新しい障害のスキームをどういう形で新しい福祉の枠組みの中で議論するかというのは、これは基本的なセーフティーネット、福祉というのはセーフティーネットの役割を相変わらず果たさざるを得ないし、果たすべきである。その場合、どういうあり方がいいかというのを、地域ケアというキーワードで切るとどういうことになるかということを考える上では、今の手塚委員のご指摘の問題は、これは福祉のあり方にとっての試金石だと思いますので、これはいずれちょっと議論をする機会があろうかと思いますが、そのときに再度させていただくということで、きょうの白石、武田両委員のレポートに即して、まだなおご質問等があれば……。
どうぞ、中村委員。
○中村委員
きょうの武田委員のご報告、大変私も刺激を受けまして、ありがとうございました。
それで、1つ伺いたいなと思いましたのは、資料の2ページのところで、格差が非常にあり過ぎる状態の中で起こってくる問題の指摘として正しいというふうに私も感じているんですが、ただ、さらにその先を考えた場合に、現在の高齢者層ということ、それから現在提供できるサービスの質がかなり似通っている場合という前提では、こういう議論は確かに正しいと思いますし、私も全く同感なのですが、少し今後を考えたときに、例えば今の団塊の世代が高齢者層になっていく以降を考えたときに、まさに福祉施策の対象者がさらに多様化をしていく、それからそこで持っているニーズのありようも多様化していくということになっていくでしょうから、その場合に、例えば特養が最近かなり多様化しているとはいえ、提供できるサービスというのはどうしても画一性を持っている。それに対して、民間で提供できるものがもう少し、例えば今、我々の世代なんかはそうですけれども、住まいに関しても、でき合いの分譲マンションに住むというよりは、自由設計という形で住みたい、そこに何らかの自分たちの生活の仕方というもの、あるいは仕事の仕方というものを反映させたいというふうに考えておりますけれども、多分そういうニーズというのは高まってくると思うのですね。そういう提供できる選択肢の多様化ということに向けて考えていった場合に、今、武田委員が主張しておられる議論がどういうふうに進化させていけばいいのか、それを私も非常に関心を持って伺っていたところです。
この点に関して、もう少し先をにらんで考えたときに、生活者の意識がかなり変化していくということを考えたときに、一方で、先ほど野村副分科会長がご指摘になったような状況もありますから、現在の公的な助成というものがある形でのものを、もう少し合った形にしつつ、もう一方で民間で多様な住まいなら住まいというものを、あるいはケアがついた形の住まいを提供していくという方向性を、民間企業のお立場から考えられるとすれば、どういうふうな方向性が考えられるか、一言でお答えができにくいかもしれませんけれども、お考えを伺えればと思います。
○武田委員
住宅の専門家が多々おられる中で、私からこういう話をするのもどうかとは思うのですが、住むという概念は、おそらく住宅か施設かという二元論では語れないのだろうと考えています。例えば、高齢者が地域の中に分散して住んでいる住み方があり、友人どうしが近所に集まって住む住み方があり、それがもう少し進むとコレクティブハウジングみたいな形になって、あとは外廊下型のワンルームマンションみたいなものになり、内廊下式の個室型になり、さらに進むと、これがいいかどうかは別にして、今の特養の大多数が占めるような多床室、4人部屋とかという世界になってくる。これらは連続した概念であって、どこかで切れるものでは絶対にないだろうと思うのです。
先ほど野村副分科会長のお話にもありましたけれども、施設ではなく在宅であっても非常に劣悪な環境に置かれている方も多いというのはそのとおりだと思います。ですから、介護サービスの提供のあり方とは別に、いわゆるこれまで公営住宅が担ってきたような、良好な住まいを提供するということ、これは当然今後ともやっていかなければならない話だと思います。
例えば特定施設サービスでは、高齢者の住まいとして適切なものを、かつ妥当な価格で提供するということが一つの軸です。それと同時に、ホームヘルプのように1回行って幾らということではなくて、お客様の集合体に対してパッケージでサービスを提供していくというサービス提供のあり方、これがもう一つの軸です。極論すればグループホームも特養も同じなのですが、どういった住環境を提供するのかということと、パッケージサービスをどの範囲でどういうふうに提供していくのか、という2つの軸は必ずしもセットで考える必要はないと思うのです。
後者に関して言えば、例えば医療の世界で言うHMOのように、ある地域に分散している人に対して、この10人に対してこれだけの人数でサービスを提供するからこれだけのパッケージ報酬を、という考え方もなくはないわけです。対象者の特定の仕方とか実績の管理とか技術的には非常に難しいわけですけれども、概念的にはあり得る。ですから、パッケージでサービスを提供するということと、集合的な住まいを提供するということとは実は別の概念であって、将来的にこの2つは切り分けていくべきではないかと実は私は考えています。そういう意味からすると、将来的な問題としては、福祉施策と住宅施策の「分離」と「整合化」が課題であると総括できるのかもしれません。
○高橋分科会長
ありがとうございました。これから発展するいろいろなディスカッションとお答えだったなというように思いますが、いかなる福祉なのかというのが実は問われていて、高齢者に即して言えば、明らかに寝たきり老人モデルから痴呆性高齢者モデルに転換をしていて、その転換がグループリビングではどうもうまくいかないということがかなりはっきりわかり始めてきた、要するに従来型の老人ホーム、もちろん医療施設は論外ですが、新しいケアサービスモデルをどういうように考えたらいいかという文脈で実はグループホームが出てきた、単なる安上がりの施設をつくるためのグループホームではない、グループホームのケア思想みたいなものがあって、それは多分、保育サービスでは全く同じはずですし、これから課題の知的障害者、身体障害者、さらに精神が入って、障害者のケアサービスの中でも、これは介護保険の自立支援というキーワード、それから自己決定、自己選択というキーワードを出しましたけど、その議論と、ここで言う、かつての福祉対象で言う措置による庇護、保護、そういうキーワードとの対比の中でも、サービスの内実がどうも問われていて、それをうまく効果的、効率的に組織するためにはどういう仕組みがいいのだろうか、そういうテーマがこの議論の裏にどうもあったような気がいたしまして、その中で多分、白石委員のお話にあった民間事業者がマーケットにどういう形で参入してきたか、そしてそれを持っている、これはある意味ではヒューマンサービス産業とでも言うのでしょうか、サービス産業という視点から整理していくと、かなりおもしろい論点も出てくる、そんな感じがいたします。次回以降これを発展させていくテーマをお二人からお示ししていただいたかと思います。大変ありがとうございました。また、東京都からも新しい施策についてご説明があり、新しい福祉のあり方に即時的に対応しようとしている、そういうことをお示しいただきました。ありがとうございました。
それでは、次回以降の予定でございますが、きょうの話に連続させていくとすると、サービスが市場化すると、消費者の保護の問題が一つ出てくるということで、これは最近、調査報告がいろいろな形で出てきておりますが、そういうものを含めまして、利用者保護の問題について、執行委員にきょうのような形でレポートをお願いできませんでしょうか。
それから、きょうは営利企業の話が出てまいりましたが、先ほどの事務局からのご説明の中で、東京都ではNPOの役割が大変大きい、これは全国的なデータから比較しても大変大きな役割を果たしてきていて、これは施策的にもいろいろな形でやられているわけですが、そういう意味で地域の役割、あるいは非営利活動の役割というようなことで、中村委員にご発題をお願いできないかというふうに思うのですが、いかがでございましょうか。日程の調整等もあるかと思いますが、そんなことで、きょうの議論をさらに別の角度から切り込んでいくということになろうかと思います。
それでは、事務局のほうにお返しいたします。次回以降の予定をよろしくお願いします。
○松浦計画調整課長
ありがとうございました。次回の開催でございますけれども、今予定しているのは、7月28日、月曜日、午後2時から4時までで開催させていただけないかと思っております。次回は第3回でございますけど、先ほど会長からお話がありましたように、執行委員、中村委員にご報告をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。
○高橋分科会長
それでは、執行委員、中村委員、日程的にも大丈夫でございましょうか。
そういうことで、次回は7月28日ということでよろしくお願いいたします。
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