福祉保健局トップページへ
  企画計理課トップページへ

平成15年6月2日

問い合わせ先
福祉保健局総務部企画計理課
電話 03−5320−4019

東京都社会福祉審議会・第2回「これからの福祉」検討分科会の審議結果

1 開催日時

  平成15年6月2日(月)午前10時00分から正午まで

2 場所

  東京都庁 第1本庁舎 33階 特別会議室S6

3 出席者

    分科会長 高橋 紘士   立教大学コミュニティ福祉学部教授
    副分科会長 野村  歡   日本大学理工学部教授
    委員
    新村 保子
    手塚 和彰
    三宅  亨
    大澤 義行
    藤井 俊郎
     
    住友生命総合研究所常務取締役
    千葉大学法経学部教授
    東京都社会福祉協議会副会長
    東京都民生児童委員連合会会長
    会社顧問(元日本発条(株)副社長)
    臨時委員 白石 真澄
    執行 秀幸
    武田 雅弘

    中村 陽一
      東洋大学経済学部助教授
    明治学院大学法学部教授
    ベネッセコーポレーション
    シニアカンパニー本部調査室次長
    立教大学大学院21世紀社会デザイン科研究教授
    オブザーバー 三浦 文夫   武蔵野女子大学特任教授
     

4 議事

  1 挨拶
  2 資料説明
  3 委員報告
  4 意見交換
  5 その他

5 議事録

(午前10時01分 開会)

○松浦計画調整課長

 それでは、定刻になりましたので始めさせていただきます。
 専門分科会が始まる前に、実は昨日付で福祉局長に異動がございまして、川崎裕康局長から、6月1日付で幸田昭一局長になりました。よろしくお願いいたします。
 それでは、本日お忙しい中、ご出席をいただきまして、ありがとうございます。
 開会に先立ちまして、事務局より、委員の皆様の出席につきましてご報告させていただきます。本分科会の委員の総数は12名でございまして、本日、所用のために欠席の報告をいただいております委員の方は、平岡委員でございます。したがいまして、本日出席予定の委員の方は11名となりますので、定足数に達することを報告させていただきます。
 続きまして、皆様のお手元に配付してございます資料のご確認をさせていただきたいと存じます。資料は1から4でございます。資料1は、社会福祉審議会第1回「これからの福祉」検討分科会での主な意見を踏まえた論点を事務局のほうでまとめさせていただいたものでございます。資料2は、福祉サービス市場をめぐる「東京都」の状況をまとめさせていただいたものでございます。資料3は、本日ご報告をいただきます白石委員からご提出いただきました「公的介護保険制度と市場」という資料でございます。資料4は、武田委員からご提出いただきました「福祉サービス市場における民間企業の役割とその参入促進」ということでございます。参考資料としまして、東京都社会福祉協議会発行の「東京グループホーム白書」がございます。
 また、本日は傍聴の方がいらっしゃいますので、あわせてお知らせいたします。
 なお、当審議会の議事録でございますけれども、東京都ホームページに掲載されまして、インターネットを通じて公開されますので、申し添えさせていただきます。
 それでは、これからの議事の進行につきましては、高橋分科会長にお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

○高橋分科会長

 おはようございます。いろいろな動きがございますけれども、ご承知のように、国では介護保険の部会が発足し、これと並行して、2015年を目途にということで、高齢者のケアモデルを考える高齢者介護研究会が、きのう開催され、今後かなり議論を詰めまして、多分6月中には報告になりますが、どういうものができるかはまだちょっとわかりませんけれども、東京都というか、大都市型高齢化ということを相当意識した報告にするような方向づけが少しずつ出始めたので、ここでもそれが出た段階でご紹介をさせていただきたいと思います。
 それから、先週、12月の支援費の問題をめぐっての議論の中で、大臣が約束した検討会が始まりまして、これも私が委員をしておりますが、そこでも、じっくりした議論と急ぐ議論とが2つ交錯をしているなという感じです。障害者の当事者団体も委員となり議論をするという、今までのやり方とはちょっと違う議論として始まったなという感じがしておりますが、東京都の障害福祉部長が委員としてご出席でございますが、これもここでの議論と微妙にかかわってくる。最近、少し先走りした議論がいろいろ出ておりますが、その前に、とにかく障害者サービスの体系をきちんと考えてみようという、厚生労働省もそういうスタンスで議論が始まっておりまして、これもこれからの福祉のあり方に微妙に影響を与えてくる、そういう方向づけが出てくるのかなと思ったりしておりまして、ちょっとそのことも含めて、折に触れてご報告をさせていただく機会があればとも思ったりしております。
 それでは、きょうは、何回か委員の皆様からいろいろな形でご意見を伺いながら、東京都におけるこれからの福祉を考える手がかりといいましょうか、そういうものをいろいろな形でご示唆をいただけないかということで、きょうは白石委員と武田委員に事前にお願いをしてございますので、よろしくお願いしたいと思います。
 その前に、資料のほうの説明が事務局のほうからあろうかと思いますので、よろしくお願いいたします。

○松浦計画調整課長

 それでは、資料1と資料2を私のほうから説明させていただきます。
 まず、資料1ですが、前回の分科会での意見を踏まえて、論点を事務局のほうで整理させていただいたものでございます。今後の議論の上で参考にしていただければ幸いと存じます。
 それでは、1ページ目、「ニーズとサービス・需要と供給等」というところでございまして、福祉サービスの高まりとか一般化に対しまして、供給(福祉サービス基盤)が十分に整っていない。その中で、マーケット的なものが導入された結果、混乱が生じている。これについては、整理し直し、現状を見ていく必要がある。
 福祉サービス市場を議論する場合、消費者保護等にあたるサービス評価とか需要・供給、これらの仕組みをどう整備するかというのが大きな問題である。
 福祉サービス市場は一般市場と異なって、政策により需要が創造される市場でございますので、一般市場における民間企業同士の競争とは異なる考え方が入ってきている。その結果、セーフティーネットがどのようにできているのかも関係してくる。
 2ページ目。「地域・住民」、「市場・事業者」、「行政・公的制度」、この3つの役割分担と連携等ということでまとめさせていただきましたが、東京ということを考えた場合、福祉サービス基盤をいかに整備するかということが、事業者にとって非常に大きな負担になっている。こういう基盤をどのように整備するかということとか、その基盤の上でサービスをだれがどのように担っていくかということは峻別したほうがわかりやすい。
 その3つのセクター、これらの相互の役割分担の議論が重要である。
 サービス市場といっても、保育、障害者福祉、高齢者福祉などのサービス内容とか、23区と島嶼部といった地域性の違い、住民ニーズのあり方など、そのような要素によって三者の役割分担が大きく変わってくる。
 PFIなどコラボレーション型の活動が市場を動かしていく大きな重要な要素となる。
 市場での競い合いと地域を組み合わせて議論することにより、ローカルマーケットが問題となりまして、そこでNPOの意味が問われる。
 住民参加、市民参加の問題と福祉サービス市場がどのように関係してくるかという議論も必要である。
 最後、3ページでございますけれども、「市場への規制」ということでまとめさせていただきました。
 この市場を考えるときに、ガバナンスの問題とアカウンタビリティーの問題については、きちんと議論しなければならない。イギリスの場合は、民主的なプロセスを経た結果として、行政としての施策が出てくることを前提としておりまして、日本の場合には、よかれあしかれ行政の担う部分というのは大きくなり過ぎている。
 2、将来、この福祉に対するニーズというのは、高齢者のニーズに引っ張られることになる。高齢者福祉というのは、全都民に利用する可能性がある分野でございますけど、そうしたものについては、市場原理の導入というのは予測されたところでございまして、市場経済にある程度ゆだねていいはずである。そうでない部分については、社会的な保護の必要な部分が存在している。
 3、今までと違いまして、今、福祉は非常に広い領域を対象とするものになっております。しかし、国の制度は完全に縦割りでございまして、市場経済に対応するためには、縦割りの規制を撤廃しなければならない。
  最後ですが、日本の場合、政府の指導などの公的な制度、行政の介入により、福祉サービス市場が非常に小さいものになるのではないか。いろいろ事業者の参入を促しているけれども、公的な部分の介入が大きくなると、事業者としては市場での展開に非常に慎重にならざるを得ない。どのようにして市場というものを魅力ある環境にしていくかということをぜひ検討することが必要であるということで、前回のご議論を3つの分野で事務局のほうでまとめてさせていただいたものでございます。
 続きまして、資料2についてご説明いたします。これは、福祉サービス市場及びそれを取り巻く状況につきましてまとめたものでございます。
 1ページ目をご覧いただきまして、まず、「事業者の状況」のほうからご説明させていただきたいと思います。介護サービスの事業者指定を受けている介護サービス事業者全体に、営利企業の占める割合というのを出してみたわけでございますけれども、東京都は54.1%、全国平均は10.6%でございますので、約5倍になってございます。NPO法人につきましては、その割合というのは、東京都は4.1%で、全国平均0.5%、約8倍になってございます。サービス別に見ますと、訪問介護の事業者が営利企業に占める割合というのは、東京都は75.2%、全国平均では45%、約1.7倍になってございます。NPO法人の占める割合は、東京都が7.4、全国平均が4.1、約1.8倍になってございます。このように東京都には全国に比べまして多くの営利企業やNPO法人が介護サービスに参入してございます。
 参考までに、1枚めくっていただいて、2ページをお開きいただきますと、サービス別の営利企業、NPO法人の割合、これの東京都と国の割合をお示ししていますので、後でご覧いただければと思います。
 また1ページに戻っていただきまして、NPO法人の設立認証等でございます。東京都では、14年度末現在、2,230の団体が認証を受けてございます。これは全国の1万584の約2割にあたります。また、15年の4月末現在でございますが、東京都のNPO認証団体、2,317の55%にあたる1,287の団体が「保健、医療又は福祉の増進」を活動分野としてございます。
 ここら辺につきましては、3ページ目をお開きいただきたいと思います。3ページの下に「分野別団体数・東京都」とございますけれども、「保健、医療又は福祉の増進」というところで、認証団体数につきましては、1,287となってございます。このように、東京都におきましては、NPO法人は福祉サービスの担い手として大きな可能性を有しているということがわかるという資料でございます。
 また1ページに戻っていただきますと、先ほど、高橋分科会長のほうからお話がありました支援費制度の指定事業者数でございます。この支援費制度のほうにも、営利企業及びNPOがサービス提供者として参入してございまして、ホームヘルプにつきましては、855の事業者の約7割にあたるところは株式会社と有限会社が占めてございます。
 これは4ページをお開きいただきたいと思います。ホームヘルプでございますが、事業者が855、株式会社が326、有限会社が255ということになってございます。また、NPO法人につきましても、132ということで、15%以上ということで参入しているところでございます。ホームヘルプ以外の居宅サービス、下に「デイサービス」以下がございますけれども、これにつきましては、株式会社、有限会社の登録がなく、自治体とか、社会福祉法人が大きな役割を占めているところでございます。今までは措置制度であったときは、株式会社、有限会社につきましては、門戸を閉ざされていたわけですけれども、支援費制度になったというところで、門戸は開かれましたけど、まだ参入はないということでございます。
 また1ページに戻っていただきまして、「都民(利用者)の意識」ということで、実は13年度に、東京都社会福祉基礎調査で「都民の生活実態と意識」というものを調査した結果につきまして、今回の議論に関係あるデータをお示ししてございます。
 介護が必要になったときの対応として、自宅で介護サービスを利用したいという割合が全体の45%ということで、一番多いところでございます。これが65歳以上ということになりますと、自宅で介護サービスの利用希望というのが約6割、57.6%というところでございます。このように多くの人は、介護が必要になっても在宅で暮らすことを望んでいるというところで、今まで施設サービスに比重があった東京都の施策も、地域での自立を支えるということに比重を移していくことは、前回、福祉サービスの理念というところでお示ししたところでございます。
 これを男女別等で見たものが、5ページをお開きいただきたいと思いますけれども、男性のほうが48.7、女性が42.9と数字がございますけれども、こういうニーズ、希望の割合になってございます。
 また1ページに戻っていただきまして、民間企業の福祉サービスへの進出について都民の意向を調査した結果がございます。民間企業の進出につきましては、賛成というところは54%ということで、過半数になってございます。賛成する理由としましては、サービスの質の向上が期待できるというのが最も多い。逆に反対というところ、これは8.6%でございますけど、この8.6%の方の中で反対の理由を聞いたところ、最も多いのは、行政の責任で行うべきというのが4割を占めているということでございます。
 これの参考資料が、最後の6ページに表でまとめているところでございます。65歳以上の方でも4割以上が、民間企業が進出していくことに賛成と回答しておりまして、反対は1割余りになってございます。
 このように、都民の意識調査では、多くの方が民間企業の福祉サービスへの進出について賛成している。そのことによって、サービスの質の向上を期待しているということが言えると私どもは考えているところでございます。
 説明は以上でございます。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。論点整理と東京における福祉サービス市場をめぐって、幾つかの資料に即しながら、東京都の現況を把握する基礎的な資料をご紹介いただきましたが、これについてご質問なり、あるいは、さらにちょっとここら辺は調べるようにというようなご注文も含めまして、何かございますか。
 よろしゅうございましょうか。この利用者意識調査はなかなかおもしろい。しかも、前の8年の調査に比べて、民間サービスに期待する割合が増え始めている。いかがでございましょうか。
 はい、どうぞ、執行委員。

○執行委員

 今の都民の意識調査の、一番下の民間企業の福祉サービスへの進出について、賛成か否かという点で、反対の理由として、行政の責任で行うべきであるというのが40.6%と多いわけですけれども、これは何か答えが用意されて、それに丸をつけたということなのでしょうか。といいますのは、行政の責任で行うべき、なぜそうなのかというのが知りたいところだと思うのですけれども、そこの点をちょっと教えていただければというふうに思います。

○松浦計画調整課長

 調査項目としましては、回答で選択肢をつくっていまして、反対の理由として、私どものほうで想定し、行政の責任とか、経済的負担が大きいとか、期待できないみたいな選択肢をつくって選んでいただいたら、こういう結果になりました。これにつきましては、こういう意見があるだろうということで選択肢をつくった結果でございます。

○高橋分科会長

 言わずもがなですが、全体の8.6%のさらに内訳ですから、変な言い方すれば、イコール・ウエートで出すのはちょっといかがなものかと。もうちょっと円の形を比率で小さくして出したほうが……。半々が拮抗していてその中でというならまだわかるけど。
 要は、公的サービスに比べて民間のほうが経済的負担は大きいというのは、これはある意味で言えばうそなのですよね。措置の時代の応能負担は、確かに低所得はゼロだけど、上のほうは20万、30万取っていたわけですから、今の特養の入所の人たちは、応能負担じゃなくて、定率負担になりました。一般的にそういうイメージを8%の中の皆さんはお持ちだということで、そういう意識だと。だから、サービスの質の向上のほうだって、そういう意味では意識ですから、意識としてそういうふうに考えておられるというところがポイントかなと思います。
 きょうの議論も含めまして深めて、東京都のほうでも資料を少し調べてほしいというような、そんなことも適宜お願いして、少し議論を深める素材をいろいろな形でお出しいただくようなことを今後もお願いをしたいと思います。
 新村委員。

○新村委員

 こういう調査をするときに、大変おもしろい結果だと思うのですけれども、特に自宅で介護サービス等を利用という方が非常に多いということの読み方をなるべく注意しましょうということを、言わずもがなでございますが、今のものすごい施設志向、特養への待ち行列の話と、それから、自分が介護されるときという質問なのか、自分の親が介護されるときなのかというようなところをきちっと整理しないと、これをこのまま額面どおり信用すると、ちょっといろいろな施策が間違うのではないかと。ここはプロの集まりですので、ご存じとは思いますけれども、こういうデータの出し方をされると、ちょっとそういうふうに思わせるように読めたものですから、言わずもがなのコメントをさせていただきました。
 以上でございます。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。おっしゃるとおりでございます。

○藤井委員

 今の新村委員がおっしゃられたことに関連するのですが、自宅で介護サービスを利用というアンケートでございますけれども、今までは措置制度の下で、施設の中での入所サービスを受けていたわけですが、入所施設の中での介護サービスの質と量というものについて、果たしてこれが満足するものであったかというと、かなりいろいろな問題があるわけでして、これでいいとか悪いとかという問題ではありませんが、今後の改善目標というか、課題としてこれからかなりきっちりとサービスの質と量を上げていくことが求められます。只今、新村委員がおっしゃったように、入る人と、そこでやがて自分がサービスを受けるのだという観点からしても、例えば身近な報告によりますと、食べるものは大変においしく、喜んで食べておられましたよという報告に対し、実際は家族が調べてみると、全くその反対で、そうではなかったとか、これは全般の声かどうかは別として、一つの声としても、よく聞かれることは事実でありますので、これを課題としてしっかり分析して対応し、措置から保険へ制度の面が変わっていく段階で、行政としてもサービスの質と量を向上させる指導なり施策なりの努力が必要ではなかろうか。基本的に自宅でという面と現状の施設及びサービスに対する不満から自宅の方がいいという面もあるのであって、自動的に自宅を望んでいるということではないのではないかと、この資料から読み取りたいと思いましたので、一言申し上げさせていただきました。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。施設のあり方をどう考えるかというのは、これは高齢者介護研究会でも、第3類型という未熟な概念ですけれども、少し出てきておりまして、ほんとうの施設需要って何だろうかという議論をしなくてはいけない。その場合に、きょう多分、武田委員からもお話があろうかと思いますが、選択肢みたいなものの議論が出始めて、その中でまた施設のあり方ということと、都民の意識のあり方みたいなものを少し突っ込んで分析していく必要がこれから起こってくるかなというふうに思います。東京都における「これからの福祉」の「これから」というのを、どういう時間的な展望で考えるかということも含めまして、今後、今のご指摘も含めて深めたいなというふうに思っています。よろしゅうございましょうか。そんなことでこれから議論を深めさせていただければと思います。
 それでは、きょう、白石、武田両委員に、報告をお願いしております。まず白石委員のほうからよろしくお願いいたします。

○白石委員

 私の資料は、資料3でございます。今、高橋分科会長からもお話がございましたように、これからの福祉ということを都民に問うていく際には、選択肢の工夫などもすごく必要ではないか。行政の責任といっても、どこまでを責任範囲とするのか。例えば民間事業者を健全育成し、それをチェックしていくというような役割もありますから、新しい選択肢を用意して意識調査をされたほうが、都民のニーズみたいなものも如実に出るのではないかなというように感じました。
 資料の1ページをめくっていただきまして、市場といったときに、きょうは「公的介護保険制度と市場」なんですけれども、介護保険の中で支給されるサービス以外にも、高齢者がお金を払って買うようなサービスというものが非常に多岐にわたっております。例えば薬局が、最近では高齢者のコミュニケーションをとるというようなまちかど相談薬局などを始めた介護・医療分野というような、直接介護・医療にかかわるもの以外にも、資生堂が始めたような、高齢者の対象とした化粧品などもございますし、旅行から生活基盤、さらに生きがいと言えるようなものまで非常に多岐にわたっているということをお示ししたのが2ページ目でございます。
 次に、3ページ目ですけれども、介護市場への参入事例ということで、多岐にわたっております市場ですけれども、幾つかパターンに分けて考えることができるのではないかなというような図でございます。もともと本業があって、本業での顧客を高齢者等に拡大していったという例、例えば宮園自動車というところは、車いすが乗れるようなリフト付の車両を今まで持っていたわけでございますが、ニーズに応じて障害者のために配車をしていたわけですが、高齢者に向けて移送サービスを拡大してきたというようなものもございます。近畿日本ツーリストなどは、10数年ぐらい前から高齢者のクラブ化、クラブツーリズムというものを打ち出しておりましたが、もともと旅行を売っていたところが、高齢者のために付加価値のあるツアーを発売したというようなパターンでございます。そして、自社が持っていた固有の技術やインフラなどを活用して高齢者マーケットに参入してきた。例えば製紙各社が、今まで子供向けの紙おむつを出していたんですけれども、吸収力とか肌荒れをしないというような技術を生かして高齢者市場に参入してきたというパターンでございます。また、隣接・関連業界に参入してきた。ほかの隣接業界でやっていたんですけれども、例えば医薬品卸のスズケンなどが医療周辺サービスに参入してきたとか、ちょっと違った領域に参入してきたというのがございますし、最後に書いてあるところでは、今まで高齢者分野についてはタッチしていなかったけれども、自社の技術を試すために、松下電工なども、門真のほうで、オール電化と言うとちょっと言い過ぎでございますが、今のIT技術を生かしたような有料老人ホームに参入してきた。これまであまり縁がなかったけれども、介護保険などを機にこうした市場が拡大するということをにらんで参入してきた例などがございます。
 4ページ目ですけれども、一つの事業者の事業のやり方に注目しますと、これも幾つか類型化できるのではないかなと思います。事業そのものに着目した類型化と、どこの地域で事業を展開しているかという地域に着目した類型化が行えるのではないか。こうしたご説明で何が言いたいかといいますと、シルバーサービス市場と言いましても、どういう事業を展開しているのかによって、それぞれ非常に特色がある。支援をしていく、市場を健全育成していくような、その政策支援も異なるということを申し上げたいわけでございます。
 例えば事業に着目した類型化の中には、複数の事業を展開している日本福祉サービスなどは、訪問介護をやり、入浴をやり、介護ショップをやり、そして食事、リフォームなどといったところ、福祉のワンストップを目指している。こういう事業者に関しては、一つの事業に参入することで、そこからお客様のニーズに着目し、相乗効果が期待できる。しかし、デメリットといっては、多大な先行投資が必要になってくるので、大手の事業者でないとこういうことはできないということでございます。
 また提携型としては、松下電工とアサヒサンクリーンなどがやっていらっしゃるように、自社で提供できないサービスをほかの企業と組むことによって取り次いでいる、提携をしているという例がございます。これは、自社が持っていた顧客だけではなく、ほかと組むことによってチャンネルが多様化して、そして顧客側にとっては、一つの企業に頼むことで、ほかのサービスも得られるというような利便性が向上できる。
 すべてをご説明している時間はございませんけれども、地域に着目した類型化の中では、全国展開、スケールメリットを追求しているといいますか、日本福祉サービスですとか、コムスン、ニチイ学館のように、ある程度の効率化が期待できる。研修などをいちどきに行えるとか、固定費を削減するというメリットがある一方で、デメリットは大きな先行投資が必要になる。地域に着目した事業の類型化の場合でも、いろいろなメリット、デメリットがあるということでございます。
 次に、今、介護事業者の事業内容というのはどうなっているのかというのが5ページ目以降でございます。これはシルバーサービス振興会の調査報告書によりまして、そのエッセンスだけを抜き出したものでございます。訪問介護と訪問入浴介護と福祉用具貸与という3つの事業に限定して、合計7,390社にアンケートをかけたものでございます。平成12年度から13年度まで、事業者数というのは、それぞれ1,000社程度伸びているところもあれば、50社ぐらいに限定されているものもあって、増減率も事業によって非常にまちまちでございます。資本金は、1,000万円までの事業者が全体の7割ということで、中小の事業者がほとんどを占めている。法人形態は、株式会社と有限会社がほぼ半々ということでございます。
 6ページ目をご覧いただきますと、企業の顧客数や売り上げはどうなっているのか。これは、毎年の調査時点でのサンプルというものがすべて同じということではなく、若干減ったり増えたりしている中での調査でございますので、これを時系列で見ていいのかどうかというような制約がございますが、大まかな傾向だけをあらわしました。顧客数で言えることは、入浴に比べて訪問介護と福祉用具貸与の伸びが非常に大きい。そして売上高では、逆に訪問入浴介護、これは顧客数、売り上げともに伸びが悪いわけでございまして、最も売り上げの伸びがいいのが、訪問介護でございます。しかしこれは、一部の大規模事業者が平均値を押し上げているというような状況を把握してというか、そういう前提を置いて見る必要があると思います。どの事業をやっているかによって、顧客数や売り上げというものの伸びに差があるということでございます。
 次に、7ページ目ですけれども、どの事業をやっているかによって、業績の見通しというのが異なるということでございます。いずれも経年的に見て、収支見通しはよくなっているわけでございますけれども、なお赤字事業者も多いということでございます。一番右の「赤字見通し」というところをご覧いただきますと、特に訪問入浴介護、福祉用具貸与は4割以上が赤字ということでございます。訪問介護に比べて、訪問入浴と福祉用具貸与は赤字の比率が非常に高いということです。
 それぞれの事業規模と収支というのはどうなっているのかというのが、次の8ページ以降でございます。訪問介護を行っているところが、どれだけのヘルパーさんを抱えているかによって、収支見通しをどのように考えているかというところでございます。これの大まかな傾向だけを申し上げますと、ホームヘルパー派遣、訪問介護は、どんどん拠点をつくって事業拡大をしているところと、ある狭いエリアで地域限定をしているというように2つに傾向が分かれますけれども、共通して言えることは、非常勤を多く抱えているところ、さらに固定費を下げているところほど収支がよいわけです。つまり常勤ではなく、非常勤をたくさん抱えているところのほうが収支はいい。さらに、ヘルパーさんがたくさんいるほうが、40名以上のところがやや業績がいいということです。小さい規模で、ヘルパーさんの数が少ないところほど赤字の傾向が多い。また興味深いところでは、研修をやっているところほど収支がいいのですね。よいサービスを提供しているということがよい収支に結びついているということです。
 次に、9ページ目です。これは移動入浴車をどれだけ抱えているかによって、訪問入浴の業績がどうなっているかということですが、これも入浴車の台数が多いところほど黒字の比率が高い。つまり、スケールメリットと申しますか、たくさん入浴車を抱えているほうが巡回ルートを効率化できるわけですね。いろいろな高齢者のところに空き時間に行けるというふうに巡回ルートの効率化ができる。また、居宅介護支援をやっているほうが収支はいいということです。入浴だけをやっているのではなくて、空き時間の有効活用ができている事業者ほど、入浴だけに限定して事業をやっているところよりも収支がいいわけです。
 次に、10ページ目ですけれども、福祉用具を貸与しているところの収支見通しでございますが、黒字と答えたところはわずか2割強で、ほとんどのところが厳しいというように答えております。福祉用具を貸しているところも、自分のところで福祉用具を所有しているのか、レンタル卸というところでは全くオペレーションの構造が異なります。自分のところで所有しているのは、在庫を抱え、そして倉庫を用意し、消毒施設をつくるということで、非常に初期コストが大きくなりますし、レンタルというのは、初期の開業コストが低いわけでございます。薬局やリフォーム会社や家具店など、新規のところは福祉用具のレンタルに参入しているわけでございますが、事業の内容によってもオペレーション構造が異なり、収支が異なるということに注意をしなければいけません。福祉用具を貸与しているところは、先に訪問介護や入浴をやって、後から福祉用具に参入しているところの業績がいいわけです。つまりマーケットを先に広げておいて、顧客を囲い込みしているところのほうが業績がいいという結果が出ております。
 そういうところを少しまとめますと、11ページには、なぜ黒字になったのか、なぜ赤字になったのかというような、今の事業上の問題点を聞いております。黒字のところでは、質の高いサービスを提供できている。これは先ほど申し上げたところでございますが、研修をやっているところのほうが質の高いサービスを提供できて、その結果、黒字に結びついている。訪問入浴介護や福祉用具貸与などでは、ケアマネさんとの連携がうまくいって、顧客の掘り起こしができているということです。そして、コスト削減や効率化なども黒字の要因として挙げられております。赤字の要因は、3業種に共通しているわけですが、まず顧客が増えないということですね。予想以上に間接経費がかかっているとか、効率の問題、人件費の問題などを挙げているところが多いわけでございます。
 12ページ目に、経営上の課題ということを聞いておりますけれども、訪問介護をやっているところでは、まず、報酬単価の低い家事援助の比率が高く、採算が悪くなったということとか、地域で従来からサービス提供してきた既存の事業主体が強くて新規参入できない。予想以上に業務作業などの間接経費が高いということです。直接的な介護だけではなく、間接業務が非常に多く、ロスが多いということが挙げられております。訪問入浴介護などは、非常にキャンセルが多いなど、ほかのサービス事業者との競争が激しい。例えば昼間の3時だったら3時にと、同じような時間帯に利用者が集中して、効率が非常に悪いとか、看護婦が確保できないというようなこと。また人口集中していない地域では、特に東京などは、三多摩地域などに行くと、23区内と比べて移動効率が非常に悪いということが予想できるのではないかなというふうに思います。福祉用具の貸与などをしているところでは、やはり競争環境、顧客をどう獲得していくかということとか、福祉用具を維持する上で、仕入れコスト、これは自社所有の場合でございますけれども、利益が出ないということですね。ケアマネさんの福祉用具に対する理解が進んでいなくて、一旦貸したものの返品率が非常に多いというようなことがあるというふうに思います。
  13ページは、利用者から見た課題、これは先ほどの調査とは違いまして、東京都社会福祉協議会が、都内の48指定居宅介護支援事業者経由で介護保険サービス利用者280名にアンケートをしたものでございますけれども、おおむねサービスに対する満足度というのは、大体37%から67%ぐらい幅が広いわけですけれども、福祉用具貸与・購入の満足度が一番高く、その次に通所や訪問介護、ショートステイの順になっている。
 さらに、具体的に何を利用して困った、気になったのかということですけれども、訪問介護などでは、ヘルパーを頻繁に変えないでほしいとか、ヘルパーさんとの相性の問題とか、やはり移動が伴うわけですから、交通渋滞などで時間がおくれるというように予想されますけれども、時間を守ってくれないとか、ヘルパーの資質が十分でない。そして、右の福祉用具貸与などでは、利用にあたっての手続が非常に煩雑であるとか、費用そのものが高いとか、入院すると、その間ベッドを返さないといけないとか、ケアマネさんの知識不足などを挙げております。
 最後にまとめですけれども、15ページ。こうした苦情に対して、この調査をした事業者は、7割が窓口や担当者を決めているものの、苦情マニュアルをつくっているというのはわずか17%。自治体の苦情対応システムと連携しているというのが7.3%で、苦情対応や自己評価システムが不備ということです。お客様から苦情があったとしても、どの人が苦情を受けたとしても、すべて同じように対応できるのか、そしてその苦情を生かして、ほかの事業者さんがやっているいい点を見習ってどうしていくべきなのかという自己評価システムが不備ということです。
 こうしたシルバーサービス、競争が健全になっていくためには、やはりユーザー側のニーズにマッチするような量の確保、質の確保ということが最優先課題でございますけれども、介護に参入している、ホームヘルプ、訪問介護に参入しているところでは、将来的にマーケットは拡大傾向で、業績の伸びも予測されるのですけれども、現時点では、ホームヘルパー不足に悩んでいる。入浴事業者なども、看護職の不足に悩んでいるのですね。これは、やはり介護報酬の低さ、大概は時給で雇われていて、身体介護で1,500円ぐらい、さらに家事援助で1,000円ぐらいなのですけれども、これはヘルパーさんが移動して仕事をすることを考えれば、非常に安いということで、なかなかヘルパーさんのなり手がいない。なり手がいないその中で、競争が促進されない、質が上がっていかないということで、やはり人員不足ということが非常に大きな問題になっているわけです。研修などもOJTでやるしかない。まとまった時間がとれないというような問題も発生しております。まず、量的な確保、さらに量がそろったところで、介護従事者の質的な向上を目指すためにどう研修していくのか、こうしたようなことが問題になってくるわけでございます。
 今、事業者の中で採算割れをしているところが6割、自己資本不足のところが4割で、なかなか事業の安定ということを言えない。業績が悪くなれば、ヘルパーさんの首を切るといったような、従事者の安定雇用にもなっていないわけです。不安定な職場だからこそ参入してくる人が少ないということで、こうした人たちの周辺環境の整備、漠然とした言い方でございますけれども、介護報酬そのものというのが今のままでいいのかどうかとか、失業した人たちをさらに安定雇用していくためにどういう制度が必要なのかというようなことも考えていく必要があるのではないかなというように感じております。
 以上でございます。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。公的介護保険の事業者を素材にしながら、福祉サービス市場の、むしろ事業者の構造というか、そしてそれが抱えている問題について、その現状について非常に展望のいい報告をしていただきました。ありがとうございました。
 ちょっと質疑応答というか、ご質問なり、いろいろなお立場からいただけたらと……。野村副分科会長、ございますか。どうぞ。

○野村副分科会長

 どうもありがとうございました。今、お話しいただいたシルバーサービス振興会の調査は全国版ということで理解してよいですか。

○白石委員

 はい、さようでございます。

○野村副分科会長

 そうすると、今のお話を、ある程度東京都に翻訳をするということが一つあろうかと思います。私が今お話を聞いていて全般的に感じたことは、やはりスケールメリットを生かした企業が随分このデータを引っ張っていっているのではないか。というのは、中小零細企業が非常に伸び悩み、悪い条件で仕事をしている。私どもは、これに対してどう対応するのかというような議論をしたほうがいいような気がするわけですね。全体で言うと、5ページ、例えば訪問介護で言いますと、増減が930社増えているということですが、実は1,000社新しくできて、70社つぶれてしまったのがあって、増えたのが930かもしれないというわけですよね。そういうようなことも踏まえながらこういうデータを見る、あるいは全国展開できる大手の企業と、それからほんとうの1市町村で個別にやっているようなところとの規模による数字の見方というのを意識しておかないと、ちょっと間違えないかなと。それを私はちょっと心配しました。

○白石委員

 おっしゃるとおりです。

○高橋分科会長

 ありがとうございます。やはり介護サービス事業の場合は、事業者の特性に規模差がありますよね。健全な事業者を育成するという立場からいうと、そこら辺をどう考えるのかというのがかなり重要な議論で、例えば東京都の場合に、あれはおととしぐらいになりますか、人材育成の話で訪問介護をターゲットにしてやったときは、中小のそういう余力のないところにいろいろなノウハウを提供するような形でやりました。にもかかわらず、主体的にマーケットに取り込めるような実力みたいなもの、これは経営者の経営理念だと思うのですが、そこら辺を見ると、いろいろな問題があるのではないか、そういう印象もあります。
 ほかに何かご質問なりコメントを……。どうぞ、中村委員。

○中村委員

 どうもありがとうございました。ちょっと確認と、それから私自身も知りたいということもあって質問しますけれども、シルバーサービス振興会の報告書でまとめられている、12ページを拝見しますと、経営上の課題が挙げられていますけれども、これを踏まえた上で、どのようにこの課題を解決していくことが望ましいかというようなことはこの報告書では何か述べられているのでしょうか。それとも、最後の15ページにまとめられておりますことは、これは白石委員のお考えに、何らかこのシルバーサービス振興会の報告書の意見も反映していると見ていいのでしょうか。そのあたりを、すみません。

○白石委員

 ご質問ありがとうございます。最後のまとめは、私の全くの私見でございます。
 1点目のご質問でございますけれども、シルバーサービス振興会の報告書も、各事業別の課題、さらにそれが大都市部でどうなのかというようなことも若干考察しておりますけれども、一言で言えることは、先ほど高橋分科会長委員、野村副分科会長がおっしゃったように、どこで展開をしているのかとか、どれぐらい事業規模があるかによって、やはり個別的な特徴がありますので、そこに応じたきめ細やかなというようなことが書かれております。ですから、すべて共通してこういうふうにすればいいというようなことは、全体を読む中で、糸をつないでいくような作業になろうかというふうに思います。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。
 この調査の対象事業者というのは、いわゆる営利企業の事業者だけに限っておりますか、それともそれ以外も含みますか。

○白石委員

 営利企業だけです。

○高橋分科会長

 営利企業というのは、これはどういう定義の仕方ですか。

○白石委員

 株式会社、有限会社、合名会社、合資会社です。

○高橋分科会長

 把握の仕方は例のWAM(ワム)などからですか。

○白石委員

 そうです。WAM NET(ワムネット)です。

○高橋分科会長

 WAMの事業者情報をサンプリングしたのですか。

○白石委員

 さようでございます。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。実は訪問介護の場合は、やはり特定非営利法人と、公設民営じゃないけど、社会福祉法人も含めて、それと比較をして分析すると、もう少しいろいろなことが、イコールフィッティングの問題も含めまして、ちょっと見えてくるのかなと思います。とりわけ先ほどの都の報告によれば、NPOが東京都にはかなり比率が多いということになると、そこら辺も多元化の議論と事業の議論というのが、きょうの白石委員の企業の報告から、またもう一つ視点が出てくるのかなという感じもいたしました。
 いかがでございましょうか。どうぞ、新村委員。

○新村委員

 私は、事業者のほうはあまりよく存じ上げないのですけれども、介護保険が発足して、ここにビジネスチャンスありということで、大勢がわーっと参入した、まだその混乱の中にあるのかなという感じを受けまして、先ほど高橋分科会長がおっしゃったようなビジネスモデルというのがまだ確立していないというような感じをきょうのご報告を伺っていて思ったところでございます。
 1つだけ、白石委員のご報告の中で、例えばケアマネジャーと連携をしているとか、それから多様な業務をやっている中で、エコノミーズ・オブ・スコープのようなものが働いているということを示唆するようなお話がございましたので、やはりもうちょっと、ほんとうに多様な主体が参加している中で、統計的に見るというよりは、ケーススタディーというような形で、幾つかの望ましきビジネスモデルのようなものが提示できてくると、やはり一つのガイドラインになっていくのかなというような印象を受けました。
 以上でございます。


○高橋分科会長

 ありがとうございます。全くおっしゃるとおりです。
 それから、介護保険のこの問題というのは、今度、訪問介護が3類から2類型に変わって、これはかなり零細のところを直撃している感じがあります。要するに家事援助、混合型がなくなりましたので、あれで収益を落としているところが大分あり、それはまさにビジネスモデルの問題で、それから、介護支援専門員の腕というか、御用聞き型と、それから個別支援型に徹底した人では随分違う。これはある会社のビジネスモデルで言うと、本人のニーズを徹底的に把握して、身体介護を中心にケアモデルを組み立てるような事業者と、家族ニーズというか、これは需要とニーズの議論がありましたけれども、求めに応じて家事援助を投入して、なかなか収益が上がらないというモデルとどうもあるみたいで、これは自由市場の非常に重要な特徴だと思いますが、制度の報酬体系とビジネスモデルはかなり動いている。それから福祉用具で言えば、今度はケアマネに4種類という議論が出てくると、多分、福祉用具はピンとはね上がるだろうというふうに言われているのですが、制度とのインタラクションというのがものすごく大きいという、そこら辺の議論も是非しておかないといけないのかなと思いました。
 時間のこともございますので、まさに武田委員のレポートは、むしろケーススタディーに近い、そういう内容も含まれているかと思いますが、またご議論をいただく機会があろうかと思いますので、それでは、武田委員のほうからよろしくお願いします。どうも白石委員、ありがとうございました。

○武田委員

 それでは、続きまして、私、武田のほうからご報告させていただきます。資料番号は4番になります。よろしくお願いいたします。
 事業者という立場で本会に参加させていただいております以上、ご報告にあたりまして、まず、おまえのところは何をやっているのだ、というあたりには簡単に触れておかないといけないかなということで、1.に弊社グループにおける福祉サービス事業の概況をまとめさせていただきました。
 「弊社グループ」と申しましたのは、他の多くの企業と同様、弊社も最近分社化の方向にありまして、実際のサービス提供部門については子会社化を進めており、すべてをベネッセコーポレーション本体でやっているわけではないためです。特に高齢者介護のほうですが、ここにも書いておりますとおり、ベネッセケア、伸こう会という2つの運営会社が実際のサービス提供にあたっているところです。もちろん、両方ともベネッセコーポレーションの100%出資子会社ですし、全体戦略は本体で統括しているわけですから、これを全部束ねて「ベネッセ」ときょうは総称させていただければと思います。
 私どもがやっております福祉サービスは、大きくは高齢者介護サービスと保育サービスとに分かれます。そのうち、まず高齢者介護サービスのほうですが、事業の主軸になっておりますのは施設系のサービスです。介護保険適用型の有料老人ホームという表現が一番わかりやすいと思いますが、特定施設という介護保険制度上のカテゴリーがございまして、これを全国で46施設、2,371室、これは全部個室ですけれども、こうした規模で展開させていただいております。なお、都下では13施設、598室となっておりますが、2003年3月末現在、都下の特定施設が全部で96施設ですので、大体15%ぐらいのシェアを占めている状況です。それ以外に、グループホームでありますとか、「類似施設」と言われる、いわゆる高齢者向けの集合住宅にホームヘルプサービスが併設されたスタイルで展開しているところ、これが全国で15施設ございます。特定施設の指定が取れるところについては全部特定施設を取るという方針でやってはいるのですが、ハード要件が合わないとか、いろいろそういった指定条件もありまして、どうしても特定施設が取れないところについては、こうした方法で展開しているところです。
 続きまして、居宅系のサービスですが、全国でホームヘルプ13拠点、居宅介護支援14拠点ということで展開しております。都下では世田谷区のほうと、それから多摩市のほうと、2カ所の拠点を持ってやっております。こうした居宅系のサービスは民間事業者の進出が最も進んでいる分野ですが、私どもはこの分野では比較的小さな規模、先ほどの高橋分科会長のお話で言えば、むしろ零細に近いような規模ということになるかと思います。
 続きまして、保育サービスのほうですけれども、これはベネッセコーポレーション本体でやっております。まず、完全に民間立として認可を受けている認可園が兵庫県のほうに1園ございます。それから公設民営、これは前回もちょっとお話し申し上げましたけれども、公立の認可園の運営を受託しているもので、これが都下では三鷹市と文京区の2園、その他の府県で3園という形になっております。それから、東京都独自の認証制度、これに基づいてやっておりますところが1園と、この都の認証制度を契機に、無認可園に対して自治体が何らかの支援や公的な認証をしていく制度が全国的に広がってきておりまして、そういった公的関与があるところが他に4園。最後に、公的関与が全くなく、純然たる民間としてやっておりますのが3園、こうした状況になっております。
 きょうは私どもの会社の宣伝をする場ではございませんので、この程度にとどめたいと思いますけれども、先ほど白石委員のお話しにもございましたとおり、福祉サービスはスケールメリットが極めてききにくいビジネスのひとつです。非常に労働集約的な事業構造になっておりますので、大規模に展開していけばいくほど、末端まで質の確保を図っていくというのが非常に難しくなってくる。そういう中で、例えば高齢者介護サービスについて私どもがとっております戦略は、施設系に重点を置いて、この分野での地域ドミナントを目指すことです。要は全国くまなく展開をすることには、あまりメリットを感じていない。それよりは、白石委員の先ほどの表でいけば、全国展開型と地域特化型の中間というのか、地域に特化しつつ、その地域を面的に広げていく地域ドミナント戦略を事業戦略の中心に置いてやっております。さきほど、私どもの特定施設は都下に13施設と申しましたけれども、東京、神奈川を合わせれば、30施設程度ございます。このエリア全体の中で大体15%程度のシェアということになりますが、地域ドミナント化を目指して日々奮闘しております。高齢者介護サービスに関しましては、今年度ようやく黒字化しまして、やっと経営的には安定したかなというような状況になっております。
 続きまして、2番目の「福祉サービスの対象領域拡大とそれに伴う規制・補助のあり方の変化」についてです。前回の論点を、きょうの資料1という形でお出しいただいているところですけれども、手塚委員から、「かつて福祉は一元化されていたが、だんだんその領域が広がってきていて、その辺を考えないといけないよ」というお話を賜ったと記憶しております。このあたりのところを私なりにまとめてみたものでございますので、5ページの別紙1と見合わせながらお願いできればと思います。
 福祉サービスは、現在、非常に広い領域を持っているわけですが、私なりに、民間企業が取り組むべきサービス、民間企業を中心とした市場が成立する領域はどんなところなんだろうかということを体系立てて考えてみたものです。5ページの図ですが、横軸が福祉の対象者の規模とか普遍性というようにとらえていただければと思います。縦軸のほうには、対象者の数ではなく、経済的ないしは生活のあり方の多様性を置いてみております。
 現在の社会福祉制度の根っこができましたのは、戦後すぐの時期ということになります。この時期における福祉の対象者というのは一体どんな人たちだったのかと考えてみますと、傷病や高齢などのために稼ぐ手段もなく、住むところもない。その時代、今よりは地域コミュニティーや家族、親族による相互扶助が機能していたわけですけれども、そうした支援も受けられない、そういった極めて限定された人たちが対象者の大部分であった。そういう時期に構築されたのが、現在の社会福祉制度の一番根本の部分ではないかと思います。つまり、対象者の規模とか普遍性は非常に小さく、それから対象者の経済的、生活的な多様性も低い、すなわち別紙1の「かつての福祉施策の対象者」の部分に非常に偏っていたのではないかと思うわけです。
 対象者の規模や普遍性が小さいというのはどういうことか。当然、どんどん民間企業が進出してきて、競争によって質の淘汰を図るということはあり得ないわけですから、公が直轄でやるか、ないしは、この人だったら任せられるという人を選任して事業をお願いする、すなわち主体の認可によって質を担保していく、これがおそらく最善の道だったろうというように思います。
 それから、例えば今、介護保険なんていうのは、非常に多様なニーズを持った人々が多様なサービスを選択できるようにするために、個人単位にもろもろの給付の補助をしていく形を取っているわけですけれども、対象者の経済的、生活的な多様性が低い状態であれば、事業を運営する人に、例えば、対象となる人たちが生活する場所は補助金で建ててあげましょう、1年分これだけのお金を預けるからこの人たちを1年間面倒見てあげてよと、こういう仕組みが一番効率的だったのではないかと思います。これがすなわち施設整備費補助であり、措置費なわけです。これと、先ほどの主体の認可、あなただったら任せられる、この人だったら大丈夫だというものを組み合わせたのが、実は社会福祉法人制度そのものだととらえられるのではないかと思います。
 現在、福祉サービスの担い手論を行っていく上で、我々民間企業は、社会福祉法人を中心とした公的なセクターとの対比において語られるわけですけれども、そもそも社会福祉法人とは何かということを言えば、そういった社会状況の中で最適化された規制のあり方と補助のあり方、これを一つの制度として統合したものというふうに定義づけられるのではないかと考えております。
 一方、社会状況はどんどん変わってきております。前回、手塚委員もおっしゃったとおり、福祉の対象領域、対象となる方というのは非常に範囲が広がっておりますし、コンベンショナルな福祉基盤はどんどん脆弱化している。今は、お金を持っていようがなかろうが、住むところがあろうがなかろうが、高齢者介護サービスは社会的に供給していかなければならない時代になっておりますし、そもそも対象者の数自体が激増しています。たとえば、昔私たちが小さいころは、「あの子保育園に行っているの。かわいそうに。」という感覚がどうしてもありましたけれども、今我が家も保育園ですが、そういった感覚は全くなくなっています。もちろん、福祉の全領域についてこうなってきているというわけではありませんが、一般化し、数も増えて、またその対象者のあり方も多様になってきている領域もたくさん出てきているのが現状であろうと思います。
 まず、対象者の数的拡大、これは横軸における右方向への拡大につながります。数が増えると、主体の認可からだんだん業許可、届出、自由というふうに、徐々にその規制を緩めていっても、ある程度、競争と淘汰によって質の確保が可能になっていくわけです。
 それから、対象者の多様性が増してくること、これは縦軸の上方向への拡大につながります。事業者に対してポンとお金を渡して、これで1年間面倒見てやってくれ、と、こういう手法では、利用者が多様なサービスを選択することはできない。その選択の多様性を確保するために、介護保険という個人あたりの給付、厳密にはそのうちの公費負担分ということになりますけれども、そういう個人あたりの補助のあり方へとだんだん変化してきているというのが現在の状況ではないかと思います。障害の支援費も同じ構造ですし、保育に関してよく話題に上がるバウチャーも同じ流れの中にあります。さらに、将来的には施設整備費補助という事業者に対する給付から、家賃補助のような個人あたりの給付へと変わっていくことも考えられます。
 以上、述べてきたように、事業者の参入促進、それから消費者の選択による淘汰、こういう仕組みをバランスよく構築して、市場が円滑に機能するように配慮していく。もちろん、福祉の全領域というわけではありませんけれども、これが現在拡大してきている領域における市場形成のあり方ではないかというように考える次第です。
 こういう見方をすれば、高齢者介護サービス、特に居宅系については比較的競争になじみやすいですし、また、施設系に関しましても、徐々にサービス提供量が増加して市場が形成されてくれば、入居率が悪い施設についてはもうからなくて淘汰されていく。もちろん、つぶれるときに、現にそこに入られている方はどうするかという、社会としてのセーフティーネットの問題にはきちんと配慮する必要はありますが、そういった構造で質を担保していくことも可能になります。同じことが保育サービスなどについても言えます。つまり、私ども民間企業が現在やっております領域は、比較的多様な選択と市場淘汰という新しい仕組みになじみやすく、あとはいかに市場を機能させていくかを考えていくべき領域ではないかと考えております。
 続いて、2ページのほうになりますけれども、ここから先は、「高齢者向け介護付き住宅」と言われる高齢者向けの住宅と福祉サービスを組み合わせた具体的なサービスにケースを移してご説明したいと思います。
 もちろん、私がこの領域の専門だということもありますけれども、特に大都市、東京都において福祉サービスの市場を形成していく上で、その特有の問題が一番先鋭にあらわれるのが、我々はよく「場持ちビジネス」というように言いますけれども、サービスを提供する「場」を持たなければならない福祉の分野ではないだろうか、ということで特に取り上げさせていただいた次第です。
 まず、高齢者向け介護付き住宅とは、私どもがやっております特定施設もそうなのですけれども、住むという機能と介護サービスとをセットで提供するサービスです。こうしたサービスは、最近急速に伸びてきており、介護保険制度が始まって以来、介護保険給付の伸び率で見ても、福祉用具貸与、それからグループホーム、それに次いで特定施設というように、給付費の伸びが一番多い領域の一つです。しかしながら、やはり端的に言って、特別養護老人ホームという公のセクターでやってきた入居型のサービスに比べると、まだ比較にならないぐらい市場として小さい領域であることは否めません。
 この原因というのは幾つもあるわけですけれども、まず1つは介護保険の給付費の問題です。6ページを見ていただけますでしょうか。この介護保険の給付費、ほんとうは東京でしたら10.00ではなくて、地域係数を掛けて計算すべきなのですが、とりあえず地域係数は全部標準地域の10.00で並べて計算しております。介護福祉施設、すなわち特別養護老人ホームは、例えば要介護度3で言えば30万9,000円になります。これに対しまして、特定施設入居者生活介護は、要介護度3で20万4,900円。ここで10万の差がついているということになります。
 これが一体どういう現象をもたらすか。本来、介護保険というのは、損害保険の一種ですから、同一保険事故に対しては同一保険給付となるのが原則のはずですけれども、明らかに給付水準にこれだけの差がついている。こういう現象がどういうことをもたらしているかというのが、次の7ページの図になります。
 これは非常に大胆な仮定を置いて計算しておりますので、事業者によって、ないしは地域によって大分違うところもございますけれども、その点はご容赦いただければと思います。例えば特養に住んでいる方が、生活にかかるもろもろの費用をどんな形で負担しているのかというのが一番左側になります。生活に要する費用を、介護に要する費用、食事関係、それから居住に要する費用というふうに分解しておりますけれども、例えば一番下の居住に要する費用、このうち家賃に相当しますところは、相当部分が施設整備費補助金ということで、最初にお金が入っている。それから残りの部分、当然、設置者のほうが残りを負担しているわけですけれども、これの償還費用相当分も介護報酬の中に含まれています。その上の生活費、施設の保守管理費や水道光熱費、寝具、洗濯等々、こうしたものも保険給付がされている。また、食事に要する費用、さすがに食材費ぐらいは自己負担ということになっておりますけれども、賄いに要する費用、調理員さんの人件費とか水道光熱費、消耗品費等、こうしたものは基本食事サービス費という形で、これも保険給付されています。それから介護に要する費用、これはもちろん保険給付されておりまして、一部負担金についてのみご負担いただくと、こうした構造になります。非常に大括りに言えば、保険のほうから26、7万給付されていて、自己負担は5万円ぐらいというような負担の構造、これが特養の典型的なケースだと思います。つまり、住んで、食べて、全部込みの1カ月5万で生活できる。これは東京であってもほぼ同じです。だれが考えても、これはおかしいとしか言いようがない、ということが見て取っていただけるのではないかと思います。
 かたや、ある意味でこれが真っ当な形なのですけれども、特定施設のほうは、家賃分は当然自己負担。それから水道光熱費、洗濯等々、いわゆる共益費なところも自己負担。それから食材に加えて、ごはんをつくってもらう費用、これもレストランで食べるのと同じで、当然自己負担、というような状況です。特定施設に出されている保険給付というのは、まさに介護というサービスに特化して出されている。保険から18万、一部負担金2万、合計20万というあたり、このあたりが大体平均的なところということで、この数字は先ほどのグラフとほぼ一致します。基本的な負担の構造はこういう形になるわけです。そうなると、自己負担は、特養5万円に対して、特定施設のほうは、安くとも25万から30万になってしまうことは避け難い状況なわけです。例えば家賃ですが、大体周辺のちょっと広目のワンルームマンションと同程度を想定していただくと大きく外れないと思うのですが、東京区部や周辺市部なら7、8万から12、3万ぐらいかかるのは当然ということになります。食費も5万やそこらはかかりますし、その他共益費等を考えると、介護というかかり増し費用が保険給付されているとしても、この25万とか30万が決しておかしな価格ではないということは見て取っていただけるのではないかと思います。
 2ページのほうに戻っていただけますでしょうか。こういう言い方をすると、非常にキャッチーになってしまうのですが、言ってみれば、特養という制度は、一種の公的ダンピングであると。この「月々5万」の世界に我々民間企業が勝てるはずがないというのが実際のところです。もちろん従来の介護保険施設が担ってきました、いわゆる救貧施策的な部分、これはもちろん無視できません。そういう意味ではセーフティーネットとしての機能をどうするかというのは、もちろん考えなければなりませんが、これは本来、介護保険とは別枠の福祉的な助成策として講じるべきところだろうというふうに考えます。このあたり、ずいぶん施策的にも進みつつありますけれども、こうした市場の不均衡の是正、イコールフットというものをもっと進めていけば、こういった領域についても市場として成立する余地は十分にあるというように考えているところです。
 これを特に大都市東京ということに引き戻して考えてまいりますと、我々事業者としましても、その周辺のワンルームマンションあたりと同じぐらいのお家賃をいただかないと、これはとてもじゃないけど事業として成立しないわけで、先ほど申しましたとおり、どうしても家賃相当分の利用者負担が極めて高くなってしまうことになります。つまり「場」の確保、これに非常に高いコストがかかって、それが利用者負担にはね返ってしまう一方で、特養という5万円で生活できる場所がある。つまり、東京ではどうしてもある程度以上の所得階層でないと特定施設には入居できないが故に、特養がそこまで安いのならこっちでいいじゃないかというような方向に流れがちなのではないと思うのです。それが特養の待機者を増やしている一つの要因であろうと思っています。
 これは、例えば保育の世界でも同じで、日本でベビーシッターが全くはやらない、全くと言うと語弊がありますけれども、はやらない理由の一つは、保育園が安過ぎるせいだとは考えられないでしょうか。同じような構造が、民間が入ってきたすべての領域において存在するのが現在の状況だと認識しています。
 では、大都市東京において、場の確保に関してどんな施策があり得るのかということを次のページで述べたいと思います。
 これは、我々がやっております事業の典型的な構造です。実際には個々の事例によって大きく異なるわけですが、あえて大胆に数字を書いてみたものですので、一つの目安として見ていただければと思います。例えば我々が施設事業をやるときの典型的なハード例である、都心辺縁部、杉並とか世田谷、ないしはもうちょっと外側、こういったところで、地域にとけ込むことを重視した3階建て、定員50名規模のものを考えますと、大体底地2,000平米、延べ床2,000平米ということで、土地代金、これもまちまちですけれども、10億弱ぐらい、建築費のほうが4、5億ぐらいかかると。
 これに対しまして、先ほど申しましたとおり、利用者負担30万、それに介護保険給付が20万ほどありますので、1人当たり売り上げというのは50万ぐらいになる。そうすると年間売り上げが3億ぐらいになるわけですね。土地建物をもし自己所有した場合、償却費の概念を含めるとややこしくなりますので、単純に償却費を含まずに考えて、年間利益として5、6,000万程度、このあたりが限界だろうと思います。もちろんこれは安定してからの話で、開設時期には、オープンと同時に満床ということはあり得ませんので、当然赤字が出ることになります。ですから、これをもって初期費用を回収しようと思うと、建築費だけでも10数年かかるということが見てとれるかと思います。
 昔は、土地に含み益というのが考えられましたから、土地を買っても、最後事業をやめるというか、別のところに新しいものをつくるときには値上がりが生じているだろう、そこで大分カバーできるだろう、という期待感がありましたけれども、今はそんな状況でもないということからすれば、我々としてとれるスキームは、以下の2つに限定されます。土地建物を自己所有して、最初にかかった費用の多くを入居一時金、すなわち入居するときに500万、1,000万、ないしは高いところだと1億とか2億というのもありますけれども、こういった費用で回収するというスキームをとるか、ないしは土地所有者に建物を建ててもらって、それを長期にわたってレンタルして運営するスキームをとるか、のどちらかです。後者はオフバランス型のスキームですけれども、我々はこのスキームを中心に展開しています。最近、ワンルームマンションなんかでもよくありますけれども、土地を持っている人に1棟建ててもらって、入居者が入っていようが入ってなかろうが、それを丸ごと30年間安定して借ります、というような契約内容で投資をしてもらう、こうしたスキームを中心に現在運用しているところです。こういうやり方をとりますと、投資した人の取り分というのが入りますから、当然利益率は下がりますけれども、入居一時金を取らないとか、取るとしても極めて低い額に抑えることができる。私どもはこうした料金設定を中心にやっているところです。
 逆に地主さん側は、なぜこういうスキームに乗ってくるのか。大体土地を持っている人はお金持ちであることが多い、というのが一般論としてあるわけなのですけれども、そうしたフローの資産を建物としてストック化することによって節税しようというインセンティブはそれなりに強いように感じます。こうしたスキームをどんどん増やしていけば、入るときに2,000万とか3,000万とかということではなくて、もう少し安い、入りやすい価格での提供というのが可能になってきます。ですから、こういう形での土地の有効活用に関して、固定資産税減免等の優遇措置を与えれば、もっと遊休地活用が進むのではないか。東京都のほうでも既にこれに類する施策を取られているところですけれども、対象がもっと規模の小さいグループホームレベルに対してのみということになっておりまして、この対象範囲をもう少し拡大していくことはできないものでしょうか。
 さすがに100室、200室というところに適用するのはどうかという議論はあろうかと思いますけれども、グループホームよりはもう少し大きな、50とか60とかという規模までは、「地域の中の住まい」として十分適用するのではないかというふうに考えております。私ども、大体定員50名規模を標準にやっておりますけれども、いろいろと調査をかけましたところ、入居される方の半数ぐらいはもともとその区なり市なりに住んでおられる方、残りの4分の1がその区や市の中に息子さんか娘さんがおられて、田舎から呼び寄せるというパターン、残りの4分の1が周りの市や区からということで、50名規模であれば、十分「地域の中の住まい」ということができるだろうと思います。
 さらにもう一つ、これはちょっと手前みそになってしまいますけれども、私どものほうでは全国で初めて、杉並区のほうと組みまして、新型ケアハウスという、こうした試みの一歩進んだものをやらせていただいております。これはサービスを提供するための場、つまり施設のハードそのものを一種の社会インフラと位置づけまして、杉並区自身が、さきほどのスキームにおける地主さん、ないしは地主さんの代理として機能するような形で制度設計されているものです。つまり、地主さん、家主さんが杉並区そのものであり、それを我々はお借りして運営するというような形になります。
 事業スキームのほうは8ページに書かせていただいております。このスキームはPFI方式をとっておりますので、さきほど「杉並区と組んでやっている」と申しましたが、これは単に我々がプロポーザルに勝ったという意味です。その上で、杉並区の土地の上に私たちが建物を建設します。これはよく言われることですけれども、杉並区の管財課とも打ち合わせて、従来の公共施設にひけをとらないものをつくっているのですが、やはり公的なセクターが建築するのと我々民間が建築するのでは、建築単価が全く異なりますが完成後、これを杉並区のほうに売却します。売却して杉並区が買い取られるときに、国と東京都のほうから補助金が入るということで、実質的には杉並区は3,500万でこれを買い取れることになります。補助率が極めて高いことに気付かれるかもしれませんが、これは補助金の出方の仕組みが平成14年度から変わったことによるものです。従来は、実際の建築費用が補助基準額を下回った場合には、実際の建築費用の4分の3補助だったわけですけれども、現在の補助金の出方は、補助基準額の4分の3の出し切りです。補助基準額、つまり全国平均の建築費用から見てそれよりも安く建築すればするほど、補助率はどんどん上がっていく。逆に全国水準よりも高い建築費をかけると、補助率はどんどん下がるということになります。こうした方法により、補助基準額を下回って建築費用を抑えるインセンティブをつけたわけですけれども、このメリットを最大限使って杉並区は3,500万でこれを買い取れることになったわけです。杉並区としては、この3,500万と借地料さえ回収できればいいわけですから、我々に対して非常に安く貸していただくことができる。
 もちろん、我々がこの不動産部分でもうけるということはまかりなりません。次の9ページのところを見ていただいて、一番上の「管理費」というところをご覧いただきますと、1万2,500円となっているかと思います。この管理費というのがいわゆる家賃に相当するところですけれども、我々はご利用者に1万2,500円の家賃でこの住まいを提供することができるというか、これで提供しなければならず、それがそのまま我々から杉並区への支払い家賃になっていくわけです。ここでは我々には一銭のもうけも出ない仕組みになっているわけですけれども、こうした方法を採ることによって、先ほど都心部だと家賃相当額は大体10万円というふうに申しましたけれども、既にここで8万から9万下げることができることになります。それから生活費、事務費と言われるのが、先ほどの食費なり共益費なりというところに当たります。こうした費用については厚生労働省の通知のほうでカチッと定まっておりまして、我々が自由に上げたり下げたりすることはできないわけですけれども、こうした料金を全部足して見てみますと、「合計」というところで、要支援の場合13万6,400円というところから、要介護度5で20万円ちょっとということで、やはり先ほどのものよりも10万以上下がっているということが見て取っていただけるのではないかと思います。何といっても、この下がり幅のうちの一番大きな部分を占めるのが、いわゆる住まい、家賃相当分であるというところがまさにこのスキームのみそということになります。
 4ページに戻っていただけますでしょうか。細かいところは後ほど読んでいただくとしまして、要点だけご説明したいと思います。全室個室、ユニットケアという非常に新しいやり方を採用していながら、先ほどのような料金で提供することができるわけですが、これは杉並区のほうで何らかの持ち出しをしていただいているわけではありません。まず、公有地を提供していただいてはいますが、これはただではありませんで、大体周辺借地料相場の3分の1ぐらいに設定されています。さきほど申し上げましたとおり、3,500万円のキャッシュアウトはありますが、これは我々からの家賃で回収できますので、直接の持ち出しは、ほぼないと言っていいと思います。極論をすれば、補助金の受け皿としての機能と事業全体に対する与信、それからモニタリングの機能、ここだけを杉並区が負う仕組みになっているわけです。
 我々のほうとしましては、利益率は通常の事業に比べて非常に低くなります。ただ、リスクが非常に少ない。まず、おそらくオープン当初から満床ということも十分に可能でしょうから、稼働率に関するリスクを負わない。さらには、広告宣伝費も要らない。しかも大家さんが自治体ですから、これは非常に安定していますし、おかしな係争も考えられない。というようなことから、双方にとって非常にメリットがあるやり方だというふうに考えており、今、杉並区とともに順調に事業を推進しつつあるところです。もちろん、これから我々が運営するためには東京都のほうの認可をいただかなければならないということで、またご厄介になると思うのですが、こうしたやり方もさきほどの「場」の問題を解消するための一つの方法ではないかと考えています。
 以上、雑駁でしたけれども、大都市東京において福祉サービス提供の「場」を確保することの大変さがいかなるゆがみをもたらしているのかということと、この部分を改善する施策を導入することで市場というものができてくるのではないかということを中心にお話しさせていただきました。ありがとうございました。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。ベネッセの事例に即しまして、しかも理論的な整理のご提供をいただきました。大変刺激的なレポートをいただきましたが、何かご質問、あるいはご意見等も含めまして、少し委員の皆様から、あるいは事務局も含めまして、どうぞご質問等があればと思います。先ほどの白石委員のほうにもしご質問があれば、それも含めて……。

○松浦計画調整課長

 今、東京都の施策の関係が出ましたので、私どもは「暮らしの福祉インフラ緊急整備事業」というふうに言っているわけですけれども、それにつきまして、まず説明させていただければありがたいと思います。

○高橋分科会長

 わかりました。それではちょっと説明していただいて、あわせてご質疑というふうにできればと思います。それでは、副参事のほうからよろしくお願いいたします。

○砥出副参事

 福祉改革担当副参事の砥出でございます。私のほうから、今、武田委員のほうからお話がございました場の確保に対します振興策として、昨年度から始めました、暮らしの福祉インフラ緊急整備事業についてご説明させていただきたいと思います。
 現在、都が進めております福祉改革の基本コンセプトとして、高齢者や障害者が住みなれた地域の中で安心して暮らし続けられるように、これまでの施設偏重からの画一的な福祉を改革して、グループホームなど、地域のケア付き住まいを重視した施策の転換という点を基本コンセプトとして掲げております。
 このために、地域のケア付き住まいの整備促進という観点から、これまで都独自の整備費の補助制度の創設でございますとか、それから事業者に対します固定資産税等の減免措置を講じるなど取り組みを行ってまいりましたが、この暮らしの福祉インフラ緊急整備事業につきましても、この一環の事業でございます。
 まず、本事業の創設の背景でございますが、東京の地価水準はバブル期から比べますと下落したとはいえ、ご案内のとおり、まだまだ区部では依然として高く、このことが東京においてなかなかグループホームの整備が進まない大きな要因の一つとなってございます。
 一方、市街地を見ると、小規模の民有地などが未利用のまま散在している現状でございまして、このような民間の未利用地を地域のケア付き住まい、グループホーム等に活用することによりまして、地域のケア付き住まいの整備促進を図るということとあわせて、都市の活性化、再生をも同時に図っていこうということでこの事業を創設したところでございます。
 次に、本事業の内容について説明させていただきます。
 通常であれば、福祉事業者の方が土地所有者から土地を購入、もしくは賃貸して施設を整備し、事業を運営するということになります。本事業は、その間に区市町村の外郭団体や地区の社会福祉協議会である公社等というものを仲介させまして、公社等が土地所有者から土地等を購入し、そして福祉事業者へ低廉な価格で貸し付けるというものでございます。その購入のための財源として、公社等に基金を設置していただくわけなのですけれども、この基金設置のために東京都が区市町村に対して2分の1の補助をする。この例で言いますと、1億円であれば5,000万を区市町村に補助する。そしてその区市町村は、さらに2分の1でございます4分の1の2,500万を上乗せして、7,500万の基金を公社等に設置していただくと。土地を購入する段階で、この基金を取り崩していただくわけなのですが、不足する2,500万については、銀行等の借り入れで対応していただくということになります。このように土地の購入に対して公的資金が4分の3入りますために、実際の福祉事業者さんに対しての土地の貸付金額は、通常の3分の1から2分の1程度の低廉な価格になるというものでございます。
 本事業の補助期間でございますが、14年度から16年の3カ年の事業でございます。この期間内に基金を設置していただければ、実際の土地の購入は18年度までに行っていただくということになっております。対象施設は、痴呆性高齢者グループホームのほか、障害者のグループホームでございます知的障害者の生活寮等、4施設でございます。
 次に、対象地区でございますが、このスキームを使っていただくためには、特別推進地区というのを区市町村の申請に基づいて東京都が指定するということになってございます。そしてこの特別推進地区におきまして、区市町村が痴呆性高齢者グループホーム等の具体的な事業計画を立てまして、その後、基金を設置し、適地を探していただいて、そして実際に購入していただくというような流れになってございます。
 現在、特別推進地区は、3区市を、具体的には品川区と葛飾区と調布市の3区市の10地区を指定してございます。今後とも、区市町村からの申請があれば、順次、特別推進地区の指定をしていく予定でございます。特別推進地区1地区当たりの補助限度額は2億円、15年度の予算額は10億円となってございます。
 本事業の概要は以上でございます。よろしくお願いします。

○高橋分科会長

 ありがとうございます。

○手塚委員

 いろいろ都のほうでもこういうプランを企画されて、非常にありがたいことだと思うのです。ただ、今の武田委員のお話も含めて、東京都の場合には、土地が高いというのが最大のネック。それからもう一つは、その結果が補助金依存をせざるを得ない、そういう第2の問題があるわけですが、やはり日本の場合、介護保険法の導入のときは、施設も足りない、マンパワーも足りない、事業主体も足りない、すべてやるということで、猛烈に国は慌ててやったわけですけれども、その結果が今日、きょうのご報告を伺って、そういうところからの問題が出てきていると思うのです。
 今の武田委員のお話に即して考えると、東京の土地問題というのはどこまでどうなっていくかということなのですが、東京自身は、おそらく2025年から2030年までものすごく高齢化していくだろうと。若い人を呼び込むと言っても、わりとお年寄りが残って住んでいくだろうという中で、遊休地がだんだん増えてくることはわかっていますから、それを高いお金を出して取得するというのも一つの手ですけれども、もう一つは、せいぜい30年ぐらい、あるいは50年、ドイツでは99年の地上権や定期借地権を設定して、土地を借りて利用後返せば良い。それで孫子の代まで土地を維持したいという家族もあるわけですから、だから99年じゃなくてもいいのですが、50年ぐらいの地上権や定期借地権を設定したら良い。定期借地権だと若干問題がありますから、あまり今迄多くなかったが地上権を設定する。地上権は買うより安いですから、30年なら30年で、入居者が自前でその人数割で償却していくと。じゃ、今の日本の銀行はそういうことを認めてくれるかといったら、認めてくれないわけで、そこが石原都知事の言っている都の銀行がやるべきことでありまして、そのぐらいの新しいシステムをどんどんやって、30年間の地上権や定期借地権の地代や返済金を貸しつける、そういうことにしていくのだろうと思います。
 高齢化は2025年から30年でピークに達して、それから後は若い人の割合がだんだん増えていきますから、その部分については地上権を更新しなくたっていいわけですし、場合によっては、次の目的に使えばいいわけであって、東京都が資産を増やそうなんてことを考えなくていいのだろうと。その辺のところをお考えになってぜひやっていただきたい。
 介護保険法で、私、地方もたくさんのところを調べましたけれども、福祉の村とか、福祉の町とか言われているところは、全部補助金で、地方のほうに限ってぜいたくな施設をつくっているのですね。土地はただみたいなものですから、そこに温泉を掘ったりしてつくっています。
 ドイツの場合、介護保険法を導入したときには、福祉の団体が全部公設民営に近い形で、いわゆる介護施設を運営していたのを、逆に社会福祉法人をみんな民営化したのです。それで民間も参入してきているし、そういう形で同じ条件で競争する形をとったわけです。日本の場合、そこが全然まだ至らないわけで、ベネッセコーポレーションも苦戦しているということを今おっしゃられたわけですが、日本の場合には、社会福祉法人が公的につくられたことにより、公務員意識でやってきたためにおくれがきたわけですから、民営化すべき、いわゆる有限会社にすればいいんです。そうすれば、さっきご紹介したような地方のものすごい豪華な施設なんて、あっという間につぶれちゃいますよね。要するに、コマーシャルベースに乗らないわけですから。そんなものをたくさんたくさん日本の国が抱えるかどうかというのは大問題でして、ぜひ 東京都ではそういうものをたくさん抱えないように、後世のためにしていただきたいと思います。
 以上です。余計な意見で申しわけないのですが。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。ディスカッションのための幾つか刺激的なご発言もいただきました。
 グループホームのことが出ましたので、東京都のほうにお願いして、東社協がやった調査がたまたま出ていたので、82ページに、今のグループホームがどんな経営主体ですかというのがございます。後でお読みください。痴呆性高齢者グループホームについては、有限会社や株式会社が参入してきています。障害系グループホームはまだまだ社会福祉法人のシェアが高い。ここら辺がターゲットになって、この福祉の緊急のまちづくりが新規参入について新しい仕掛けができる、そういうことかと思いますので、ちょっと補足をさせていただきました。
 どうぞ、ご質問、ご意見も含めまして、ぜひ……。

○野村副分科会長

 今のことで1つだけ質問をお願いしたいのですが、9ページのところで、杉並区新型ケアハウス料金表の事務費が、自立が1万円から7万7,100円、要支援以降が4万1,800円、どうしてこう差があるのかということと、どうして自立のほうが高いのか、それだけちょっと教えてください。

○武田委員

 ケアハウスの事務費に関しましては、所得に応じて利用者の負担を減免するという制度があります。事業者が徴収を減免した分については国と都のほうから補助金で補填される仕組みになっていますので、我々事業者が得る収入は、4万1,800円で固定されているわけですけれども、ご利用者の負担ということからいえば、非常に所得の低い方の場合は1万円まで下がり得るということになります。
 それから、自立の方に関してですが、これは杉並区のほうとの取り決めで、原則として自立の方が入ることは想定していません。とはいえ、要支援で入られて自立になるということももちろん考えられるわけですから、一応定めているという性格のものです。こういう方に関しては介護保険給付がなくなるわけですが、先の厚生労働省の通知による費用設定において、介護保険給付のない自立の方については別の費用設定がされているので、こうした差が生じているわけです。

○野村副分科会長

 それから、私の意見ですが、特養、特定施設の差のことをおっしゃられましたが、私は都内にも民間の賃貸住宅に住んでいる高齢者が非常に劣悪な状況で生活をしている。私は去年、板橋区で約150件の民間賃貸住宅に住んでいる高齢者を訪問して調査をいたしました。そうすると6万円の平均家賃ですが、これを払うのに非常に苦労しているわけです。そういうようなことで、きょうのお話はこれで結構なのですが、都内に劣悪な状況で生活している高齢者がたくさんおられることもぜひ皆さんにご理解をいただきたいということが第1点。
 それから第2点目は、きょうのお話は、ハードに偏っていて、私には非常におもしろかったのですが、実は介護保険の中の住宅改修の中の施行事業者は指定事業者ではないわけです。きょうのお話は指定事業者の中でのお話ですが、指定事業者外の実は民間サービスの参入に非常に問題があるのです。このこともぜひどこかで取り上げていただきたいというお願いをいたします。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。実はその問題は、白石委員が出された一番初めのスキームともちょっと絡んでくる……。2ページの話で、介護保険給付該当、これは介護保険に則してもう一度整理すると、今の住宅改修の話が出てくるということかと思いますので、「これからの福祉」という場合の「福祉」の意味みたいなものを考える上でも、きょうの市場サービスの議論は一つのスキームを出していただきましたし、武田委員のほうからは、事業者のいろいろな議論の中で公的なサポート、とりわけ場の確保ということを中心に幾つか新しいPFIのスキームの議論もしていただきまして、大変これからの議論になるかと思います。

○手塚委員

 この資料を拝見しながら考えたのですが、実は今、ちょうど介護保険が老人病院的に長い時間老人が入院しているのを介護に押し出したのと同じなのですが、日本は世界の中で入院日数が長いというのはご案内のとおりですが、その中で入院日数の長いのが精神科ですね。それで厚生労働省では、精神科のベッドを病院から削減すると言っていますが、そうしますと、多分、精神障害者グループホームというところに、ある程度受け入れていかなくてはならないと思うのですが、そのあたりのところは、多分対応はされていると思いますが。

○高橋分科会長

 健康局と福祉局の整理の話、所管の問題もちょっとあってなかなか……。国はこの間、本部の報告が出ましたけれども、事務局のほうから、今のご質問に何かレスポンスしていただけますか。

○松浦計画調整課長

 精神障害の関係ですと、ちょっと私どもはわからないものですから、整理して、後日でも報告します。

○高橋分科会長

 福祉のあり方ということを考える場合に、新しいのではないんだけれども、とりあえず今の制度的な仕掛け、新しい課題というような形で言えば、精神障害者に対する地域ケアの話、それがグループホームという手法でという議論がこれから非常に大きなテーマで、そしてこれは3障害という言い方をするとすれば、知的と身体に加えて、精神という新しい障害のスキームをどういう形で新しい福祉の枠組みの中で議論するかというのは、これは基本的なセーフティーネット、福祉というのはセーフティーネットの役割を相変わらず果たさざるを得ないし、果たすべきである。その場合、どういうあり方がいいかというのを、地域ケアというキーワードで切るとどういうことになるかということを考える上では、今の手塚委員のご指摘の問題は、これは福祉のあり方にとっての試金石だと思いますので、これはいずれちょっと議論をする機会があろうかと思いますが、そのときに再度させていただくということで、きょうの白石、武田両委員のレポートに即して、まだなおご質問等があれば……。
 どうぞ、中村委員。

○中村委員

 きょうの武田委員のご報告、大変私も刺激を受けまして、ありがとうございました。
 それで、1つ伺いたいなと思いましたのは、資料の2ページのところで、格差が非常にあり過ぎる状態の中で起こってくる問題の指摘として正しいというふうに私も感じているんですが、ただ、さらにその先を考えた場合に、現在の高齢者層ということ、それから現在提供できるサービスの質がかなり似通っている場合という前提では、こういう議論は確かに正しいと思いますし、私も全く同感なのですが、少し今後を考えたときに、例えば今の団塊の世代が高齢者層になっていく以降を考えたときに、まさに福祉施策の対象者がさらに多様化をしていく、それからそこで持っているニーズのありようも多様化していくということになっていくでしょうから、その場合に、例えば特養が最近かなり多様化しているとはいえ、提供できるサービスというのはどうしても画一性を持っている。それに対して、民間で提供できるものがもう少し、例えば今、我々の世代なんかはそうですけれども、住まいに関しても、でき合いの分譲マンションに住むというよりは、自由設計という形で住みたい、そこに何らかの自分たちの生活の仕方というもの、あるいは仕事の仕方というものを反映させたいというふうに考えておりますけれども、多分そういうニーズというのは高まってくると思うのですね。そういう提供できる選択肢の多様化ということに向けて考えていった場合に、今、武田委員が主張しておられる議論がどういうふうに進化させていけばいいのか、それを私も非常に関心を持って伺っていたところです。
 この点に関して、もう少し先をにらんで考えたときに、生活者の意識がかなり変化していくということを考えたときに、一方で、先ほど野村副分科会長がご指摘になったような状況もありますから、現在の公的な助成というものがある形でのものを、もう少し合った形にしつつ、もう一方で民間で多様な住まいなら住まいというものを、あるいはケアがついた形の住まいを提供していくという方向性を、民間企業のお立場から考えられるとすれば、どういうふうな方向性が考えられるか、一言でお答えができにくいかもしれませんけれども、お考えを伺えればと思います。

○武田委員

 住宅の専門家が多々おられる中で、私からこういう話をするのもどうかとは思うのですが、住むという概念は、おそらく住宅か施設かという二元論では語れないのだろうと考えています。例えば、高齢者が地域の中に分散して住んでいる住み方があり、友人どうしが近所に集まって住む住み方があり、それがもう少し進むとコレクティブハウジングみたいな形になって、あとは外廊下型のワンルームマンションみたいなものになり、内廊下式の個室型になり、さらに進むと、これがいいかどうかは別にして、今の特養の大多数が占めるような多床室、4人部屋とかという世界になってくる。これらは連続した概念であって、どこかで切れるものでは絶対にないだろうと思うのです。
 先ほど野村副分科会長のお話にもありましたけれども、施設ではなく在宅であっても非常に劣悪な環境に置かれている方も多いというのはそのとおりだと思います。ですから、介護サービスの提供のあり方とは別に、いわゆるこれまで公営住宅が担ってきたような、良好な住まいを提供するということ、これは当然今後ともやっていかなければならない話だと思います。
 例えば特定施設サービスでは、高齢者の住まいとして適切なものを、かつ妥当な価格で提供するということが一つの軸です。それと同時に、ホームヘルプのように1回行って幾らということではなくて、お客様の集合体に対してパッケージでサービスを提供していくというサービス提供のあり方、これがもう一つの軸です。極論すればグループホームも特養も同じなのですが、どういった住環境を提供するのかということと、パッケージサービスをどの範囲でどういうふうに提供していくのか、という2つの軸は必ずしもセットで考える必要はないと思うのです。
 後者に関して言えば、例えば医療の世界で言うHMOのように、ある地域に分散している人に対して、この10人に対してこれだけの人数でサービスを提供するからこれだけのパッケージ報酬を、という考え方もなくはないわけです。対象者の特定の仕方とか実績の管理とか技術的には非常に難しいわけですけれども、概念的にはあり得る。ですから、パッケージでサービスを提供するということと、集合的な住まいを提供するということとは実は別の概念であって、将来的にこの2つは切り分けていくべきではないかと実は私は考えています。そういう意味からすると、将来的な問題としては、福祉施策と住宅施策の「分離」と「整合化」が課題であると総括できるのかもしれません。

○高橋分科会長

 ありがとうございました。これから発展するいろいろなディスカッションとお答えだったなというように思いますが、いかなる福祉なのかというのが実は問われていて、高齢者に即して言えば、明らかに寝たきり老人モデルから痴呆性高齢者モデルに転換をしていて、その転換がグループリビングではどうもうまくいかないということがかなりはっきりわかり始めてきた、要するに従来型の老人ホーム、もちろん医療施設は論外ですが、新しいケアサービスモデルをどういうように考えたらいいかという文脈で実はグループホームが出てきた、単なる安上がりの施設をつくるためのグループホームではない、グループホームのケア思想みたいなものがあって、それは多分、保育サービスでは全く同じはずですし、これから課題の知的障害者、身体障害者、さらに精神が入って、障害者のケアサービスの中でも、これは介護保険の自立支援というキーワード、それから自己決定、自己選択というキーワードを出しましたけど、その議論と、ここで言う、かつての福祉対象で言う措置による庇護、保護、そういうキーワードとの対比の中でも、サービスの内実がどうも問われていて、それをうまく効果的、効率的に組織するためにはどういう仕組みがいいのだろうか、そういうテーマがこの議論の裏にどうもあったような気がいたしまして、その中で多分、白石委員のお話にあった民間事業者がマーケットにどういう形で参入してきたか、そしてそれを持っている、これはある意味ではヒューマンサービス産業とでも言うのでしょうか、サービス産業という視点から整理していくと、かなりおもしろい論点も出てくる、そんな感じがいたします。次回以降これを発展させていくテーマをお二人からお示ししていただいたかと思います。大変ありがとうございました。また、東京都からも新しい施策についてご説明があり、新しい福祉のあり方に即時的に対応しようとしている、そういうことをお示しいただきました。ありがとうございました。
 それでは、次回以降の予定でございますが、きょうの話に連続させていくとすると、サービスが市場化すると、消費者の保護の問題が一つ出てくるということで、これは最近、調査報告がいろいろな形で出てきておりますが、そういうものを含めまして、利用者保護の問題について、執行委員にきょうのような形でレポートをお願いできませんでしょうか。
 それから、きょうは営利企業の話が出てまいりましたが、先ほどの事務局からのご説明の中で、東京都ではNPOの役割が大変大きい、これは全国的なデータから比較しても大変大きな役割を果たしてきていて、これは施策的にもいろいろな形でやられているわけですが、そういう意味で地域の役割、あるいは非営利活動の役割というようなことで、中村委員にご発題をお願いできないかというふうに思うのですが、いかがでございましょうか。日程の調整等もあるかと思いますが、そんなことで、きょうの議論をさらに別の角度から切り込んでいくということになろうかと思います。
 それでは、事務局のほうにお返しいたします。次回以降の予定をよろしくお願いします。

○松浦計画調整課長

 ありがとうございました。次回の開催でございますけれども、今予定しているのは、7月28日、月曜日、午後2時から4時までで開催させていただけないかと思っております。次回は第3回でございますけど、先ほど会長からお話がありましたように、執行委員、中村委員にご報告をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

○高橋分科会長

 それでは、執行委員、中村委員、日程的にも大丈夫でございましょうか。
 そういうことで、次回は7月28日ということでよろしくお願いいたします。

(午後0時7分閉会)

このページのトップに戻る