395ページ 第9章 報告書の上梓に当たって 本調査の実施に当たっては、福祉保健局内に学識経験者、各障害者団体代表者及びと関係各部代表者からなる検討会を設置し、調査内容、調査方法とうについて議論を重ね、検討をおこなった。この章では、検討会での検討の経緯を振り返るとともに、検討会で議論された次回の調査に向けての課題や提言、調査結果の活用に関する意見を記載する。 ※ 検討会の設置、開催の経緯及び委員については、14ページ「第1 第2章 調査実施とうの経過」参照 1 検討の経緯とう 検討会では、調査方法、調査項目、調査票の質問文・選択肢、報告書の記載などについて、委員から多くの意見があり、調査に反映した。 まず、調査方法については、質問文及び選択肢の内容を回答者にわかりやすく説明するための工夫が必要との意見があり、回答者への説明方法を記載した「調査の手引」に反映した。 また、調査員に対して、障害者及び難病患者に関する基本的な事項についてのレクチャーを実施した方が良いとの意見を受け、調査員説明会において、障害者及び難病患者についての理解を促し、配慮すべき事項についてのカリキュラムを充実させた。 調査項目については、より詳細なニーズを把握するため、いくつかの設問を追加すべきとの意見があった。一方、経年比較するには、前回の調査項目は継続する必要があり、設問数の追加は、回答者の負担増につながることから、必要性を精査した上で、「意思を伝える場合に困ること(調査票2 問20。424ページ)」、「年金・手当とうの収入額(調査票3 問16の1。437ページ)」、「要求、意思、考えを相手に伝達、理解させることができるか(調査票3 問24。439ページ)」、「発症から確定診断までにかかった年数(調査票4 問7の1。448ページ)」、「確定診断までに通った医療機関数(調査票4 問7の2。448ページ)」及び「医療について感じること(各調査票の自由意見。415、429、443、458ページ)」の6つの設問を新たに追加した。 既存の調査項目についても、質問文や選択肢の意味が回答者に正しく伝わり、より正確な回答ができるようにとの観点から、具体的な修正の意見が多数あり、選択肢の修正や追加、補足説明の追加などにより、可能な限り改善をおこなった。 集計の方法については、障害者及び難病患者の生活実態を多角的な視点から分析できるよう、クロス集計表の充実について多くの意見があり、前回調査で作成したクロス集計表に、新たに65個のクロス表を追加した。例えば、身体障害者については、障害者総合支援法と介護保険法の2つの制度の利用状況を比較・分析できるよう、より多くの項目で「障害者総合支援法で利用したサービス」と「介護保険で受けている在宅サービス」とのクロス集計表を作成した。また、難病患者については、難病に罹患してからの期間が生活実態にどこまで影響を与えているかを分析できるよう、「難病の確定診断を受けた時期、調査基準日時点の年齢」と日常生活の状況、就労の状況とうとの3次クロス集計表を作成した。 報告書の記載については、まず、「第2 第7章 自由意見(333から376ページ)」について、前回調査では、回答者から頂いた意見の単なる羅列になっており、意見の内容が分かりにくいとの意見があったため、今回の報告書では、自由意見を内容別に細かく分類・整理した上で、回答の主旨が正確に伝わるよう、可能な限り具体的な内容を掲載している。 また、本章についても、前回調査の報告書では「第2 第9章 本調査に係る意見・感想とう」として、各委員の意見や感想を掲載していたが、検討会での議論の内容や次回の調査に向けた課題や提言などを検討会の総意の形で掲載すべき、との意見を受け、このような内容に変更している。 396ページ 2 次回調査に向けた課題・提言 本調査の実施に当たって明らかとなった課題や今回の調査に反映することが難しかった主な意見とうは、以下のとおりであった。 まず、調査回答の回収率についてである。本調査では64.6%であったが、毎年低下の傾向にあることから、回答を拒否する理由を何らかの形で吸い上げた上で、回収率の向上を図るべきとの意見があった。 また、調査対象者について、前回調査同様、身体障害者が4,000人、知的障害者1,200人、精神障害者800人、難病患者1,200人の計7,200人としたが、精神障害者については、発達障害者を含め、近年、人数が増加しており母数が大きくなっていることから、調査対象数も増やすべきとの意見があった。今回の調査では、推定標本誤差が5%以内に収まっているため変更は行わなかったが、次回調査時には、最新の状況を踏まえ、対象者数の変更についても検討が必要である。 次に、調査票の改善についてである。今回の調査では、調査票1(身体障害者)問6(身体障害者手帳に記載されている障害名)の「障害の程度」について、「肢体不自由(乳幼児期以前の非進行性の脳病変による脳原性運動機能障害)」の無回答が48.3%であった(402ページ)。このことについて、調査票の選択肢にある障害名と対象者自身の手帳に記載されている障害名が一致せず、どの選択肢に回答すべきか対象者が判断しにくかったのではないかとの意見があった。次回調査では、調査票に障害名の例示を併記するなどにより、対象者が正確に回答できるよう改善が必要である。 次に、調査対象者への配慮についてである。自由意見の中で、「調査が長い」、「調査項目が多すぎる」など調査への回答の負担が大きいとの意見が多かったため、調査項目の検討に当たっては配慮が必要である。 たの自由意見では、「手紙とうにふりがなが振っていてありがたい」、「事前に調査票の見本が送られたため、準備ができて良かった」といった意見があった一方で、視覚障害のある方からは「調査票の文字が小さい。薄く見づらい」、知的障害のある方からは「ふりがなが振られていても語句自体が難しく、理解しにくいこと」などの意見もあった。今回の調査では、文字を大きくした拡大版調査票の希望者への配布や、全ての漢字にふりがなを振るなど、障害を持つ方への配慮を心がけたが、より一層の配慮についても検討が必要である。 調査項目については、経年比較の必要性から、今回は一部追加や修正に留まったが、障害者の生活実態をより詳細に把握できるものに全面的に刷新すべきとの意見もあり、次回の調査時においても、引き続き検討することとしたい。 最後に、検討会の運営についてである。今回は計4回の開催であったが、検討会全体を振り返って意見の総括、次回調査への提言、調査結果の活用や、自由意見を詳細に見る機会、調査結果の分析や背景について議論する機会などがあると良いとの意見もあった。これらについては、次回調査時に、開催回数も含めて、検討することとしたい。 397ページ 3 本調査結果の活用について 本報告書は、障害者の生活実態の基礎調査として、統計の手法に基づいて経年的にも比較できる貴重な資料となっており、障害者に関する施策を検討する際に大いに活用されることが期待される。一方で、アンケート調査による量的調査には限界もあり、数値のみが施策の検討に当たって一人歩きしないよう十分に留意すべきである。 例えば、障害者及び難病患者の調査結果を比較する報告内容については、回答者の年齢階級は各障害者及び難病患者によって異なっているため、「第2 第6章 身体障害者・知的障害者・精神障害者・難病患者の状況(309から331ページ)」においても、各障害者及び難病患者の結果の違いは、障害(難病)の種類によるものだけでなく、回答者の年齢階級の違いによるものも含まれていると考えられる。このような観点から、同章の「7カッコ1収入を伴う仕事の有無(319ページ)」については、各障害者及び難病患者の回答者の年齢を65歳未満に限定したグラフを掲載している。 「住居の種類」の設問では、調査結果の注(25、104、166、238、311ページ)としても記載しているが、「持家」と回答したものには対象者の親名義の住居も含まれており、対象者が住居の所有者とは限らない。そのため、持家の割合が多いことが、必ずしも障害者が住居に困窮していないこととはならないとの意見があった。検討会では、こうした背景とうに言及する意見も多くあった。 本書は障害者施策を中心に、福祉・保健・医療施策推進の基礎資料として広く活用することを望むものであり、令和元年12月に公表する統計編には、本調査により作成した全てのクロス集計結果を掲載するとともに、オープンデータとしても公表するため、行政にとどまらず、大学とうの研究機関など様々な立場から詳細な分析がなされることを期待する。 特に、障害者施策に関する基本計画としての性格をゆうし、基本理念の外、広範な施策分野にわたって達成すべき目標とうを定めた「東京都障害者・障害児施策推進計画」の策定に当たっては、東京都障害者施策推進協議会とうの検討の場において、本調査結果を踏まえて注意深く、丁寧に審議していただき、障害者施策が一層充実することを強く望み、本章の締めくくりとしたい。 398ページ 白紙のページです。