こころの健康だより No.145 2026年2月発行 特 集 「いままでとこれから」 ●「 こころの健康だより」の今昔とこれから ……………………………… 2 ● 災害時こころのケア活動の変遷と現在地 ……………………………… 4 ●「 こころの健康だより」の新しいスタートに向けて …………………… 7 ● いままでに発行した主なこころの健康だより ………………………… 8 「こころの健康だより」の今昔とこれから 東京都立多摩総合精神保健福祉センター 所長 井上 悟 〇はじめに 『こころの健康だより』の創刊から、気がつけば40年ほどの歳月が経ちました。このたび編集担当者から「今後の展望を考えるにあたり、これまでの歩みを振り返ってほしい」との依頼を受け、本稿をしたためています。小誌は、都民の皆さまに精神保健福祉の向上に関する情報や精神科医療・社会復帰活動の最前線をお伝えする広報媒体として発行を重ねてきました。かつては年4回の発行でしたが、現在は年3回・毎回1万1千部を印刷し、公的機関・医療機関・関係団体・就労支援機関、都内主要駅等に配布・設置しています。また、少し意外なところでは、精神保健や医療の現場で働く方々が、最新のトピックスを知る情報源とて、あるいは講演会や研修の企画、講師選定の参考資料として本誌を活用してくださることもある、とうかがっています。こうした読者の広がりに支えられながら、小誌も少しずつ「こころの健康」をともに考え、支え合う輪を広げてこられたのだと思います。 〇年代による記事の変遷 社会の変化がかつてない速さで進むなかで、「こころの健康だより」もまた、その時代の課題や空気を映し出しながら歩んできました。ここでは、小誌のテーマや記事が、社会の動きとどのように呼応してきたのかを、時代ごとに少し振り返ってみたいと思います。 ⑴ 2000年代(2000 ~ 2009年度) 精神保健・医療・福祉に係る制度的枠組みの見直しや新設に関すること、社会復帰施設の取組みの紹介等が紙面でたびたび言及されています。またこの時期の出来事として、三宅島の噴火等に関連した災害支援の記事が目につきました。精神障害者の就労支援 自殺予防対策、退院促進の取組み等、施策の動向に係る関連記事も一定程度、取り上げられておりました。疾病としては、うつ病、統合失調症、発達障害、認知症、アルコール依存症等の特集記事等が散見されます。総じて、一つのテーマに焦点を当て、その背景や取組み等を解説するといった構成の記事が多い傾向にありました。 ⑵ 2010年代(2010 ~ 2019年度) 精神保健・医療・福祉に係る制度的枠組みの見直しや新設に関すること、社会復帰施設の取組みの紹介等が紙面に占める割合は少なくなります。この年代では東日本大震災がありましたから、災害時のこころのケア関連の記事がやはり多くなりました。疾病としては、ギャンブル・インターネットや薬物等、様々なタイプの依存症・高次脳機能障害等これまでにないテーマも取り上げられています。またライフサイクルからみた心理的な課題をテーマとする通年の連載が目新しく、ほかにも「『働きたい』を支える」、「こころが折れそうなとき」等といったキャッチィで包括的なテーマが採用されるようになっております。総じて、2000年代が個々のテーマを掘り下げて紹介する構成だったのに対し、2010年代は社会的文脈のなかにテーマを探り、背景にあるメンタルヘルスに関係した課題や時代の空気をすくい取ろうとする姿勢がみられるようになっています。一方で新たに注目を集めつつある診断名について解説する記事もこの時期、わりと多くみられました。 ⑶ 2020年代(2020 ~ 2025年度) 2020年代は、新型コロナウイルスの流行とそれによる社会の変動が今なお、人々に影響を与え続けている現実を抜きに語ることはできません。特集でも、新型コロナ感染症と直接関連したテーマが連続しています。間接的に関連する記事では、「多様な働き方とメンタルヘルス」、「アルコールとのつきあい方をみなおす」、「自らを傷つける人たち」、「ギャンブル等依存症からの回復」等が挙げられます。一方、「孤独・孤立とメンタルヘルス」の特集では血縁・地縁や職縁等がさらに弱まった近未来における公的支援のあり方等が問い直されています。総じて、コロナ禍が招いた社会変動に関連したメンタルヘルス上の諸課題をテーマとして多く採用しながら、日本の近未来に予測される避けがたい社会構造の変化に触れる等、メンタルヘルスの辺縁に新たなテーマを模索した跡もうかがわれました。 〇情報提供ツールとして小誌のあり方を考える 1998年以降しばらくの間、日本では年間の自殺者数が3万人を超える状況が続きました。こうした深刻な現実を受けて、自殺の予防に向けた取り組みが社会の重要な課題として注目されるようになりました。2006年には「自殺対策基本法」が施行され、自殺を個人の問題としてだけでなく、社会全体で取り組むべき課題として位置づけました。これと軌を一にして、精神保健福祉施策の方向性も、疾病の治療を中心とする姿勢から、障害者の地域生活を支援する体制作りヘと移り変わり、メンタルヘルスを社会的文脈の中で捉え直す考え方が浸透してまいりました。情報環境の変化を振り返ると、2000年代はインターネット検索を中心とした「能動的な情報収集」の時代にあたります。当時の小誌も、各種制度の紹介や疾病の理解等、特定のテーマを検索キーワードのように掘り下げて解説することを通 じ、メンタルヘルスの啓発を図る内容が主流でした。やがてインターネット検索やSNSが普及するにつれ、個々の疑問や関心事についてまとまった情報を得ることが容易になった反面、情報が断片化し、社会的な背景やつながりが見えにくくなる傾向も生まれました。2010年代の小誌が社会的文脈の中にテーマを探り始めたのは、こうした変化を意識し、「背景やつながり」を補おうとする試みでもあったといえるでしょう。そして2020年代。新型コロナウイルス感染症の拡大は、社会全体に大きな不安と変動をもたらしました。加えて、超少子高齢化等による孤独・孤立の問題、雇用不安や将来展望の不透明さ等、社会構造の歪みが個人の閉塞感や生きづらさと深く結びつき、メンタルヘルスに長期的な影響を及ぼしています。一方、情報環境では生成AIが登場し、知識や情報を瞬時に再編成して提供できるようになりました。今後、情報収集や業務の効率化において、AIの活用はますます進むと考えられます。では、こうした時代にあって小誌はどのような方向を目指すべきなのでしょうか。一つの考え方として、AIが扱う「一般化された知識」では捉えきれない領域、すなわち、地域や現場に根ざした体験や暮らしの声等、個別の物語にもう一度光を当てることが挙げられます。それは、2000年代に取り上げてきたようなテーマを、社会的な背景等を含めながら再構成していく営みともいえるでしょう。情報の背後にある人の思いやつながりをすくい取り、丁寧に伝えていくこと。その積み重ねのなかに、AI時代における「こころの健康だより」のまた新たな意味が見いだされていくのではないか。そんなことを今回、これまでのバックナンバーを読み返しながら感じた次第です。 ※参考文献 ・こころの健康だより、No62(2000年)~No143(2025年) ・厚生労働省『自殺対策白書2023』 ・総務省『情報通信白書2023』 ・内閣府 孤独・孤立対策担当室『孤独・孤立対策白書(初版)』(2023年) 災害時こころのケア活動の変遷と現在地 東京都立中部総合精神保健福祉センター 副所長 国立大学法人高知大学客員教授・DPAT事務局 DPATインストラクター 菅原 誠 1. はじめに 我が国は地震、台風、豪雨、噴火など多くの自然災害が発生する「災害列島」です。加えて、テロや大規模な事故による災害もありました。1995年の阪神・淡路大震災を契機に「こころのケア」という概念が社会的に注目され、以後体制整備が進められてきました。筆者自身、阪神・淡路大震災、新潟中越地震、岩手・宮城内陸地震、東日本大震災、熊本地震、能登地震で「こころのケアチーム」あるいは「DPAT」(Disaster Psychiatric Assistance Team:災害派遣精神医療チーム) の一員として活動してきました。本稿では、災害時のこころのケアの歴史的展開をたどり、DPATの設立から現在に至る流れ、そして課題を自らの経験を基に整理したいと思います。 2. 災害時こころのケア活動のはじまり ( 1995年~2000年代前半) 阪神・淡路大震災(1995年)は、日本における災害精神保健の出発点でした。この災害では6,400名を超える犠牲者が生じ、避難所生活の長期化、生活再建の困難、PTSDやうつ状態などの精神的影響が顕在化しました。当時、被災地には全国から精神科医、保健師、臨床心理士らが自発的に集まり活動しました。筆者自身も参加しましたが、設置された広域避難所のテントで他科の医師と一緒に診療活動をする、保健所の依頼で避難所等に往診を行うといった点を中心とした活動が主体で、面をカバーするような体系的な指揮命令系統や標準化された活動指針はなく、活動の重複や支援の地域不均衡が問題となりました。この経験から、厚生省(当時)は1995年に「被災者の心の健康対策検討会」を設置し、災害時における精神保健支援の枠組みを検討しました。この結果を受け、国や自治体は平時からの精神保健体制整備、保健所や精神保健福祉センターの強化、災害時マニュアル作成などを進めました。さらに、兵庫県に「こころのケアセンター」が設立され、長期間にわたり被災者支援業務や地域の精神保健福祉体制を支える役割を担いました。「こころのケアセンター」は、その後の新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震、能登地震でも被災県に設置され、災害後の地域のこころのケア活動の中核としての役割を担いました。2004年の新潟県中越地震では、自治体と地域 の精神科医療機関や精神保健福祉関連団体、全国から参集した様々なメンタルケアチームが連携した精神保健福祉活動が展開され、支援ネットワー クの形成やボランティアとの協働の重要性が再認識されました。筆者自身も「東京都こころのケアチーム」として震度7を記録した堀之内町(現魚沼市)や川口町(現長岡市)で災害後初期から活動しました。筆者は偵察隊に続く東京都第1隊として参加しました。当初保健所、日赤、自衛隊、地域の福祉施設等の各種支援チームがバラバラで活動に入っていたため、筆者達が中心となって支援ネットワークを構築し、様々な支援チームと共働して面としての活動を展開しました。実際の活動としては、保健師や日赤と連携した避難所や個人宅での診察やメンタルヘルスケア活動、倒壊した精神科病院への転院支援、学校や教育委員会への支援、記録様式の統一および支援データベースの構築などを行いました。今から思えばこの時の活動がその後のDPATでの活動の基礎になっていったと思います。 3. 東日本大震災とDPAT 設立 ( 2011年~2013年) 2011年の東日本大震災では、死者・行方不明者が二万人を超えるという、日本における最大級の地震及び津波による自然災害が発生しました。それに福島第一原子力発電所での爆発事故に伴う放射能の拡散という災害が加わりました。阪神・淡路大震災や新潟地震での教訓を踏まえ、厚生労働省、大学、病院、医師会などが編成した支援チームが、より組織的に、現地の保健医療機関と連携して支援を行いました。東京都の「こころのケアチーム」も発災12日目となる2011年3月23日から岩手県陸前高田市にて活動を開始しました。筆者も東京都第1隊として参加しました。当時陸前高田市には70もの避難所があり、約1万人の避難者がいました。当初、携帯電話は一部の避難所でしか使用が不能で、衛星電話に頼らなければなりませんでした。水道は全域で給水車対応、避難所によっては電源も灯油もなく、雪が降り続き寒い中、薪ストーブとランプで生活していました。市職員の三分の一が行方不明で、保健師も例外ではなく、保健所機能も事実上喪失していたため、外部支援チームを中心に精神保健福祉活動を行わなければなりませんでした。新潟中越地震での経験を活かして、各支援チームが有機的に活動するためのミーティング、情報共有を行い、指揮命令系統の確立及び支援データベースの構築を急ぎました。発災後2週間が経過し、多くの避難所で急性ストレス反応やせん妄を呈する被災者が増えているタイミングであったため、早朝から夜間まで避難所を中心に多くの相談・診療を行いました。支援者支援や児童、学校に対する支援のニーズもありました。東京都はその後岩手県の要請により1年間、陸前高田市での精神科医療継続支援を行いました。筆者は東京都活動最終隊としても参加し、1年前に自分で借りたレンタカーを奇しくも自ら再び返しに行ったことが今でも思い出されます。一方で、この震災では、発災直後から、阪神・淡路大震災を契機に発足した主に急性期の救急・身体医療を提供する「DMAT」(災害派遣医療チーム)が活動しましたが、精神科病院への安否確認や支援の遅れから、福島県内の精神科病院が孤立し、多数の死者が発生しました。さらに、避難所や仮設住宅ではアルコール依存や自殺念慮を抱える被災者が多く報告され、既存の身体的ケアが中心の医療支援だけでは対応が難しいことが明らかになりました。しかし、各地から集まる「こころのケアチーム」の活動に統一的な基準や調整機構がないため、多数の支援チームの調整の困難さ、そして支援者側の事前の準備や研修の系統性の不足などが再び課題として認識され、現場での混乱や非効率が生じました。これらの大規模災害での経験から、災害時の精神保健医療体制を円滑かつ組織的に提供するための専門チームの創設が不可欠であるという認識が高まりました。東日本大震災の経験を基に、厚生労働省は2013年、「災害派遣精神医療チーム(DPAT)」制度を創設しました。DPATは都道府県単位で編成され、精神科医、看護師、業務調整員(精神保健福祉士や心理職、薬剤師、事務職)など多職種で構成されます。発災時には、被災地のニーズに応じて厚生労働省(DPAT事務局)の指揮下で派遣され、被災者・医療機関・行政職員などのメンタルヘルス支援を行います。DPATの特徴は、標準化された訓練と装備、災害時情報共有システ ムの活用(広域災害・救急医療情報システム:EMISなど)、被災地の精神保健体制への連携支援、自己完結型の活動などです。DPATには厚生労働省(DPAT事務局)が養成する主に他都道府県被災地への派遣を目的とした「日本DPAT」(2025年「DPAT先遣隊」から名称変更)と、都道府県が養成し、主に自被災都道府県内で活動する「都道府県DPAT」があります。 4. DPAT の展開と実績 ( 2014年~2020年代前半) DPATは、2013年の制度開始後、全国で整備が進み、2014年の広島水害や御嶽山噴火で初めて活動を行いました。DPATは、2018年北海道胆振東部地震、2019年台風災害、2021年伊豆土石流災害、そして2024年能登半島地震および能登半島豪雨災害などでも活動しています。東京都でも2016年の熊本地震での活動を契機にDPAT体制への移行を検討し、2018年に「東京DPAT」が設立されました。 5. 2024 年能登半島地震におけるDPAT の活動 2024年元日発災の能登半島地震では、厚生労働省(DPAT事務局)調整のもと43自治体のべ944隊のDPAT隊が派遣され、発災直後から避難所・病院・自治体支援を行いました。東京都は、「東京DPAT先遣隊(現日本DPAT)」を1月13日から27日にかけて、のべ2隊を石川県能登町に派遣し、筆者も参加しました。連日雪が降る中、劣悪な道路事情、上下水道が使えない、宿泊地の確保も困難な中での活動となりました。具体的な活動内容としては、(1)避難所での心理的支援と一般相談対応、(2)精神科既往患者の継続支援、(3)地域保健師や保健所との協働による訪問、(4)支援者への心理的ケア、(5)現地の被災医療機関の稼働状況やニーズに基づく調整支援、等を実施しました。特に、老健施設で連日不休で働き疲弊している職員が多数いるという情報を当該施設の医療支援に入ったDPATから入手し、保健所医師や保健師等で構成されているDHEAT(災害時健康危機管理支援チーム)と協力して介入して労働衛生コンサルタント・産業医でもある精神科医(筆者)が面接を実施し、その後県所管課および産業保健の専門家から構成されるDOHAT(災害産業保健派遣チーム)に繫いで状況の改善に至った事例は、支援機関連携の好事例となりました。 6. 今後の課題 近年は豪雨災害・地震・感染症などが連続的に発生しており、「慢性的災害状況」とも言える状態が続いています。さらに、南海トラフ地震のような激甚災害時においては、現在のDPAT隊員数では不十分であることが研究で示されており、国および都道府県等でのさらなる育成が急務です。さらに、災害派遣経験や専門知識を持ち、実災害時のみならず平時の体制整備や研修などで主体的な役割を果たすべくDPATインストラクターや都道府県DPAT統括者の育成も課題です。DPATは発災時にのみ活動するため、平時における地域精神保健活動との接続が十分とは言えません。災害時のみならず「災害に強い地域精神保健体制」を構築するため、平時からの備えが不可欠です。このために、精神保健福祉センターや地域精神科医療機関との情報共有、訓練の定期化が求められています。加えて、医療機関の支援にはDMATとの、避難所対応には区市町村や保健所やDHEATとの連携が必須ですが、まだ充分に訓練できているとは言えません。災害支援にあたる医療者・行政職員自身が心理的ストレスに晒されることが多く、支援者支援の仕組みが求められていますが、DPATは活動期間が各隊4-5日程度の場合が多く、継続的に関わっていくことが難しい状況があります。被災自治体の産業医や人事担当部署、精神保健福祉センター等とDPAT、あるいはDOHATが情報連携し、適切に支援者支援が行われる環境を体系的に整備する必要があります。発災から1か月程度が経過し、精神医療ニーズが保健対応にシフトした後、DPATから地域の保健体制へスムーズにつなぐための体制が定まっていないことも課題です。全国から派遣される「日本DPAT」は、能登半島地震でもおおむね1か月で派遣終了となり、以降は県精神保健福祉センターや県立病院、大学から構成される「石川県DPAT」での活動に移行しました。地域の精神科医療福祉資源の回復状況に応じたこころのケアの展開をどうしていくのか、DPATの活動のあり方、精神保健福祉センターの役割、保健所の役割、医師会などの役割を都道府県毎にあらかじめ定めておく必要があります。その際の個人情報の管理も課題となります。 7. おわりに 日本の災害時こころのケアは、1995年の阪神・淡路大震災から始まり、東日本大震災を経てDPATという体制へと発展しました。DPATの整備により、被災地での精神医療支援は迅速かつ体系的に行われるようになった一方で、地域格差、人材育成、長期支援、そして支援者のメンタルケアなど、新たな課題も浮き彫りとなっています。今後は、「災害時の特別な支援」から「平時からのレジリエンス形成」へと視点を転換し、地域社会全体でこころの健康を守る仕組みを育てることが求められているのではないでしょうか。 参考文献 菅原 誠, 「災害列島に生きる」ストレス障害と「こころのケア」, 平凡社, 2011, 「こころの健康だより」の新しいスタートに向けて 東京都立中部総合精神保健福祉センター 「こころの健康だより」について 「こころの健康だより」は、読者の皆様がこころの健康について身近に考えるきっかけを持てるよう、暮らしの中で役立つ情報や地域での取り組み、うつ病・統合失調症・依存症などのこころの病気に関する基礎知識、各世代(思春期・青年期・壮年期)に特徴的なメンタルヘルスの話題、災害や感染症の流行など社会情勢を反映したこころの問題への対応など、さまざまな角度から情報をお届けしてきました。日々の生活に役立つ知識や、いざという時に知っておくと安心な制度・相談先の紹介を通じて、「こころの健康」を自分自身や大切な人のこととして捉えていただけるよう工夫してきました。近年では、こころの健康に関わる多様な専門家による特集記事を掲載し、最先端の研究や実践も紹介しています。専門的なテーマについても、要点を押さえて分かりやすく解説し、読者の皆様がさまざまな視点からこころの問題を考えるきっかけとなることを目指しています。今後も専門的な知識と身近な話題の両方を大切にしながら、皆様の「こころの健康について考える時間」を支え、豊かにする情報をお届けしたいと考えております。情報を知ることで、こころの健康を守るこころの不調は誰にでも起こりえますが、「気のせい」「性格の問題」といった誤解や偏見が適切な対応を遅らせる原因となることがあります。誤解や偏見を減らすためには、こころの健康をよい 状態に保つ方法を理解すること、こころの病気やその治療について正しく知ること、そして支援が必要なときにどこへどのように助けを求めればよいかを知ることが大切です1)。こうした知識を身につけることで、自分や身近な人の不調のサインにも気づきやすくなり、家族や職場、地域でお互いを支え合う力にもなり、こころの健康に関する深刻な問題を未然に防ぎ、医療・福祉・産業などの社会的負担を軽減することにもつながります2)。私たちが中立的な立場から情報を整理し、多くの方にアクセスしやすい形で発信することには、こうした観点からも意義があると考えています。これからの発行について 次年度から編集体制の変更にともない、「こころの健康だより」はリニューアルすることになりました。今後の変更は次号でお伝えします。「こころの健康について読者の皆様と一緒に考える」という基本の姿勢はこれまでと変わりません。より丁寧に、より深く、皆様のこころの健康に寄り添う広報紙を目指して、内容の充実に努めてまいります。これからの「こころの健康だより」も、皆様のこころの健康を支える存在となれるよう、編集部一同、心を込めて制作を続けてまいります。新しいスタートを切る本誌を、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。 センターのその他の事業について 中部総合精神保健福祉センターでは、リーフレットの発行や各種フォーラムの開催、オンラインでの情報提供などを通じて、東京都にお住まいの方や在勤・在学中の皆様に向けて、こころの健康に関するさまざまな情報を発信しています。こうした機会を通して、より詳しく、より実践的な知識に触れていただけますと幸いです。詳しくは当センターのウェブサイトをご覧ください。皆様の声をお待ちしています「ここが役に立った」「こんなテーマを取り上げてほしい」といったご意見やご感想も、ぜひお寄せください。皆様からいただいた声は、今後の紙面づくりの大切な参考とさせていただきます。 1) Kutcher S. "Mental health literacy: Past, present, and future." Can J Psychiatry, 61(3), 154‒158. 2016. 2) Jorm AF. "Mental health literacy: Empowering the community to take action for better mental health." Am Psychol, 67(3), 231‒243. 2012 1985年7月に第1号精神衛生だよりが発行されてから、第49号こころの健康だよりに名称を変え、第92号から特集テーマで編集する形を継続してきました。特集テーマは、精神疾患や社会問題、精神保健に関することなど、すべての都民にかかわることを広く取り上げています。 近年発行した主な「こころの健康だより」 No.122 2018年 6月号 いわゆるごみ屋敷問題を通じて考える ●「セルフ・ネグレクト」とは ●精神医学的視点からごみ屋敷問題を考える ●行政の取組状況と解決に至る道筋 ●足立区のごみ屋敷対策 ●地域包括支援センターでの取り組み ●平成30年度「精神保健医療予算」の概要 No.129 2020年 10月号 新型コロナウィルス感染症がもたらしたメンタルヘルス課題 ●COVID-19がもたらしたメンタルヘルス課題 ●保健医療従事者に今起こっていることと  支援者支援 ●電話相談の現場から見た  新型コロナウィルス感染症の影響 ●地域におけるこころの健康づくりと課題 No.132 2021年 10月号 自らを傷つける人たち ●自傷行為の理解と援助 ●市販薬・処方薬を飲み過ぎてしまう人たち  ~その理解のために~ ●救急救命センターでの現状、地域との連携 ●支援の現状と、そこから見えてきたもの No.136 2023年 2月発行 睡眠障害 ●睡眠に関する最新の知見 ●精神科でよく対応する睡眠障害  ~不眠症とリズム障害を中心に~ ●睡眠時無呼吸症候群とその治療 ●睡眠とベッド No.139 2024年 2月発行 多様な働き方とメンタルヘルス ●「多様化」が労働者の  メンタルヘルスに及ぼす影響 ●職場のポジティブメンタルヘルス:  ワーク・エンゲイジメントに注目して ●治療と仕事の両立支援 ●人生の節目に寄り添うワンストップの相談窓口 ※最新号と過去2号はホームページに掲載しています。それ以前の号はご覧いただけませんのでご了承ください。 東京都 こころの健康だより No.145 令和8 年2月発行  登録番号(6)12 編集・発行 東京都立中部総合精神保健福祉センター   03 - 3302 - 7704 印刷会社 株式会社能登浦