こころの健康だより No.143 2025年6月発行 特 集 「ギャンブル等依存症からの回復」 もくじ ●ギャンブル依存症って何?………………………………………………………………2 ● 宝となった暗闇の過去……………………………………………………………………4 ● 生活習慣病としての借金問題…………………………………………………………5 ● 精神保健福祉センターにおける相談事業………………………………………………6 ● 東京都ギャンブル等依存症対策推進計画(第2期)の策定について………………7 ● 令和7年度「精神保健医療予算」の概要………………………………………………8 ギャンブル依存症って何? 昭和医科大学烏山病院 アディクション外来担当 常岡 俊昭 最近、聞くことが多くなったギャンブル依存症 ですがどのようなものかご存じですか?ギャンブ ルに関しての依存症、なので「ギャンブルとは何 か?」「依存症とは何か?」に分けて考えてみま しょう。ギャンブルとは「より価値のあるものを 求めて価値あるものを危険にさらすこと」と定義 されています。これは一般には「金銭を使って勝 負を行い勝者は最初に使った金額以上の金銭を得 ることができ、敗者は使った金銭の一部もしくは すべてを失う」ということを意味します。この意 味からは競馬・競艇・競輪などの公営ギャンブル に加えて、オンラインカジノやスポーツベット、 株やFXなどもギャンブルの範疇に入ります。法 律用語としては色々あるようですが、パチンコ・ パチスロも医学的にはど真ん中のギャンブルとし て扱われます。本来賭博は違法なのですが公営 ギャンブルは特別に例外として国が管理するため に合法となっています。逆にオンラインカジノや スポーツベットはグレーなイメージがあるかも知 れませんが実際には完全に違法です。オンライン でのギャンブルはアクセスが良い事(やりたいと 思ったらすぐに行えること)や夜中までやれる事 などからやめにくいことが指摘されています。 ではこれらにハマってしまう「依存症」ですが 依存症についてのイメージはどんなものでしょう か?依存症に関するよくある誤解に「好きが高じ て依存症になる」というものがあります。好きで 好きでたまらないものをずっとやっていったら依 存症になる、もしこれが本当であれば依存症者は 一つのものをずっとやり続ける特別強い意志を 持った人たちとなります。実際にこの話を手に取 られた皆さんは依存症になることができますか? 若いころからずっとお金が入れば生活が困っても すぐにこれに使う、そのためなら他に使う事はな い、という対象はありますか?もっと分かりやす く聞きましょう。皆さんは今から自分の一番好き なものだけ食べ放題で食べてよい、他は食べては だめと言われたら何日くらい楽しく食べ続けられ るでしょうか?これを講演会で聞くと大体の人が 1週間が限度だと話します。なんて意志の弱い人 たちでしょうか!依存症者はどんなに自分が辛く て周囲から責められても隠しながら数年・数十年 単位でそれだけにお金をかけ続ける事なんてざら なのに。当然そういう話ではありません。人間は 飽きる生物で、好きなものは飽きるのです。では 皆さんが飽きずに続けていることはなんでしょう か?みんな毎日毎日何度も何度もトイレに行きま す。仕事中でもデート中でも映画の良いところで も漏らすよりも中座してトイレに行きます。まさ に依存状態です。では皆さんがトイレに行くのは なぜですか?トイレが好きで好きでたまらないか らですか?これも講演会で聞いたことがあります がトイレが好きだという人にはまだ会えていませ ん。みんな「漏らすのが嫌だからトイレに行く」 と言います。そうなんです。人は好きなものは飽 きるのです。しかし嫌な事を避けたい気持ちは飽 きがこないのです。依存症になると脳の報酬系と いう生きるために必要な回路が依存対象以外では 回りにくくなると言われています。仕事で認めら れること、家族の成長を見守る事、好きなドラマ を見る事、魅力的な異性と食事をすること、多く の事で回っていた報酬系がそれらでは反応しなく なります。生きるために必要な回路なのでそのま ま回らなければ鬱になり自殺に追い込まれてしま います。その際に依存対象でだけ報酬系が回るた めに、生きるために依存対象を使わざる得ない、 その依存対象ですら徐々に報酬系を回せなくなる ので量や頻度を増やさざるを得ない。これが依存 症のメカニズムと言われています。 ではギャンブル依存症に戻ってみましょう。 ギャンブル依存症者はギャンブルを行っている時 だけ報酬系が回り日々のストレスや辛さから逃れ ることができます。でも段々に効果が弱くなるの でさらに額を増やさなくてはいけない。ギャンブ ル依存ではアルコールや薬物のように体が壊れる ことはありませんが経済状態が壊れます。借金を 重ねると借金自体のストレスに加えて借金を周囲 の人に隠しているストレスも加わります。これら を一時的に忘れるためにギャンブルを行わずには いられなくなります。またうつ状態で思考が狭ま ると「ギャンブルの借金はギャンブル以外では返 せない」と思い込みます。実際に短期的にはギャ ンブルで以外返せません。ギャンブル依存症者に 対して「なぜほとんど当たらないものにかけるの か」という人がいますが、ギャンブル依存症者か らしたら「ギャンブルで勝てる可能性が1%でも、 何もしなくては明日には100%破綻する。だから 1%にかけるのだ」となります。漫画なら格好良 さそうですが現実は99%に当たることがほとん どですのでさらに借金やうつ状態を悪化させてい きます。 ではこのギャンブル依存症への治療はどうすれ ば良いか。ギャンブル依存症をはじめアルコール 以外の依存症に効果が検証されている薬物療法 はありません。そのため認知行動療法と自助グ ループ内でのプログラムを行ってもらう事が一 般的です。認知行動療法はギャンブルをしやすい 環境、しにくい環境などをテキストを用いて体系 的に勉強して行きます。多くの依存症専門病院や 精神保健福祉センターなどで集団で行っています が大体は平日昼間になり通うためには仕事や学校 を休む必要があります。もう一つの自助グループ は依存対象をやめたいと思う者が集まって言いっ ぱなし聞きっぱなしのミーティングと回復のため の12ステップと呼ばれるプログラムを行います。 アルコール依存症の人が集まるAA(Alcoholics Anonymous)が効果を認めたため薬物(NA: Narcotics Anonymous)、ギャンブル(GA: Gamblers Anonymous)などと対象を広げて います。最近ではオンラインも発達していて交通 の便が悪かったり仕事が忙しくても参加すること が可能です。自助グループではミーティングで自 身の感情に気が付いて言語化し、他人の話を聞い て自身と同じ点を探す訓練をしていきます。また 12ステッププログラムでは自身の人生を振り返 りギャンブルを我慢するのではなくギャンブルが 必要のない生き方の獲得を目指していきます。新 しい生き方を手にした依存症者は「依存症になっ たことがきっかけで人生が楽になった」と話す人 もいます。 ギャンブル依存症の回復には家族の行動も重要 です。家族が何かをするのではなく、本人の回復 行動を邪魔しないために正しい知識や仲間が必 要となります。保健センターや病院で行われて いる家族勉強会に加えてギャンブル家族の自助グ ループであるギャマノンやGAFA(Gambling Families Anonymous)やギャンブル依存症家 族会などに参加することを強く勧めています。借 金の利息を心配して肩代わりしてしまう、本人の 行動を管理するなどをして症状を悪化させてから 受診される方は数多くいます。依存症はまだ知ら れていない病気です。家族がもしかしたらと思っ たら知識のない家族同士で相談するのではなく知 識を持っている人たちに聞いてから行動してもら いたいなと思っています。 ギャンブルに限らず依存症はなったら終わりの 疾患ではありません。一生付き合う事にはなりま すがその過程で大きな成長を遂げて生きやすく なることが可能な病気です。そしてギャンブル をしたことがある人なら誰もがなりえて、放置 すればどんどん悪化しますが適切に治療すれば誰 もが治る病気です。自身があれと思ったり、下記 のLOSTで2点以上でしたらなるべく早く自助グ ループか精神保健福祉センター、依存症専門病院 を訪ねてもらえたらと思います。 宝となった暗闇の過去 一般社団法人 東京グレイス・ロード 服部 善光 電話が鳴り響く…受話器を取ると、電話線の向 こうから悲壮な声で「やめようと思っていたのに 今日もギャンブルをやってしまった…どうしたら いいか、もうわからないです…」。ある日のSOS の声。回復に繋がる前の自分を思い出す。 令和5年度「ギャンブル障害およびギャンブル 関連問題の実態調査」(久里浜医療センター)に よると、過去1年におけるギャンブル等依存症が 疑われる者の割合は成人人口の1.7%。また新型 コロナウイルス感染拡大前と比較し、インター ネットを使ったギャンブルの利用が増えたとの回 答は、その内の19.9%という報告があった。昨今、 ギャンブルによる借金苦での闇バイト、インター ネットカジノ逮捕者など、色々な場面でギャンブ ル問題が取り上げられているが、今に始まったこ とではない。 当施設は、ギャンブル依存症専門の回復施設で、 スタッフは全員当事者のピアサポーター。現在、東 京・山梨・岩手で地域の皆様のご理解とご協力のも と、身体的・精神的・社会的援助となる「回復プロ グラム」ならびに「居場所」を提供し、ギャンブル 依存症からの回復と社会復帰を促進している。 私は福島県の、どちらかというと裕福な家庭で 生まれ、両親も健在。しかし内実は不健全な家族 関係だったため、居場所が見つけられず、人と繋 がることも難しく、自己表現を諦めていた。14 歳のとき好奇心で数人の友人とパチンコ店に行き、 ギャンブルに出会った。今でもその強烈な記憶は 昨日のことのように思い起こせる。ギャンブルを 介した人間関係は苦痛がなく、ただ楽しむばかり の時間に安らぎを感じた。その後、友人達と何度 か行き、一人でも行くようになった。しかし別の 側面では、いじめに合い、いじめる側にもなり、 素行も悪くなる。高校は三度自主退学。仕事を何 十回も変える。挫折を感じる度にギャンブルの時 間が増えていった。家庭内窃盗や嘘をついて用意 したお金でギャンブルへ。バレると「お前たちの せいだ!」と逆切れ。人間関係は破綻していった。 転居、就職、結婚、子供を授かる。その度に「今 度こそは!」と頑張るも、むしろ状況は悪くなる ばかり。家族や周囲に当たり散らし、苦しかった 不健全な家族関係を自分が作るようになっていた。 悪化の先には犯罪、刑務所が待っていた。反省 と後悔の中で、「次こそは…」。出所後もギャンブ ルは止まらず、戻らないと誓った刑務所に再び入 ることに。「もういいや…」、人生を諦めていた。 出所しても勿論ギャンブルは止まらず、精神科で 「あなたはギャンブル依存症です」と言われても 否認。さらにギャンブルが加速しホームレス。生 活保護。何も出来なくなったある日、初めて「助 けてほしい…」。そこから回復の道のりが始まった。 施設に繋がり回復し始めるも、先行く仲間であ り、私を回復に導いてくれた弟がギャンブル問題 で自死。ギャンブルが止まっても変わらない生き づらさ。クリーン3年6か月の時にドロップアウ ト。待っていたのは以前より酷い状況だった。生 活保護を再受給し、仕事はヤミ金。ギャンブル三昧。 逃げるように仕事を変えてもあっという間に生活 苦。9カ月で再度底つき。仲間に「助けてほしい」。 2度目の回復施設。箸にも棒にもかからない私を グレイス・ロードが拾ってくれた。仲間の中に居 ても孤独を感じていた私に、仲間達は沢山話しか け、遊び、笑い、泣き、共感してくれた。いつも 仲間たちが生き方の解決策を実践し伝えてくれた。 プログラムを少しずつ進め、仲間の手助けの元、 スタッフという道を選び、今日までギャンブルが 無い新しい生き方を続けさせてもらっている。 現在十年のクリーンを迎え、西新宿の空の下で、 かつて仲間たちから受け取った生き方を目の前の仲 間に手渡すことを続けている。暗闇は宝となり、誰 かの役に立つ。それは同時に私自身の幸せでもある。 ギャンブルのみならず、依存症からの回復は希 望であり奇跡ですが、沢山の助けの手と力強い支 えが必要です。読者の皆様が、今苦しんでいる当 事者の力となってくださいますよう、回復の道を 歩くためのご理解とお力添えを、よろしくお願い いたします。 出典: 松下幸生, 古賀佳樹, 新田千枝, 浦山悠子, 柴山笑凜, 遠山朋海, 伊 東寛哲, 木村充; 令和5年度 依存症に関する調査研究事業「ギャ ンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査」, 2024年 生活習慣病としての借金問題 YORISOU社会保険労務士法人 弁護士・精神保健福祉士 平林 剛 1、底の抜けた桶で水を汲む ギャンブルの問題と借金の問題は切っても切り 離せない。そのためか、本誌のようにギャンブル 依存症の特集が組まれると、多くの場合、法律家 が債務整理を解説する頁が設けられる。しかし、 ギャンブル依存症に限らず、借金という問題を抱 える人たちに対して、借金だけに着目して債務整 理(破産や任意整理など)を行っても、早晩、新 たな借金を抱えるケースが多く、いわば、底の抜 けた桶で水を汲むような債務整理になりかねない。 2、対人援助の一選択肢に過ぎない法的援助 突然だが、ダイエットのことを考えていただき たい。脂肪吸引手術や食事制限は肥満の解消に即 効性がある。しかし、その後に以前と同じ食生活 を続けていれば、早晩、元の肥満の状態に戻って しまう。継続的に肥満の状態を解消しようと思う のであれば、脂肪吸引手術や食事制限に頼るので はなく(あるいはそれらと並行して)、栄養指導 等を受け、地道に生活習慣を改善していくしかな い。同様に、法律家が行う債務整理も即効性はあ るが、継続性はない。法律家が行う債務整理と並 行して、借金・依存症という生活習慣病に対する 支援、ケアマネジメントが求められる。借金とい えば法律問題というイメージが強いことから、法 律家につながると、これで一件落着という雰囲気 になることが多いが、法律家はケアマネジメント についてなんらの専門性も有していない。発達障 害や境界知能に由来するケースも多いように感じ ており、本質的な解決は、むしろ、支援職による ケアマネジメントにかかっているといっても過言 ではない。依存症の根っこにある『生きづらさ』 に向けてどういったケアマネジメントを行うべき なのかは、本誌の他の頁に委ねたいと思うが、例 えば金銭管理や医療・福祉的な支援の状況は、後 述する裁量免責の判断要素になることもあって、 この時期は、本人の意欲も高まりやすく、新たな 生活習慣を構築する好機となる。他方で、法律家 の介入によって督促等が止むと、本人の意欲が低 下したり、ギャンブルが再発して状況が悪化する ケースもあることから、ケアマネジメントを先行 する方が適切な場合もある。紙幅の関係で詳細は 割愛するが、債務整理を急ぐ必要があるケースは 少なく、まずは、家族や支援職が焦らないことが 大事である。 なお、一番避けるべきは、本人が借金を返すた めのお金を援助してあげることだと言われている。 金融機関は、借金を返せば返すほど、『信用でき る人』として、より多額のお金を貸すようになる。 他方で、ギャンブル依存症の当事者には、援助し てもらったお金をきちんと返さなくてはならない と考える者も少なくなく、その返済資金を捻出す るため、新たに借りられるようになった多額の金 銭を元手にギャンブルに臨むケースが多い。もち ろん、適切なケアマネジメントとセットでの金銭 援助を、全て否定するわけではない。 3、破産にまつわる誤解 債務整理のうち、破産という手続き(正確には、 破産に続く免責という手続き)は、簡単に言って しまえば借金をチャラにする徳政令のような手続 きである。そのような強い効果を生じる手続きの ため、ギャンブル(「浪費又は賭博その他の射幸 行為をしたこと」)による借金については、原則 として免責を認めない(免責不許可事由)としつ つ、裁判官の裁量で免責を認めることとしている。 実際上は、ギャンブルを原因とする借金について も、法律家に債務整理を依頼した後もギャンブル を継続していたようなケースはさておき、比較的 広く裁量免責が認められている印象がある。法律 家に相談するにあたり、初めから破産免責を選択 肢から除外して臨む必要はない。 また、今後、借金ができないようにすることを 意図して、周囲が破産手続きを勧めるケースがあ るが、貸金業者等は、破産をしたからと言って一 律に金銭を貸さないわけではなく、破産したとい う事情を踏まえながら与信判断を行う。そのため、 特に一定程度の収入がある場合には、多重債務の 状態よりも、破産直後で何の借金もない状態の方 が、貸付の対象となる可能性がある。 4、法テラス 一般的には、「法テラス」と呼称されることが 多いが、我が国には、民事法律扶助制度という、 弁護士・司法書士費用立替制度がある。この制度 は、日本司法支援センターと民事法律扶助契約を 締結している弁護士・司法書士(以下、「契約弁 護士等」とする)に法的援助を依頼する場合であ れば、一定要件のもと利用可能である。法テラス の名を冠する法律相談でないと利用できないと誤 解し、懇意にしている契約弁護士等がいるにも関 わらず、わざわざ法テラスの名を冠する法律相談 を利用するケースが見受けられるが、契約弁護士 等の事務所における相談等についても、法テラス は利用可能である。 精神保健福祉センターにおける相談事業 東京都立中部総合精神保健福祉センター 相談支援担当課長代理 中村 真弓 1 はじめに 精神保健福祉センターは精神保健及び精神障害 者福祉に関する法律に基づき、都道府県、指定都 市に設置が義務付けられている精神保健福祉に関 する技術的中核機関です。東京都には3か所の(総 合)精神保健福祉センターがあり、それぞれ担当 する地区があります。 東京都では、依存症対策総合支援事業実施要綱に 基づき、東京都立(総合)精神保健福祉センターを 依存症相談拠点とし、アルコール・薬物・ギャンブ ル等の依存症に係るご相談をお受けしています。 2 相談のながれ アルコール・薬物・ギャンブル等の依存症に関 するご相談については、「こころの電話相談」で 受け付けています。電話相談は平日の午前9時か ら午後5時まで匿名で受け付けています。 電話での相談では、現在のお困りごとなどお話 をうかがい状況や必要に応じて対面でのご相談の ご案内となります。 3 中部総合精神保健福祉センターでの事業 中部総合精神保健福祉センターでは、依存症 の問題を持つご家族の方向けに「依存症家族講 座」を、ギャンブル等の問題にお困りのご本人 向けには「ギャンブル障害回復支援プログラム (C-GAP)」を実施しています。 「依存症家族講座」は全8講座からなり、「依存 症とは」「家族の回復」「本人・家族の体験談」「コ ミュニケーション」等の内容となっています。 ご本人向けのプログラムは、ギャンブル等依存 症から回復し、回復への取組を継続しているリカ バリースタッフが毎回参加し、参加者とともに回 復に向けたモチベーションを高めています。 このプログラムは、認知行動療法をベースと した少人数のグループ形式で実施します。テキス トに沿ってギャンブル等依存症についての知識を 得ながら、自身の考えをまとめます。そして、他 の参加者やリカバリースタッフの話を聞く中から、 自己を振り返り依存に傾きやすい考え方や行動に 気づくことで自分への理解を深め、新しい生活に ついて考えていきます。 4 まとめ 依存症は回復できる病気です。しかし、ご家族 やご本人だけでは回復に向かうことは困難な病気 でもあります。(総合)精神保健福祉センターでは、 地域の皆様が安心してご相談いただける最初の相 談窓口となれるよう取組んでいきたいと思ってお ります。 依存症かな?と心配なことがありましたら、ま ずは「こころの電話相談」までお電話ください。 居住地により担当センターをご確認いただきお電 話ください。電話受付時間は平日午前9時から午 後5時までです。 相談機関名等 担当地域 電話番号 中部総合精神保健福祉センター 港区、新宿区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、 渋谷区、中野区、杉並区、練馬区 03−3302−7711 多摩総合精神保健福祉センター 多摩地域 042−371−5560 精神保健福祉センター 千代田区、中央区、文京区、台東区、墨田区、江東区、 豊島区、北区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区、島しょ地域 03−3844−2212 東京都ギャンブル等依存症対策推進計画(第2期)の策定について 東京都福祉局障害者施策推進部精神保健医療課 課長代理(医療体制整備担当) 富樫 和裕 はじめに 東京都は、ギャンブル等依存症対策基本法に基 づく、都におけるギャンブル等依存症対策を推進 するため「東京都ギャンブル等依存症対策推進計 画(第2期)」を策定しました。 この計画は、令和7年度(2025年)から令和9 年度(2027年度)までの3年間を対象としてお ります。 東京都は、ギャンブル等依存症の正しい知識の 普及と予防・発症・再発防止の段階に応じた支援 と治療、本人や家族に関わる関係機関や民間団体、 関係事業者など多様な主体が連携した包括的な支 援を行います。 概 要 1.計画策定の趣旨 ギャンブル等依存症は、本人や家族の日常生 活に支障をきたし、多重債務や犯罪などの重大 な社会問題を引きおこす可能性があります。 早期支援や適切な治療により回復が可能です が、本人や家族が病気に気付きにくいため、医 療提供体制や相談支援体制の整備が課題となっ ております。 2.ギャンブル等依存症の現状 依存症は、特定の行動や習慣に心を奪わ れ、やめたくてもやめられない状況を指します。 ギャンブル等依存症の症状には、負けを取り返 そうとする行動や、苦痛の気分の時にギャンブ ル等をすることなどが含まれます。 ギャンブル等依存症は、人間関係のトラブル、 多重債務問題、法律問題、仕事能率の低下や失 業、健康問題、希死念慮や自殺などの深刻な問 題に至ることがあります。 3.第1期推進計画の実施状況 次のとおり予防教育や普及啓発、相談・治療・ 回復支援、依存症対策の基盤整備、関係事業者 の取組、多重債務問題への取組などを行いまし た。 ・高等学校において、学習指導要領に基づき授 業を実施 ・依存症対策普及啓発フォーラムを開催するほ か、リーフレットを活用し、ホームページ等 で情報発信を実施 ・都立(総合)精神保健福祉センターを依存症 相談拠点に設定し、専門相談員による相談、 連携会議等を実施 ・依存症治療拠点機関において、医療従事者向 け研修、医療機関向け連携会議及び受診後患 者支援を実施 改定のポイント 1.新たな課題への対応 オンラインによる車馬券の購入が普及し、若 者をはじめとする幅広い層で悩みを抱えるケー スが増加しています。これに対応するため、依 存症に係るポータルサイト構築による効果的な 情報発信、SNSを活用した相談窓口の設置な ど、課題に対応した取組を強化します。 2.医療提供体制の強化 ギャンブル等依存症の専門医療機関の選定を 進めるとともに、機能強化により地域の医療連 携を促進し、相談・治療・回復まで切れ目のな い支援を行います。 3.民間団体との連携 民間団体の活動や重要性を発信し、本人や家 族が民間団体とつながることができるように支 援します。また、啓発週間などの機会を利用し て、特別相談会を実施するなど、民間団体との 連携を強化します。 4. 関係事業者との連携 関係事業者が実施する本人・家族申告による アクセス制限制度等を都道府県等における相談 拠点、専門医療機関の相談等で紹介する等、連 携を促進します。 5.多重債務者問題等への対応 多重債務問題に関する情報発信を行うなど、 必要な取組を進めます。また、オンラインカジ ノの違法性の周知を徹底します。 おわりに 本計画における取組を着実に実施するとともに、 社会環境の変化等に併せて取組を見直していきま す。そして、予防効果をあげていくとともに、本 人や家族が早期発見・早期支援につながりやすい 取組を進めていきます。 令和7年度「精神保健医療予算」の概要 ―総額527億円― 〇障害者医療費助成 障害者の保健の向上及び福祉の増進を図るため、 医療費の一部を助成する。 1 措置患者医療費公費負担………21億8千万円 2 精神通院医療費助成…………454億5千万円 3 小児精神障害者入院医療費助成……2千万円 4 支払事務委託等…………………13億9千万円 〇精神科救急医療 精神障害者に対し、救急医療体制の確保を行う。 1 救急医療体制……………………9億4千万円 2 二次救急医療体制………………………4億円 3 初期救急医療体制……………………8千万円 4 精神科救急医療情報センター…………6千万円 〇精神障害者の退院促進 入院患者及び精神科病院等に対して退院促進に 向けた働きかけ、地域定着体制整備の調整を行う。 ………………………………………2億7千万円 〇障害者関係各センターの運営等 1 発達障害者支援センター………………7千万円 2 総合精神保健福祉センター等……4億3千万円 〇相談支援体制等の充実 障害者の自立と社会参加を促進するため、相談 体制・地域生活支援等の充実を図る。 1 発達検査体制整備支援事業……3億6千万円 2 発達障害者支援…………………1千3百万円 3 発達障害児等巡回支援員整備事業…8千1百万円 4 高次脳機能障害支援……………1億8千万円 5 ペアレントメンター養成・派遣事業…8百万円 6 発達障害専門医療機関ネットワーク構築事業 ……………………………………1千4百万円 7 保健所精神保健福祉事業等……3億4千万円 8 夜間こころの電話相談……………2千7百万円 9 都営交通乗車証発行事業………3千6百万円 10 地域医療体制整備……………………5千万円 11 精神科病院における虐待防止の推進 ……………………………………3千7百万円 12 心のサポーター養成事業………………5百万円 13 入院者訪問支援事業…………………3千万円 14 精神科入院業務手続きのDX化…1千6百万円 15 身体合併症(慢性維持透析)に係る医療提供体制の確保事業 ………4千2百万円 16 災害時こころのケア体制整備事業…3千8百万円 17 災害時精神科医療体制整備事業……6百万円 18 災害拠点精神科病院等自家発電設備等整備強化事業 ……………………3億9千万円 19 難治性精神疾患地域支援体制整備事業 ……………………………………1千2百万円 20 措置入院者退院後支援体制整備事業…9百万円 21 精神障害計画相談支援従事者等養成研修事業… …………………………………………2百万円 22 依存症対策の推進………………5千8百万円 23 てんかん地域診療連携体制整備事業…5百万円 24 摂食障害治療支援体制整備事業…1千2百万円 25 SNSを活用した精神保健福祉相談…9千万円 26 メンタルヘルスケアに関する普及啓発事業 …………………………………………7百万円 27 精神保健福祉センター業務のDX化 ……………………………………2千6百万円 東京都 こころの健康だより No.143 令和7年6月発行 発行 ◆東京都立中部総合精神保健福祉センター広報研修担当 〒156-0057 世田谷区上北沢二丁目1番7号 電話 03-3302-7704 FAX 03-3302-7839 ◆東京都立精神保健福祉センター調査担当 〒110-0004 台東区下谷一丁目1番3号 電話 03-3844-2210 FAX 03-3844-2213 ◆東京都立多摩総合精神保健福祉センター広報計画担当 〒206-0036 多摩市中沢二丁目1番地3 電話 042-376-6580 FAX 042-376-6885 登録番号(6)12 (次号は令和7年10月発行予定です)