大人の神経発達症(発達障害) −その特性の理解と対応 大人の神経発達症(発達障害)とは  神経発達症(発達障害)は、生まれながらの脳の働き方の違いによる疾患の 総称であり、疾患ごとにさまざまな特性を示します。主な疾患として、自閉ス ペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)などがあげられます。従来 は発達障害と呼ばれていましたが、新たな呼び方として神経発達症に変更され ました。  神経発達症は、それぞれの特性が重複することも多く、ASDと ADHDが併 存している場合もあります。 就職して社会に出てから、職場の人間関係や業務 内容が複雑化し、対応が困難となって初めて診断を受けられる方もいます。ま た、抑うつ状態や不安症等の精神症状を併発し、仕事や日常生活に支障を来す 場合があります。 (神経発達症の主な診断名の変遷) 旧 広汎性発達障害 アスペルガー症候群 小児自閉症、自閉性障害 自閉症スペクトラム障害 多動性障害 注意欠陥/多動性障害 精神遅滞、知的障害 新 神経発達症群 自閉スペクトラム症 (ASD) 注意欠如多動症 (ADHD) 知的発達症 ★神経発達症の二次的な症状(二次障害)について  神経発達症は、その特徴が周囲の人に理解してもらえず誤解されたり、 さまざまなトラブルや失敗体験を積み重ねたり、さらには成長発達過程で 生じる困難な体験(いじめ、 虐待など)が加わった場合には、抑うつ症状や 不安症状、幻覚 ・妄想、解離症状、 PTSD、依存、セルフネグレクトなどが 生じることもあります。 自閉スペクトラム症(ASD)とは  自閉スペクトラム症は、アスペルガー症候群や広汎性発達障害、小児自閉症、 自閉性障害等の診断を統合した診断名です。スペクトラムとは「連続体」の意味で、 特性が強い人から軽い人まで さまざまな場合があります。社会的コミュニケー ションと対人相互交流が持続的に困難な場合や、興味、活動の限定及び反復した 行動がある場合に診断がなされることがあります。 主な特性(例) 言葉や視線、表情、身振りによる  コミュニケーションが不得手 他人に対する興味が薄く気持ちを  想像することが不得手 特定の物事へのこだわりが強い 行動に裏表がない 視覚(聴覚)的な記憶が得意 特定分野の知識が豊富 ルールを守る厳格さ 注意欠如多動症(ADHD)とは  注意欠如多動症は、「不注意」 と 「多動性・衝動性」という大きく2つの特徴が あります。「不注意」と「多動性 ・ 衝動性」は年齢不相応で持続性があり、学業、 職業、社会的活動に直接悪影響を及ぼす場合に診断がなされることがあります。 主な特性(例) 気が散る、 落ち着かない 人の話しをきくのが不得手 必要なものをなくすことが多い リスクや結果を考えず目の前の刺  激に反応して行動することが多い 発想力や独創性に富んでいる 好奇心が強く、行動や決断力がある 興味があることに集中力が抜群に強い 本人の困りごとと工夫できること(例) 周囲と視点、捉え方、反応の違いを感 じる。マイルールにこだわりがあり、 他の人のペースに合わせるのが苦手。 周囲と情緒的、相互的な交流が不得手。 自分の考えをまとめて伝えられない。 仕事の管理、進め方が不得手。 感覚過敏のため環境ストレスが大き い。自分の身体感覚をつかみにくく、 体調を崩しやすい。 予定外の場面でパニックや易刺激性な どを起こしやすい。いやな気持ちを引 きずりやすい。 *自分の特性に合わせて、職場環境、職務内容、職務遂行などの環境調整を上司等に相談する 。 大人の神経発達症(発達障害)の方への対応大人の神経発達症(発達障害)の方への対応  本人の特性や困りごとについて、 本人や周囲の方が理解を深め、相談できる 環境を整えたり周囲の人が配慮することにより、自己肯定感が保たれ、併発す る精神症状を予防することができます。 周囲の人の対応(例) パートナーや家族、親友、同僚、上司等が本人の特性によりうまく認 識できないことを理解する。 会話が苦手な場合は絵や文字を用いたり、視覚的な情報が苦手な場合 は音声による情報提供を中心に行う。一度に複数のことを伝えず、具 体的に説明する。 本人の特性に合わせた職場環境や職務内容、職務遂行などの環境調整 をする。時間の区切り、仕事の手順などを視覚化、明確化、仕事をす る場所や休む場所などを物理的に分ける。 医療機関の受診、地域資源の活用  「もしかしたら神経発達症かも」 と思ったときは、 精神科や心療内科又は相談 機関に相談してみましょう。専門外来を開設している病院やデイケア・ショー トケア、作業療法、ピアサポート(共感できる仲間との体験)などの治療プロ グラムを実践している医療機関もあります。治療は、幼少期からの症状、特性、 生活史等を聞き取り、発達の特性や困りごとに関する課題について心理教育や 認知行動療法等が主になる場合があります。また、併存する症 状やADHDの症状によっては薬物療法を行うこともありま す。お困りの方は、精神保健福祉センターや発達障害者支援セ ンター、障害者就労支援の相談窓口など地域の福祉的支援を利 用することで安定した社会生活を送ることが期待できます。 (*神経発達症は、定型的な発達をたどる方との明確な区別は難しく、症状や特性も十人十色で周 囲の誤解が生じやすいという問題があります。そのため、まずは相談機関や精神科医師等に相談 してみましょう。)  一見、神経発達症の特性がはっきりしない方においても、社会的な生きにくさ や困難さを抱えている方は、早めに相談や受診をすることで必要な支援や治療が 受けられる場合があります。  本人にとって望ましい個別具体的な対応方法については、本人・家族・関係機 関等がそれぞれ知恵を出し合い、共通認識をもって取り組んでいくことがとても 大切です。 本人も家族も周囲の人も一人で悩まず、専門機関に相談して みましょう。 公的な相談機関 ◆東京都発達障害者支援センターおとなTOSCA(通称 :おとなトスカ)  相談電話:03-6902-2082(まずは電話でご相談ください。) 令和7年4月以降は、移転により電話番号変更予定のため、ホームページを御確認ください。  開設時間 相談 :月・火・木・金 (9時〜 17 時) ※年末年始・祝日 は 除く(第1・3の水・土は 同時間帯にて開設) ◆東京都立(総合)精神保健福祉センター ◎東京都立中部総合精神保健福祉センター 〒156-0057 世田谷区上北沢2ー1ー7  相談電話:03-3302-7711(年末年始を除く平日9時〜17時) 担当地域:港区、新宿区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、  中野区、杉並区、練馬区 ◎東京都立精神保健福祉センター 〒110-0004 台東区下谷1ー1ー3 相談電話:03-3844-2212(年末年始を除く平日9時〜17時) 担当地域:千代田区、中央区、文京区、台東区、墨田区、江東区、豊島区、 北区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区、島しょ地域 ◎東京都立多摩総合精神保健福祉センター 〒206-0036 多摩市中沢2ー1ー3 相談電話:042-371-5560(年末年始を除く平日9時〜17時) 担当地域:多摩地域  ◆保健所・保健センター等  お住まいの地域の保健所・保健センター等に相談窓口がありますのでお問い合わせ ください。 令和7年2月発行 登録番号(6)5