平成12年5月10日
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東京都社会福祉審議会・第3回新しい福祉のあり方検討分科会の審議結果
1 開催日時
委員
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高橋 紘士
今井 通子 内野 京子 大橋 謙策 大道 久 小高 百合子 豊田 榮子 新村 保子 野村 歡 渡辺 光子 小林 良二 杉野 翔子 鈴木 俊夫 新美 まり 増田 昭治 |
立教大学教授
東京女子医科大学非常勤講師・登山家 品川区立荏原特別養護老人ホーム施設長 日本社会事業大学教授 日本大学教授 主婦(公募委員) 主婦(公募委員) 住友生命総合研究所主席研究員 日本大学教授 東京商工会議所婦人会常任理事 東京都立大学教授 弁護士(すてっぷ法律専門相談員) 日野市福祉保健部長 品川区高齢者部長 奥多摩町健康福祉課長 |
第2回 新しい福祉のあり方検討分科会
議 事 録
平成12年5月10日
東 京 都
(午前10時5分開会)
○永田計画調整課長
それでは、事務局のほうから何点か続けて説明をさせていただきたいと思います。
まず、今、分科会長からお話がございましたように、資料3をごらんいただきたいと思います。資料3は福祉改革の今後予想される流れにつきまして、概略でございますけれども、ざっと今後数年のスパンでの流れを示してございます。
まず左端でございますけれども、左端の点線で囲いました部分は、大きなイベントといいましょうか、年ごとに少し東京都のイベントなども入れまして、平成1999年12月の福祉改革ビジョンの策定といったところから、2010年ぐらいまでを目標としてございます。
次の縦書きになりますけれども、その今後の福祉改革の流れといったものを、少し大括りをいたしまして、4つに分類をしてございます。事前準備でありますとか、福祉改革準備期、福祉改革実施期、大改革期というように4つにおおむねこの間を分類してございます。
次に福祉改革ビジョンというのがございますけれども、福祉改革ビジョンは、平成11年の12月に策定をされたものでございますけれども、これが平成12年度を初年度といたしまして、おおむね5年程度の期間という形になってございます。
次に左側の実線で囲まれた部分が2つございますけれども、左側のほうは、どちらかというと介護保険を中心にイベントを整理をしてございます。こちらにございますとおり、平成12年4月の◎で囲ってございますけれども、介護保険法施行といったようなのが大きなイベントになろうかというふうに思います。この下に国の包括事業でございますとか、この4月からやはり実施されました成年後見制度でございますとか、あるいは国のゴールドプラン21の策定とか、そういったようなイベントがございます。
そして、2005年になりますけれども、介護保険制度の見直しが予定されております。ちょうど5年後になろうかというふうに思います。この時点では、障害者等との統合も検討がされるのではなかろうかというふうに考えてございます。
右側のほうでございますけれども、右側のほうはこれ以外の部分を少し整理をしてございます。地域福祉権利擁護事業でございますとか、これは昨年10月から既に先行的に実施をされているものでございます。社会福祉事業法が今、国会で改正の審議をされておりますけれども、この社会福祉事業法も、今度は名称も新しく社会福祉法というふうに変わっていく予定になっております。これも後ほど説明させていただきたいと思いますが、そして、この社会福祉事業法関連法案の中で、障害者の施策につきましても、平成15年度から措置から契約へという制度の変更が予定をされております。
この間、新たな福祉施策の構築に向けてさまざまな取り組みをしていく必要があろうかと思います。この2つにまたがって、星印で破線の部分がございますけれども、例えば利用者の選択に対するサービスでありますとか、利用者の選択を保障する制度でありますとか、サービスの質・量の拡大ですね。それから情報提供、そして、先ほども議論になっておりますサービス評価、成年後見制度と地域福祉権利擁護事業をつなぐような権利擁護の仕組み、そして、多様なサービス供給主体の参入促進、今後は今までの行政、あるいは社会福祉法人主体のサービス提供ではなくて、個々の企業あるいはNPO、そういったような産業主体が促進されていくんではなかろうかというように考えられます。
また、そうしたさまざまなサービス利用者のニーズにどういうふうにサービスをコーディネートしていくのか、そういう調整の課題、こういったような仕組みづくりを今後早急につくり上げていく必要があるのではないかと考えてございます。
そして、このペーパーの最後のほうになっておりますけれども、太線で区切ってございます。今回の社会保障制度構造改革の区切りということで、大体2005年のラインあたりに大改革期のあたりに、医療保険の改正につきましては、平成14年度を目途に施行という方向ですすんでおりましたけれども、今国会におきましては断念ということで先送りになってございます。
そしてまた、けさの新聞などでご存じの方もいらっしゃるかと思いますけれども、年金法の改正が国会で通りましたという厚生省の広告も今日新聞に載っていたところでございます。そうした年金の改正・施行、今後また引き続き医療保険の改正もあろうかと思います。
そして、この社会福祉事業法でございますけれども、社会福祉法というふうに名称を変えまして、2010年には一応今のところ社会福祉法ももう一度見直すというようなことが予定をされているようでございます。
続きまして資料4でございます。社会福祉事業法等一部改正法案要綱の概要につきましてご説明させていただきます。
この社会福祉事業法等の一部改正法案につきましては、前回の分科会におきましてもご説明をさせていただきましたので、かいつまんで流れとポイントというんでしょうか、先ほど、分科会長からのお話にもありましたように、制度が措置制度から契約制度に変わっていくといったようなところにポイントを置きまして説明をさせていただきたいというふうに思います。
今回の法律改正法案は一応8本からなってございます。ここに掲げてございますように、社会福祉事業法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、児童福祉法、社会福祉施設職員等退職手当共済法、民生委員法、生活保護法、公益質屋法でございます。
今回の法改正の主なポイントは、何と申しましても社会福祉の制度の仕組みを変えていく、いわゆる措置から契約という流れに変えていくということでございます。
以下権利擁護などの事業がございます。4ページの6で施行期日という記載がございます。この法律は平成12年4月1日から施行というふうに書いてございますけれども、現在審議中でございますので、法案成立後、即公布施行というふうな形になろうかと思います。
ただし、身体障害者生活訓練等事業など、次のページの別紙1に新たに追加される社会福祉事業が9事業ございますけれども、この9事業と助産施設、あるいは母子生活支援施設の入所方式の見直しについては、平成13年4月1日から施行されるということになってございます。
また、地域福祉計画や措置から支援費支給方式への変更、及び知的障害者福祉等に関する事務の市町村への委譲に関する記載については、平成15年4月からそれぞれ施行されるということで、3段階に分けて施行がされていく予定になってございます。
それでは、次の別紙2をごらんいただきたいと思います。別紙2は、措置制度への転換、これは概念図でございますけれども、今後ご審議をいただくに当たりまして、この措置から契約といったような概念というんでしょうか。この辺のところをもう一度きちんと整理していく必要があるということで、分科会長からもご指示がございまして、ご説明をさせていただきます。上段のほうに現行の措置制度というものが記載されてございます。
ご存じのとおり、措置制度につきましては、行政処分というような形でなされるものでございまして、対象者から措置権者であります都道府県、もしくは市に対しまして相談なりが行われるということで、それに対して措置権者が必要と認めれば、措置という形で対象者に通知をするということになります。どこどこの施設に入りなさいとか、あるいはどういうサービスを受けなさいというような指示が措置ということになろうかというふうに思います。
措置を決定されますと、措置権者は、3にございますように、受託事業者、この場合は行政がみずから行う場合もありますけれども、多くの場合は社会福祉法人ということになろうかと思いますが、社会福祉法人等に対しまして、措置の委託を行います。
社会福祉法人等受託事業者は措置の受託をいたします。そうしますと、5にございますように、措置権者から受託事業者に対して措置の委託費が支払われます。これに基づきまして、その受託事業者はサービスの提供を対象者に行う。措置権者は対象者から費用負担をしていただくということで、費用徴収を行う。これが現行の措置制度でございます。
これがいわゆる契約と言われている支援費支給方式というふうになりますけれども、典型的に変わっていると思われるところをごらんいただきたいと思います。今回の社会福祉事業法等の改正で、今までの支援を要する者というような言い方から、利用しようとする者という、いわゆる利用者という概念がここで新しく法に位置づけられているということかと思いますが、この利用者というのが非常に新しい概念かというふうに思います。
まず、サービスを必要とする利用者は、サービスの利用申し込みを指定事業者、これはサービスの提供をする受託事業者、区市町村、民間事業者なども含まれますけれども、東京都あるいは区市町村が指定をしたサービスを提供する事業者ということになります。それを指定事業者と申しますが、そのサービス指定事業者にサービスの利用の申し込みを行います。その場合には、どういうサービスを受けるか、あるいはどういう事業者に提供を受けるかといったところが選択が可能になるということでございます。
この指定事業者にサービス利用の申し込みをいたしまして、利用者は支給の申請をいたします。従前の措置費にかわるものを支給してくださいという支援の申請でございます。
この支援費支給申請に基づきまして、市町村等が支援費の支給を決定いたしまして、利用者に通知をいたします。この支給決定を受けまして、利用者と指定事業者と間で、こういうサービスをどの程度幾らで提供されるのかということで契約を締結いたします。その契約に基づいて、指定事業者はサービスを利用者に提供いたします。この際、利用者のほうは自己負担分というんでしょうか、大体介護保険ですとサービスの1割になりますけれども、自己負担分の支払いを指定事業者に行います。
指定事業者は、残りの部分につきまして、市町村に対して請求を行う。おそらく市町村から利用者に支給費が支給されて、自己負担分と合わせて指定事業者に支払うというのが本来の筋なんでしょうけれども、今回の改正では、その残りの部分は市町村が従前の措置費と同様に指定事業者に支払うということで、支援費の代理受領というような形で指定事業者に支払われるというような形になります。これが一般的な措置から契約への大まかな変更点でございます。
次に別紙3のほうでございますけれども、既に保育所方式というものが施行されておりますけれども、保育所方式というのは、今までの措置制度とどこが違うといいますと、まず用語が違うのが1つ目につくかというふうに思いますけれども、基本的な違いは、相談といったところが利用の申し込みという形で、施設選択ができて利用の申し込みができるというところでございます。
残りの仕組みにつきましては、基本的には措置と変わっておりませんけれども、いわゆる保育所方式という利用料支援方式という形をとっております。これはおそらく保育所、特に児童福祉関係、母子福祉関係の厚生省の中での取り組みの違いというんでしょうか、そういったものがこういう形で反映されているんではなかろうかというふうに思います。
保育所方式と支援支給方式という2つの方式にかわっていくんだということをご理解いただければと思います。
続きまして資料5になりますけれども、新しい福祉のあり方検討分科会の検討課題についてで(案)でございます。これは平成11年11月24日の第1回分科会、12年2月1日の第2回の分科会でいろいろ今期の検討テーマについてご議論いただいたところでございますけれども、そのご議論いただいた内容をまとめるということで、この4月11日にワーキンググループを開催させていただきました。このワーキンググループの中で、いろいろ今までの議論を整理させていただきましたので、それに基づきましてご報告をさせていただきたいというふうに思います。
まず、資料5−1のテーマでございますけれども、「新たな福祉サービスの利用支援のあり方について」ということではどうかと考えてございます。これは先ほどの今後の福祉改革の流れの中でもご説明をいたしましたように、措置から契約へという流れの中で、サービスの利用する方々が選択でき、かつ質も量も十分なサービスが受けられるのかということが非常に大きなポイントになってまいります。
このテーマを選んだ趣旨でございますけれども、介護保険制度の施行により、福祉サービスの提供の仕方、あるいは利用の仕組みが大きく変わってまいりました。今後、ほかの分野でも、例えば障害、子どもの分野でも民間などの多様なサービス提供事業者の参入が本格化をして契約による市場からのサービスの利用が中心になるのではなかろうかということも予想されます。
また、大都市東京におきましては、世界に例を見ない早さで少子・高齢化が進んでおります。それに伴いまして、家族形態や住居形態が多様化している。あるいはサービスの利用者の意識、こういったものが非常に大きく変化をしてきております。そのため、福祉のニーズも複雑化、多様化をしてきております。
また、東京では他県などに比べますと、市場そのものの規模が非常に大きくなってございます。こうしたために、多くの事業者の参入が見込まれるところではございますけれども、また、そのサービスの量が多いということとニーズとの間にミスマッチなども発生してくるんではなかろうか。また、そういった意味で、ニーズとサービスのミスマッチの調整や、サービスの質の確保などが大きな課題になってまいります。
したがいまして、このような変化に的確に対応できるサービス利用支援のための仕組みの構築が、今一番求められており、今後東京都が果たすべき大きな役割ではなかろうかというふうに考えられます。
この分科会においては、利用支援のあり方について総合的な検討を行いまして、21世紀を見据えた東京の福祉の基盤を築く上で、都の取り組みに反映をさせていただきたいということでございます。
2ページをお開きいただきたいというふうに思います。主な論点ということになりますけれども、この1番目は今申し上げたようなことがここに書かれております。2点目の利用支援のあり方ということでございますけれども、先ほどちょっといろいろなお話をさせていただきましたように、東京都の大都市という特殊状況というんでしょうか。そういったものを踏まえたサービス利用支援の仕組みのあり方、それから、そうした枠組みの中での都の役割についての検討を行うということです。
3番目には、基盤の整備ということで、利用支援の仕組みを担う人材、これも先ほど来ちょっと議論がございますように、そうしたサービスをコーディネートしたり、あるいは利用の支援を行っていく人たち、そういった人材をどうやって育てていくのかといったようなことが課題に上げられるかというふうに思います。
次の横のペーパーをごらんいただきたいというふうに思うのでございますけれども、サービス利用支援に関する主な論点をちょっと図式をしてございます。ここにございますように、この真ん中に利用者、事業者を置きまして、その周辺に区市町村でありますとか、あるいは保険者、関係業界でありますとか、そういったサービスの提供主体が書かれてございます。この利用者を中心にいたしまして、事業者との間で私的契約という形で契約が結ばれて、サービスの給付が行われるということになるわけでございますので、そこには情報の非対称性というんでしょうか。事業者が持っている情報に比べますと、利用者が持つ情報というのは非常に少なくなってしまうんではなかろうか。
それから、契約をめぐるトラブルというのが予想されるんではなかろうか。そしてサービスの質ですね。利用者のほうではこういうことを期待したのに、実際にはそこまでのサービスに至らなかったというような問題、そういったサービスの質のトラブルといったようなものも予想されるということでございます。
こういった私的契約をめぐる事業者と利用者との間での調整を要するようなものと、関係をスムーズに保っていくという意味では、利用者に対する利用支援の体制というものの検討を進めていく必要があるんではなかろうかということでございます。
利用者の左側にサービスの情報の提供以下、太線の外側にまたさらに破線で囲ってございますけれども、このサービスの情報の提供でありますとか、利用の支援、あるいは相談の受け付けでありますとか、サービスの調整、サービスを利用した上での苦情への対応、そして、サービスの質の確保といったような面からのサービス評価、こういったようなものが今回の論点になってくるんではなかろうかと考えてございます。
その下にリバースモーゲージがございますけれども、これはまた別の課題として考えていく必要があろうかと思います。そして、また右側のほうには事業者の育成等、こういった課題も残ってくるかと思います。これはまた別途議論が必要かと思います。
その下に必要とする人材ということで、それぞれのところにまた破線でくくってございますけれども、こうしたサービスの利用支援を行っていくための人材、それから事業者をやはり、より質のよいサービスを提供していけるような事業者を育成していく、提供していく主体そのものを育成していくということで、そこに必要とされる人材、こういったものが本分科会において議論をしていく課題ではなかろうか、論点ではなかろうかという形で整理をしてございます。
そして、この人材の点でございますけれども、先ほどもちょっとお話に出ましたように、現在、福祉局の中におきましては、次のページにございますように、東京都福祉人材計画を策定しようということで、今検討を進めているところでございます。
人材計画につきましては、平成3年11月に人材計画を策定したわけでございますけれども、その後10年近くを経過しておりまして、今回の非常に大きな福祉の改革の流れの中で、早急にこの福祉人材について取りまとめる必要があるということで、福祉人材計画検討委員会を設置いたしました。高橋分科会長にも座長をお務めいただいておりますけれども、平成13年度から平成22年度までの10年間を計画期間としまして、人材計画を策定していこうということでございます。
計画の内容につきましては、そこの計画概要の上段にございますように、1) で需要・供給分析に基づいて、福祉人材の量の将来予測を行い、量の確保策を提示するということと、2)
で求められる福祉人材の質を明らかにし、質についての確保策を提示するという計画の内容になってございます。
検討のスケジュールでございますけれども、平成12年6月ごろ中間報告をいたしまして、12年12月には最終報告、そして計画を策定するという予定になってございます。この分科会といたしましては、この福祉人材計画検討委員会の検討に合わせまして、できればここで必要とする人材の部分をできるだけ早急に取りまとめていただきまして、この福祉人材計画検討委員会のほうに意見というような形で、どちらかといいますと理念部分になろうかというふうに思いますけれども、今後こういう方向で人材を養成していく必要があるんではないだろうかといったような観点での意見を人材計画の中に反映させていけるような審議をお願いできればというふうに考えてございます。
次に資料5−2でございます。資料5−2は、もう既に今年の4月から実施されております介護保険制度の中における利用者支援の仕組みについて、一覧表で示してございます。これは介護保険のほうではどうなっているのか、今後の分科会で審議をしていく上で参考になる内容ではなかろうかというふうに考えてございます。
説明が長くなりましたけれども、事務局のほうからは以上でございます。
ありがとうございました。いろいろな資料等を含めましてご説明をいただきました。
若干私から補足をさせていただきますと、契約制度という言い方と、最近厚生省は利用制度という言い方をし始めていて、市場的な私的契約と措置の間の表現で揺れているみたいなところがあって、揺れているのにはいろいろな事情があるし、それはそういうことなんですが、そこら辺でなかなかおもしろいというか、そこら辺をどういうふうに我々が整理をしていくかという、その議論が非常に重要なのかなというふうに思っております。
それから、言うまでもなく、いろいろなもので利用契約に移行する部分と、実は移行しない部分があるわけですね。これは高齢者でもそうですし、もちろん知的障害のところはそうですし、あるいは最近児童のほうでもいろいろな議論、児童虐待防止法ができる等々のことを考えますと、実は利用契約と措置というものとの整理、これはむしろ市区町村の福祉事務所をどうするかという議論と深くかかわりますけれども、そこら辺の議論はかなり重要な問題として残るだろうというふうに思っております。残るというよりは、そこをどういうふうに新しく組み立て直すかという、そういう問題かというふうに思いますが。
もう一つは、社会福祉事業法の法案のほうをちょっとご注目、縦長のものをご用意いただきましたけれども、幾つか大事な論点が、前の法律では基本理念が3条として、地域への配慮という項目で書かれておりましたものが、今回は幾つかに分解をいたしました。
私、若干注目をしておりますのは、例えば福祉サービスの基本理念で個人の尊厳という条項が入ってきたということ、この縦長の資料がございますでしょうか。社会福祉事業法の、いろいろ資料がたくさんございますが、この資料です。改正案と現行の対照表でございますが、個人の尊厳という表現が入ってきましたね。それから、全体を福祉サービスの利用者という概念で全部整理してまとめておりますね。
これは1条のほうでも、利用者の利益の保護という概念、それから、地域における社会福祉の推進という概念で、これは今までは地域福祉ということが、前のあれですと、地域等への配慮等への中で、あるいは間接的に書かれたものを、地域における社会福祉という言い方で目的の1条の条項で明示的に書かれるようになってまいりました。
それからもう一つは、自立した日常生活という概念が入ってきて、これは先ほどの障害者の議論で言えば、生活モデルというふうに入れていたものを、福祉サービスの基本理念の中に日常生活という概念で繰り返し述べるようになってきております。
地域福祉の推進の第4条の条項で、これは実は非常に読みづらいんですが、地域住民と社会福祉を目的とする事業を経営する者と、社会福祉に関する活動を行う者という概念で、これはいわゆる社会福祉の主体規定を、今までは社会福祉事業を経営する者、国、地方公共団体が社会福祉事業を経営する者という考え方でしたが、これに地域住民と社会福祉に関する活動を行う者という、これを明文規定で社会福祉の主体概念として整理したということ。
それから、福祉サービスを必要とする地域住民という、これは援護・育成、更生の措置を要する者という昭和26年の規定から完全に決別した表現になっておりますが、そういう表現で、しかも地域福祉の推進というのが改めて言われていること。
提供原則で言いますと、利用者の意向の十分な尊重、相互的提供、保健医療サービスその他の関連サービスとの有機的な連携、これは前の平成2年法を引き継ぎつつ、もう少し拡大をしております。
国及び地方公共団体の責務、これが第6条に書かれておりますが、これが社会福祉を目的とする事業の広範かつ計画的な実施、これはサービス整備、基盤整備ということに対応するんですが、もう一つ、それと同時に、これは提供体制の確保ですが、福祉サービスの適切な利用の推進に関する施策という、これを明文的に規定して地方公共団体の責務というふうにしておりますので、これに関する対応の各般の措置を講じなければならないという義務規定になっておりますから、おそらくここら辺のことが新しい福祉のあり方でかなり重要、この理念というのは大体神棚に乗っけられるんですけれども、実は神棚に乗っけないけれども、いつもほこりをはたいて新しくしておいたほうがいいという、そういう性質のものかと思いますが、こういうものを受けながら今回の検討課題の課題設定をしたらどうだろうか。
新しい福祉のあり方ということ、これは膨大な領域でございまして、これはそれぞれのお立場でのそれぞれの議論ということでございますが、その中で差し当たり利用支援ということに絞り込んで新しい福祉のあり方を考え直してみたらどうだろうかということで、ワーキンググループのほうで事務局とご相談をさせていただいて、まだあらあらの案にすぎませんけれども、これを少しテーマを深めて具体的な今回の分科会のご報告にしていくというようなことでどうだろうかということを考えさせていただいたわけでございます。
ちょっと時間が長くなりましたが、ワーキンググループのほうにご参加いただいた、例えば小林委員のほうから何か補足的なご発言は。
(午後12時07分閉会)