福祉保健局トップページへ
  企画計理課トップページへ 

第46回 東京都社会福祉審議会
議 事 録

平成11年10月4日

               東 京 都
              (午前10時00分開会)

○計画調整課長 本日は、何かとお忙しい中、御出席をいただきまして、ありがとうございます。私は、当審議会の事務局の書記を担当させていただいております福祉局計画調整課長の永田と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 開会に先立ちまして、事務局より委員の皆様の出席につきまして御報告をさせていただきます。本審議会の委員総数は30名でございます。そのうち、本日、所用のために欠席の御連絡をいただいております委員の方々は、大山委員、大澤委員、大橋委員、小野田委員、佐々木委員、吉野委員の6名でございます。まだ到着なさっていない委員の方もいらっしゃいますけれども、本日出席予定の委員の方は24名となりますので、定足数に達することを御報告させていただきます。
 次に、お手元に会議資料を配布してございます。資料の1−1は「福祉施策の新たな展開」でございます。資料1−2は、「東京都の福祉施策を考えるII−福祉施策の新たな展開へ向けて−」でございます。資料2は、「社会福祉の増進のための関係法律の整備等に関する法律案(仮称)制定要綱」でございます。資料3は、「高齢者の生活像を考える懇談会報告書」でございます。資料4は、「東京都社会福祉審議会規程の一部改正について(案)」でございます。資料5は、「東京都の社会福祉を推進する上での課題」でございます。資料6は、前回、第45回の東京都社会福祉審議会議事録でございます。なお、御参考までに「財政再建推進プラン」「東京の社会福祉」「99年版社会福祉の手引」もあわせてお手元に配布させていただきました。なお、当審議会の議事録は東京都のホームページに掲載され、インターネットを通じて公開されておりますので、申し添えます。
 それでは、委員長、よろしくお願い申し上げます。
○仲村委員長 それでは、ただいまから第46回東京都社会福祉審議会を開会いたします。
 初めに、第3回東京都都議会定例会において、常任委員会委員等が改選されたことに伴い、東京都社会福祉審議会委員の変更がございました。大山とも子委員、樺山卓司委員、近藤やよい委員の3名の方が辞任され、新たに大山均委員、菅原一秀委員、曽根はじめ委員が就任されました。ここで、新しく就任されました3名の委員の方をご紹介させていただきます。
 まず大山均委員でございます。(欠席)
 菅原一秀委員でございます。
○菅原委員 おはようございます。よろしくお願いします。
○仲村委員長 曽根はじめ委員でございます。
○曽根委員 新しく委員になりました曽根です。どうぞよろしくお願いいたします。
○仲村委員長 続きまして、樺山委員の辞任に伴い、新たに民生委員審査分科会の委員を選任する必要があります。これにつきましては、社会福祉審議会令第3条により委員長が指名することになっております。この委員には、井口秀男委員を新たに指名させていただきたいと思います。井口委員、どうぞよろしくお願いいたします。
○井口委員 よろしくお願いします。
○仲村委員長 なお、新たな民生委員審査分科会所属の委員は、お手元の名簿のとおりとなりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、行政側の出席者について、人事異動がありましたので事務局から報告してもらいます。
○企画担当部長 事務局の幹事を担当させていただいております福祉局企画担当部長の須々木でございます。
 行政側の人事異動の報告をさせていただきます。本年6月及び7月の人事異動で行政側の出席者が別紙名簿のとおり変わりました。また、幹事、書記につきましてもお手元の名簿のとおりとなっておりますので、よろしくお願いいたします。
 なお、本日の審議会の開催の連絡につきまして、一部の委員の方々に大変ご迷惑をおかけいたしました。この場をお借りいたしましておわび申し上げます。
○仲村委員長 それでは、きょうは荻野福祉局長においでいただいておりますので、初めに荻野福祉局長からごあいさつをいただきたいと思います。
○福祉局長 ただいま紹介にあずかりました、6月1日付をもちまして福祉局長を拝命いたしました荻野でございます。どうぞ前任の石川局長同様よろしくお願いいたします。
 本来ならば、今回は昨年の10月に開きましてから久しぶりでございまして、石原都政になりまして初めてでございますので、石原知事に出席をと思っておりましたけれども、所用がございますので、きょうは欠席させていただいておりますことをおわびさせていただきます。
 先ほど、須々木部長からお話をいたしましたけれども、ちょうど今回の都議会議員の先生方につきましては、10月1日付で改選ということになりまして、急きょ10月4日の日程を調整させていただきましたこと、また大変お忙しい中を御出席賜りましたこと、厚く御礼申し上げます。それから、先生方におかれまして、本当にお忙しい中を御出席いただきましたことを厚く御礼申し上げますと同時に、日ごろから何かと福祉行政につきまして御尽力、御協力いただいておりますこと、厚く御礼申し上げます。
 昨年10月に開催いたしましてから、都政は青島都政から石原都政に変わりまして、都政の中がどういうふうに変わってきたかということも興味津々ではないかと思っておりますけれども、第2回都議会定例会でも、それから第3回都議会定例会でも、石原知事は、福祉というものは地方自治体にとっては重要な役割だということで、これからも積極的な取り組みを展開していきたいということを述べておりまして、いよいよこれから具体論に入っていくのではないかなというふうに思っております。私どもの方もそれを踏まえて頑張ってまいりたいと思っております。
 今、石原都政は都庁の中で「危機」と「スピード」というキーワードで都政の変革を迫っておりますので、私どももその危機とスピードというものをキーワードにしながら、福祉の展開を進めていきたいと思っております。
 近年は少子高齢化の急速な進行などによりまして、福祉を取り巻く環境が大きく変わっており、都民の方々のニーズが非常に増大し、多様化してまいりました。今日、多くの子育て家庭や高齢者、それから障害者が福祉サービスを必要としておりまして、それは所得の低い方に限られているわけではございません。だれでも、いつでも、どこでもということで、そういう意味では、だんだん多様化するニーズに的確に対応するためには、多様なサービスの供給主体が質の高いサービスを効果的、効率的に提供していく仕組みが今求められているという現状でございます。このような中で、現行制度のままでの福祉施策を継続させていけば、増大するニーズに十分応えられないばかりか、社会の活力を損なう要因ともなりかねないというふうに認識しております。
 また、ご案内のとおり、国の方では福祉の基礎構造改革が行われまして、この法案が秋に国会に上程されると伺っておりますし、来年の4月から介護保険の導入ということで、今までの措置型の福祉行政から利用契約型のサービス行政に切り替わっていくという意味では、非常に福祉のあり方そのものもが大きな転換を迫られているというふうに認識してございます。
 こうした状況、また、平成10年のこの社会福祉審議会の答申も踏まえまして、私どもとしてはこの8月に、今後の福祉施策の展開の必要性と基本的方向ということで、「福祉施策の新たな展開」というものを発表させていただきました。そういう意味では、都といたしましては、国の動きとか地域福祉をめぐる状況の変化に適切に対応して、今後の地域福祉を推進する上で、総合化を進めるための仕組みづくりとか、参加型の福祉などをどのように進めていくべきかなど、重要な課題があると思っております。
 したがいまして、本来ならば、社会構造の変革、福祉のあり方をどう進めていくかというようなことを踏まえながら、先生方にご諮問させていただき、ご検討いただくという手順を踏んでまいりたいと思っていたところでございますけれども、今回につきましては、逆に先生方に、こういう社会構造の変革を踏まえて、これからの社会福祉をどう充実、発展させていくかということを自由に、活発にご議論いただいて、ご意見をいただいた方がよろしいのではないかということで、意見具申ということでまとめていただいてはいかがでしょうかということを提案させていただきければと思っております。
 大変お忙しい中でございますけれども、どうぞご審議、ご検討のほどをよろしくお願いいたしまして、私のあいさつとかえさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○仲村委員長 ありがとうございました。
 それでは、議事に移らせていただきます。まず事務局から報告事項が3件ありますので、先に説明をしていただき、質問、ご意見はその後まとめていただきたいと思います。
 初めに、資料1−1になりましょうか、今、局長のごあいさつの中にもありましたが、本年8月東京都が発表しました「福祉施策の新たな展開」の概要について説明をお願いいたします。
○計画調整課長 それでは、事務局の方から説明をさせていただきます。
 資料1−1をごらんいただきたいと思います。まず、おめくりいただきまして、「はじめに」の部分でございます。東京都は、平成9年9月に「東京都の福祉施策を考える−少子高齢社会へ向けて−」、それから平成11年6月には「東京都の福祉施策を考えるII−福祉施策の新たな展開へ向けて−」を発行いたしまして、東京都の現状と課題を都民の皆様に討議資料としてお示しをいたしました。
 そこでは、急速に進行いたします少子高齢化等の社会経済情勢の変化に対して、今日の福祉ニーズに十分対応できない都の福祉施策の現状を明らかにするとともに、施策の転換が必要であるということを訴えてまいりました。都民の皆様からはいろいろな形でご意見をいただきました。そのご意見も踏まえまして、この度「福祉施策の新たな展開」を取りまとめたところでございます。
 次に、目次をお開きいただきたいと思います。目次でご覧いただきますように、第1、少子高齢社会の到来と福祉の転換の必要性、第2、新しい福祉の基本的な方向、第3、福祉施策の新たな展開と、3部の構成になってございます。それでは、1ページをお開きいただきたいと思います。
 少子高齢社会の到来と福祉の転換の必要性につきまして、現在の東京都の情勢と、東京都を取り巻く環境、社会経済情勢の変化と転換期を迎えた福祉というようなことで、今後の福祉の転換が必要だということでの必要性を述べてございます。
 次に3ページをお開きいただきたいと思います。3ページでは、新しい福祉の基本的な方向といたしまして、ここに6つの視点を掲げてございます。「一人ひとりの選択と責任に基づく自立・自助を基本としつつ、家族、地域社会、民間、行政などの社会的連帯による自助・共助・公助のバランスのとれた、安心して暮らせる社会」を目指してということで6つでございます。
 1点目は、「都民が自立し積極的に自己実現できる福祉へ」ということでございます。2点目では、「都民が安心して生活できるよう社会全体で支える福祉へ」、自助・共助・公助のバランスのとれた福祉システムを構築してまいります。3番目には、「都民が選択する福祉へ」ということで、措置制度から契約に基づき利用者がサービスを選択できるシステムに転換をしてまいります。
 次に4ページをお開きいただきたいと思います。4番目には、「在宅サービスに重点を置いた福祉へ」ということで、従前の経済給付的事業から在宅サービスへの整備へと、限りある資源の重点的配分を図ってまいります。5点目は、「サービス利用と負担のバランスがとれた福祉へ」ということでございます。だれもが利用する福祉へ転換していく中で、将来世代の負担も視野に入れて、公平性の観点からサービス利用の負担の適正化を図ってまいります。6点目は、「区市町村が主体となる地域福祉へ」ということで、住み慣れた地域において、必要な福祉サービスを利用しながら生活することを基本として、区市町村と連携をとりながら地域福祉の推進を図ってまいります。
 次に6ページでございます。6ページ以降は「福祉施策の新たな展開」といたしまして、今後の施策展開の方向を主な施策の分野別に明らかにしております。これらの事業の多くは区市町村が実施主体となるものでございます。都は区市町村の取り組みを積極的に支援するとともに、民間の事業者の育成指導を図りながら、福祉施策を新たに展開し、都民の期待に応えてまいります。
 以下「子どもと子育て家庭への支援」、それから8ページには「高齢者の豊かな人生への支援」、10ページに「障害者の自立生活への支援」、12ページに「利用者本位のサービス選択のしくみづくり」、13ページでは「地域福祉推進の基盤づくり」、そして14ページには「区市町村への分権と支援」というようなことで、それぞれ目指すべき方向と今後おおむね5年間の中で主体的に取り組んでまいります、新たに展開すべき事業、あるいは充実させていく事業とともに、見直すべき事業を掲げてございます。
 福祉施策の新たな展開については以上でございます。
○仲村委員長 今、説明のありました「福祉施策の新たな展開」について、これは本審議会の最も重要な検討課題の一つに織り込みたいと思いますので、いずれさらに詳細に、皆さんそれぞれの立場でお読みいただきまして、ご意見等をお寄せいただく機会をもちたいと思いますので、きょうは、事務局の説明を聞いておくということにとどめておきたいと思います。
 続きまして、資料2になりますが、国のサイドで本年8月に発表しました「社会福祉の増進のための関係法律の整備等に関する法律案(仮称)制定要綱」の概要について。この法律案は、臨時国会で提案されるということで聞いておりますけれども、これの概要について説明をお願いいたします。
○計画調整課長 それでは、資料2でございます。「社会福祉の増進のための関係法律の整備等に関する法律案(仮称)制定要綱」の概要でございます。誠に恐れ入りますが、この資料の後ろから2枚目になりますけれども、「社会福祉基礎構造改革の全体像について」というところで説明をさせていただます。
 まず、今回の法律案要綱でございますけれども、この改正の内容につきましては、昭和26年の社会福祉事業法制定以来、大きな改正が行われていない社会福祉事業、社会福祉法人、措置制度など社会福祉の共通基盤制度について、今後増大・多様化が見込まれる国民の福祉需要に対応するため、見直しを行うものであるということです。
 この見直しは、介護保険制度の円滑な施行、成年後見制度の導入、規制緩和推進計画の実施、雇用対策、社会福祉法人による不祥事の防止、地方分権の推進などに資するものであり、早急に実施する必要があるとされているものでございます。
 理念は、ここに掲げてございますとおり、個人が尊厳を持ってその人らしい自立した生活が送れるよう支えるという社会福祉の理念に基づいて、本改革を推進するとしているものでございます。
 具体的な改革の方向といたしましては、個人の自立を基本とし、その選択を尊重した制度の確立、2点目は、質の高い福祉サービスの拡充、3点目は、地域での生活を総合的に支援するための地域福祉の充実ということでございます。
 本改正の対象となる法律でございますけれども、下に掲げてございますように、社会福祉事業法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、児童福祉法など8本を予定されてございます。
 おめくりいただきまして2ページでございます。改正の内容でございますが、大きく分けまして5つほどございます。
 まず1点目は「利用者の立場に立った社会福祉制度の構築」ということでございます。ここでは、「福祉サービスの利用制度化」ということで、行政が行政処分によりサービス内容を決定する措置制度から、利用者が事業者と対等な関係に基づきサービスを選択する利用制度にするとしてございます。下の注にございますように、公費助成については、現行の水準を維持するとし、要保護児童に関する制度などについては、措置制度を存続するとしてございます。小さな項目の2番目ですけれども、「利用者保護制度の創設」といたしまして、地域福祉権利擁護制度を創設したり、あるいは苦情解決の仕組みを導入するというような内容になってございます。
 大きな2点目でございます。「サービスの質の向上」ということで、良質なサービスを支えるための人材の養成や確保をしていく。それから、サービスの質の向上のために、サ
ービス評価などを実施していく。3点目は、事業の透明性を確保するとしてございます。
 大きな項目の3番目でございますけれども、「社会福祉事業の充実・活性化」でございます。
 ここでは、新たに社会福祉事業の範囲を拡大して、社会福祉事業法の中で9事業を追加してございます。
 次に、社会福祉法人の設立要件の緩和でございます。地域におけるきめ細かな福祉活動を推進するために、従前の通所授産施設などの規模を20人以上から10人以上にするというふうに変えてございます。以下、社会福祉法人の資産要件の大幅引き下げ、通所施設の用に供する土地・建物の賃借を認めるということです。
 3番目には、多様な事業主体の参入促進ということでございます。保育所などについての待機児童数の状況を総合的に勘案して、民間企業など、社会福祉法人以外の参入を認めるとしてございます。また、注にございますように、特別養護老人ホームなどの入所施設につきましては、介護保険制度の施行状況等を踏まえ、事業の継続性・安定性の確保を考慮して、引き続き検討するとしてございます。
 次は、福祉サービスの提供体制の充実でございます。
 次に4ページでございますけれども、社会福祉法人の運営の弾力化といたしまして、会計区分を弾力化したり、利用料収入を施設整備費に償還することを認めるとか、行政監査の重点化・効率化を図るとしてございます。
 大きな項目の4点目では、「地域福祉の推進」といたしまして、地域福祉計画の策定が今度は事業法上で明確化をされます。
 次に2番目には、知的障害者福祉等に関する事務の市町村への委譲といたしまして、更生施設等の入所事務でありますとか、ショートステイ、グループホームについて市町村へ委譲するとしてございます。
 3番目には、社会福祉協議会、共同募金、民生委員・児童委員の活性化について記載がございます。
 大きな項目の5番目といたしましては、社会福祉施設職員等退職手当共済法の見直し、公益質屋法の廃止がございます。
 これらの法律でございますけれども、先ほど委員長からもお話がございましたように、今秋の国会に上程をされて、審議がされる予定になってございます。平成12年4月1日の施行を予定しているようでございます。ただし、身体障害者生活訓練等事業、盲導犬訓練施設の社会福祉事業への追加、助産施設及び母子生活支援施設の入所方式の見直しについては、平成13年4月1日の施行の予定でございます。
 また、措置制度の利用制度への変更、地域福祉計画の策定、知的障害者福祉等に関する事務の市町村への委譲に関する規定については、準備期間を考慮して、平成15年4月1日に施行するという予定になってございます。
 この要綱は8月10日に社会福祉審議会等に諮問がございまして、9月30日にそれぞれ答申をいただいたところでございます。以上でございます。
○仲村委員長 この関係のことにつきましては、前回の審議会で既に社会福祉基礎構造改革提案ということで、国のサイドからいろいろな資料が流れてきて、それ以後、今次に至るまでいろいろな検討会、小委員会等が設けられての検討をされた結果等も含めての膨大な資料が流れてきております。そしてそれが、こういうふうに今日の時点で集約される形で法改正案として出てきているわけです。この間の一連の流れについて、たしか前回のこの委員会では、三浦副委員長とともに、高橋紘士委員からも補足の御説明を既にいただいた。そしてかなりたくさんの御意見を皆様からもちょうだいしたのですけれども、その辺のことは、きょう、議事録がお手元に配られておりますので、念のため、記憶を呼び起こしていただくために、あとでお読みをいただきたいと思います。
 一連の法改正提案のところまでいく過程で、中央社会福祉審議会の分科会に三浦副委員長が参加をしておられます。私どもにとってはたくさんの資料が流れてきて、どういうことが問題になっているのかということは、ある程度わかっていることですけれども、必ずしも全体の皆さんにとってはおなじみのことではないかもしれません。それから、今の説明にありましたとおり、「地域福祉の推進」という一つ大きな柱が立っておりますけれども、地域福祉の推進というテーマは、東京都の社会福祉審議会が一つの重要なテーマとして取り上げて、まとめの答申を既にしております。したがって、東京都社会福祉審議会としては地域福祉の推進というのは、私どもがなじんでいる、非常に重要な提案でございますけれども、国の方で同じ言葉を使って、今回の法改正に結びつけるということになっておりますし、その辺のことなども含めて、国のサイドで取り上げようとしている地域福祉の推進と、私どもがこの審議会で一つの大きな柱として意見をまとめました地域福祉の推進と同じなのか、違うのか。違うとすればどういうところが違うのか。そういうことも含めて、三浦副委員長はそういう動きについては国のサイド、こちらのサイド、両方にかかわってよく御存じでございますので、要点だけということで若干補足の御説明をしていただければ幸いでございます。
○三浦副委員長 御指名でございますので、ごく簡単に、内容につきまして補足的に御説明させていただければと思います。
 今、既に御説明がありましたので、要点はおわかりだと思いますけれども、今回の法律改正は8本になっているわけでございます。内容としましては、先ほど要綱の御説明がございましたように、基本的な方向は出ておりますが、第一は「個人の自立を基本とし、その選択を尊重した制度の確立」、それからもう一つが「質の高いサービスの拡充」、それから、「地域での生活を総合的に支援するための地域福祉の充実」、大きく分けますとその3つが柱になっているというふうに言ってよろしいかと思います。
 特に、「個人の自立を基本とし、その選択を尊重した制度の確立」ということにつきましては、先ほど局長のごあいさつにもございましたように、戦後、ずっと長い間続けてまいりました社会福祉の措置制度というものを、基本的には廃止をいたしまして、利用者の選択を重視する制度へ切り替えるという方向でございます。その意味で、戦後、昭和26年に社会福祉事業法が制定されて以来の、非常に大きな改革というふうに読み取ってよろしいのではないかと思うわけです。ただ、この部分につきましては、実態的には身体障害者福祉法、それから知的障害者福祉法、児童福祉法、こういった法に実は具体的にうたわれてきておりまして、詳しいご説明はきょうは時間がございませんけれども、利用者の選択を主にする制度に切り替えると申しましても、身体障害者福祉法で言うところの利用者本位の場合と、児童福祉法等におきまして、母子生活支援施設その他の利用の場合というのと内容的には少し違います。いずれにしましても、利用者自身の意向が十分反映できるようなシステムに切り替えるということです。ただし、公的な責任を免れるわけではございませんで、公的には利用料を公費で負担をする。この部分につきましては、公的に大きく関与するというような形をとってきているかと思います。この方向が大変重要な流れの一つだというふうにおくみ取りいただいてよろしいのではないかと思います。
 それと同時に、利用者が選択できる場合のサービスが十分に用意をされるためには、多様な供給主体の参入ということをできるだけ促進をするということが、もう一つの筋書きとして出ているわけでございます。多様な民間の参入という場合には、単なる営利事業に限らず、NPOを含めまして、非営利的な民間事業者の参入ということもその中に組み込んでおりまして、多様な民間事業者の参入というようなことが強くうたわれてきているわけでございます。
 もう一つ注目しなければならないことは、そのサービスの質をいかに高めるかということが、今回強くうたわれているという点でございます。従来は、措置制度のもとにおきましては、どちらかといいいますと、公平で標準的なサービスを提供するということで、いわば量的な形のサービスの提供に重点が置かれていたわけでございますけれども、今後、利用者の選択に委ねるという場合になりますと、サービスの質が非常に問題になってくるということでございます。そのために、質の向上をどういうふうに確保させるかということにつきまして、審議会の中におきましても多くの議論が費やされたわけでございます。この点につきましては、専門性を高めるという意味で、職員の専門性を高めるということと同時に、サービスの評価制度を組み込んでくるということ。それから、情報の開示及び提供を行うというような内容にしまして、サービスの質の向上ということについて強くうたわれてきているわけでございます。
 その上に立ちまして、これらのサービスを実施するために、できる限り利用者の身近な場における地域においてサービスが提供されるべきであるという考え方から、地域福祉の充実・推進ということがうたわれているわけでございます。その地域福祉の内容については今、委員長の方から御指摘がございましたけれども、実は地域福祉とは何ぞやということについては、今回の審議及び法律の中には必ずしも明示されているわけではございません。ただ、社会福祉の理念についていろいろうたわれてきておりますけれども、その社会福祉の理念を具体化する場として地域福祉でという点が強くうたわれております。例えば、地域における総合的な社会福祉の推進を図るということであるとか、社会福祉の推進に当たりましては、地域住民の協力・参加を仰ぐことであるとか、さらに、多様な供給主体が地域において展開されるとか、そういったことがここでうたわれてきています。
 そしてさらに、特に基礎構造改革の中でたびたび議論されましたけれども、福祉の文化という点で、地域それぞれに属した地域の文化を構成するんだという内容を含めて、地域福祉ということがうたわれました。その地域福祉を具体的に達成する方策としまして、改めて地域福祉計画の策定ということが、今回強く打ち出されてきております。しかも、その地域福祉の計画につきましては、従来のゴールドプラン、あるいは障害者プラン、エンゼルプラン等々、いわば部門別の計画がございましたけれども、これを地域ベースにおきまして総合化するということが強くうたわれていることと、それから、地域福祉計画の策定に当たりましては、できる限り地域住民の協力・参加を仰ぐというような形で、住民とともに福祉を推進させるという内容が中心にうたわれてきております。この観点に従いまして、社会福祉協議会等々の改正を行っていこうということになろうかと思います。
 一つ申し遅れましたけれども、先ほどの利用者選択によるサービスをというところとあわせまして、利用者保護ということが実は大変重視されております。利用者の苦情処理、不服申立て、苦情の解決、権利擁護等を含めました、そういうシステムを確立し、しかもこれらを地域において確立させるということなども、この中の重要な柱になっているというふうに見てよろしいのかと思います。
 これらの内容につきまして、今お話がございましたように、8月10日に中央社会福祉審議会に諮問がございまして、9月30日の中央社会福祉審議会の総会におきまして、諮問の趣旨につきまして、それを了承するということでございます。あわせまして、身体障害者福祉審議会、児童福祉審議会等々におきましても同じような形の諮問が行われまして、諮問を了解をするということでございました。その折に幾つかの附帯意見が出てきておりますけれども、それはいずれも、今申し上げました内容を含む今回の法律改正をできるだけ可及的速やかに実施してほしいということと、そのための万全の体制を整えるように、それぞれの当局側にお願いをする、期待をするという内容でございます。そういう内容の附帯意見をつけまして、これを了解したというようなことでございます。
○仲村委員長 ありがとうございました。
 恐縮ですが、私から一言つけ加えさせていただきますと、今、三浦副委員長の御説明の中にありましたように、今回の法改正で、地域福祉計画が法定の計画として策定されることになるわけです。そうしますと、東京都の場合には、もともと社会福祉審議会の提案がもとになったと思いますが、都のレベルでは地域福祉推進計画、それから、都内の基礎自治体レベルでは地域福祉計画、そして、社協を中心の地域福祉活動計画、この三層の計画ということで、東京都独自の計画策定作業が既に現実のものになっています。法定の計画とちょうど同じ名称のものが既に東京はあるわけで、その辺の調整問題その他、多分検討課題の中には織り込まなければならないと思います。そういうことなどもお含みいただいて、どこかでそのあたりの調整とか、あるいは同じものなら同じで組み込んでいけばいいんですが、そういう問題も検討課題になるだろうということを、念のために、予備的に申し上げておきたいと思います。
 それでは、お手元に配布されました資料でもう一つ重要な、資料3ですけれども、本年9月に発表されました「高齢者の生活像を考える懇談会報告書」の概要について事務局から説明をお願いいたします。
○企画課長 高齢者施策推進室の企画課長の小宮です。資料3、「高齢者の生活像を考える懇談会報告書」ということでございます。副題にございますように、「高齢期こそ、最も自分らしく生きられるとき」ということで、高齢期、高齢者の生活につきまして非常に前向き、建設的な受けとめ方でまとめられている報告書でございます。過日、9月14日に報告がまとめられました。
 1ページをおめくりいただきまして、目次でございます。「はじめに」ということで全体的な方向をまとめてあります。
 第1章につきましては、「これからの東京の高齢者のすがた」ということで、一つは東京の高齢者ということですので、東京につきまして現状、あるいは潜在能力につきまして分析をしております。また、第1章の2番目では、そういう東京の状況を受けまして、東京の高齢者のイメージにつきましてまとめてございます。そして3番目が、これを受けまして、高齢者のライフスタイルということでまとめております。
 恐れ入りますが、15ページをお開けください。「これからの東京の高齢者のライフスタイル」ということで、生活、生きがい、健康、就業といった4つのライフスイタルに応じまして、それぞれにまとめてあります。まとめまして、一人ひとりが健康に、個性を活かしていきいき暮らすといったようなテーマでございます。
 そして、具体的に第2章では、これからの「東京の高齢社会の目指すべきすがた」ということで、17ページをお開けいただきますと、「高齢者が健康で、個性的で自立した生活を続けられる社会」が目指すべき社会ということでまとめてあります。これにつきましても、それぞれ生活、それも暮らしやすいまちづくりのための都市基盤整備、それから、商品・サービスについても言及しております。そして、18ページでございますが、生きがいにつきましても、いきいきと活動するための場づくり、それから、就業の問題としまして、高齢者の意欲と能力を活かす就業の場づくり、そして、健康でということで、いつまでも健康でいるための健康づくりにつきましてまとめております。
 20ページでは、健康について、特に身体的なことだけではなくて、心の健康につきましても言及しておりまして、体の健康とともに心の健康が保たれていればこそ、いきいきとした生活が送れるということでございます。そういったことで、高齢期における心理面の研究だとかカウンセリングの充実だとか、心のケア(癒し)ということで提案をしております。
 そして、全体に共通なものとして、7番、8番ですけれども、高齢者が利用しやすい情報提供につとめること。それから、すべての人の「高齢者観」を広げるということです。その初めの方に書いてございますが、「高齢者については、これまではどちらかというと、マイナスのイメージで捉えられがちでした。しかし、各種の調査でも明らかなように、高齢者の多くは元気で、経済的にも自立しています。今後は、すべての人の『高齢者観』を広げて、高齢者を『社会の貴重な担い手』として明確に認識する必要があります」というふうに提言をいただいています。
 高齢者の目指すべきすがたは、こういうようなことでございます。
 続きまして、23ページからが、高齢者が健康で、個性的で自立した生活を続けられるために、都民の役割、企業の役割、行政の役割、それぞれの立場からどういうことができるのかということで、具体的に方向としてまとめてあります。とりわけ、都民の役割の中で、例えば@ですが、高齢者だけではなくて、世代間の問題として、児童・生徒・学生などについても、それぞれできる立場でどういうことをやっていけばいいのかということで、具体的に提案をしております。
 その関係で言いますと、左の22ページですけれども、「世代を超えて助け合い、支え合う『互助社会』」といったようなテーマでも具体的に提言をいただいております。
 続きまして、24ページをお開けいただきます。都民の中にも、NPOなどの公益的な活動を行う団体につきましても、果たすべき役割が大きいということで、具体的に言及がございます。また、企業、行政、それぞれにつきまして、役割について具体的に提言をいただいております。
 これを受けまして、第3章ですが、一つ一つは御説明申し上げられませんが、151項目ございまして、それぞれにつきまして生活、健康、就業といった部門別にまとめてございます。かなりユニークな提案をいただいています。
 このような構成の中で、最後に51ページでございます。これらをまとめまして、「これから−東京の高齢社会をともに生きるために−」ということで、東京の高齢社会の受けとめ方としまして、高齢者は蓄積された知識と経験を有する知的資産家として、本格的な高齢社会は、ある意味では知的資源が豊かな社会だと。そういう大切な資産を活かしていくことが重要だというふうにお話をいただいております。そして、体力が低下しても今までと同じような生活を送れる社会、年をとったというだけで能力を発揮する機会がなくなることのない社会を築いていくことが重要だというふうにお話をいただいています。
 また、東京ということに光を当てていますので、都市型高齢者は、地方の高齢者に比べて地域社会とのつながりが希薄な点もございます。そういった意味で、互助の意識が高い地域社会を築いていくことも、東京の高齢社会を考える上で大事な点だというふうにお話をいただいております。
 最後に参考資料としまして、委員会の名簿、設置要綱等がございます。特筆すべき点としては、この懇談会、あわせて30名の委員の皆様からなっておりまして、とりわけ公募の委員が8名いらっしゃいまして、非常に活発に議論をしていただいた様子でございます。これまでこういう報告はなかったんですが、東京の高齢者の生活に光を当てて、具体的に高齢者の生活を向上させるための課題、あるいは解決の方向、そして行政だけではなくて、団体を含みます都民、企業、行政の果たすべき役割について、具体的に指針としていただいたものでございます。
 以上、簡単でございますが、ご報告を終わらせていただきます。
○仲村委員長 以上3件の資料、あわせて三浦副委員長から補足の御説明をいただきました。この3件の資料について包括的に、皆さんから御意見、御質問等おありかと思いますが、ご自由にご発言いただきたいと思います。
○井口委員 これから、都としていろいろ取り組んでいくための、あるいはまた場合の、課題ということで申し上げてよろしいんでしょうか。
○仲村委員長 今の3件の資料との関係でということでなくてですか。全体を通してであれば、あとでまた御意見を伺う部分がありますけれども。
○井口委員 それじゃ、そのときでよろしいです。
○仲村委員長 そうしていただきましょうか。とりあえず今の3件の資料との関係でということで、御質問、御意見。
○吉田委員 それでは簡潔に、今の報告事項の第一に挙げられました「福祉施策の新たな展開」について、私どもは議会で質問等の機会がありますので、きょうは意見だけを述べさせていただきたいと思います。
 きょう説明がありました新たな展開についてですが、さまざまなことが述べられておりますが、その一つの特徴は、財源が限られているということも理由に挙げて、いわゆる経済給付的事業から在宅福祉に重点を移行するんだということが強調されているかと思います。経済給付的事業という概念そのものは、きょうは専門の先生が大勢いらっしゃいますが、あまり私としてはどういう概念か、定かに知っているわけではありませんけれども、しかも、具体的な展開の方向については、全体としては抽象的です。しかし、経済給付的事業にかかわるものについては、極めて具体的に、それぞれ見直しをするということが明記をされているのが、私は特徴だと思います。
 例えば、東京の福祉を支えてきた老人、障害者、乳幼児への医療費の助成制度は軒並み見直しと明記されました。さらに、老人、障害者、重度障害者などの手当についても明確に見直しというふうに明記がされましたし、シルバーパスについても見直しが明記されている。結局、概念としてはあいまいなんですけれども、経済給付的事業というものを一くくりとして、見直しを打ち出したというのが特徴だというふうに思います。
 その一方で、他の具体的な施策については、率直に言って何ら具体的な提案はされておりません。同時に、先ほど石原知事の動向等についてお話がありましたけれども、実は、この新たな展開で見直し対象となった事業というものは、既にその直前に出された財政再建推進プランでは、財源対策の一環として、存・廃を含む重点見直しを対象に挙げられているということも私たちは見ておかなければならないと思うんです。こういう点で、何点かについて、私なりに、この新たな展開、とりわけ経済給付的事業撤廃論といいますか、縮小論ということについて意見を述べさせていただきます。
 第1は、経済給付的事業からの撤退の根拠として、在宅福祉の遅れを強調し、そこに重点を移行するんだということが強調されております。しかし、概念的にも、私は実際上においても、経済給付的事業というものは、これまで在宅福祉のいわば中心的な役割を果たしてきたし、そういう位置づけを持ってきたのではないかというふうに思います。実際に障害者の皆さんなどからは、障害者手当、重度障害者手当、さらに医療費助成制度があったからこそ、地域の中で自分たちは在宅で生活できているんだと。いわば、手当などは在宅生活の命綱だというご意見も寄せられております。

 2つ目は、都民ニーズへの対応ということが強調されております。しかし、都民の実生活に根ざした、都民要望に立脚するというふうにもし問題を立てるとすれば、諸手当や医療費助成制度の縮小、廃止という方向は私は出てこないと思います。障害者分野で見れば、障害者の要望の第一に年金・手当の充実ということが挙げられていることは、東京都が障害者施策を定めた「ノーマライゼーション東京推進プラン」の中でも紹介をされ、年金・手当の充実の要望は強く自立生活の基盤をなすものと言えるというふうに、同計画でも明記をされております。
 乳幼児の医療費助成制度に関しても、出生率の低下、少子化の原因として都民が挙げた第一は、子育てにお金がかかる、経済的負担の重さです。しかも、これは石原知事自身、ことし政府に出した来年度予算に向けての重点要望の中で、経済的負担の軽減策として、乳幼児医療費助成制度の創設を国に求めたという経過からも明らかだと思います。
 3点目に述べておきたいことは、これまでの特定の都民に対する福祉から、もっと幅広い都民が利用できる福祉に拡大・転換する趣旨のことが強調されております。しかし、そもそもシルバーパスから乳幼児医療費助成制度まで、私どもの計算では、見直し対象に挙げられた事業をどれだけの都民が利用しているかということで対象者数を総合計いたしますと、約190万、都民6人に1人となっております。現実に広範な都民が利用している制度であるということは、私は否定できないと思うんです。決して特定の、限られた都民のためのサービスだけではない。
 同時に、たとえ特定の都民への事業であったとしても、私は自治体の責務という観点から、絶対にあいまいにすることができない分野があると思います。例えば障害者への手当は、御承知のとおり、障害者基本法20条では、「国及び地方公共団体は、障害者の生活の安定に資するため年金・手当等の制度に関して必要な施策を講じなければならない」とうたっています。さらに23条では、「経済的負担軽減策を講じなければならない」と明記をされております。先日、府中療育センターを出て、在宅で個人で暮らしている方からお話を聞きましたけれども、その方は、言語の不自由がありまして、足文字でお話を聞いたんですが、こうした重度障害者手当の存廃はまさに生き死にの問題だということまで訴えられております。こうしたものを一律、経済給付的事業という名のもとに縮小、削減ということは、極めて乱暴だと思います。
 最後に訴えたいことは、経済給付的事業というものが、何か時代遅れであるかのような印象を受ける記述があります。しかし、本当に時代遅れなのか、あるいは先輩、詳しい先生方大勢いらっしゃいますけれども、ヨーロッパ諸国では、こういうものは時代遅れで行われていないのかといえば、決してそういうことはあり得ないと思います。例えば社会手当という概念で、概念的にも実際上でも確立され、定着しているものではないでしょうか。それにひきかえ日本では、そもそもこれは国の責任が大きいわけですけれども、こういう社会手当というものが異常に遅れている。日本の社会保障の遅れの一つがここにあると言っても過言ではないと思うんです。国民所得に占める社会保障給付費の比率の低さが繰り返し指摘をされていますが、ただ、社会保障給付費が低いだけではなくて、その中でも、いわゆるその他の値する部分が低いんだということは、わりと多くの先生方から指摘をされていることだと思います。その他部分の国民所得比を見ても、イギリスが91、ドイツが103、それに比べて日本が19というような数値も見かけられ、学者の方からも、わが国ではその他の割合が低いんだと。その理由の一例として、児童手当等の家族給付の少なさを挙げていられます。
 このように、都の経済給付的事業は、こうした国の遅れをそのままにしないで、都独自の施策によって少しでも都民福祉を向上させるという、地方自治体本来の精神に基づいて実行されてきたものだと私は思います。今、都に問われていることは、経済給付的事業か、あるいは在宅福祉かというふうな選択ではなくて、少子社会、高齢化社会にふさわしく、福祉施策全体を総合的にいかに拡充していくのかという視点での検討であり、その中でシルバーパスにしても、医療費助成制度、あるいは手当類にしても、引き続き重要な要素の一つとして私は検討していく必要があるのではないかということを述べさせていただきます。
○仲村委員長 包括的な御意見ありがとうございました。今のご発言の取り扱いは、これは正式に本審議会の議事録に載りますので、そういうご発言があったことを踏まえて、今後の検討課題の中に織り込ませていただくという扱いにさせていただきたいと思いますが、それでよろしゅうございますか。
○吉田委員 はい、結構です。
○仲村委員長 ほかにいかがでしょうか。
 それでは、今、吉田委員からかなり包括的なご発言がありましたから、またいろいろと皆さん御意見等おありかと思いますけれども、御遠慮なく、文書の形で、差し当たりはできるだけ早くですが、随時御意見、御質問等をお寄せいただけませんでしょうか。そして、あとで分科会を設けることにいたしますから、分科会の検討の過程でそのご発言は積極的に資料として織り込んで検討させていただくということにしたいと思います。きょうは時間の制約がありますし、きょうですべて何もかもというわけではありませんので、そういう扱いにさせていただきたいと思います。
 あと、まだ幾つかの事務的な予定等もありますので、今説明がありました3件の資料の関係のことについては、ここで打ち切りたいと思います。
 次の審議事項に移らせていただきます。
 東京都社会福祉審議会規程の一部改正について、事務局から説明をお願いします。
○計画調整課長 それでは、事務局から説明させていただきます。
 お手元の資料4をごらんいただきたいと思います。東京都社会福祉審議会規程の一部改正について(案)でございます。この改正の概要は、東京都情報公開条例の施行が平成12年1月1日に予定されております。この施行に伴いまして、東京都社会福祉審議会規程のうち、分科会の議事に関する規定を改正するものでございます。
 改正案といたしましては、次のページに新旧対照表がございますけれども、第5条第3項、分科会は、非公開とするとしてございますけれども、それを、分科会は、原則として公開とする。ただし、民生委員審査分科会及び身体障害者福祉分科会は非公開とする。また、第5条第4項については、削除をいたします。
 改正の理由といたしまして、東京都情報公開条例、平成11年の条例第5号でございますけれども、この条例が平成12年1月1日に施行される予定になってございます。この趣旨にかんがみまして、分科会を原則として公開するとともに、規定の整備を行うものでございます。なお、民生委員審査会分科会及び身体障害者福祉分科会は、個人情報を取り扱ってございますので、非公開といたします。
 5条の4項でございますけれども、会議録等についての扱いが削除されるということになりまして、奇異に思われるかと思いますけれども、東京都情報公開条例では、原則として会議録については公開というような形になってございます。ただし、幾つかの場合に限って非公開とするというふうになっております。したがいまして、今後は、会議録等の公開につきましては、下の方の公文書の開示義務等に掲げてございますように、それぞれの項目に基づいて個別に判断をしていくというような形になろうかと思います。
 それから、附則の方でございますけれども、この規定は平成11年10月4日、本日から適用したいというふうに考えております。東京都情報公開条例の公布の日が11年の3月19日でございますけれども、3月19日以前に開催された会議に係る議事録の開示につきましては、「旧規程第5条第4項の規定は、この規程の施行の日以後も、なお効力を有する」ということで、公布の日以前の会議の議事録につきましては従前の取り扱いをさせていただくというものでございます。それ以降につきましては、原則として開示をするというものでございます。以上でございます。
○仲村委員長 事務局から説明をしてもらいました。御質問、御意見等ございましたら。
 特にございませんでしたら、事務局案どおりに、この規程の改正を決定するということでよろしいでしょうか。
             〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○仲村委員長 そういうことで決定いたします。
 次に、今期の検討課題についてという審議事項に進めさせていただきます。
 今期については、先ほど荻野局長のごあいさつの中にもありましたように、重要な検討課題も山積しているわけですが、積極的に社会福祉審議会のサイドから検討して、意見を具申の形でまとめてほしいというご要望がありました。したがって、知事の諮問という形がとられないわけですけれども、こういう状況下で、当面の都のレベルでの検討課題を積極的に取り上げて、この審議会としての検討課題としたらどうか。それが本審議会の任務であろうかとも思いますので、そういう扱いにさせていただきたいと思います。
 この点について、皆さんご自由な、積極的な御発言をいただきたいと思いますけれども、一応事務局サイドで、それに備えての資料が準備されていますので、それについて説明をしてもらいまして、その上で率直な御意見をちょうだいしたいと思います。
○企画担当部長 それでは、資料5をごらんいただきたいと思います。事務局といたしまして、都の課題というふうに思っているところを、資料といいますか、簡単なメモ程度でございますけれども、まとめておりますので、説明をさせていただきたいと思います。
 東京都といたしましては、既にお話がありましたように、地域福祉ということで重点を置きまして、区市町村と連携をとりながら現在行っているところでございます。また、先ほど来お話のございました、社会福祉基礎構造改革というのが進められておりまして、そういったところの観点から、今後の東京都の社会福祉の推進ということで考えてみますと、いろいろな問題が出されていると思います。さらに、理念的なものはいろいろ出ているんですけれども、実現に当たりましてはまだまだ多く課題があると思っております。先ほど来、三浦委員の方からもお話がございました。その中で、一応、ここに掲げております「地域福祉の推進」、「多様なサービス主体の参入促進」、それから「利用者本位のサービスシステムの仕組みづくり」といったものを挙げてございます。
 「地域福祉の推進」についてですが、実はここには書いてございませんが、先ほどお話が出ました東京都の地域福祉推進計画の中で、地域福祉の推進の原則といたしまして、区市町村主体、総合化、計画化、参加と協働というのを掲げてございます。こうした中で、利用者にとりましても総合化というのは大きな課題でございまして、前回の審議会の中でも施設の複合化というお話が出ておりましたけれども、そういったものを含めて話題となってきているところでございます。
 2番目の「自助・共助・公助のバランス」のあり方、あるいは3番目の「参加型福祉」の具体策につきましては、社会全体で福祉をどう支え、実現していくのかということの課題だと思っております。ここでは触れておりませんけれども、そうした中で、今後東京都の役割はどうあるべきかということも大きな課題になってくると思っております。
 2つ目の「多様なサービス主体の参入促進」ということですけれども、多様な主体の参入という、福祉分野にとりましては全く新しい経験になるわけですが、まずその参入の促進を図るということで、民間諸団体をどう支援するかということが課題だろうと思います。さらに、多くの主体が存在するということになります。その経営のあり方、既存の主体の問題、あるいは新たに参入する主体の福祉のサービスの提供のあり方というような形で問題となるというふうに考えております。また、次の「福祉の専門性の向上」ということも、多くの主体ということで結びついていくのかなと思っております。それから、多くの人がサービスに従事するということになりますので、そうした人材の育成ということも大きな課題というふうに考えております。
 3つ目の「利用者本位のサービスシステムの仕組みづくり」につきましては、いわゆる措置から契約ということですが、利用者の立場に立って、どう仕組みをつくっていくかという課題ということができるかと思います。実は、東京都におきましても、「地域福祉サービス利用支援・評価システムのあり方検討会」を設けまして、学識経験者、あるいは都、区、市の職員で検討をしてございます。課題の内容としては、ここに掲げております情報提供、サービス評価、苦情解決、権利擁護などが中心の課題になってこようかと思いますけれども、これらも大きな課題と考えております。
 簡単でございますけれども、以上でございます。
○仲村委員長 これは事務局サイドの一つのたたき台ということで出されたものですが、これに、三浦副委員長の先ほどの補足の御説明、吉田委員の御発言等、検討課題その他を整理して加えることになると思います。今準備されたものについての御質問がありましたらもちろん結構ですが、そのほかに、ぜひこういうテーマを課題として織り込むようにということで御意見ございましたら、お願いします。
○井口委員 きょうは資料もたくさんありますし、いろいろな場面がありますので、迷っておりましたが、ここで私の方から少し発言させていただきます。
 少子高齢社会、あるいはまた、介護保険制度や社会福祉の基礎構造改革などということで、新しい福祉の流れが始まっているということは、今私が申し上げるまでもないと思います。福祉の対象者について、措置制度を中心とした従来の考え方から、サービスの利用者と位置づけられて、福祉が変わってまいります。福祉サービスの内容として、保護・救済という従来の考え方から、自立・自助を基本に置いた考え方として、自立への支援をどのようにしていくか。あるいは、福祉を支える体制として、自立・自助を基本としつつも、個人の努力だけでは解決できなくなった場合に、家族、地域社会、民間、行政など、社会全体で支えるということが、これからの取り組みになろうとしています。
 こうした新しい考え方は、これからの福祉を考えるに当たって基本とすることは当然でありますが、それをどう実現していくかということには幾つかの問題があるということで、私なりに考えていることを申し上げたいと思います。
 まず福祉サービスの向上として、利用者の選択を通じての適正な競争が必要だ。また、それをどう確保していくかということがあります。社会福祉法人の経営能力の問題や営利企業が福祉に参入してくることの対応、行政指導のあり方などが問題となってくるであろうということであります。いわば、この仕事は介護保険を含んで4兆、あるいは4兆5,000億とも言われる国家的な大事業でありますから、そんな意味では、一つの市場みたいなところで考える人もあるのではないか。そういう意味からも、このことは大変大きい仕事でもありますし、また注意をしなきゃならないことでもあろうと、こんなふうに思います。
 また、特に深刻に考えなければならないことは、今後は大きな右肩上がりの経済成長ということはなかなか望めない。社会的な資源や負担能力には限界がある。そういう意味で、お互いにこのことは深く認識しなければならないということであります。私は、このことで先ほどとつながったことで申し上げたいと思うことは、たくさんの福祉法人が今生まれています。都の行政もかなりしっかり指導していると思いますが、中には思い切った準備や体制が整わない。しかし、その仕事は認可が下りている。こういう意味でちょっと心配なところもないではないということを私どもあちこちで聞いています。そんな意味で、これからの取り組みの中で、景気が悪いということはなおさら仕事が難しくなるわけでありますから、そういう意味では、法人格の皆さん方の努力と同時に、行政も相当気をつけなきゃいけないのではないか。
 私、ある行政の長からも相談されたことがありますが、放っておくと、市が肩代わりしなきゃならない、そういうところも生まれるよということが言われています。先ほど申し上げた、経済がよろしくないということからいきますと、法人のそうした面に、場合によると力がつかない場合もあるのかなと、こんなふうに思えてなりません。
 それからもう一つは、最後に申し上げますが、今度は行政関係が諸問題で準備をしてまいりました。例えば、特養ホームにしろホームヘルパーにしろ、ショートステイ、あるいはデイ・ケア、いろいろやっていますが、行政のウェートのかけ方によっては、特養などでかなりしっかりやっているところがあります。しかし、そうでなくて、そのほかのホームヘルパーなどでかなりダウンしているところもある。それから、そのほかの施設で一方がよいかなと思うと、片方がかなり落ちているところがある。こういう状況からいきますと、これからの仕事を進めるに当たって、よほど行政側の全体的なことのバランスも東京都はしっかり指導していかないと、このことはまた問題が起きやしないか。仕事は取り組んだけれども、大きなムラがある。自治体によって大きな違いがある。そのために各福祉施設が存分な対応ができないというようなことが生まれやしないか。こういうようなことも多少聞かされています。そんな意味で、これからの福祉の仕事を進めるに当たって、私は東京都の立場として、これから取り組んでいく課題の中でそのことを十分に整理してもらえたらなと、こんなことを申し上げておきたいと思います。以上でございます。
○仲村委員長 ありがとうございました。先ほどの吉田委員の御発言と同じ扱いにさせていただきたいと思います。社会福祉法人の体制整備と行政の役割とでも言うようなことで具体的な課題が出されておりますし、全体を通しての、広域自治体としての都の役割についての検討ということなども含まれているかと思いますけれども、それらを含めて整理をして、検討課題の中に織り込むということにさせていただきたいと思います。ただし、ここに立っている柱と別に立てなければならないというよりは、これらの検討の中にそれを織り込んで検討するという扱いでよろしゅうございますか。
○井口委員 はい、いいです。
○仲村委員長 ほかにいかがでしょうか。
○大本委員 資料5で、東京都の社会福祉を推進する上での課題という形で3つ提起されていますが、私がこれから発言することは、この中に含むことかもしれないんですけれども、地域福祉というとらえ方で、サービスの総合化ということが出されております。現在、地域社会において起きている状況というのは、特に中小の商店街というんですか、それが非常に撤退しているというのか、大型のスーパー化というのでしょうか、それで流通機構がこれからうんと変わってくると思うんですね。ベル革命といって、中小の小売店と生産者が直接コンピュータか何かで結ばれるようになりますと、流通革命が起きてくると思うんです。そうすると、今、地域社会の中でお年寄りが生きていく、この東京都の老人像で、なるべく高齢者が健康で自立生活を長くできる、そういうことが本人にとっても社会全体にとってもコストも安くなるということで、ここで挙げられていると思うし、これは非常に大事なことだと思うんです。そのためにいろいろな施策を考えられているけれども、地域の社会の中で、お年寄りにとってすごく刺激が大事だと思うんですね。刺激が強度になるとストレスになりますけれども、住み慣れた地域の中で、商店街が衰退していっているという状況がある中で、お年寄りが地域社会に出ていく場がなくる。行くとしたらこういう福祉施設ということになるのかなと思うんですけど、もう少し日常、若いときから地域社会に出かけていっているような商店街そのものが存続するような形で、そこで高齢者たちが買い物をしたり、あるいはときどき話をするとか、買い物を通して情報交換なり、相互に刺激し合うということがすごく大事じゃないかという感じがするんです。
 そういう意味で、地域福祉といっても、既存の地域社会がすごく変容してきている中で、どうやってお年寄りによい地域社会というか、要するに商店街とか、それが福祉の施設になるんだという私の考え方なんですけれども、そういう地域社会が存続するようなことも地域福祉としての戦略の中に一つ置いて、それに対するいろいろな施策を検討してみる必要があるのではないかということを強く感じるものですから、その点についても御検討いただければと思います。
○仲村委員長 今の御発言はどういう柱で整理したらよいか、さっと出てきませんが、参加型福祉の対策というような枠の中ではなくて、もっと前提のところで、高齢者が出ていく場としての地域社会の再構築みたいな考え方になりましょうか。そういう問題を積極的に織り込んで検討してほしいということで、うまく柱が立つようでしたら考えていただいて、ご発言の趣旨は織り込ませていただくということにしたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
○大道委員 本来、私が申し上げるべきことか、若干迷いもあるんですが、医療とのかかわりについては、かねてから医療の側でも長い論議があるわけであります。きょうお示しいただきました3つの課題のうち、恐らくは、地域福祉の推進の中の総合化の一環であろうと思いますが、必ずしも明示されていないので、あえてお話をさせていただきたいと思います。
 地域福祉の中での、従来、医療と言われていた領域との関係は、今後ともますます重要課題として続くであろう。あるいは、場合によっては新しい局面なのではないかと、このようにも認識をいたしておりまして、社会保険体制の中での医療が先行しているわけですが、介護保険などの導入によりまして、さまざまな新しい問題が起こってきています。こういう面からも東京都におきまして、地域における医療とのかかわりをぜひ御論議をいただきたい。とりわけ、先ほどの地域計画としての福祉という切り口が制度的にも明確になってきているわけでありますけれども、医療においては、当初から法制度としての地域医療計画ないしは医療計画というものがあったわけでありまして、それとの整合というものは必ずしも簡単ではないというのが感じられるところでございます。
 いずれにいたしましても、医療とのかかわりについて、従前からのさまざまな課題が指摘されているわけでありますが、このような場面、局面で、改めて御論議をいただき、東京都としての明確な方向をお示しいただくことは必要なのではないかと思いますので、発言をさせていただきました。
○仲村委員長 念のためにちょっと伺いますが、今の御発言の趣旨は、高齢者の問題だけではなくて、障害者……。
○大道委員 もちろん障害者、場合によっては子どもさん、今、医療的に言いますと小児科の問題は大変深刻でございますので、決して高齢者という意味ではございません。高齢者は実際には量的には最も多いものだと思いますが、それにこだわらないという意味でございます。
○仲村委員長 高齢者を例にとりますと、高齢者については法定の計画として、老人保健計画、老人福祉計画、それを一体化して、老人保健福祉計画の策定ということが既に進められております。そういう視点での見直しとともに、障害者、児童、家庭についても同じようにということで、保健医療と福祉のつながりのところを見落とさないようにということになりましょうか。
○大道委員 はい。そういうご趣旨で結構でございます。
○仲村委員長 計画の問題については、その視点を落とさないようにということです。
 ほかにいかがでしょうか。
○廣田委員 私、行政分野を専門とする公認会計士なのですけれども、この観点からテーマを絞って意見を述べさせていただきたいと思うんです。
 これから21世紀を迎えるに当たりまして、高齢者福祉、障害者福祉、児童福祉等、非常に重要なテーマだと思います。そのために、それぞれにかかる政策判断をするためには、利用者の観点からの判断と、そしてそればかりではなくて、負担者からの判断も重要だと思うんです。したがいまして、いただきました資料5の3番目に、利用者本位のサービスシステムとして情報提供がありますが、これとあわせて、負担者に対する情報提供も必要だと思います。すなわち、負担者は、高齢者、障害者、児童等、そういった福祉の増進を願って負担をしているわけですから、それがどのように活用されて、また、現在行われているサービスに対して私たちが十分に負担をしているのかどうか。すなわち負担者にも、現世の負担者と将来の負担者があるわけです。そういう構造的な情報を提供していただいた上での、負担者も加えた上での政策判断ができると思うんです。
 先ほど、非常に重要になってくるというご説明をいただきました「福祉施策の新たな展開」、こちらの4ページに「サービスの利用と負担のバランスがとれた福祉へ」と書かれています。その中の2つ目の○には「サービスの利用と負担のバランス」、そして3番目の○には、「将来世代の負担も視野に入れ、公平性の観点から」とあります。これはすなわち、そのバランスという言葉について、サービスの利用と負担、そして3つ目の○については現世と後世のバランスだと思うんです。
 さらに、資料をつけ加えますと、今回は、前回提供されました東京都の「財政再建推進プラン」の中に、一番最後の資料としてバランスシートが掲げられています。これは石原知事の公約として導入されたものでもありますけれども、実は、先ほど申し上げました利用と負担のバランス、現世と後世のバランスを見るものが、石原知事が公約として掲げましたバランスシートなんです。しかし、東京都で公表されましたバランスシートは都政全体のバランスシートです。すなわち、都政全体のサービスの提供と利用のバランス、現世と後世のバランスなんです。したがいまして、福祉政策についてのそれは定かではありません。
 具体的に申し上げますと、東京都のバランスシートには6兆6,000億円の都債があります。一方で12兆円の行政財産があります。このうち福祉サービスにかかって発行されました都債は幾らなのか。さらにこれから後世にわたって福祉サービスを提供することができる行政財産が幾らあるのか。そのバランスを見て初めて行政サービスのコストと負担を見ることができますし、現世と後世の負担関係を見ることができるんです。
 したがいまして、私たちはそれなりに都税を負担して、それによって福祉サービスが提供されているという実感を持っています。しかし、現在提供されているサービスが現世の負担、すなわち租税や料金で賄われているのか都債で賄われているのか、現在の勘定会計ではわかりません。したがいまして、負担者にも政策判断に加わっていただくためには、コストの発生と負担、さらには現世と後世のバランス感覚を見る福祉政策についての施策バランスシートといったものが必要になってくると思います。「財政再建推進プラン」の補足説明におきましても、特定の政策施策、さらには事業、そういったものに限定しましたバランスシートの導入も提言されています。この点を、その必要性も含めて御検討いただければと思います。
 以上の点につきましては、土曜日の深夜になりますが、委員長宛てにファックスをお送りさせていただいておりますので、しばらくしましたら届くと思いますから、御検討いただきたいと思います。
○仲村委員長 ありがとうございました。廣田委員からは、委員長宛てに今の御発言の趣旨を整理して、文章化して提案をしていただいております。先ほど来の御発言と同じ扱いにさせていただきます。当然、分科会が設けられたときに検討課題の一つとして含ませていただくという扱いにさせていただきます。今の廣田委員の御発言に関連してのご意見等もおありかと思いますけれども、これは今後の検討課題の中でその場を設けることにしたいと思います。
 廣田委員の御発言、いい例ですけれども、既に文書でお出しいただいておりますが、きょう、全部何もかもというわけにいかないと思いますし、きょうの資料を後で皆さんごらんいただきまして、ぜひこういうことをつけ加えてほしいということでのご提案等もあろうかと思います。どうしてもという方は今伺いますが。
 それから、荻野局長、所用で退席されるそうですけれども、どうぞ。
○渡辺委員 先ほど商店街の活性化といいますか、商店街に出ていけるという、前に通産省の関連の審議会でこの部分は議論をした経験があるんですけれども、出ていきたいけれども、地域があまりにもバリアーが多過ぎるというようなことに一つ大きな課題があると思います。先ほどの「高齢者の生活像を考える懇談会報告書」の中に、やっと住環境の整備というところが出ておりましたけれども、住まいから地域へ出ていける住環境の整備ということが、非常に大切なポイントではないかというふうに思いますので、その辺を考慮に入れていただければと思います。
○仲村委員長 住環境の整備ですね。
○渡辺委員 住まいから地域へということです。住まいの中も含めて、福祉サービスを支援していくのは、住宅の整備にも相当かかわりがある。これは野村先生のご専門ですけれども。
○仲村委員長 お願いですが、先ほどの廣田委員と同じように、渡辺委員のお立場で今のご発言の趣旨を文章化していただきまして、御提出いただけませんでしょうか。
 きょう、何もかもというわけにいきません。全部尽くすわけにいきませんので、いろいろ関連しての御意見、御提案等がおありかと思いますが、文書で、ぎりぎり今月中、できるだけ早く事務局にお寄せいただけませんでしょうか。それを、今これから提案いたしますけれども、分科会を設けて、そこで十分な時間をとって検討していただく。その中に今いろいろ貴重な御発言をいただきましたものを柱として整理をして、そこで検討課題に織り込ませていただく。事務局であらかじめ準備されましたものは本当のたたき台であって、それらも組み立て、整理し直して、今いろいろ出されました御意見等を、大事な御意見が多いですから、できるだけ柱として立て直して分科会の検討課題にそれを織り込ませていただく。そういう扱いにさせていただきたいと思うんですが、よろしゅうございましょうか。
             〔「異議ありません」と呼ぶ者あり〕
○仲村委員長 では、そういうことで御承認いただきたいと思います。
 この審議会としては、先ほど荻野局長からも意見具申としてまとめてほしいというご注文がありましたので、こういう状況を踏まえて分科会を設けて、検討課題を整理して、意見をまとめる。
 やや漠としていますけれども、整理し直すという余地も残して、私の提案として、「東京都における新しい福祉のあり方」ということでタイトルを整理しておきまして、新しい福祉というのは何も今までのものを全部解体して別なものをつくるというのではなくて、今までのものを十分評価、検討、整理の上で、明らかに状況が変わってきている、こういう状況下でいろいろな提案が出てきている、それらを踏まえての東京都の状況にふさわしい新しい福祉を組み立てていくということで、課題が整理できるのではないかと思います。したがって、仮に「東京都における新しい福祉のあり方」というテーマで意見具申をまとめる作業を、分科会を設置して検討するという方向へもっていきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 では、そういうことで御承認いただきたいと思います。
 それで、先ほど申しましたとおり、皆様のきょうの追加の御意見、御提案等、あるいは既に御発言いただいた方も、文書の形でまとめてお出しいただければなお幸いです。記録は全部このままとられていますから、十分にそのまま活用させていただきますけれども、委員の皆様が直接筆をとって整理していただくと、なお文章としてはっきりいたしますので、あとで分科会で検討する場合にもそれだけ作業が効率的に進められることになろうかと思いますから、文書でご提案を整理していただくことも含めて、委員長から皆さんにお願い申し上げておきます。よろしくお願いいたします。
 次に、今後の審議の進め方に入りますが、本審議会におきましては、課題について従来から専門的、効率的に審議を進めるために、専門分科会を設けるということで審議を進めてきております。集中的に専門分科会で検討し、それを随時、全体委員会、いろいろな形で全体で協議をする。臨時委員の方が加わる部分もありますから、そういう方も加えての全体の検討の場も間を縫って持つようにして、基本的には専門分科会で中身を深めた検討をして、審議の結果をまとめていただくようにしていますので、今期も専門分科会をそういう方向で設けて進めることにするということでよろしいでしょうか。
○仲村委員長 よろしければ、分科会を設置して審議を進めるということにしたいと思います。従来からの方式が今回もとられることになりますが、事務的、手続的なことがありますので、分科会の設置ということについて事務局の方で考えがあったら、それを含めて説明していただけませんか。
○企画担当部長 分科会が設けられるということでございますので、構成になりますが、本委員の先生方から10数名程度お願いいたしまして、また、今お話のありました臨時委員も加えさせていただきまして、全体で20名程度でいかがかと考えております。先ほど規程の改正もございましたので、この専門分科会は公開ということになろうかと思いますので、そのようにさせていただきたいと思います。
 また、名称も設けないといけませんが、今、新しい福祉のあり方ということがありましたので、「新しい福祉のあり方検討分科会」という形で名称を持って発足させていただいたらいかがかと思っています。
○仲村委員長 私が先ほど提案させていただいたことを受けて、事務局で分科会の構成等について、従来方式、そして若干、例えば臨時委員を加えること、ないしは必要に応じて加えることができる枠を設定するというようなことも含めて20名ぐらいとすると。そして、先ほど私が仮のタイトルを申しましたが、それを受ける形で、「新しい福祉のあり方検討分科会」ということで、今、説明がありましたような分科会を設けるということです。この線でよろしいでしょうか。
             〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○仲村委員長 それでは、御異議がないようですので、今の事務局案どおりに決定させていただきます。
 分科会に所属する委員の方々は、社会福祉審議会令第2条第1項により、委員長の私が指名するということになっています。ただいま設置いたしました分科会につきまして、今お手元に配布しております専門分科会所属委員の案、何かすべてお膳立て、あらかじめ整えてしまっているようですけれども、大体こういう線で御承認いただけるものと予定して、案をつくっておりますので、専門分科会所属委員(案)のとおりに指名させていただきたいと思います。
 そこに空欄がありますけれども、区市町村福祉部長会からの推薦者、それから未定で2人の枠、これは先ほどいろいろな御提案をいただいておりますので、それらも含めて分科会としての検討事項を整理した上で、このことに関してはもう一人臨時に加わっていただいた方がいいというような部分が出てくるかもしれませんので、そういうときには、この部分を委員長指名で空白を埋めさせていただくことで、2名の枠を確保しておく。こういうことで分科会を設けることにしたいと思います。包括的にこういうことでよろしゅうございますか。
             〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○仲村委員長 ありがとうございました。
 それでは、一応きょうの手続的には、審議会として全体を総括してまとめるべきことは済みましたので、ここまでにさせていただきます。宿題をたくさん差し上げましたけれども、ぜひとも積極的に御参画いただくことをお願い申し上げて、きょうの予定をこれで終わることにいたしますが、今後のスケジュール等について……。
○曽根委員 スケジュールについて提案があります。私、今回初めて都議会の方で厚生委員会に所属し、かつ厚生委員長という責任ある任務を仰せつかった曽根でございます。先ほど、東京の「福祉施策の新たな展開」というご報告があったときに、仲村委員長から、これは大事なテーマなのでまとまって意見交換をする場をもちたいというお話があって大変うれしく思いました。早ければ今年の暮れの議会にもこれの具体化の条例案などが出て、間違いなく来年の予算には具体化されていくという、「危機」と「スピード」をキーワードにして今進んでいるものですから、都議会での審議も年内に始まるかと思いますので、できましたら、ここの審議会でも、施策の展開についての意見交換をぜひ早めにやっていただいて、私も大いに勉強させていただきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。
○仲村委員長 今のご発言の趣旨、大事なことだと思います。特に条例化の方向などを考えられるのですと、そっちはそっち、こっちはこっちというふうに進めるわけにいきませんので、方法等、事務局とも検討させていただきます。
 ほかにいかがでしょうか。
○村田委員 話を戻すようですが、私、とても文書で出している暇がありませんので、ちょっと意見を言わせていただきます。
 課題のところの具体策ではないので恐縮なんですが、東京都の新しい福祉のあり方を考えるということから、ぜひ考え方の基本として入れておいていただきたいことがありますので、それをお話ししたいと思うんです。
 とにかく、今のキーワードは「自立支援」ということがやたら出てきます。その人の自立を支援するんだと。特に障害者施策に関しては、障害者の自立生活への支援という、非常に大きな柱が東京都の「福祉施策の新たな展開」ではうたわれています。この自立の支援というのは一体何かという、自立支援のよって立つべき意味がどうもはっきりわからない、やたら書いてありますけれども。私、例えば障害者の自立生活への支援といったら、基本は、仕事を持つことと住まいを確保すること、これがまさに自立生活への支援策だと思うんですね。年金額を上げろだとかお手当を出せとか、そういうことではないと思っているんです。そうした施しの福祉からいかに抜け出て、その人が本当に自立して、自分の人生を自己決定できるか。その支援策をきっちり盛り込んでいくことが、特に21世紀、これからのまさに自立支援の姿だと思うんですが、残念ながら、住まいは書いてあるんですが、就業ということが書いてない。
 それが福祉かどうかという問題もあるかもしれませんけれども、このような経済の不況の中では、どうしても障害者の仕事が打ち切られるといういろいろな問題が出ている中で、基本的に自立して生活していくのは、やはりみずからの手で、その人の能力に応じて稼いでいくという生活を保障するということだと思うんです。特に関西などでは、障害を持った人たちを納税者にしようという運動も大きく出てきているわけですから、その人の能力に応じて、自分の手で稼いで、自立していく。その自立支援というのは何かということをきっちり踏まえて施策を行っていく。そういう観点をぜひ入れてほしいと思います。以上です。
○仲村委員長 御発言のポイントは非常にはっきりしていますから、それをそのまま整理させていただきます。ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、繰り返すようですけれども、まだ御発言を寄せていただく道を開いておきますので、ぜひ積極的にお寄せいただきまして、それらを整理して分科会でご検討いただく。その過程で今、曽根委員からお話がありましたように、議会の方でもいろいろ検討が進められるようですので、その動きも見定めながら、石原知事が打ち出しておられるスピードということも考えて取り上げなければならない課題も出てくるかと思います。それらも踏まえて、分科会と全体委員会との関係等も整理しながら進めるようにしたいと思います。
 それでは、今後のスケジュールについてということで、これは事務局から御説明いただきます。
○企画担当部長 お手元の方にあとからお配りさせていただきましたスケジュールにつきまして御説明申し上げます。ただ、事務局からこういうことを申し上げると大変恐縮なんですけれども、ただいま新たな展開につきまして、いろいろ御審議ということがありましたが、事務局といたしましては、私どもの方に今までこちらの審議会から施策についての新たな展開というんでしょうか、現行のままではダメで、変えていかなければいけませんという、いろいろなご提言をいただいております。そうした御提言をいただいている中で、私どもの方として具体的な施策という形で新たな展開をつくっていこうと考えておりまして、むしろ全体の中で、今回御審議いただく、今後の新しい福祉のあり方ということは、さらに先を見ていただいた形でのご審議がよろしいかと思います。私どもとしまして、そんな思いを持っているということですけれども、今後のスケジュールということで考えているところを御説明させていただきます。
 大体ごらんいただければおわかりかとは思うんですが、今後、おおむね月に1回程度、専門分科会、あるいは企画の起草委員会等を含めまして、進めさせていただきたいと思っております。途中で幾つか、12年度、13年度というふうに書いてございますが、真ん中辺で、意見具申の骨子についてのところで、拡大の分科会、これは本審議会の委員の方々と専門分科会の委員、臨時の委員も含めましての拡大の分科会を開催するということで考えてございます。そういったことで、途中で意見の具申について御審議いただく。さらにまた、起草委員会、あるいは専門分科会の開催をしていただいて最終的に詰めていく。そして、最後に審議会に諮る前に、拡大の専門分科会を開催させていただきまして、御審議いただいたらどうかと考えてございます。
 雑ぱくですけれども、スケジュール的にはこのように考えております。
○仲村委員長 いかがでしょうか。これは修正を要するところも出てくるかもしれませんが、一応こういう予定で、今からかちっと組み立てるわけにもいかないようにも思いますので、大枠のところはこういうことで進めるということでよろしゅうございますか。
           〔「結構です」と呼ぶ者あり〕
○仲村委員長 では、そういうことでよろしくお願いいたします。
 それから、私、ちょっと落としましたか、民生委員審査分科会の所属委員の方の案もお手元にあるかと思いますが、これは委員長指名ということですから、指名させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 以上できょう予定しましたことは全部済んだことになります。きょうは当初の予定はたしか11時半までになっておりましたけれども、たくさんの貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。分科会の方に当面バトンタッチして進めていただくようにいたします。よろしくお願いいたします。
 分科会の委員長等は互選となっておりますので、分科会で選んでいただくことにいたします。
 どうも長時間ありがとうございました。

              (午前11時51分閉会)