薬物依存症を理解するために 〈薬物依存症とはどのような病気ですか〉 ●薬物使用をコントロールできない慢性・進行性の病気です  薬物がもたらす快感や普段得られない体感を経験した人は、長 期間脳にその記憶が残っているため、自分の意志や努力ではコン トロールできなくなります。依存症はこうした脳の働きによる慢 性・進行性の病気です。 ●誰にでも起こりうる病気です  薬物依存症は決して性格や意志が弱いことが原因ではありませ ん。依存性のある薬物を繰り返し誤った使い方で使用すれば誰で も依存症になる可能性があリます。 ●こころの苦痛が背景にあるといわれる病気です  こころの苦痛や孤独感を和らげようとして自己治療目的で薬物 を使う人もいます。こうした対処法として薬物を繰り返し使用す ることにより、依存症になってしまうことがあります。 ●死亡率が高い病気です  薬物を使い続けることで身体疾患や交通事故などを引き起こす リスクも高くなります。また薬物依存症の方は、自殺を考えたこ とのある人および自殺未遂をした人の割合が一般人口に比べて高 いといわれています。依存症は自殺の可能性が高い病気です。 ●薬物を取り上げるだけでは解決が難しい病気です  ただ薬を取り上げるだけでは解決になりません。しばらく薬物 をやめていても、再び使いたくなり再発する可能性があります。 継続的な治療・回復に向けた支援が必要です。 ●回復が可能な病気です  様々な機関や人の支援のもとで、薬物を使いたくなるきっかけ を見つけ、対処法を身につけることなどによって、薬物を使わな い生活を送ることは十分に可能です。 欲求と引き金に対処しましょう <外的な引き金から遠ざかりましょう> ・薬物を使いたくなる環境(人・場所・物)から離れます <内的な引き金から遠ざかりましょう> ・薬物を使いたくなる気持ちにならない工夫をします ・H.A.L.T.(ドイツ語:英語で STOPの意味)に注意! H(Hungry)空腹感   A(Angry)怒り   L(Lonely)孤独 T(Tired)疲労 <セーフティゾーンを設定しましょう> ・この場所なら、この人となら絶対に薬物を使わない環境 設定をします 〈薬物依存症から回復するには〉 ●まずは専門機関に相談しましょう  精神保健福祉センターや保健所・保健センターで本人や家族等 からの相談を受けています。東京都立(総合)精神保健福祉セン ターは「東京都依存症相談拠点」となっています。 ●認知行動療法プログラムに参加してみましょう  薬物が欲しくなる気持ちを招く引き金への対処や回復過程など を学ぶことができます。自らの認知のゆがみに気づき、生活を見 直すきっかけを得ます。 ●自助グループに参加しましょう  依存症の回復には仲間の存在が大きな力になります。 ●家族等周囲の人も正しい知識が必要です  依存症の進行を手助けする行動をしてしまうことがあります。 本人への正しい対応を身につけましょう。 ●医療機関の受診も回復の助けになります  東京都では「依存症専門医療機関」を選定しています。  不安感や抑うつ気分、怒りからの渇望を予防するために、薬物 治療が行われることもあります。解毒や薬物のない生活を取り戻 すための入院治療の選択肢もあります。 薬物依存症における近年の傾向  薬物依存症を引き起こす薬物には、覚醒剤、麻薬、医薬品など があります。近年では若年者を中心に大麻と市販薬への依存が増 えています。  大麻は決して安全な薬物ではなく、短期記憶の障害、運動失調 や判断力の障害を引き起こしたり、精神疾患の発症リスクを増加 させることに関連しています。  市販の鎮咳薬や総合感冒薬、鎮痛薬、睡眠改善薬、抗アレルギー 薬、あるいは、抗不安薬や睡眠導入薬などの処方薬の中には依存 性のある成分が含まれているものもあり、大量頻回の使用は依存 症の原因になります。適正な使用量であれば依存症になることは 稀であり、用量、用法を守って正しく使用することが重要です。 クロスアディクションに注意  薬物をやめた後にアルコールに依存し、アルコールをやめると ギャンブルにはまるなど、しばしば依存対象が他のものに変わる ことがあります。  また、アルコールと薬物、ギャンブルとアルコールなど、複数 の依存(嗜癖)が合併することもあり、これをクロスアディクショ ンと呼びます。重症化しやすく、早期の対処が必要です。 〈公的な相談機関〉 ○東京都立(総合)精神保健福祉センター  各センターでは本人向けの認知行動療法の手法を利用した依存症回復プ ログラムや、家族が正しい知識や対処法を学ぶ家族講座を実施しています。 ◎東京都立中部総合精神保健福祉センター 〒156-0057 世田谷区上北沢2ー1ー7  相談電話:03-3302-7711(平日9時〜17時) 担当地域:港区、新宿区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、  中野区、杉並区、練馬区 ◎東京都立精神保健福祉センター 〒110-0004 台東区下谷1ー1ー3 相談電話:03-3844-2212(平日9時〜17時) 担当地域:千代田区、中央区、文京区、台東区、墨田区、江東区、豊島区、 北区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区、島しょ地域 ◎東京都立多摩総合精神保健福祉センター 〒206-0036 多摩市中沢2ー1ー3 相談電話:042-371-5560(平日9時〜17時) 担当地域:多摩地域  ○区市町村の保健所・保健センター  お住まいの地域ごとに相談窓口があります。詳細は各窓口にお問合せく ださい。 令和7年2月発行 登録番号(6)3